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カテゴリー: アメリカ

アメリカ連邦最高裁の素顔

カテゴリー:アメリカ

著者  ジェフリー・トゥービン 、 出版  河出書房新社
アメリカという国は、実に遅れた国だと思います。
 妊娠した女性に中絶する権利を認めるかどうかがアメリカという国では今なお重大な政治的争点だというのです。信じられません。宗教的観点があまりにも強すぎます。
妊娠中絶を支持するかしないかという問題は、民主党と共和党の分水嶺となってきた。
 祈禱と聖書朗読は、アメリカの公教育における柱として代々行われてきた。ところが、アメリカ連邦最高裁は公立学校での聖書朗読を義務づけることを禁止した。
 当然のことですよね。キリスト教を公立学校で教えるなんて、とんでもありません。
 スーター判事という変わった判事がいます。昼食は毎日おなじ、りんご丸ごと1個(芯と種まで)にヨーグルト1カップ。ものを書くときは万年筆をつかう。自宅にテレビはない。
 最高裁のロークラークは、ほとんど20代後半で、著名なロースクールを主席で卒業したあと、下位裁判所の判事の下で1年クラークとして働いていた。クラークを定期的に最高裁に送り込む判事をクラーク供給係と呼ぶ。クラークは、裁量上訴の申立を精密に調べ、8000件ほどの事件を選りすぐって審理の価値のある80件前後にしぼる手伝いをする。判事と事件を議論し、口頭弁論の準備をする。そして、判決理由となる意見書の最初の草案を書く。
 アファーマティブ・アクションの恩恵者としてアメリカで一番有名なトーマス(黒人判事)は、その措置を公然と批判する激しい意見を書いた。
 このように世の中は矛盾に満ちています。アメリカの連邦最高裁の矛盾した激しい対立が描かれています。同じように日本の最高裁の内情も誰か紹介してほしいものです。
(2013年6月刊。3200円+税)

マッキンゼー

カテゴリー:アメリカ

著者  ダフ・マクドナルド 、 出版  ダイヤモンド社
マッキンゼーとか大前研一と聞くと、私には「金の亡者」というマイナス・イメージしかありません。世の中、すべて、お金。カネ、かね、金。お金がすべてを決める。いやですね、そんな世の中って・・・。
マッキンゼーには、オフィスや役員室を占領している、成功を収めた同窓生(アラムナイ)立ちのネットワークが世界中の隅々まである。
 マッキンゼーで年配のコンサルタントは、めったに見かけない。この組織は経験より若さを好む。
マッキンゼーは、価値があるのか疑わしい仕事に対して莫大な手数料をとっている。現実には、単に重役の仕事をしているだけ。
過酷なコストカットのために正当な言い訳を求めている経営者たちにとって、マッキンゼーは頼りになるコンサルタントであるばかりでなく、責任を負わせられる都合のいいスケープゴートである。
 問題は、マッキンゼーの高価な費用は、果たして、本当に見合っているのか。それは難問だ。
コンサルタントは見かけがあってこそ成り立つもの。コンサルティングとは、学位の証書からは分からない能力を、服装やマナー、言葉づかいという外見によって伝えるもの。
 マッキンゼーは、自分たちは企業の最高責任者のためだけに働くのであって、下役たちには用がない。要するに、マッキンゼーは、あくまでも経営者のために働くもので、労働者のためにはならないのですね。この本を読んで私が理解したことは、これでした。よく分かりました。だから、費用も超高額なのですね。
 マッキンゼーは、人材開発をうまくやっている。わずかな金額で若くて未経験な人材を雇いそれからクライアントの費用で教育させる。
ハーバード大学の卒業生にとっても、マッキンゼーへの就職が一生の仕事になることはめったにない。
 多くのコンサルタントは、1年に最大で2000時間分の報酬請求ができる。
 マッキンゼーを雇ったクライアントが、彼らにはその価値がなかったと明言することは、ほぼない。
 これという「商品」のないマッキンゼーにとっては、関係がすべてだ。
 賢明なクライアントは、マッキンゼーを使う最善の方法は入り込ませないことだ。
 マッキンゼーは、自信がすべてだ。成功の秘訣は、成功しているようにふるまうこと。
 マッキンゼーが成功したもう一つの理由は、世界中の経済界に同窓生と友人を送り込んだことにある。
 マッキンゼーは、あの最悪の悪徳企業エンロンからなんと年間100万ドルももらっていたのに、無傷で生きのびたのでした。マッキンゼーは、エンロンで稼いだだけでなく、エンロンを崇拝の対象に押しあげて、その福音を伝えて、「石油企業家」を称賛した。マッキンゼーは、不正な手段で成長していたエンロンを事実上誇大宣伝した。
 ところが、マッキンゼーは、刑事でも、民事でも、被告人になることはなく、議会公聴会に社員が証言を求められることもなかった。これには、業界関係者の多くが憤慨した。
マッキンゼーって、大企業と経営者のためのコンサルタント会社と経営者のためのコンサルタント会社だということがよく分かる本でした。
 コストカットって、要するに、冷酷な人減らしですよね。でも、それだけで企業が発展するとは、とても思えません。
(2013年11月刊。2400円+税)

ライス回顧録

カテゴリー:アメリカ

著者  コンドリーザ・ライス 、 出版  集英社
ブッシュ大統領の下で国務長官をつとめた著者が、その激動の日々を振り返っています。上下2段組で670頁もある大作です。世界のあらゆる動きを視野に入れた政策決定と行動ですから、それを追うだけでも目がまわってしまいます。まさしく超人的な仕事ぶりです。
 51歳にして黒人女性初の国務長官に就任したというのですから、よほど頭が切れる女性なのでしょう。顔写真をみると、怜悧そのものです。ちょっと怖い印象です。
 少しの間でも寝て、体を動かすエクササイズを欠かさないなど、体調管理も十分に気をつけていたことが分かります。
 それにしても、アメリカのホワイトハウスから見た日本の存在感のなさはどうでしょうか。驚くべきものがあります。国務長官として日本を注視していたなんて、とても感じられません。
 日本を見るときには、日中、日韓などで、あまり問題をおこしてくれるなという程度なのです。670頁もあるこの本のなかに、日本についての記述はほとんどありません。わずかに出てくるところを紹介します。
 アジアには多国間の外交組織はない。二国間の関係があっても、大半はこじれている。日本と韓国、韓国と中国、日本とロシア、日本と中国、どの関係も第二次世界大戦のまだ癒えない傷を負っている。
アメリカは、韓国そして日本との安全保障上の同盟関係を大幅に刷新した。
 日本人は控え目だ。感情を見せずに、形式のなかに本音を隠して、なかなか奥が見透かせない。日本は近隣地域において、中国からだけでなく、アメリカの同盟国である韓国からも信頼されていない。日本のポーズは多少は役に立つだろうが、大きな効果は期待できない。
アメリカは、軍事的にも経済的にも太平洋の一大パワーとなった。
 韓国、日本、オーストラリアといった友好的な民主国があり、この変貌いちじるしい地域において、アメリカは足場を維持するだけの十分な力をもっている。そのなかで弱点になってきたのが日本だった。大幅に遅れ、強く求められていた省庁と経済の改革に着手することを小泉首相は決断した。しかし、小泉の退任後、日本は再び合意政治に逆戻りした。とても国を前進させることができるとは思えないような、誰とでも取り替え可能な首相が何人も続いた。日本を訪問するのがどんどんユーウツになってきた。
 日本は、停滞し老化しているだけでなく、周辺諸国からの増悪で呪縛されているように思えた。個人的にも、日本人との相性は良いとは言えなかった。
 日本は、拉致問題についてのアメリカの援助が得られなくなると困るというだけの理由で、北朝鮮についての六カ国協議の失敗を望んでいるのではないかと感じることが多かった。
 変動するアジアにおけるパートナーとして、アメリカは自身ある日本を必要としていた。だが、2006年の小泉純一郎の首相退任とともに、そうした日々は消え去ってしまったようだ。
 アメリカの同盟国で成熟した民主主義国家である韓国がアメリカの長年の友人である日本に深い疑念を抱き続けていることには、どう対処すればよいのだろう?
 日本にも詳しい国務省のメンバーは、「菊紋の工作員」という蔑称で呼ばれることが多かった。
ここにはジャパン・ロビーとも呼ばれるアーミテージやナイという人々はまったく登場してきませんが彼らがホワイトハウスに全然影響力を持っていないことが、ここにも反映されていると受けとりました。
 著者が、チェイニー副大統領と、それに連なる「ネオコン」一派と厳しく争っていたと解説のなかで指摘されています。
チェイニー副大統領の率いる「ネオコン」一派と、パウエル・ライスの「隠健」派と、パウエル・ライスの「隠健」派とが抜きがたく内部で対立していた。
 そして、ライス国務長官は、日本の保守政権をこき下ろした。太平洋を挟んで、日本とアメリカの相互不信は増殖していった。
いまの安倍政権のやっていることは、大局的に見ると、アメリカの手のうちではあるけれど、実はアメリカ一辺倒でも必ずしもなく、アメリカからすると容認できない部分も多々ふくまれているように思われます。安倍政権の特異性という危険性は、そこにもある気がします。
よみ通すのに骨の折れる本ですが、読みはじめると、なかなか面白いことが書かれています。アメリカの視点からみた国際政治がよく分かります。ただし、キューバ制裁をいまだに合理化・正当化しているところなんて、いかにも時代錯誤としか思えませんでしたが・・・。
(2013年7月刊。4000円+税)

トップシークレット・アメリカ

カテゴリー:アメリカ

著者  ディナ・プリースト、ウィリアム・アーギン 、 出版  草思社
 自公政権の強行採決によって特定秘密保護法が成立してしまいましたが、国による秘密指定が恣意的に運用されているのはアメリカでも同じことです。この本は、その点を明らかにしています。
オバマ政権は内部告発者やジャーナリストによる情報リークに対する調査をブッシュ政権より強化した。「トップシークレット・アメリカ」の膨張は、オバマ政権になっても続いた。インテリジェンス関係と特高作戦関係の四つの組織が正式に発足し、さらに39の新しい、または衣替えした対テロ組織が発足した。2010年になって、オバマ政権は24の新しい組織と、12の新しいタスクフォースと軍部隊を設立した。
 CIAは、アメリカ政府のほかの機関(軍もふくむ)が行うことが許されないことを海外で行うことを目的として、アメリカ議会が立法によって設立した機関である。
 CIAの極秘プログラム「グレイストーン」は、テロ容疑者の拘束・尋問・返送などのプログラムや、容疑者を外国に運ぶ輸送機の用意から、それらの国の秘密収容所の運営に至る兵站プログラムもその一部とする。
 FBIの対テロ部門は、9.11のあと前の3倍に膨れあがり、捜査官はテロリストやスパイの捜査に駆り出され、以前よりはるかにたくさんの人々を監視しなければならなくなった。FBIは国内の対テロ防諜機関としての任務を受けもつようになっていた。
 全米の対テロ機関は、オバマが大統領になる何年も前に既に巨大になり、その一方で、他の教育、低所得者層のための医療、市町村村のいたんだインフラの修理などに必要な予算は大幅に削られた。だが、アメリカ国民は相変わらず、「テロを防止するためなら、いくらでもカネを使う」と高言する政治家を繰り返し選挙で選び、巨大な対テロ機構は膨脹し続けた。政府を公表するインテリジェンス関係の予算は年間810億ドルという巨大なものになっている。
2011年に制定された「愛国法」は犯罪捜査と防諜捜査のあいだにあった垣根をとり払ってしまった。愛国法は、FBIが多くの情報提供者を使い、市民会話を盗聴し、多くのグループ内に内通者を浸透させ、市民のEメールや携帯メールを読み、アメリカ市民をスパイして個人情報を集めることを再び可能にした。
 何かの容疑をかけられているかいないかに関わらず、本人の知らないうちに個人情報を集めることが可能になっている。
現在、アメリカでトップシークレットを扱う資格を持つ人は85万4000人もいる。そのうち26万5000人は民間企業の社員である。
 対テロビジネスが繁栄している。その一つ、ジェネラル・ダイナミック社は、2000年に104億人だった売上高が2009年には319億ドルになった。従業員も4万3千人から9万2千人へ倍増した。民間企業に請け負わせたほうが効率も良く安上がりに成るだろうという見込みは、大きな間違いだったことが判明した。
国防総省は、もはや戦争のための組織ではない。ビジネス企業だ。アフガニスタンはそのいい例だ。これまでに、ここでどれほどの金儲けが行われたことか。対テロビジネスは、ずば抜けて安定した利潤の高い環境なので、ひとたび中に入った者はまず、そこから出ようとしない。
 対テロ産業はガンの治療に似ている。ガンの治療は、ガンで死ぬ人より多くの人たちの生活を支えている産業なのだ。
CIAの無人機の操縦者はアメリカ本土のネバダ州などにいる。
9.11テロのあとの10年間に、アメリカの所有する無人機は60機から6000機に増えた。無人機の予算は、2001年には3億5000万ドルだったが、10年後の2011年には41億ドルで、20種類以上のタイプのものがある。
 CIAは、2008年から2011年までの3年間に、パキスタン国内で220回の無人攻撃を行い、1400人を殺害した。無人機攻撃が増えている理由の一つが、生きたまま拘束しても収容する場所がないことにある。CIAは秘密収容所を閉鎖してしまった。
無人機による殺害は、パキスタン政府の了解をとりつけているものの、パキスタンの人々を怒らせ、アメリカへの支持を減らしている。
統合特殊作戦軍は、陸海空軍のさまざまな部隊によって構成されている。その中核は、陸軍のデルタフォース、海軍シールズのチーム6、など。彼らは、殺害リストに入れる対象を自分たちで選び、殺害を実行する権限を与えられている。9.11までは実際に出動する機会はほとんどなかった。オバマは大統領に就任すると、すぐに統合特殊作戦軍に接近した。
 この本を読むと、秘密をいくら増やしても世界の変化には追いつかないし、その秘密はいずれ漏れてしまうことがよく分かります。日本の特定秘密保護法は天下の悪法ですが、結局のところ、安倍政権の恥部を隠すためのものでしかないでしょう・・・。法が施行される前に撤廃(廃止)させたいものです。
(2013年10月刊。2600円+税)

繁栄からこぼれ落ちたもうひとつのアメリカ

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著者  デール・マハリッジ 、 出版  ダイヤモンド社
アメリカ労働省によると、最近、創出された仕事の8割が低報酬の仕事だ。5割は年収2万2000ドル以下(220万円以下)、3割は2万2000ドルから3万1000ドルだ。
 ウォール街の大手投資銀行のトレーダーのボーナス平均額は34万ドル。シニア・トレーダーの平均年酬額は93万ドル。ヘッジファンド社の社長は40億ドルの報酬をもらった。支払った連邦税は15%。これは中間所得層の税率の半分でしかない。 富める者は税は低く、貧しい者は税は高い。
 レバレッジド・バイアウトで会社が買収され、金融機関は大もうけする。会社は負債を抱え、競争に耐えきれなくなる。金融機関の社員は高級別荘地ハンプトンズで贅を尽くし、カリブ海で豪華なヨット遊びに興じる。何千人もの労働者の人生を台無しにして手に入れたカネを使って・・・。
 ゴールドマン・サックスは社員から武器携帯許可の申し込みが増えている。人々の怒りを恐れているのだ。
 アメリカ人、9160万人は国の定める貧困レベル(4人家族で年収2万1834ドル)を200%も下回っている。
 貧困がもっとも速いスピードで増え続けているのは、郊外だ。2000年から2008年のあいだ、貧困層に落ちた人は250万人いる。2010年の納税申告日、アメリカ人の47%は課税対象にすらなっていなかった。
 ティーパーティーと極右派が反対したのは、国民健康保険や産業規制など、リチャード・ニクソンでさえ強く支持したような、労働者や国民を守る中庸的な政策だ。
 USスチールの製鉄所が閉鎖されると、その町は、あまりにも失業率が高いせいで、町は暴力にむしばまれ、緊張感に包まれた。殺人と放火の件数は最高記録を更新した。地元の景気が悪化するなかで、放火事件が相次いだ。火事は夜に起きる。子どもたちは火事を怖がり、親の寝室の床に寝る。
強者に甘く、弱者に冷たい、これが格差社会アメリカの現実。
 著者は、なんと1980年から30年にわたってアメリカ各地を体当たり取材して、この本を作ったのです。紹介されているアメリカの寒々とした光景は背筋を凍らせます。そして、この著者は、先に紹介しました『日本兵を殺した父』(原書房)の著者でもあります。
 今なおアメリカを無条件に賛美する日本人が少なくないなかで、日本がこんなアメリカのようになってはいけないと実感させてくれる本です。
(2013年9月刊。 2400円+税)

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