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カテゴリー: アメリカ

これからの「正義」の話をしよう

カテゴリー:アメリカ

著者:マイケル・サンデル、出版社:早川書房
 アメリカという国は、実にふところの奥深い国だと思わせる本です。天下のハーバード大学で史上最多の学生を集めている講義が再現された内容の本です。私はみていませんが、NHK教育テレビで連続放映され、日本でも話題になっているそうです。
 ことは、きわめて重大な「正義」を扱っています。とっつき易いのですが、その答えとなると、とても難しく、つい、うーんと腕を組んで、うなってしまいました。
 たとえば、こうです。アメリカの大企業のCEOは、平均的な労働者の344倍の報酬を手にした。1980年には、その差は42倍だった。この格差は許されるのか?
 アメリカの経営者は、ヨーロッパの同業者の2倍、日本の9倍の価値があるのだろうか?
 いま、日本の経営者(日本経団連)は、その格差を小さくしようとしています。アメリカ並みに労働者と格差を何十倍ではなく、何百倍にしようと考えています。その具体的なあらわれが、消費税10%引き上げであり、法人税率の引き下げ(40%を20%へ、半減)です。ますます格差をひどくしようなんて、とんでもありませんよね。
 アメリカの金持ち上位1%が国中の富の3分の1以上を保有し、その額は下位90%の世帯の資産を合計した額より多い。アメリカの上位10%の世帯が全所得の42%を手にし、全資産の71%を保有している。アメリカの経済的不平等は、ほかの民主主義国よりも、かなり大きい。アメリカン・ドリームなんて、夢のまた夢、幻想でしかありません。
 アメリカは、現在、徴兵制ではなく、志願制である。イラクのような戦地に勤務する新兵の出身は、低所得から中所得者層の多い地域がほとんどである。貧乏人は兵隊になって戦地へ行き、死んでこいというわけです。
 アメリカ社会でもっとも恵まれている層の若者は兵役に就くことを選ばない。
 プリンストン大学の卒業生は、1956年には750人のうち過半数の450人が兵役に就いた。しかし、2006年には卒業生1108人のうち、軍に入ったのは、わずか9人だった。ほかのエリート大学も同じ。連邦議会の議員のうち、息子や娘が軍隊にいるのは、わずか2%のみ。
 2004年、ニューヨーク州の志願兵の70%が黒人かヒスパニックで、低所得者層の多い地域の出身だった。最高4万ドルという入隊一時金や教育を受けられるときの特典は、きわめて魅力が大きい。
 いくつもある考えるべき課題を明らかにしてくれる、実に哲学的な本です。
(2010年6月刊。2300円+税)

古代アンデス、神殿から始まる文明

カテゴリー:アメリカ

 著者 大貫 良夫・加藤 春建 、朝日新聞出版 
 
  古代アンデス文明の発掘調査を日本の学術調査団が50年も続けているというのです。すごいものですね。そして、地道な発掘調査のなかで金製品の副葬品を発見するなどの成果をあげています。ただ、その発掘・発見した遺跡・遺品の維持・保存には大変な苦労があるようです。現地の人々の生活との調和を図るというのは、口で言うほど易しいことではないのでしょうね・・・・。
 この本で驚いたのは、権力者が確立してから神殿がつくられたのではないという説が提唱されていることです。ちょっと逆ではないのかしらん、と思ったことでした。
 カラー写真つきで紹介されていますので、雄大な規模の遺跡であることがよく分かりす。
アンデス古代文明といっても、本当に古いのです。前2500年から前1600年前のコトシュ遺跡、前1000年から前500年のワカロマ遺跡、前800年前から前550年のクントゥル・ワシ遺跡、前1200年から前700年のパコパンパ遺跡などが紹介されています。
ちなみに、有名なナスカの地上絵は紀元前後から6世紀にかけてのものですから、かなり時代は下ります。
日本の学術調査団は、土器よりむしろ神殿に注目した。土器以上に社会発展においては神殿の役割が重要であると考えた。神殿の建設や更新、そこで執り行われる祭祀を通じて社会が動き、農耕などの生業面を逆に刺激していったと確信した。
 太陽の神殿ワカ・デル・ソルは、長さ342メートル、幅159メートル、高さ40メートル。この建造に1億4300万個の日干しレンガが用いられた。レンガに印がついている。それは、製造した村をあらわすもので、支配地域にレンガが納入を強要した証拠と考えられる。  古代アンデス文明の豊かさを知ることは、人類はかつて野蛮でしかなかったという俗説を打ち破ることにつながります。知的世界をぐーんと広げる本でした。 
(2010年2月刊。1400円+税)

アマゾン文明の研究

カテゴリー:アメリカ

 著者 実松 克義、現代書館 出版 
 南アフリカのアマゾンに実は高度な文明社会があったという驚くべきレポートです。2段組350ページの大部な本ですが、信じられないような事実が満載でした。
 アマゾンには世界最大の熱帯雨林がある。アマゾンは世界最大の河川である。そこに存在する水量を世界中の淡水の20%に達する。川が作り出す流域面積はアメリカ合衆国に匹敵する。
 アマゾン川の特徴の一つは、水源の多さである。無数といってようほど、多くの水源があるので、最奥の源流を特定するのは困難である。
 アマゾン川の河口は350キロを越える。河口に九州ほどの島、マラジョ島が存在する。世界中の生命種の3分の1以上がアマゾン熱帯雨林にいると言われるほど、生命種の多様性が存在する。
 このまま行けば、アマゾンの熱帯雨林は数十年のうちに消失すると予想される。この破壊は肉牛のための牧草地の確保と大豆などの農業地の確保による。
このアマゾンは、人間とは無縁の未開の処女地と思われてきた。しかし、最近になって、実は、この地域にかつて大規模な人間の営みがあったことが分かりつつある。アマゾンの各地で古代人が建設した大規模な居住地、道路網、運河網、堤防システム、農耕地あるいは養魚場が発見されている。
アマゾン上流には、紀元前2000年ころからモホス文明が存在した。ただし、規模が大きくなるのはキリスト誕生ころから500年までのこと。
 その過酷な自然環境を人間が居住しやすいように造りかえるという大土木工事を実施した。運河網をつくり、農業システム、魚の養殖システムを構築した。そのためにはリーダーを頂点とする強力な政治組織、統治形態が存在した。ここには、大量の土器類が存在した。アマゾン各地に非常に大規模な古代文明が存在した。これらの社会は規模の大きさからして、巨大な人口を擁していたと考えられる。
 当時のアマゾンの人口密度は非常に高かった可能性がある。各地で大規模な居住地が建設され、また食料生産のための農業技術、あるいは農耕地の開発が行われた。
 その結果、現在550万平方キロもある熱帯雨林の大半は開墾された農耕地であった可能性がある。しかし、アマゾン全域を統一するような超国家的社会は存在しなかったと考えられる。
 アマゾン地域には、コロンブス到来時には1000万人もの人口があったと言われるが、実はこれは控え目ではないか・・・・。
 うへーっ、し、しんじられませんよね。こんなことって、本当なんでしょうか・・・・。
 まあ、事実は小説より奇なり、と言いますからね、どうなんでしょう。
(2010年3月刊。3800円+税)

ヤノマミ

カテゴリー:アメリカ

 著者 国分 拓、 NHK 出版 
 
 アマゾン奥地で1万年来の生活習慣を守って住み続けるヤノマミの人々と150日間にも及ぶ同居生活を過ごした日本人による、驚きのルポルタージュです。まずもって、その勇気に敬服します。そして、大病もせず、なんとか無事に帰国できたことにさらに敬意を表します。ヤノマミとは、彼らの言葉で「人間」を意味する。ヤノマミは、「文明」による厄災から免れている奇跡的な部族である。
 アマゾンの奥深く、ブラジルとベネズエラにまたがる広大な森に生きる先住民であり、推定3万人ほどが200以上の集落に分散して生活している。
 ヤノマミはシャボノというドーナッツ型の巨大な家に住む。家の直径は60メートル、中央部分は空地になっている。家族ごとの囲炉裏があり、柱にハンモックが吊られている。囲炉裏と囲炉裏の間に間仕切りはない。だから、食べているときも、寝ているときも、そして性行為の最中でさえ、他人から丸見えとなる。シャボノには「プライバシー」がまったくない。うひょお、こんなところに日本人が入り込んで3ヶ月間も生活していたんですか・・・・。もちろん、初めのうちは現地のコトバもまったく通じません。そんななかで、よくぞ生きのびたものです。
祝祭のための狩りを除いて、腹が空かない限り、狩りにはいかない。好きなときに眠り、腹が減ったり狩りに行く。起きて、食べて、出して、食糧がなければ森に入り、十分に足りていれば眠り続ける。「富」を貯めこまず、誇りもしない。
 女たちは集団で畑仕事をする。そのときには、いつも笑い声が絶えない。ヤノマミの人々は性に大らかだ。いわゆる「不倫」は日常茶飯事で、身体だけの関係や遊びにしか思えない性交渉も多い。
 ヤノマミの話は、反覆が非常に多い。文字を持たないヤノマミにとって、必要な情報は言葉で伝えるしかない。だから大切なことは、すべて記憶しなければいけない。それで、情報は何度も何度も繰り返して伝えられる。
 ヤノマミの男は、1歳にならないうちから玩具の弓矢を親からもたされ、使い方を身に着ける。10歳になったら親や兄弟の狩りについていって、狩りの仕方を覚えていく。
 ヤノマミの社会では、一人で獲物をとれないうちは男として認められない。
 ヤノマミは、動物の胎児を決して食べない。そのまま森に置かれ、土に還される。
 ヤノマミのしきたりでは、死者に縁のあるものは、死者とともに燃やさなければならない。そして、死者にまつわるすべてを燃やしたのち、死者に関するすべてを忘れる。名前も、顔も、そんな人間がいたことも忘れる。ヤノマミは、死者の名前を決して口にしない。
 死者の名前を口にしないのは、思い出すと泣いてしまうからだ。その人がいなくなった淋しさに胸が壊れてしまうからだ。ヤノマミは言葉にせず、心の奥底で想い、悲しみに暮れ、涙を流す。死者の名前を忘れても、ヤノマミは泣くことを忘れない。年に一度、死者を掘り起こして、その骨をバナナと一緒に煮込んで食べる祭りがある。死者の祭りと呼ばれている。だから、ヤノマミには墓がない。遺骸は焼いて、埋めて、掘り起こして食べてしまう。ヤノマミにとって死とは、いたずらに悲しみ、悼み、神格化し、儀式化するものではない。われわれには見えない大きな空間の中で、生とともに、ただそこに有るものなのだ。
ヤノマミの長老にも、長老会議にも、国家権力や法律のような、暴力や報復装置をともなう強制力はない。ここでは、残ることも出ることも、結局のところ、個人の自由である。
 妻の不倫が発覚したとき、三つのルールがある。一つは、制裁を受けるとき、間男は抵抗してはならない。二つは、間男を殺してはならない。三つは、妻は制裁を受けない、ということ。すごいルールですよね、これって・・・・。
 ヤノマミの男にとって理想の女とは、身体つきが豊満で、よく働き、よく笑う女である。そして、ヤノマミの女は、おしなべて気が強い。
 ヤノマミの女は必ず森で出産する。あるときは一人で、あるときには大勢で、しかし必ず森で出産する。ヤノマミにとって、生まれたばかりの子どもは人間ではなく、精霊なのである。ヤノマミの子どもは、4歳から5歳になるまで、名前がない。
 ここには、「年子」はいない。なぜか?精霊か人間か、ここでは母親が決める。どんな結論が下されても、周りはそれを理由も聞かずに受け入れる。そして人間として迎え入れた子どもを両親は生涯をかけて育てる。男も、何も言わず狩りの回数を増やす。ヤノマミの男は、出産には一切関わらない。関心をもたず、立会いもしない。人間の血を大量に見ると、男がもっとも大切にしている勇気が失われると思っている。
 2007年11月から、2008年9月まで、3回にわけて、合計150日間もヤノマミの人々のなかで生活した体験記です。すごい本だと感嘆してしまいました。人間とは何かを考えさせてくれる本です。それにしてもヤノマミに不倫が多いなんて、現代日本とよく似ているので、つい笑ってしまいました。
(2010年3月刊。1700円+税)

アメリカから「自由」が消える

カテゴリー:アメリカ

著者:堤 未果、出版社:扶桑社新書
 私は久しくアメリカに行っていませんが、この本を読むと、ますますアメリカに行く気が薄れてしまいます。
 だって、空港で「ミリ波レントゲンによる全身スキャナー」(ミリ波スキャナー)で全身画像をとられてしまうのですよ。素っ裸にされるようなものです。
 この「ミリ波スキャナー」は、現在アメリカ国内19の空港に40台も設置されている。アメリカ政府は、「ミリ波スキャナー」150台を2500万ドル(25億円)で購入し、2010年初め、さらに300台を追加注文した。値段は1台につき15万ドル(1500万円)。
 このミリ波スキャナーに乳ガン手術で左胸に埋め込んだシリコンが引っかかった。人工肛門の人が引っかかり、その場で下着をまくって職員に見せなければいけなかった。
 このようにして身体内に埋め込んだインプラントの存在を空港でさらけ出さなくてはいけなくなる。
 さらに、私なんかが載っているとは思っていませんが、空港で警備・搭乗拒否リストが際限なく増えているというのです。
 搭乗拒否人物4万千人、搭乗の前に追加でセキュリティ・チェックを要する人物7万5千人。9.11前にリストにあったのは、わずか16人だったのが、今や11万9千人に増えている。そのなかには、緑の党のメンバーやキリスト教系平和活動家、市民派弁護士もふくまれている。
 さらに、アメリカ政府は、人々の頭の中を読みとれる装置を企業に開発させているという。たとえば、テロ関連画像を見せられ、反応する瞳孔の開き方や心拍数の変化、体温の上昇などを、最新式の「読心センサー」に読みとらせる。また、対象者の掌を通して、「敵対的な思想」を感知する技術が開発されていて、既に空港で試験中である。うへーっ、や、やめてくださいな。それはないでしょう・・・。
 今や、この警備業界は大変な成長産業になっている。2003年の時点で登録した企業は569社。利益は15兆円をこえた。それからさらに増えて、2010年には1800億ドル(18兆円)という大規模な巨大市場に成長している。
 うへーぇ、テロ対策がアメリカでは、早速にも、お金もうけの舞台になっているのですね。いやですよ、そんなこと・・・。
 9.11以降、ニューヨーク市内にある監視カメラは激増し、地下鉄だけで2000台、市営住宅には33000台をこえる監視カメラが設置されている。ニューヨーク警察が2008年に導入したヘリコプターは、3キロの上空から人の顔が識別できるハイテク仕様だ。
 日本がアメリカのようになってはいけないことを改めて痛感させらる本です。読みたい本ではありませんが、知っておかなければいけない現実です。
(2010年4月刊。700円+税)

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