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カテゴリー: アメリカ

イラク戦争は民主主義をもたらしたのか

カテゴリー:アメリカ

著者  トビー・ドッジ 、 出版  みすず書房
 アメリカのイラク侵略戦争は、まったくの間違いでした。サダム・フセインの圧制は、たしかにひどかったと思います。かといって、アメリカがイラクに侵攻して戦争を仕掛けてよいはずがありません。まさに、アメリカ帝国主義です。
侵攻の口実となった「大量破壊兵器」(核兵器も生物化学兵器も)なる物は、影も形もありませんでした。そして、イラクを支配してからも間違い続きでした。アメリカ軍が撤退したのも、イラク国民に追い出されたというのが実態でしょう。
 そして、何より、アメリカ軍の支配下で内戦が始まり、今や完全に内戦状態です。アメリカのオバマ大統領は無人機などで実態を収拾しようと必死ですが、しょせん武力に頼ってうまくいくはずがありません。
 まわりくどいようですが、武力に頼らない方法で取り組むしかないのです。アメリカの愚かさに日本の支配層が引きずられているのが、日本人の一人として本当に心配です。
イラクの人口は3200万人。隣に7200万人のイランがある。イラクには世界第3位の石油埋蔵量があり、1日800万バレルの石油が生産可能。石油輸出国として世界第二位。
 1990~1991年の湾岸戦争時代に、殺人を禁じる慣習が大きく変わった。国家による暴力の独占状態が揺らいだ後、犯罪行為が横行し、個人の利益に奉仕することを目的とした私的暴行の行使が広がった。
 あらゆるものが武力に従属されるなかで、自己表現と抗議の一形式として暴力を行使するという思考のしみついた世代が3世代にわたって育った。彼らは、いかなる法にも、社会規範にも縛られない。
 1990年代のイラクに対する国際的な経済制裁は、高等教育を受けた中産階級、イラクの近代性と進歩の案内役だった中産階級を縮小させた。そして、暴力の文化を助長した。
 イラク社会は戦争と国連の制裁によって高度に軍事化された。1989年、イラクの常備軍は兵力100万、火器420万という規模になった。軍事化が進んで、民間人も鉄砲をもち、320万の鉄砲が普通の人々の手に渡った。
 2003年、アメリカ軍の前にイラク軍があっけなく崩れ去ると、治安維持機関の管理していた420万の鉄砲が社会の隅々にまで出回った。犯罪の世界だけでなく政治においても、過度の暴力が横行するようになった。
 2003年5月、文民行政官ブレーマーがイラク国軍の解体を決定したことにより、訓練を受けた40万人もの元国軍兵が武装した状態で街頭に放り出され、失業の憂き目にあった。
 戦争と制裁、占領軍の無能力、それによって生じた略奪の波。それらが重なりあって、イラクは2003年、崩壊国家と化した。国家が突如として機能を停止し、全土に安全保障の真空が生じた。乱れに乗じて略奪をはたらく者がはびこり、暴動に関与する勢力が拡大し、ついにイラクは全面的な内戦的な内戦状態に陥った。
2005年以降、イラク内務省の傘下にある特別警察突撃隊(国家警察)は、暗殺集団と化した。
 2007年、アメリカのイラク政策は大きな転換点を迎えた。しかし、政策は軍事作戦が中心で、他の分野は、すべて隅に追いやられた。
 2006年6月、アルカイダの指導者ザルカーウィーがアメリカ軍によって殺害されたあと、組織は求心力を失った。組織幹部に対するアメリカ軍の攻撃の精度が高まるにつれ、若くして経験の乏しい、より暴力的な分子が上層部を占めるようになった。
 身元の割れた民兵組織幹部のケータイを押せば、人物相関図を埋めていくことができる。こうして得た「高価値目標」の殺害をアメリカ軍の特殊部隊が担った。
 2012年3月までに、アメリカ軍とイラク政府がイラク国家の再建のために投じた金額2000億ドルは、さまざまな機関を通じて投下された。しかし、アメリカは復興計画の調整に失敗しただけではない。一貫性のある基本計画が作られたことは一度としてなかった。そして、復興活動がうまくいかなかったのは、治安状況が悪化したことにもよる。
 さらに、各省大臣が自分の出身政党の職員を自由に採用することにより、公務員の水準が低下し、人員が大きく膨れあがった。2005年に120万人だった公務員が2008年には230万人になった。汚職の蔓延が行政機関を脆弱にしている。政治家は、ほとんど監視を受けることなく公金を使い、極秘で働いている。その結果、公共下水道を利用できるイラク国民は26%。安全な飲用水を使えるのは、人口の25%、760万人にすぎない。
 いま、イラクで内戦が起きているわけですが、これは、アメリカ軍の無謀なイラク侵略戦争がもたらしたものだったのです。民主主義を守るためと称して、イラクから平和と民主主義を奪い去ったわけです。アメリカの戦争責任はまことに重大です。日本は、ここから教訓を引き出すべきです。武力によっては、ほんの一時の「平和」しかありえないということを・・・。
(2014年7月刊。3600円+税)

高齢者が働くということ

カテゴリー:アメリカ

著者  ケイトリン・リンチ 、 出版  ダイヤモンド社
 アメリカはマサチューセッツ州のボストン郊外に針を製造する小さな会社がある。従業員40人は全員パートタイム。その従業員の2人に1人が74歳以上。従業員は10代から90代まで。30代、40代、50代の従業員もいる。
 従業員には医療給付も退職給付も支給されない。時給は9ドルからのスタート。勤務時間は従業員自身が決める。午前3時半から7時間はたらく従業員もいれば、午後3時にやってきて、4時間だけ働く人もいる。
 工場は2階にある。階段が19段ある。この階段をのぼること(のぼれること)が、ここで働くための暗黙の前提条件になっている。
ここでは互いに協力しようという意識、力をあわせて働き、共通の目標を目ざそうという意識が広く行きわたっている。
 かつて社会的地位の高いホワイトカラーの仕事をしていた従業員たちが、現在の自分の立場を単なる労働者だと認識している。
 ただし、大企業で長く働いてきた人は採用しにくい。
この会社は、2008年制作の映画「年年生活者株式会社」で紹介された。
 これだけ高齢者が多いのに、作業がちゃんと行われて業績もよい。低賃金にもかかわらず、誰もが社長を慕い、とても熱心に働いている。
 そうですよね。定年後も、自分の好きな時間に、思うように働きたいという気持ちは私にもよく理解できます。特殊な針を製造しているという有利な面もあることでしょう。それにしても、99歳の超老婦人が生産現場で働いているなんて、とても信じられません。
働くことの意味、そして、高齢者にとって働くことは人生を意義あるものにすることなんだと思わせる良書でした。
(2014年4月刊。2400円+税)

強欲の帝国

カテゴリー:アメリカ

著者  チャールズ・ファーガソン 、 出版  早川書房
 アメリカやヨーロッパの大手銀行は、金融危機を招いた行動に加えて、エンロンをはじめとする大企業の不正の幇助、麻薬カルテルやイラン軍のための資金洗浄(マネー・ロンダリング)、脱税幇助、腐敗した独裁者の資産の隠匿、談合による価格決定、さまざまな形での金融詐欺を行っていたことが暴き出されている。アメリカの金融部門が、過去30年間で、ならず者産業になり下がった証拠は、今では明白だ。
 世界経済を危険にさらす重大な不正を行ったら刑務所に行くこと、そして不正に得た富は没収されることになれば不正は小さくなるだろうが、そのようにはならなかった。
アメリカのホームレスは人口は明らかに急増している。2011年には、アメリカ全土で200万軒以上の住宅が差押えされた。フードスタンプの利用者数は1800万人増加した。70%の増加率だ。
 今やアメリカの上意中流階級に確実に入るためには、エリート大学の学士号はもちろん、修士号や博士号も必要となる。しかし、こうしたエリート大学に行ける学生の圧倒的多数は、アメリカの最富裕層の家庭の子どもだ。高等教育機関の学費は大幅に上昇しており、高等教育を受ける機会は著しく不平等になっている。
 アメリカの二大政党は、どちらも、現実に存在する経済・社会・教育問題を無視したり、ごまかしたり、利用したりしている。
 アメリカの富と企業と政治を支配している上位1%の人々の経済利益は、過去30年のあいだに、他のアメリカ人の経済的利益から完全に分離してしまった。
 アメリカの金融サービス産業は、ニュー・エリートたちの非道徳性や破壊性、強欲さがこれほどむき出しにされてきた産業はほかにない。
 1980年代のS&L事件では、アメリカの金融部門の数千人の幹部が刑事訴追され、数百人が、刑務所に送られた。
 200年代のサブプライム融資の多くは、持ち家率の向上とは、まったく関係のないものだった。ウォール街や貸付機関は、不正によってポンジ・スキームを生み出し、あおり、利用していた。何百万人ものアメリカは、単にだまされただけだった。家を売ろうとしたとき、初めて気がついた。住宅の価値が3分の1も下がっているため、家を売ることが出来ず、長年かけて貯めたおカネを失ってしまったことに気がついた。
 サブプライム・ローン貸付業は、バブルのあいだに犯罪の蔓延する産業になっていた。
 不法移民は、警察に行くことを恐れていたので、とくにカモにされやすかった。
バブル期には、ウォール街の多くの幹部が自分のまわりに現実から遊離した小世界を築いていた。一般社員の立入を禁止する空間、リムジン・カー、専用エレベーター、ジェット機、ヘリコプター、高級レストランで過ごした。取締役会は、すべて言いなりだった。
ニューヨークの投資銀行家たちは、ナイトクラブやストリップ・クラブで年間10億ドルのお金を使い、会社に対して接待費として会社に請求している。
 それでも彼らについて刑事訴追が行われなかったことから、非倫理的で犯罪的な行動を文化的に容認する姿勢が金融部門の奥深くに埋め込まれた。第二に、個人は刑事罰を受けずにすむという感覚が生まれた。犯罪行為をもくろむ銀行家が刑事訴追という脅威によって抑止されることが、もはやなくなった。
 大手の金融機関がやってきたこと、やっていることは法の下で加えられるべきだったのです。これは、ちょうど、3.11のあと東京電力の会長・社長以下、誰も刑事責任を問われていないことと同じです。無責任集団が出来あがっています。それでも、それを容認したらまずいです。銀行と証券会社がのさばる社会は、やっぱり異常なのですよね。彼らは、何も富を生産しているわけではないのですから・・・。
 大学教授たちは、民事と刑事の双方の金融詐欺訴訟において、大金をもらったうえで、被告らのために証言した。そしてこのとき、1時間の議会証言だけで25万ドルももらう。
 大学教授に大金を支払って特定の政策を擁護させるという現状は、経済・法学の分野だけでなく、政治学や外交政策の分野まで広がりはじめている。
学者の腐敗は、今まではきわめて深く根を張っている。学問の独立性が金融産業をはじめとする有力産業によって、徐々に破壊されている。
 政治家のウソに対するメディアの監視が弱まっている。この点は、日本でも残念ながら同じですね。最近のマスコミ、とりわけNHKのひどさといったら、目もあてられません・・・。
アメリカの刑務所には、常時200万人もの受刑者がいる。1000万人以上のアメリカ人が重罪の前科をもち、交通事故以外の犯罪で服役したことがある。数百万人が何年間も失業したままである。
 アメリカン・ドリームは死にかけている。アメリカの子どもの人生展望は、親の富にますます左右される。
今のアメリカには、三つの教育制度が併存している。その一つは、上位5%の富裕層を対象とするエリート主義で、きわめて質の高い、法外な費用のかかる私立学校制度。二つ目は、しっかりした公立校の学区に住み、子どもを大学にやるゆとりがある中流階級の専門職のためのかなり良質な制度。三つ目は、残りみんなのための、本当にひどい制度である。
アメリカ、とりわけ金融産業のおぞましい実情を厳しく糾弾した本です。日本も一刻も早く他山の石とすべきです。
(2014年4月刊。2700円+税)

アフリカ系アメリカ人という困難

カテゴリー:アメリカ

著者  大森 一輝 、 出版  彩流社
 オバマ大統領が誕生したことは、アメリカにおける黒人差別が解消したことのシンボルだとは、とても言えないようです。
オバマは、「黒人大統領」ではない。逆に、「黒人」であることを封印された大統領である。自分が人種差別主義者であるとは夢にも思わない白人たちによって、オバマの手足は固く縛られている。オバマ大統領の口から「人種」という言葉が出るのを許さないという圧力は強烈だ。
 白人国民は、人種主義が見えないが、見えるつもりもない。人種を見ないことにすれば問題は解決するのだという「カラー・ブラインド」論が横行している。
 「黒人」というカテゴリーは、異郷で生きることを余儀なくされたアフリカ諸民族に、共通の経験をもたらし、共通の心性を育んだ。「黒人であること」の屈辱と誇りを、苦悩と喜び、絶望と祈りこそが、「アメリカ黒人」を新たな民族に鍛え上げた。
 南北戦争後のボストンに住む黒人エリートたちは、能力主義(メリトクラシー)が徹底されたら、人種主義は克服されると信じた。これらの黒人エリートたちは、黒人生活の実態を見ようとしなかった。
 1917年にアメリカが第一次世界大戦に参戦すると、黒人は人口比に相当する以上に徴兵に協力したにもかかわらず、軍内部でさまざまな差別を受けた。両人種は厳格に分離されており、黒人兵のほとんどは勇気を疑われ、戦闘部隊ではなく、補給その他の雑役に回された。
 そして、戦争が終わって「母国」アメリカに帰った黒人兵士たちを待ち受けていたのは、人種暴動とリンチだった。1919年末までに、30県の暴動が起こり、80人がリンチで殺された。そのうち14人が火あぶりにされたが、うち11人は、征服を着た元兵士だった。
 現代アメリカにおいてリーダーたるべき黒人知識人の多くは自縄自縛に陥る。人種差別はたしかにある。しかし、だからといって、黒人への特別な配慮や対策を要求したり、黒人が団結して抵抗してしまえば、本来あってはならない人種という区分を許すどころか強調することになる。今やるべきなのは、人種カテゴリーの解体なのだから、差別は個人の努力と才覚によって乗りこえるほかないのだ・・・。
 人種主義から逃げるのではなく、それを直視し、正面から受けとめるべきだという声は同時代の黒人からも上がった。
 現実に対して「ブラインド」になる、つまり目をつぶっていては何もできないのだということを、ボストンの黒人は長い時間をかけて学んだ。自分たちの人生を変えるためには、人種による格差に目を向け、人種差別のない未来を創り出していくしかない。
 アメリカにおける黒人差別の解消は、今なお容易ならざる課題であることを痛感させられました。
(2014年3月刊。2500円+税)

イエロー・バード

カテゴリー:アメリカ

著者  ケヴィン・パワーズ 、 出版  早川書房
 アメリカの若者がイラクへ派兵された。21歳の3年兵バートルは、18歳の初年兵マーフィーを無事に故郷に連れ帰ると約束していた。しかし、戦場の現実は苛酷だった・・・。
 この本を読みながら、どうしてアメリカ人がイラクでこんな苦しみを味わわなければいけないのか、つくづく疑問に思いました。
自分が通ったゲートの空いた席を霊たちが埋めていた。迫撃砲やロケットや弾丸や即製爆弾でやられた兵士たち。救急ヘリに担ぎ込もうとしたときには、皮膚が滑り落ち、四肢は本来の位置に辛うじてくっついているという状態だった。
 彼らはまだ若く、故郷には恋人がいて、人生を意味あるものにしてくれる夢を抱いていたのだろう。彼らは進路を間違ったのだ。死んだら、もう夢は見ない。
 自分は顔を背けた。打ちのめされて、くらくらした。体内に何も残らなくなるまで吐いた。それでもなお、胆汁が気味悪い黄色のリボンのようになって出てきた。それから、やっと上体を起こし、口のあたりを拭った。
 自分らは、ある角で止まった。ネズミの行列が破片の山を縫って、通りを横切っていった。ネズミは数の力で、死体に食らいついていたみすぼらしい犬を追いはらった。見まもるうちに、犬は切りさいなまれた腕をしっかりくわえて路地へ走りこんでいった。
 自分らは、沈黙のなかで、彼の人生最後の瞬間を脳裏に浮かべていた。彼が苦悶し、アラーに開放してくれるよう懇願しているのが見えた。だが、助けてもらえないと悟ったときには、のどを切られて首から血を噴いていた。そして、窒息して死んでいったのだ。
 その男は、自ら望みもしなかった武器に仕立てられた。敵は彼を捕らえて、殺し、内臓を抜き、腹腔に爆薬を詰め、こちらが彼に気づいたと思った瞬間に爆発させ、そして攻撃してきたのだった。
自分らは、もう自らの凶暴性に気づかなくなっていた。人を殴打したり、犬を蹴飛ばしたり、手荒い捜索をしたり、ゆく先々で発揮する残忍さに。行動の一つひとつが、機械的に実践される練習帳の一頁のようだった。だが、自分は気にもしなかった。
 イラクに兵士として派遣されて生活しているうちに、人間らしさをどんどん失い、感覚が鈍磨してく様子が生々しく語られています。恐ろしい現実です。そんな人々(若者です)をアメリカ社会は何十万人とかかえているのですね。まさしく、双方にとって不幸のきわみです。
 著者は17歳でアメリカ陸軍に入隊し、2004年から1年間、イラクに派遣され、機関銃士として転戦しました。その体験にもとづく小説ですので、迫力が違います。
 アメリカの野蛮さの原因を知ることのできる本でもあります。
 安倍首相の集団的自衛権の行使容認というのは、日本の青年をこのような状況に追い込もうということです。絶対にあってはならないことだと私は思います。
(2013年11月刊。2100円+税)

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