法律相談センター検索 弁護士検索
カテゴリー: アメリカ

アメリカの法曹倫理

カテゴリー:アメリカ

                               (霧山昴)
著者  ロナルド・D・ロタンダ 、 出版  彩流社
 Eメールなどのインターネット社会において弁護士の守るべき法曹倫理が新しく追加された第4版が翻訳・出版されました。
 アメリカの弁護士にとって守るべき倫理のほとんどは日本の弁護士にとっても同じく共通するものです。最新の社会環境に照応する法曹倫理として、日本人弁護士にとっても大いに参考にすべきものだと思います。
 依頼者が弁護士の職務怠慢を訴えるとき、真に意味するのは、弁護士が依頼者と十分にコミュニケーションをとっていなかったというところにある。もしも弁護士が依頼者に常時情報を伝えていたならば、依頼者は無為な遅延ではなかったことを知ったであろう。にもかかわらず、弁護士が正当な理由もなく依頼者に情報提供しないまま放置するとき、それは弁護士に対して依頼者とのコミュニケーションを要請する倫理規則に反することになる。
 ここで指摘されているように、弁護士は依頼者へきめこまかな情報伝達(連絡)を欠かすことは許されません。
弁護士は、「弁護士と依頼者との間のコミュニケーションを、それが王冠ではないにせよ、宝石のように扱わなければならない」。
 FAXやEメールの誤送信についても論じられています。
 Eメールは、考えようによっては、封書のような安全性はない。専門知識のある人なら、Eメールをのぞくことができる。それでも、弁護士が依頼者とのやりとりについて、暗号化されていないEメールを使うことは許されているというのが、多くの倫理的見解である。
 「やかましい辞任」という概念があることを認識しました。悪事をたくらむ依頼者に対して弁護士がいかに対処すべきという問題です。
 弁護士は、その通知が依頼者の不正行為への渓谷になる可能性があろうとも、やかましい(Noisy)「辞任通知」を送付することができる。
 依頼者は、弁護士がやかましい辞任することに先立ち、弁護士を解任することによって、それを防げることは許されない。
 「ホットポテト法則」という面白い名前のついたドクトリンがあります。
 もし、ある法律事務所が、同時に敵対する二人の依頼者を別々の訴訟で代理していることに気がついたとき、「ホットポテト」から手を離すように、一方の当事者を軽んじて厄介払いをしたり、新規の依頼者を旧来の依頼者と入れ替えようとしてはならない。
 法律事務所は、依頼者を熱いジャガイモを放り投げるがごとく扱ってはならない。ましてや金銭的に大幅な利益増になる理由をもって依頼者を選択するなど、論外である。
弁護士は、さまざまな業務を秘書、事務員、弁護士補助職員(パラリーガル)にまかせることができる。そして、その弁護士が、かれらの仕事を監督し、最終的な責任をとる限りにおいて、それは無資格法律事務とはならない。
弁護士は、事務所を訪れる依頼者が、いかなる依頼者であれ、受け入れることを要求されるものではない。しかし、不当な理由によって事件の依頼を拒絶するのは適切でない。法律サービスが完全にいきわたるという目標を達成するためには、弁護士は与えられた任務を軽々しく断ってはならない。たとえ、その仕事が弁護士にとって魅力のないものであっても、同じである。
昨今の法律事務所への入所は、現代の結婚に似ている。つまり、終生の契りといえるものは、ほとんどなくなってしまっている。元の法律事務所から、ビジネスを手に入れて成功すると、事務所を去る弁護士がいるという事実は、この新たな現実を反映している。
 依頼者のほうでも、担当していた弁護士についていきたいと思う場合がある。依頼者は商品ではない、だから依頼者は、弁護士が法律事務所を替えれば、その弁護士についていく権利がある。そこには、無視できない言論の自由の問題が横たわっている。
 アメリカでは、弁護士について、直接の電話または対面式勧誘に加えて「リアルタイムの電子的接触」も禁じている。チャットルームに弁護士が参加するのは完全に自由ということはない。
 アメリカの弁護士(法曹)倫理は、一歩遅れてインターネット社会になっている日本人弁護士にとっても大いに参考になることを実感させられる本です。
 沖縄で、今も元気に大活躍している、敬愛する当山尚幸弁護士から贈呈を受けました。当山弁護士自身も前の第3版から翻訳に関わっていますが、本当に頭が下がります。ありがとうございました。ひき続きのご健闘を心より祈念します。
(2015年4月刊。3500円+税)

アメリカン・スナイパー

カテゴリー:アメリカ

                               (霧山昴)
著者  クリス・カイル 、 出版  ハヤカワ文庫
 映画をみましたので、その原作を読みたいと思いました。
 映画も原作も、アメリカのやっていることは、まったくの間違いだと言わざるをえません。
 「敵」の有力者を一人ずつスナイパーを殺していったとしても、その国を全体として支配できるわけがないのです。一人の狙撃手が敵軍の戦闘員160人の殺害に成功した。これは、局所(ミクロ)に見たら、すごい人数です。しかし、大局的にみると、なんという数字でもありません。何万、何十、いえ何百万人もの大衆を一人のスナイパーが支配できるはずもありませんから・・・。
 そして、そんなにたくさんの「敵」を殺した兵士の多くは、精神的におかしくなってしまうのです。160人を殺した伝説の英雄は、なんと「狂った」味方の兵士からアメリカで射殺されてしまうのです。
 シール(SEAL)の兵士の離婚率は、異常に高い。
 スナイパーとして、照準器を除いているときには、両方の目を開けておく。右目は照準器腰にみていて、左目は全体を見ている。これで、状況把握がしやすくなる。
 スナイパーは、市街地では、180メートルから360メートル内を狙う。郊外だと730メートルから1100メートルを狙う。そして、頭ではなく、体の中心を狙って討つ。はずしにくい。どこにあたっても、相手は必ず倒れる。
 民主主義をイラクにもたらすために命を危険にさらしたわけではない。命を危険にさらしたのは、友人のためであり、友人や同じ国の仲間を助けるため。戦争に行ったのは祖国アメリカのためであり、イラクのためではない。祖国が自分をイラクに送り込んだのは、あのくそったれどもがアメリカに来ないようにするためだ。つまり、イラク人のために戦ったことなど、一度もない。
 3日間、戦闘に出かけ基地に帰って一日休む。まず眠り、それからテレビゲームをやったり、家に電話をかけたり。基地から発信される通話は、すべて録音されている。
 イラク(ラマディ)で殺されたいのなら、警察官になるのが手っとり早い。また、警察組織には汚職がはびこっている。
 バグダッドのなかにあるサドル・シティでは、市民は普通に仕事に出かけ、市場で買い物をしていた。その一方で、銃を手にして脇道から忍び寄り、壁をつくっているアメリカ人兵士を狙う連中もいる。
 ファルージャは、ひどかった。ラマディは、さらに辛かった。サドル・シティは最悪だった。
 今の自分は、初めて戦争に行ったときの自分ではない。誰もが変わってしまう。戦場に行くまでは純真な心を持っているが、とつぜん世の中の裏側を目にする。
 戦争は、まちがいなく人を変える。死を受け入れるようになる。
 2013年2月、カイルは、テキサスの射撃場で射殺された。
 カイルは、このとき、除隊したあとで民間軍事訓練会社を経営する一方で、心身に障害を負った元兵士を支援する活動に従事していた。カイルを撃ったのは、PTSDを患う元海兵隊員だった。
 武力・戦争に頼るだけでは何も解決しないことに、一刻も早くアメリカ国民は気がついてほしいと思います。そして、日本にはアメリカの過ちを繰り返してほしくはありません。
 安倍首相の強引にすすめる戦争法案の成立を阻止するため、引き続きがんばります。
(2014年10月刊。860円+税)

帰還兵はなぜ自殺するのか

カテゴリー:アメリカ

                               (霧山昴)
著者  デイヴィッド・ファンケル 、 出版  亜紀書房
 アメリカからアフガン・イラクへ戦争に行った兵士たち、小隊30人、中隊120人、大隊800人は、元気な人ですら、程度の差はあれ、どこか壊れて帰ってきた。悪霊のようなものにとりつかれずに帰ってきたものはひとりもいない。その悪霊は動き出すチャンスを狙っている。
 アメリカに戻ってきた元兵士の一人は次のように語る。
 ひっきりなしに悪夢をみるし、怒りが爆発する。外に出るたびに、そこにいる全員が何をしているのか気になって仕方がない。
200万人のアメリカ人がイラクとアフガニスタンの戦争に派遣された。アメリカに帰還したとき、戦争体験などものともしない者もいる。しかし、200万人の帰還兵のうち20~30%にあたる50万人の元兵士がPTSDやTBIを負っている。
PTSD・・・・心的外傷後ストレス障害、ある種の恐怖を味わうことで誘発される精神的な障害。
TBI・・・・外傷性脳損傷、外部から強烈な衝撃を与えられた脳が脳蓋の内側とぶつかり、心理的な障害を引きおこす。
苛立ち、重度の不眠、怒り、絶望感、ひどい無気力。なげやりな態度・・・。
繰り返し外国の戦場に派遣された兵士は自殺しやすい。既婚兵士は自殺しにくい。
戦争のあいだ、毎日が同じように始まった。兵士たちは幸運のお守りをポケットに入れ、最後の言葉にまつわる冗談を言い合った。素早く円陣を組んで祈りあげ、最後の煙草を吸った。
防弾チョッキのベルトをきつく締め、耳栓をし、耐破損性サングラスを下ろし、耐熱性グローブをはめた。「出発」という号令とともに、ハンヴィー(アメリカ軍の装甲車)に乗り込んで進んでいった。道路の先で自分たちを待ち受けているのが何か、よく分かっていた。
兵士たちは、ハーレルソンのハーヴィーが宙に高く吹き上がり、火に包まれるのを見た。エモリーが頭を打たれて倒れ、自分の血にまみれていくのを見た。兵士たちが脚を失うのを、腕を失うのを、脚を失うのを、手を失うのを、指を失うのを、つま先を失うのを、目を失うのを見た。
次々に起こる爆発音を聞き、何十台ものハンヴィーが消えて、凄まじい炎の雲と化し、死骸へと変わるのを見た。そして、しまいには、兵士たちの大半がその雲に取り込まれてしまう。恐怖の瞬間に、雲に囲まれて何も見えないまま考えた。
自分は生きるのか、死ぬのか、無傷のままか、ばらばらになるのかと。やがて耳鳴りがし、心臓が激しく鼓動し、精神が暗黙に落ち、目には時折涙があふれてくる。
彼らは分かっていた。分かっていたのだ。それでも毎日、戦闘に出かけ、戦争がどのようなものが分かってくる。
 勝者はいない。敗者もいない。勇敢なものなどない。ひたすら家に帰るまでがんばり、戦争のあとの人生でも、同じようにがんばり続けなければならない。
アメリカからイラクへ侵攻した兵士たちの多くが貧困家庭出身の若い志願兵だった。ある大隊の平均年齢は20歳だった。そして、毎年240人以上の帰還兵が自殺を遂げている。自殺を企てた人は、その10倍いると推定されている。なぜなのか。
本書では、そのいくつかのケースを家庭訪問するなどして明らかにしています。
 経済徴兵制というのは、アメリカにならって、日本でも取り入れられる恐れがあります。
 自民・公明の安倍政権のすすめている戦争法案は必ず廃案にしなければいけません。
 日本の未来を担う若者から、その輝かしい未来を奪わないようにしましょう。あなたも、ぜひお読みください。
(2015年6月刊。2300円+税)

孤児列車

カテゴリー:アメリカ

                               (霧山昴)
著者  クリスティナ・ベイカー・クライン 、 出版  作品社
 実話にもとづくアメリカの小説です。舞台は戦前のアメリカです。
 1854年から1929年まで、身寄りのない子ども、家のない子どもたちが、アメリカ東海岸の都市から中西部の農村へ続々と送られた。引き取り先を見つけるためだったが、現実には労働力として期待された。
 20万人をこえる子どもたちが列車で運ばれた。多くの子どもたちは、働き手として、きびしい環境に置かれ、虐待され、逃げ出していった。
 このような現実は、やがて闇に埋もれていった。それを2013年に掘り起こしたのが、この本であり、全米で180万部も売れた。
 戦前、1930年代のアメリカでは、常に1万人以上の子どもたちがニューヨーク州の路上で暮らしていた・・・。
 新しい家庭と町に温かく歓迎される子もいたが、殴られたり、虐待されたり、ののしられたり、無視される子もいた。
 子どもたちは、自分の文化的アイデンティティや生い立ちを忘れ去った。兄弟姉妹が引き裂かれるケースも多く、連絡をとりあうことも認められなかった。
 心も体も成熟していない都会の子どもが、農場のきつい仕事をこなすよう求められた。多くは、イタリア、ポーランド、アイルランドからの移民の子で、なまりが変だとからかわれた。英語がろくに話せない子もいた。
 新しい家庭でのしっとや競争が不和を生み、多くの子どもが自分はどこにも属していないという気持ちを抱くようになった、自分を求めてくれる人を探して、家から家へ転々とする子もいた。逃げ出した子は多かった。
 たくさんの写真が紹介されています。
 小説で、その辛い日々が再現されています。それにしても、累計20万人とは、大変な人数です。それが忘れられていたというのです・・・。ここにはアメリカン・ドリームは影も形もありません。
(2015年3月刊。2400円+税)

キューバ危機

カテゴリー:アメリカ

                               (霧山昴)
著者  ドン・マントン、デイヴィッド・ウェルチ 、 出版  中央公論新社
 私はアメリカのケネディ大統領もソ連のフルシチョフ首相も、故人としてはそれほど傑出した人物とは考えていませんが、それなりの常識はもっていた人だと考えています。
 この二人のおかげで、地球は破局を迎えることがなかったのです。それが、安倍首相のような、ウソを平気でついて、反省することもないという非常識きわまりない人物が、どちらかのトップにいたら、今の地球はなかったでしょう。
 安倍首相の支持率が今なお50%を割っていないことに、私は心の底から不安を感じています。日本人の知性のレベルって、それほどまでに低下したのでしょうか・・・。
 安全保障法制が成立しても自衛隊員のリスクは増えないと断言する安倍首相のウソを許してはいけません。日本人は、もっと怒るべきです。あなたまかせではいけないのです。
 1962年のキューバ危機をふり返るのは、安倍のようなとんでもない人物を首相とする日本にとって、大いなる教訓です。
1962年10月のキューバ危機は、人類史上もっとも危険な出来事だった。
 ケネディとフルシチョフは、ともに事態が制御不能となる危険をしっかり認識するようになった。二人は、事故や誤解、意図せぬ行動によってのぞまざる聞きがエスカレートしはじめることを心配した。
 米ソの冷戦期は、アメリカのほうがソ連に比べて圧倒的に裕福だった。
 しかし、陸軍力ではソ連がアメリカを優っていて、本格的な熱戦がおきたら、ソ連はヨーロッパのNATO戦力を短期間で圧倒できると考えていた。だから、NATOは、ソ連を牽制すべく、核による報復の脅しに頼った。
 多くのキューバ人は、アメリカが1898年にご都合主義的に介入したと感じている。その怒りは、今日までに尾を引いている。キューバ人は、スペインからの独立を求めて命を賭けて戦った。アメリカは、その栄光を手中から奪い去り、今度はアメリカ流の植民地支配を押しつけてきた、と学校で習っている。
 ちなみに、アメリカ軍は、キューバを1902年まで占領し続けた。
 アメリカ大使は、政界の実力者であり、キューバ大統領より強大な権力を行使していた。
 このころ、ソ連もキューバの情報機関も、ともにアメリカが侵略してきそうだとは考えていなかった。
 CIAは、キューバにある8基ものミサイルが8時間以内に発射可能となる予測をした。CIAは、キューバにソ連軍は5000人、せいぜい1万人と考えていた。本当は、4万2千人ものソ連兵がいて、戦術核兵器で武装していた。
 ケネディは、キューバをいじめ、脅かしたことで、恐れていた挑戦を誘発した。フルシチョフのほうも荒々しく大言壮語をくり返し、ベルリン問題でたえまなく脅しをかけ、ケネディに嫌がらせをして大人しくさせようとしていた。ソ連の軍部は、劣勢ではあれ、十分な戦略核能力があるため、アメリカの攻撃は抑止されるはずで、譲歩は不要だと確信していた。ケネディもフルシチョフも、自国軍の司令官たちの自信におおむね懐疑的で、彼らの進言に毅然と抵抗したのは幸運だった。
 政府や軍は複雑なシステムで、そこでは間違いも起こる。大規模な軍隊が戦闘準備を整え、命令一下で行動に移ろうと身構えているとき、間違いが起これば、あっという間に破局的な結果をもたらしかねない。
 核兵器の保有国が増えてしまった核時代の今日、共感の欠如は大きな懸念材料となる。
 左右のバランス感覚がなく、ないことを高言して恥じない人物を首相とする日本は、いま不幸の極みにあります・・・。
(2014年9月刊。2300円+税)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.