法律相談センター検索 弁護士検索
カテゴリー: アメリカ

国家とハイエナ

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者  黒木 亮 、 出版  幻冬舎
 自分さえよければ、世の中がどうなろうと知ったこっちゃない。そんな人物がアメリカ大統領になりました。
トランプの就任演説の全文を日本語で読みましたが、あまりに低次元の話ばかりに涙が出そうになりました。そこには、そもそも政治は、弱者であっても人間らしく生きていけるようにするためにこそあるという考えは、みじんもありません。本当に残念です。
しかも、弱者が超大金持ち(ウルトラ・リッチ)を支持しているのです。きっと自分たちのために何か良いことをやってくれるだろうという幻想を抱いて・・・。悲しい現実です。
でも、日本だって似たようなものです。とっくに破綻しているのが明らかなアベノミクスをまだアベ首相は固執し、多くのマスコミが無批判にアベノミクスの効用をいまなお宣伝しているからです。
 この本は、破綻したアフリカや南米の国債を安く買って、欧米で勝訴判決をとり、タンカーや軍艦、外貨準備や果ては人工衛星まで差押して、投資額の10倍、20倍をむしりとる「ハイエナ・ファンド」(ハゲタカ・ファンド)の実際を暴いています。
 狙われた国家は、裁判を使った合法的な手段で骨の髄までしゃぶられ尽くすのです。もちろん、狙われた国家自体も、アフリカの大統領の多くが利権を私物化しているといったように、汚職・腐敗にまみれています。それでも、「ハイエナ・ファンド」に奪われなかったら、そのお金が福祉や民生用の国家支出にまわっていた可能性は大きいのです。
 「ハイエナ・ファンド」の手先になって動いているのが投資コンサルタントであり、弁護士たちです。
「法律書をもったハイエナ」は、額面7千万ドルの債権を800万ドルで買い、ペナルティや金利もふくめて1億2000万ドルを払えと訴える、それに、アメリカやイギリスの裁判所も結託している。ハイエナ・ファンドは、国や国際機関や金融機関の債務削減を利用してもうけている。これを規制しないと、せっかくの債務削減の意味が無に帰してしまう。
ハイエナ・ファンドによる訴訟の3分の2以上がアメリカとイギリスで起こされている。ひとたび外国で訴訟が起こされると、数十万ドルから数百万ドルにのぼる弁護士費用、旅費その他の経費がかかる。これは貧しい債務国にとっては、重大な負担となり、まともに戦える国はほとんどない。
ハイエナ・ファンドが投資したお金の何十倍という途方もない利益をあげる一方で、最貧国では一日1ドル以下で生活している国民が大半で、食糧や薬が買えなくて、子どもたちがバタバタと亡くなっている。
 債務削減を受けたアフリカ10ヶ国は、削減から4年間のうちに、教育予算が4割も増え、保健予算にいたっては7割も増えている。これを「ハイエナ・ファンド」は許さない。
 いわば吸血鬼のように他人の生命・健康を損なわせてまでして、自分たちの法外な要求を法の外形を利用して押しつけているのです。そんな悪どい商法に巻き込まれた人は哀れです。
 最後に、本作品は事実にもとづいているとの注記があります。読んでいくうちに気分が重たくなってしまいますが、それでも「ハイエナ・ファンド」と果敢にたたかっている人々も紹介されていますので、少しばかり救われもします。
(2016年10月刊。1800円+税)

使用人たちが見たホワイトハウス

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 ケイト・アンダーセン・ブラウワー 、 出版  光文社
アメリカの大統領宮殿はフランスにある古城とそっくりなのだそうです。
この本では、ホワイトハウスの建築デザインのもとになったのは、ダブリンに建つ18世紀のジョージアン様式の邸宅であり、現在はアイルランド議会議事堂として使われているレンスター・ハウスだとされています。どちらが本当なのでしょうか・・・。
そのホワイトハウスの仕組みと、そこに住んでいた大統領ファミリーの実情の一端が明かされています。
ホワイトハウスには132の部屋、147の窓、28の暖炉、4つの階段に3基のエレベーターがある。外からは3階建てに見えるけれど、実はふたつの中三階があり、6つのフロアーから成る。三階と四階がレジデンスと呼ばれ、大統領とその家族の居住スペースになっている。そこに総勢100人ものスタッフが働いている。
アッシャーは、案内係とか門衛と訳されるが、招待客や訪問客を案内する。チーフアッシャーの下で各部門の監督にあたる。メイドや執事(食事の給仕や銀食器の管理などを行う)がいる。ホワイトハウスには、96人の正規スタッフと250人の臨時スタッフが働いている。
スタッフ用のキッチンや貯蔵庫は地階に位置する。
大統領ファミリーのための食材は、身分を隠したレジデンスのスタッフが直接、食材を購入して安全を期す。何よりも匿名性が重要だ。ファーストファミリーのための食材だと誰も知らなければ、食材に毒を盛ろう考える者はいない。
レジデンス内で毒味役はいない。スタッフ自身が毒味役を兼ねる。そして、外で大統領が食事をするときには陸軍の担当者が厨房で監視し、準備や調理に目を光らせ、必ず毒味する。
クリントン大統領夫妻ほど感情的なカップルはいなかった。スタッフは、その激しい感情の起伏をたびたび目撃した。ホワイトハウスに働くことはローラースケートに乗っているようなものだった。
ジョンソン大統領はめったに満足せず、常に怒鳴り声を響かせていた。その気の荒さとあからさまな弱い者いじめのため、ジョンソン大統領と顔を合わせるのを避けるスタッフが多かった。
クリントン大統領が不倫騒動を起こしていたころ、クリントン大統領は、頭を数針も縫うケガをした。ヒラリーが、大統領を本で殴ったのは間違いない。
これって、有名な話ですよね・・・。ヒラリーは、よくカンシャクを起こした。この本にも、そう書かれています。
レーガン大統領は、任期中の75歳ころからアルツハイマー病の兆候が認められていた。そして、大勢のスタッフに囲まれて育っていく子どもたちがいました。思春期の難しい年頃をホワイトハウスで過ごすのは本人にとっても大変なことが多かったようです。
現在のキャロライン・ケネディ駐日大使もその一人です。いろいろ不祥事もあったようですが、すべては闇のなかです。口の固い人のみの職場なのです。
トランプ大統領が、子どもの学校の関係で、しばらくホワイトハウスでは単身赴任生活というニュースが流れていますが、当然なのでしょうね。
(2016年10月刊。2000円+税)

黒い司法

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 ブライアン・スティーヴンソン 、 出版  亜紀書房
この本を読むと、アメリカのような国になってはいけないと、つくづく思います。
アメリカは収監率が世界一高い。総受刑者数は1970年代の初めに30万人だったのに、今は230万人までふくれあがっている。執行猶予中や仮釈放中の人は600万人。
2001年にアメリカで生まれた子どもの15人に1人は、やがて刑務所に行き、今世紀中に生まれた黒人男性の3人に1人が将来投獄される計算だ。
いま死刑囚監房で刑の執行を待つ死刑囚は数千人。
25万人もの子どもたちが成人用の刑務所に送られて長期刑に服している。そのなかには12歳以下の子どもさえいる。3000人近い子どもたちが終身刑を言い渡された。
アメリカは、少年に対して仮釈放なしの終身刑を科すことのできた世界の唯一の国家だ。
薬物犯罪で刑務所に収監されている人は、1980年に4万1000人だったのが、いまでは50万人以上になっている。
アメリカの刑務所にかかるコストは、1980年に69億ドルだったのが、現在は800億ドル。そこで、民間の刑務所建設会社や施設サービス会社は、州政府や地元自治体に何百万ドルと献金して、新たな犯罪を創出し、より厳しい判決を言い渡し、塀のなかにもっと人を閉じ込めろと彼らを説得して、さらにもうけようとしている。
民間企業の利潤追求のせいで、治安を良くし、大量投獄のコストを減らし、そして何より受刑者の更生を促進するという方向に向かうべきサイクルが絶ち切られている。おかげで州政府は公共サービスや教育、医療福祉の予算を刑務所事業に割り振っている。その結果、かつてないほどの財政危機にある。
黒人の死刑囚は、そのほとんどが、全員白人かほぼ白人ばかりの陪審による評決を受けていた。黒人は陪審から排除されてきた。
アラバマ州は、すべての判事をきわめて競争の激しい党派選挙で選んでいる。このような州は、アメリカ全体で6州のみ。
海外の戦争からの帰還兵は戦争のトラウマをかかえて地元となり、刑務所行きになることが多い。1980年代半ばまで、刑務所人口の20%が戦争経験者だった。ひところは、この割合は低下していたが、イラク・アフガニスタン戦争の結果、再び上昇している。
子どもの死刑を認めている国は、アメリカのほか、いくつかしかない。
アラバマ州は、ほかのどの州よりも、世界中のどの国よりも人口あたりの少年死刑囚の割合が高い。アラバマ州では、殺人の被害者の65%が黒人であるのに対して、死刑囚の80%が白人が被害者となっている。
フロリダ州では、2010年までに、殺人ではない暴行罪で起訴された100人以上の子どもが仮釈放なしの終身刑を言い渡された。そのなかには13歳もいた。
13歳とか14歳で終身刑を受けているのは、全員が黒人かヒスパニック系。
アメリカでは、1994年から2000年にかけて子どもの人口が増加したにもかかわらず、少年の犯罪率は下がった。「スーパープレデター」(超凶暴な野獣)が到来するという予言はまったくの間違いだった。
アメリカの刑務所は、いまや精神障害者の「人間倉庫」と化している。大量投獄の主たる要因は誤った薬物政策と過重な量刑にあるが、貧困者や精神障害者をむやみに強制収容したことも、受刑者の記録的増加を招いた原因になっている。
2002年、連邦最高裁は知的障害者に対する死刑を禁止した。知的障害をもつ死刑囚は全国で100人。
2005年、連邦最高裁は子どもの死刑を禁じたが、そのとき死刑囚監房にいた子どもの既決囚は75人ほど。
アメリカでは、女性囚人が1980年から2010年まで646%も増えた。これは男性の増加率の1.5倍。全国で20万人もの女性が収容されており、100万人以上の女性が監視・管理下に置かれている。これらの女性受刑者の3分の2は、ドラッグや窃盗などの軽罪で入っている。女性受刑者の80%近くに未成年の子どもがいる。母親が収監されると、子どもたちは暮らしにくくなる。
いやはや、大変な国ですよね、アメリカという国は・・・。過度の重罰化は、こういう状況を生み出すわけです。寒々とした光景ですが、この本は、そのなかでも果敢にたたかっている弁護士によって書かれていますので、そこに救いがあります。
(2016年10月刊。2600円+税)

ペルーの異端審問

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 フェルナンド・イワサキ 、 出版  新評論
16世紀の南アメリカはペルーでのキリスト教会での異端審問の実情を掘り起こした本です。ポルノグラフィーでしかありません。性を必要以上にタブーとした教会は、そのなかではおぞましいとしか言いようのない実情だったようです。
教会は教えのなかで、セックスを人々の不安材料へとゆがめ、おとしめることで、社会に対して抑制やタブー、暗黙の懸念を強いる。しかし、それは支配の道具にほかならず、欲求不満と神経症の源と化す。
1629年のある日、リマの修道院で暮らしていた修道女が異端審問所に出頭してきた。背教および悪魔との契約、その邪悪な悪魔と肉体関係をもったことの罪を審問官に自供した。
事件はペルーの首都リマに不安を巻きおこした。悪魔というものが形態のない存在だとすれば、恐るべき堕天使ルシャーは、女たちとの性行為に及ぶため、墓地から掘り起こした遺体に乗り移っていることもある。
わずか150ページの軽い本です。16世紀ころの南アメリカでの出来事ですが、ヨーロッパでも同じようなものだったのではないでしょうか。宗教に名をかりてインチキなことをするのは古今東西を問わないですね。
(2016年7月刊。1800円+税)

錆と人間

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 ジョナサン・ウォルドマン 、 出版  築地書館
サビをめぐる面白い話です。
アラスカには1300キロの長さの原油を運ぶパイプラインがある。そのパイプラインの中を錆探知のロボットが走っている。すごいロボットです。長さ5メートル、重さ4.5トンというのです。それをどうやってパイプラインの中を動かすのでしょうか・・・。並々ならぬ工夫と努力が必要なようです。そして、それをクリアーしてこそアラスカの地に人間らしい生活ができるというわけです。そこには、どうやら日本の科学技術も貢献しているようなのです。なにしろ、敵はサビです。どうやって見つけ、また、その手当てをするのが、難問ぞろいでした。
サビのおかげで、原子力発電所では少なくとも数人が死亡し、あわや原子炉がメルトダウンを起こしようになった。核廃棄物の保管も困難である。
世界最強のアメリカ海軍にとっての最大の脅威は、なんとサビなのである。そして、世界最強のアメリカ海軍は、サビとの戦いに敗北しつつある。
給水本管を守るため、水道水にも腐食防止剤が含まれている。水を陽イオン満載にして、腐食性を弱めようとしている。
宇宙にすらサビがある。そこでは分子酸素ではなく、原子状酸素があるからだ。ほとんあらゆる金属が腐食の餌食になる。
ニューヨークの港にある自由の女神像も骨組みがサビついていた。女神像にある1万2千個の骨組み用リベットの3分の1は緩んでいるが、あるいはなくなっていた。骨組みの約半数が腐食していた。
異種の金属同士が触れると腐食が起こる。それは、電池が機能する仕組みによる。銅と鉄の間に水分があるのは、こつの金蔵が接触しているのと同じほどの問題がある。結局、塗料のせいで、女神像は巨大な電池と化していた。
高さ91メートルの女神像の修復のためにカンパで集めた14億ドルがつぎ込まれた。
食品缶詰工場で働く人々の乳ガンの発症率は一般集団の2倍になっている。それも閉経前なら5倍である。
防食技術者の平均年収は10万ドル。防食技術者の11%は年に15万ドルを稼いでいる。年収20万ドルをこえる人も4%いる。
サビとは、金属原子が環境中の酸素や水分などと酸化還元反応を起こすことで生成される腐食物。
サビについて、人間との深い関わりを認識しました。
(2016年9月刊。3200円+税)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.