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カテゴリー: アメリカ

ナチスの楽園

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者  エリック・リヒトブラウ 、 出版  新潮社
 アメリカって異常な国だと前から思っています。トランプの偏狭な思想に熱狂する人々があんなにいるなんて、正気の沙汰ではありません。
 この本は、第二次世界大戦のあと、ヒトラー・ドイツの高官だった連中が次々にアメリカに渡っていき、アメリカは反共の闘士として厚遇していたことを暴いています。
 強制収容所で囚人たちをさんざん苦しめたナチス党の関係者が風に乗ったタンポポの綿毛のように四方八方へと散らばっていった。そして、ヒトラーの手先となって、おぞましい犯罪を重ねていた連中が何千人も、何者にも邪魔されることなく、アメリカへ向かった。
 ナチスの協力者どころかヒトラー親衛隊SSの正式メンバーでさえも「戦時難民」としてアメリカに入国できた。アメリカの入管制度の裏をかいて偲び込むようにしてアメリカ入国を果たした元ナチスは数千人に及んだ。同時に、国防総省(ペンタゴン)やCIAなどの情報機関の高官たちの手引きによって入国した元ナチスが数百人もいた。彼らは、アメリカがソ連という脅威と対決するうえで役に立つと信じられていた。
パットンは、ユダヤ人は動物以下の存在であると高言していた。トルーマン大統領はユダヤ人を自宅に客として迎えることはなく、「ユダヤの餓鬼ども」とか「ユダ公」と言って愚弄していた。かの有名なパットン将軍がユダヤ人を人とも思っていなかったことを本書を読んで知り、がっかりしてしましました。
 元ナチスの連中は、ナチスの犠牲者になりすました。難民あるいは反ナチスのふりをした。イタリアで元ナチスの逃亡者たちを助けたのは、カトリック教会と赤十字だった。
FBIのフーバー長官にとっては、ナチスとしての過去よりも、現在の反共のほうが重要だった。
アメリカの暗い歴史を垣間見る思いがしました。今のトランプにつながる動きなのでしょうね・・・。
(2015年11月刊。2400円+税)

ザ・カジノ・シティ

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者  デヴィッド・G・シュワルツ 、 出版  日経BP社
 日本にもカジノを導入しようという動きがあります。例によって自民・公明が推進勢力です。全国いたるところにパチンコ店があるギャンブル大国ニッポンにカジノを導入したら、日本もアメリカ並みの犯罪大国になってしまうのを恐れます。カジノなんてタバコと同じで、百害あって一利なしです。カジノも、アメリカをダメな国にした理由の一つだと私は考えています。
この本は、ラスベガスにカジノ・ホテルを導入したホテル王、ジェイ・サルノの一生を明らかにしています。ジェイ・サルノは病的なギャンブラー狂でした。
ジェイ・サルノは、想像力を極限まで高め、ホテルの顧客をいかに喜ばせるかをいつも考えている男だった。ホテル王としての夢を実現するための資金集めの苦労、それにつけ込むマフィアとの攻防、マフィアを阻止しようとする政府機関(税務当局)の戦いが紹介されている本です。
ジェイ・サルノは病的としか言いようのないギャンブル癖、1日15時間にも及ぶ絶え間のない食事、同じほど激しい女性への欲望も遠慮なく描かれている。
ジェイ・サルノの根底にあった哲学は、「自らを甘やかすのに後ろめたさを感じる必要はない。それは、むしろ祝福すべきものだ」
ジェイ・サルノの時代は長続きしなかった。カジノ産業はマフィアの黒い資金から訣別し、ウォールストリートから資金を導入するようになった。カジノが良いビジネスになることに気がついたのだ。
ジェイ・サルノはユダヤ人。ユダヤ人に対しては、さまざまな形の社会的制約があった。ホテル・ビジネスは映画産業と並んでユダヤ人が入り込みやすい業界だった。
頭のいいユダヤ人は、弁護士や銀行家、医師になり、古い壁を打ち破って法律事務所や証券会社で大金を稼いでいた。
虔敬なユダヤ教徒は、埋葬時にシンプルな白の埋葬布を身にまとう。これは、死によって生前の富や特権が完全に無に帰すことを表すものだ。また、埋葬は死の翌日に行われる。
ところが、宗教を毛嫌いしていた父親の意向を尊重して、ジェイ・サルノの死後、非宗教的な葬式を子どもたちは行った。「宗教的な人間は馬鹿だ」と考えていた人間を宗教的に見送るのは偽善的だと考えたからだ。
しかし、葬式とは、死んだ者のためというより、残されたもののためになされるものだ。あとになって、子どもたちは後悔した。
カジノは人間性を損なうものだということを明らかにした本でもあります。
(2015年11月刊。1900円+税)

沈まぬアメリカ

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者  渡辺 靖 、 出版  新潮社
  軍事力で世界を思うままに支配しようとしてきたアメリカも、今やさっぱりです。もちろん、今でも軍事力は世界一です。でも、軍事力だけでは何も変わらないどころか世の中をかえって悪くしてしまうという実例が、最近のイラクであり、シリアです。IS(イスラム国)の暴挙なふるまいは、アメリカが生み育てたものでしかありません。ここは、やっぱり日本国憲法9条の出番ではないでしょうか・・・。
  著者は日本の大学を出てアメリカのハーバード大学に入って、今は慶應大学で教授をしています。そのためでしょうか、アメリカのいいところを紹介する本です。たしかにアメリカにもいいところはたくさんあります。それは、わが日本にもいいところがたくさんあるのと同じようなものです。
  でも、軍事力に頼るばかり、社会保障制度は不備だらけ、銃の規制はできず、今や排外交主義にこり固まっていて、移民排斥を叫ぶ大統領候補の評価が高いだなんて、そんな遅れたアメリカのどこを学べというのでしょうか・・・。
  アメリカの人口は増大しつつあり、2050年までに1億人以上は増える見込みだ。労働力も40%は拡大する。
  シェール革命の成果によって、アメリカは世界最大の自然ガス産出国となった。2014年には、39年ぶりにアメリカは世界最大の産油国になった。
  ハーバード大学の学費は年間4万ドルから6万ドルに値上がりした。600万円というのは明らかに高い。わが日本でもアベ政権は年間50万円に引き上げようとしている。とんでもないことだが、アメリカは一桁ちがう。ところが、アメリカでは収入によって免除される。年に1万3千ドルで学生は勉強できる。これだったら130万円ということなので、日本の2~3倍です。
それでも高いですけどね・・・。ちなみに、アメリカの大学院は、授業料免除が一般的。
アメリカの大学は、今ではアブダビやドバイなどに分校をかまえているところが増えている。日本からアメリカへの留学生は、1997年の4万7000人をピークにして、2014年には1万9000人だから、6割減となっている。
  アメリカの大学に在学する留学生の出身国・地域は、220以上、90万人に達する。もとから移民大国だが、現在も毎年70万人もの移民を受けいれている。難民認定者も7万人と、世界最大だ。
世界最大のメガチャーチは、アメリカではなく、韓国にある。ソウルにある聖霊派のヨイド純福音協会だ。信者数は100万人である。アメリカのメガチャーチの影響は、アメリカ国外へと及んでいる。
  私の嫌いな、偽善そのもののアメリカにも一つくらいはいいところがあっていいのです。
  アメリカ社会の一断面を切り取った本です。
  
(2015年10月刊。1600円+税)

カルフォルニア先住民の歴史

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者  野口 久美子 、 出版  彩流社
 西部劇は大好きな映画でした。いつもインディアンが悪者というか敵役で登場してくることに何の違和感もありませんでした。映画の始まりに、大草原の彼方から主人公が馬に乗って登場するのを見て心を躍らせたものです。
 大学生のころは、マカロニ・ウエスタンです。ここでは、悪役は町のボスたちであり、インディアンではありませんでした。
 そして、弁護士になって、「ダンス・ウィズ・ウルブズ」をみて、インディアンのなかで生活する白人がいたことを知りました。
 実は、インディアンこそアメリカの先住民であり、遅れてきた白人は、侵略者だったことに遅まきながら気がついたのです。そこで加害者と被害者が逆転したのでした。
 15世紀末のアメリカ先住民は500万人から1000万人いた。ところが、20世紀の初めには、その40分の1でしかない24万人まで減少した。
 2015年現在、アメリカ内に322ある先住民保留地は、全国土の2.3%を占めるにすぎない。アメリカの歴史は、その土地に脈々と社会を継承してきた先住民の大きな犠牲の上に構築されてきたのだ。
2014年現在、カルフォルニア州には109の先住民の「部族」が存在する。「部族」は、部族を基盤としながらも、その内実は、多様な歴史的経験のなかで、部族の文化的、社会的境界を大幅に脱構築して組織された集団である。
 現在、カルフォルニア州内には100の先住民保留地があり、そこに109の連邦承認部族、1つの州承認部族が存在し、78の部族が連邦政府による承認を求めている。 
 日本人女性(研究者)がカリフォルニアにあるトュールリヴァー部族に長く通って、その歴史を明らかにした本です。その粘り強い調査には大変な苦労があったと思われますが、こうやって日本に住む私たちが、居ながらにしてアメリカ先住民のことを知ることが出来るわけです。本当にありがたいことです。
(2015年8月刊。3500円+税)

動くものはすべて殺せ

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者  ニック・タース 、 出版  みすず書房
 アメリカのベトナム侵略戦争は、アメリカの退廃を加速化させた戦争でした。
 アメリカ兵はベトナムで何をしたか。ここでいうアメリカ兵というのは、当時の私と同じ20歳前後の青年です。5万人ものアメリカ兵が戦場で生命を落としています(ベトナムの青年は、それより桁が2つくらい多く亡くなっています)。若いときに人非人の行いをした人が、成人になったとき、まともに生きていけるはずはありません。無数の「殺人鬼」を内包するアメリカ社会が一段と病的なものになったのも必然です。
この本は、アメリカ兵がベトナムでした残虐行為を改めて明らかにしています。この本を読むと、ソンミ村虐殺事件は日常的に起きていたものの一つだったことがよく分かります。
上官は、兵士が「女性も子どもも殺すのですか?」と訊いたとき、こう答えた。「動くものは、すべて殺せ」。
アメリカ兵がベトナムの無抵抗な民間人を殺し続け、その死体の山を築いていったあと、何と公表したか。「手強い敵の部隊との正当な戦闘の末、アメリカ軍は、ひとりの戦死者も出さずに敵兵128人を殺害した」。
ソンミ事件(ミライ事件)では、C中隊のカリー中尉だけが罪に問われた。30人の将兵が関わり、28人が士官、2人が将官だとされながら・・・。そして、カリー中尉は民間人22人を計画的に殺害したとして終身刑を宣告された。ところが、ニクソン大統領はカリーを釈放し、自宅軟禁とした。カリーは40ヶ月間の刑に服したが、そのほとんどを快適な士官宿舎の自宅で過ごした。なんということでしょう。一人を殺したら、殺人犯だけど、大勢の人を殺せば英雄なんですね。
 私が大学2年生のころ(1969年)、アメリカン軍兵士は、ベトナムに54万人、ベトナム国外に20万人もいた。総計300万人ものアメリカ軍兵士が東南アジアに派遣された。ベトナム共和国陸軍は100万人。これに対して、北ベトナム軍は5万人の兵士と、軍服を着た人民解放軍兵士6万人、更にゲリラが数十万人いた。
アメリカ軍は、共産主義者の侵略から南ベトナムの人々を守るために戦っていたはず。しかし、現実には、ベトナムの農民の大半は敵と通じているか、日が沈めばゲリラになるものと決めつけ、平気で民間人を殺していた。
ベトナムの人々にとっては、家族のため、故郷のため、祖国のための闘争だった。
アメリカ兵の訓練の過程で、新兵士たちは、ためらうことなく人を殺すことを最善とする、暴力と残忍の文化に取り込まれる。
ベトナム人については、グーク、細目、キツネ目、吊り目、半食い虫といった、人間性を完全に否定するような呼び名を使っていた。
あいつらは動物みたいなもんだ。人間じゃない。
ベトナム人が人間であるかのように話すことは許されなかった。ベトナム人に対しては、どんな情けも無用だと言われた。これは、ナチス・ドイツ軍がユダヤ人を殺すときの状況とまったく同じですね。ユダヤ人は人間じゃないと、ドイツ兵は繰り返し叩きこまれていました。
戦場に出て6ヶ月で実力を証明しなければ昇進が望めなかった下位ランクの士官と彼らが指揮をとっていた戦闘部隊は、つねに敵の「殺害数」をあげなければならないというプレッシャーにさらされていた。事実上は殺人ノルマだったこの数値の達成や超過達成は、ベトナムでの任務に大きな影響を及ぼした。いちばんボディカウントの多かった部隊には、保養休暇か、ビールがひとケース余分に与えられた。
19歳の若造に、人殺しをしてもいいんだ、そうすればご褒美がもらえるぞというわけだ。頭がおかしくなっても不思議ではない。
ボディカウントに民間人死亡者数が含まれていることなど問題にならなかった。殺害数が足りないときには、捕虜や拘留したものをさっさと殺してしまった。
ジョンソン大統領は、ベトナムを「くだらないカスも同然の小国」と考えていた。ベトナムは「アジアの屋外使所」「文明のごみ捨て場」「世界のけつの穴」と蔑んだ。ところが、文明国・アメリカは、その軽蔑した「けつの穴」に見事に惨敗・敗退したのでした・・・。
「何も気に病むことはない。またグークの死体がいくつか増えるだけのこと。早いとこ、やつらを皆殺しにしてしまえば、それだけ早く、オレたちは帰国できるんだ」
アメリカ軍によるサーチ・アンド・デストロイ作戦は、むしろ革命軍を戦術上、圧倒的な優位に立たせてしまった。アメリカ軍はいつも必ず守勢にまわる破目に陥った。
ベトコンがアメリカ軍部隊に奇襲をかけたケースが全体の8割近かった。アメリカ軍は効果的に敵軍と闘えなかったため、とりあえず何でも攻撃できるものを標的にした。つまり、民間人がもっとも重い代償を支払うことが多かった。
「そこにいるのは、みんなベトコンだ。殺してしまえ」
これは、現在、アメリカ軍がイラクやアフガニスタンで置かれている状況とまるで同じですよね。侵略軍の宿命ですね・・・。
アメリカ軍でも、将官や佐官は戦場に出ない。彼らは基地でゆったりくつろぐか、ヘリコプター座席にすわって細かく指示を飛ばすだけ。兵士は汚れた体で腹を空かせ脱水症状に悔やまされながら、足を引きずるようにして泥や牛糞や水のなかを歩く。熱疲労に襲われ、ヒアリに咬まれ、蚊に刺される。
戦争が終わったとき、ベトナムでは50万人もの女性が売春婦に身を落としていた。
ベトナムの民間人にとって最大の脅威は、逃げる者は撃つというアメリカ軍の方針だった。
1971年アメリカ軍は、崩壊寸前だった。アメリカ軍の士気、規律、戦闘対応能力は、わずかな例外を除いて、史上最低にして最悪であった。ベトナムに残っているアメリカ軍の陸軍は崩壊に近づきつつある。各部隊が戦闘を避け、拒み、自分たちの士官や下士官を殺害し、麻薬漬けになっている。暴動寸前ではない部隊では、隊員がすっかり気力をなくしている。
第九歩兵師団は、ある作戦のなかで1万人以上の敵兵を殺害したと報告したのに、回収した兵器は、わずか750点でしかなかった。ある一週間に700人のゲリラを殺害したというのに、捕獲された武器はわずか9点でしかなかった。これは、どういうことか・・・。武器を持たない民間人を一方的に殺害したということ。
アメリカ軍のなかでは狂気にみちた殺人鬼のような兵士が出世していった。
戦争は人を気狂いにしてしまうこと、それを英雄視することから、社会全体が狂っていくことがよく分かります。今ごろ何で40年以上も前のベトナム戦争を振り返るのか・・・。それは、アメリカ軍が今もイラクやアフガニスタン、そしてシリアで空爆したり、戦争を仕掛けている現実があるから、この本はまさしく今日的意義があります。
武力に対して武力で対抗しても勝てないし、平和は生まれないということです。全世界の人々が一刻も早くこのことを自覚する必要があります。憲法九条の精神を国際社会に広めたいものです。
(2015年10月刊。3800円+税)

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