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カテゴリー: アメリカ

フロッグマン戦記

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 アンドリュー・ダビンズ 、 出版 河出書房新社
 第2次世界大戦での米軍水中破壊工作部隊の活躍を紹介した本です。
 アメリカ海軍の特殊部隊として有名なネイビーシールズはベトナム戦争のときに発足した。その前身が、本書で紹介されている水中解体チーム(フロッグマン)。
 第2次世界大戦中のアメリカでは、民家の窓に赤い縁取りの白い旗が取り付けられた。この旗の中央に星がついていて、青い星だと、家族が出征中という意味で、星が金色なら出征した家族が死亡したということ。戦争が2年目に入ると、次々に青から金色に変わっていった。
 フランスに上陸するノルマンディー上陸作戦のときは、解体部隊は30分のうちに、潮が引いているうちに、ナチス・ドイツ軍が設置した海岸防御を突破し、障害物を除去しなければならなかった。オマハビーチに向かった解体部隊は、ナチス・ドイツ軍の障害物を全部で16ヶ所、撤去する任務を負った。重い鉄鋼、木、セメントの障害物のベルトに16列の突破口を開ける。イギリスの帆布職人が負った帆布パックを使って、それに20個の爆薬を詰めた。
 オマハビーチの解体部隊は16列のうち13列の突破口を開けることができた。しかし、解体部隊員の31人が死亡し、60人が負傷した。死傷率は52%に及んだ。
 日本軍を相手とするサイパン占領のときには、200人の水泳隊員の活躍で、1日に2万人の部隊が完璧に上陸できた。
 水中では、隊員は横泳ぎと平泳ぎですすむ。脚と腕は決して水面より上に出してはいけない。多くの水しぶきをあげるクロール泳法は、緊急時のみ許される。特殊な背泳ぎも学んで実行する。
水中で息を止めるコンテストがあった。意識を失わずに4分をこえた者はほとんどいない。あるスイマーは5分5秒を記録したが、2分45秒も息をとめられたら、すごいことだ。
 たしかに、水中工作物の除去が必要なことはあったでしょうね。そしていささか特殊な訓練と技能が求められますよね。いろいろ教えられました。
(2023年7月刊。3960円)

ラパスの青い空

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 下村 泰子 、 出版 福音館日曜日文庫
 1995年11月発行の古い本です。このころ30歳代の若い日本人女性がボリビアに1年間滞在したときの生活と苦労話が紹介されています。ずっと前から我が家の本棚にあったのですが、読んでいないので、思い切って読んでみました。とても面白い本でした。
 著者は京都YWCAに勤めて不登校の若い人たちと交わるなかで、このままなんとなく流れに乗ってやっていては、いつか足元にぽっかり穴があいてしまう。ここはいっぺん、まるごと自分をリフレッシュせなあかんと思い立ったのでした。そこで、まずは仕事を辞めたのです。なんのあてもないまま…。そして、募集記事を見てボリビアに行くことを決めました。先住民の人口比が多い国だというのもボリビアを選んだ理由の一つでした。
 ボリビアの首都ラパスは標高4千メートル超ですので、たちまち高山病にかかりました。どこかふわふわと漂っている感じがして、足どりも頼りない。そして、飛行機に乗る前に預けた荷物は出てきませんでした。やむことなくガンガン襲ってくる激しい痛みのため、時差ボケもあって、眠れません。辛いですよね、これって…。
 明るすぎる日差しには、現地の女性がかぶっているフェルトの山高帽は、この日差しをさえぎるのにぴったりということが分かりました。
 腹痛と吐き気がひどいとき、甘くておいしい葛湯(くずゆ)のようなものと、砂糖のたっぷり入ったコカ茶を飲むと、少しずつ楽になっていったのでした。
 最初に生活した家は裕福な家庭で、お手伝いの女性がいます。たとえば朝食は家族みな別々で、お手伝いのイルダが、それぞれの部屋に運びます。
 ボリビアでは、昼12時から午後3時まではレストランを除いてほとんどの会社、商店などが休み。みな自宅に戻って昼食をとる。ボリビアでは1日の食事のうち昼食が質・量ともにメイン。
 日本人の著者は「チノ」と呼ばれます。「チノ」は本来は中国人を指しますが、東アジアの人を広くさすコトバとしても使われているのです。
 お手伝いのイルダは家族と一緒に食事することは全然ない。家族のように仲良くしようという発想がない。はっきり違った二つの階層が、ひとつ屋根の下に存在して生活している。
 ボリビアでは、お客のもてなしは、ます一杯のコーラから始まる。
女性たちは、コカの葉を口に入れてもぐもぐさせている。コカの葉は女性たちの大好物。コカには寒さや空腹感、疲労感をマヒさせる作用がある。
 公立学校の教師の給料はひどく安く、ほとんどの人が副業をもっている。たとえばヤミ両替商をしている。
 ボリビアは1年中、祭りの絶えない国。そのなかで、一番盛り上がるのはカルナバル(カーニバル)。
 著者はボリビアに1年間いるあいだに体重が5キロも増えたとのこと。慣れない土地で健康に過ごすには、のんきさも大切だと著者は強調しています。まったく異論ありませんが、私にはとても出来そうもありません。
 著者はボリビアでいろんな人と知りあい、一緒に生活し行動するなかで、まさに「そのとき」を生きている実感があったとのこと。そのことがよくよく伝わってくる文章であり、何枚かの写真でした。
5年後にボリビアを再防したときのことも少し紹介されています。今を大切にして生きることの意義を感じさせてくれる本でもありました。著者は現在65歳のはずです。どこで何をしておられるのでしょうか…。
(1995年11月刊。1400円)

創造論者VS無神論者

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 岡本 亮輔 、 出版 講談社選書メチエ
 アメリカという国は、本当に不思議な国です。月世界を歩く飛行士がいるかと思うと、アメリカ人の40%は人間は1万年前に神によって創造されたと今でも真面目に信じているというのです。つまり、人間の先祖はサルではなくて(これは本当です)、初めから人間だったというのです。
 つまり、生物(生命)誕生から何億年、何万年もかかって進化していって人間が生まれたという進化論を信じていないわけです。
 これだけ多種多様な生命体が存在するのに、それをみな、万物の創造主は神、それも唯一神だとするのは、あまりに無理があると私は思うのですが…。
 アメリカには無神論者はわずか4%しかいない。
 「ある人が心の底から神を信じているのか、それとも神を信じるのは良いことだと信じているのか、両者の区別はそれほど明確ではない」
 この指摘には、まったく同感です。無神論者の私だって、「苦しいときの神頼み」はしていますし、ゲンをかついだり、お寺の仏像の前では深々と頭を下げて、お願いごとを心の中で唱えます。そのとき、何のこだわりもありません。
 スパモン教なるものが存在するというのには驚かされました。「空飛ぶスパゲッティ・モンスター教会」です。
 1952年にアメリカはテネシー州のデイトンという田舎町で起きたモンキー裁判の紹介には目を洗わされました。進化論を学校で教えた若い教師(スコープス)がバトラー法違反で裁判にかけられ、全米の耳目を集めた事件です。
 そもそも、この裁判は、衰退してしまった町(デイトン)の町おこしとして全米から注目してもらおうとして事件になったものだというのです。これには心底から驚かされました。全米の話題になって観光客や投資を呼びこもうと町の有力者たちが考えたというのです。いやはや、まったく呆れてしまいました。
 そして、裁判は案の定、全米の注目を集め、マスコミが乗り込んできて裁判は全米に実況中継されます。当初は進化論否定派が有利でしたが、進化論者の弁護士は聖書絶対派に質問して、局面が大転換します。
 つまり、聖書絶対論者はあまりに歴史的事実と違いすぎるので、身がもちません。
 聖書絶対論者によると、天地創造は紀元前4004年10月23日になる。多少の前後はあっても、だいたい、それくらい。ところが、それでは科学的に何万年も前のことだと証明されているのと、あまりに違う。
 また、「地球は6日で創造された」というのも、いくらなんでも…。
 アメリカの歴代の大統領は、就任式のとき、聖書に手を置いて宣誓する。また、折にふれて神の名を口にする。つまり、アメリカはキリスト教国家だということ。でも、イスラム教徒や仏教徒もいるんでしょ…、どうなってんのかしらん。
 それでも、今後は、無神論者より信者のほうが増加するとみられているのです。イスラム教徒はキリスト教徒と同じく世界人口の3割を占める(2050年)。そして、ヒンドゥー教徒は14億人になるだろう…。いやはや、日本は世界のなかで、きわめて特異な国なんですね…。改めて知って、驚きました。
(2023年9月刊。1800円+税)

奴隷制の歴史

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 ブレンダ・E・スティーヴンソン 、 出版 ちくま学芸文庫
 奴隷制は、私人や国家による奴隷たちへの残酷な搾取行為であると同時に、きわめて収益性の高いシステムである。
 奴隷制は過去のものではなく、今なお存在している。世界中で、2000~3000万人もの人々が債務奴隷、性奴隷あるいは強制労働者として、今も奴隷状態にあると考えられている。
 奴隷制の歴史は長く(古く)、世界中で広く活用されてきた。奴隷制はアメリカ合衆国史にとって本質的な経験である。
 古代ローマには数百万人の奴隷がいて、人口の15~35%を占めていた。奴隷は家財または財産であった。奴隷は財産を持つことも、結婚することも、自分たちの家族を持つこともできなかった。
 シルクロードでは、奴隷は一般的かつ重要な交換品目だった。
 奴隷は、アメリカにおいて、土地とは異なり、譲渡可能な財産であったため、経済単位としてとくに重要だった。
 アメリカ大陸で奴隷となったアフリカ人は、1250万人。ところが、アフリカ大陸では2800万人もの人々が奴隷として取引された。この差は何か・・・。運ばれる途中での死亡(病気や自殺など)した何百万人もの人々がいた。
 スペインはアメリカ大陸にアフリカ人を奴隷として送った最初の国。アメリカ大陸で最も高値で取引されたのは10代半ばから30歳までのアフリカ人男性だった。
 アメリカのヴァージニア州では、1750年に奴隷人口は全住民の半数近い46%を占めていた。
 アメリカの州政府は奴隷貿易から税収を得ていたし、新聞社も逃亡奴隷に関する報酬金の広告により収入を得ていた。
 奴隷を所有する人々は、奴隷の文化表現を抵抗の陰謀の隠れ蓑ではないかと、警戒した。奴隷たちは、独自の文化を生み出していた。
 奴隷主(主人)は、奴隷が貴重な財産なので、家族を崩壊させる「権利」をしばしば行使した。
ジョージ・ワシントン夫妻は200人以上の奴隷を所有していた。彼ら愛国者も、黒人は白人と根本に異なっていて、黒人は劣っていると疑うことなく確信していた。白人の大多数は、黒人は知力的にも肉体的にも道徳的にも白人より劣っていると信じ込んでいた。裁判官は「黒人は市民ではない」と公然と宣言した。
 18世紀末、アメリカはアフリカからの奴隷輸入を禁止した。しかし、現実には、その後も輸入は続いていた。1789年に発効したアメリカ憲法は、奴隷制の問題には直接言及していない。しかし、奴隷の黒人は完全な人間とはみなされていなかった。アメリカの北部でも、「自由」な黒人にとって、人種的平等を約束する天国ではなかった。
 南部に住む多くの白人女性は「私たちは、娼婦に囲まれて暮らしている」という不満を抱いていた。黒人女性は邪悪で人を操る誘惑者であり、その飽くなき性欲を私利私欲のために利用する女性、雇われた売春婦と断じていた。
 南部の白人男性は、奴隷労働の一部として性的行為を黒人女性に要求していた。主人である白人男性の要求を拒絶すると、激怒した主人たちは手ひどい復讐をした。
 なぜ、今日でも世界に2000万人以上もの奴隷が存在するのか?
自由とは何か・・・。自由とは不平等の暗黙裡の需要を打破することである。そして、抵抗は、奴隷制の遺産の一つでもある。この抵抗はまさに維持し、支えていく価値がある。
合衆国がイギリスから独立するとき、イギリス軍は自分たちと共に戦えば自由を約束するとしたことから、多くの黒人奴隷たちが、イギリス軍とともに愛国者たちと戦ったという歴史的事実がある。これには驚かされました。ワシントンが初めて奴隷に自由を与えたのではないのですね…。
 現代において奴隷は大幅に増加しているのが現実です。いったい、なぜ、そんなことになってしまったのでしょうか・・・。大変勉強になった文庫です。
(2023年8月刊。1400円+税)

風の少年ムーン

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 ワット・キー 、 出版 偕成社
 さすがにアメリカは広い国ですね。森の中に父と子がひっそりと隠れ棲むことができていたというところから話が始まります。少し似ているのが『ザリガニの鳴くところ』です。この話の展開には泣けて泣けて仕方がありませんでした。身近な女性に勧めたところ、翌日、本が戻ってきたので、あれっ、気に入らなかったのかな、そんなはずはないけど…と思うと、意外なことに、読みはじめたら、途中で止まらなくなって、ついに一晩で読了したというのです。これにはたまがりました。あれこれの人に貸していたら、現在、所在不明です。もう一冊、買おうかどうか思案中です(誰かに勧めるために…)。
 哲学者ソローの森の中で暮らす話にも心が惹かれますが、森の中で本当に何十年も暮らしたという実話にも驚きました。
さて、この本は、森の中、奥深く、父親が10歳の男の子と二人で生活しています(小説です)。母親は先に死亡しました。父親はベトナム戦争に参加した復員兵。政府に頼ったらいけないどころか、明らさまな反政府の思想をもっています。といっても、反政府活動をするというのではなく、森の中で、政府に頼ることなく生活するだけです。といっても、森の近くの雑貨商には、ときどき行って、銃の弾丸(たま)など、森の中での生活に必要なものは仕入れていきます。そのとき、森の中で獲った動物や、自分たちで育てている野菜を買い取ってもらい、その代金で、弾丸などを購入します。
 森で生き抜く知恵と術(すべ)を10歳の息子に伝えきったところで、父親は森で転倒、骨折し、傷が悪化して亡くなってしまいます。
 さあ、10歳の少年は森の中で一人で生きていかなければなりません。父親のすすめを真に受け、少年は遠いアラスカを目ざすことにします。でも、少年は警察官に見つかり、施設に収容されます。自由奔放に生きてきた少年には耐えられません。しかも、アラスカに向かう夢があるのです。収容者仲間(もちろん同じ少年です)と一緒に施設を逃げ出し、森に入り、生活しはじめます。少年を一度つかまえた警察官が追ってきます。どうやってそれをかわすか…。
 お盆休み、よくエアコンのきいた喫茶店で一心不乱に読みふけり、厚さを忘れ(外は炎暑ですが、店内は快適温度)、一気に読了しました。
 アメリカ・アラバマ州の森で狩猟や釣りをして幼少期を過ごしたという著者の体験が見事に生かされていて、ノンフィクション自伝かと思ったほどです。わが家の本棚に前から飾ってあって気になっていたので、お盆休みに挑戦してみたのです。時を忘れるとは、このことでした。
(2010年11月刊。1800円+税)

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