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カテゴリー: アメリカ

マフィア国家、メキシコ麻薬戦争を生き抜く人々

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 工藤 律子  、 出版  岩波書店
いやあ、正直言って、メキシコがこんなに怖い国だとは知りませんでした。
トランプがメキシコ国境との間に壁を築くというのは悪い冗談だとしか思えませんが、メキシコ政府がそんなに腐敗しているのかって、想像を絶します。
日本の官僚制度もアベ政権の人事局長システムで悪いほうに変容されつつありますが、それでも前川さんのような骨のある人を支持する土台がまだあると信じています。メキシコには、残念なことにそれがないようです。
メキシコでは、政府が深刻な腐敗をかかえ、麻薬マフィア国家と化している。連邦政府、地方政府、あらゆるレベルで多くの人間が犯罪組織とつながっている。その結果、2006年12月から2015年8月までの行方不明者は3万人、殺害された人が15万人。その犯罪の9割は裁かれない。
仕事帰りの若い女性、14歳から22歳前後の貧困層の女性が誘拐されたり、失踪される事件が多発している。人身売買の犠牲となっている。
麻薬カルテルという呼び名は、今やまとはずれだ。現在では、犯罪の多国籍企業化し、世界54ヶ国を舞台として、多様な犯罪ビジネスを展開している。麻薬、武器、石油、臓器売買、DVD,CDの海賊版販売など・・・。
犠牲者が出ても、分裂した国家内部の汚職と腐敗のために、罰せられるべき人間が罰せられない。メキシコでは、誘拐・失踪事件の99、9%が未解決。真犯人は、権力内部の協力者や仲間に守られ、法で裁かれない。
2016年にメキシコで起きた殺人事件は2万3000件。これは、内戦中のシリア(6万件)に次いで、世界で2番目に多い。
その主犯が麻薬カルテルと断定できないところにメキシコの抱える問題の深刻さがあります。つまり、軍や連邦警察も、「殺人」に加わっているようなのです。これでは、国民は誰を信じていいのか分かりません。困ってしまいます。
そして、メキシコの犯罪多発に「加担」しているのがメディアです。権力の言いなりでしかなく、言論の自由がない。
日本のマスコミもアベ政権の顔色をうかがうばかりになってはいますが、ときとして真実を伝えようとしているところが違います。
暴力に暴力で立ち向かっても解決にもならないことを学んだという元ギャング団リーダーの言葉が紹介されています。本当にそのとおりです。
こんな危険なメキシコに現地取材した著者の勇気に心より敬意を表します。これからも生命・健康に留意しつつ、適切な情報を日本に伝達していただくことを期待します。
(2017年7月刊。1900円+税)

自発的対米従属

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 猿田 佐世 、 出版  角川新書
核兵器禁止条約に日本政府が反対するなんて、信じられません。
被爆者代表は、安倍首相に対して、「あなたは、いったい、どこの国の首相なんですか?」と尋ねました。公衆の面前で糾弾された安倍首相は顔色を失い、何も返答することができませんでした。
アメリカが反対しているものに日本政府は反対できないということです。なんという情けない首相でしょうか。まさしく、アメリカのポチ的存在です。
美人弁護士として有名な著者は、アメリカで一貫してロビー活動を続けています。アメリカの国会内外で人脈を築いていて、沖縄県の代表がアメリカへ行くときなどには、大いに力を発揮しているようです。
著者が事務局長をつとめるシンクタンク「新外交イニシアティブ」には、私もほんの少しだけカンパしています。
アメリカの対日影響力は常に強力なのに、アメリカの日本に対する関心は低い。
アメリカ国内で対日外交に関心をもち、実際に影響力を有する知日派のメンバーは、せいぜい最大で30人ほどでしかない。中東やヨーロッパは一筋縄ではいかない国が多いけれど、日本はアメリカの言うことに基本的に従うので、新たなる対日政策を打ち出す必要もなく、少数の専門家で足りるから。
限られた日本の情報だけが、限られたアメリカの相手に届いているだけ。日本とアメリカでは、きわめて細いパイプでしかない。
日本の財界のなかには、アメリカに従っているふりをして、逆にアメリカを利用しているという考えもあるようです。しかし、それは結局、アメリカの手のひらの上で踊っているにすぎません。自主独立国家として、あるまじき姿です。
その一例がオスプレイです。また、アメリカ軍人はパスポート提示不要で日本にやってきて、高速道路利用などはタダという特権をもっています。日本の首都圏に広大なアメリカ軍基地があるなんて、まさしく植民地そのものです。
アメリカでは海兵隊廃棄論さえ声高に叫ばれているのに、日本の沖縄では、あたかも海兵隊の存在が日本の防衛に役立っているかのような錯覚が依然としてまかり通っています。アメリカと日本の関係を直視し、本来のあるべき姿に戻すために、著者の果たしている役割はとても大きいと思います。ますますのご活躍を心より祈念します。
(2017年3月刊。860円+税)

超一極集中社会・アメリカの暴走

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 小林 由美 、 出版  新潮社
今の社会は、人々の格差が大きくなる一方です。これが絶望と社会不信を生み出しています。ある高校で、国政選挙で投票に行くかどうかを生徒にたずねたところ、忙しい、分からない、興味がないということで、誰も積極的に投票所に行くとは答えなかったそうです。ええっ、ウソでしょう、と思わず叫びたくなりました。
私はすべての選挙で棄権したことは一度もないことが自慢の一つです。選びたい人がいないときには、×印を書いて無効票を投じることにしています。
世界のビリオネア(1000億円以上の純資産をもつ人)が世界中に1810人いて、その人たちの有する純資産は、合計650兆円にもなる。日本のGDPは500兆円なので、日本の全国民が1年間働いて生み出した総所得を上回る額の純資産を2000人ほどの人々がもっていることになる。日本のビリオネアは27人。これは、世界で17位。
日本はGDPではアメリカ、中国に次いで、世界第3位だ。
アメリカでは、1980年代以降、上位0.1%の所得は増え続け、それ以下の世帯では、所得がほとんど増えていない。
アメリカのエリート大学に入る門は、ますます狭くなっている。エリート大学に入るためには、家族ぐるみの長年の努力が求められる。これは、ユダヤ系と中国系の家庭で顕著だ。
エリート大学に入るには、成績がトップクラスだというだけではなく、スポーツが得意なうえ、課外活動で得意なものがあったり、積極的なリーダーシップを発揮したという実績が求められる。だから、親は子どもが3歳か4歳のときから家庭教師をつけたり、クラブに参加させたりしている。年間300万円以上の授業料を支払って幼稚園から私立学校に通わせるのは、教師や教育内容・同級生そして家族の質に加えて、同窓会活動が活発なため、生徒の進学にも大いに役立つから。
大学4年間の教育費が30万ドル(3000万円)かかる。労働していたら得べかりし給料による所得をあわせると、大学4年間のコストを取り戻すためには10年以上かかる計算だ。アメリカでは、大学に進学する人の60%以上が学生ローンを借りていて、4300万人をこす。
アメリカの経常収支が改善したのは、石油の輸入が量・金額ともに大きく減ったことが最大の理由。
アメリカの上場企業の総数は1996年のピークに8090社だったのが、2015年に4381社と、ほぼ半減した。アメリカでの企業集中は異常に進んでいる。そして、巨大企業が、さらに巨大化している。
アメリカの医療システムは全体として救いがたい泥沼。請求書を受けとるまで、いくらの費用がかかるのか見当がつかない。とんでもない請求書が来ても払う以外に選択肢はない。病院は医療産業のなかで、もっとも立場が強いので、その価格付けは一方的。泥沼に陥らないためには、とにかく健康を維持して近寄らないようにするのが一番。あとは、たたかい、交渉する覚悟でのぞむしかない。
アメリカ国民は、富の集中や金権政治にうんざりしている。
アメリカの権力者もお金も、東海岸と西海岸を飛行機で往復するだけで、その空路の下にある大陸中央部は完全に無視され、馬鹿にされている。
絶望の先に行きのびるために・・・、とありますが、明るい未来はあまり見えてきません。ビッグデータを活用したらいいともありますが、私には無縁な話でしかありません。
アメリカの現状分析の一つとして読んでみました。
(2017年3月刊。1500円+税)

凛とした小国

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 伊藤 千尋 、 出版  新日本出版社
コスタリカ、キューバ、ウズベキスタン、ミャンマーの良さは日本も大いに学ぶべきだと思いました。とりわけ世界有数の自然環境保全国でもあるコスタリカの話は感動的です。心が揺さぶられます。
コスタリカは、「世界で一番、幸福な国」で1番にあげられている。日本は、51位でしかない。コスタリカは、1949年、日本に次いで世界で2番目に平和憲法をもった。日本と違うのは、本当に軍隊をなくしてしまったことです。それまで、軍事費が国の予算の3割を占めていたのを、そっくり教育費に充てました。教育も医療も無料。兵舎(参謀本部)は博物館になりました。軍艦も、戦闘機も戦車ももっていない。警察と国境警備隊はある。ただし、いざとなれば、自衛のための軍隊は結成できることになっている。
コスタリカは、周囲の国で内戦が続いたけれど、幸い平和な国であり続けた。「自分たちにとってもっとも良い防衛手段は、防衛手段をもたないこと」
私は、まさしく本当だと思います。決して「平和ボケ」のコトバではありません。
コスタリカでは、大統領選挙があると、小中学校はもちろん、幼稚園児も模擬投票する。
コスタリカでは、小学校に入ると、子どもたちは、「だれもが愛される権利をもっている。この
国に生まれた以上、あなたは政府や社会から愛される」と教えられるそうです。
日本でも道徳教育のときに、これを教えたらいいと私は思います。
そして、コスタリカでは憲法訴訟が1年間に2万件近く提起され、最終的に2割近くが違憲
だと判断されるといいます。これはともかくすごいことです。
 コスタリカは周辺国からの難民もすべて受け入れており、400万人だった人口が500万人になったそうです。信じられない数字です。
 コスタリカの人々は、幸せな社会を自分たちでつくりあげているという意識にみちているようです。すばらしいです。
 先日の国連における非核平和条約を制定する議会でもコスタリカの女性が委員長として大活躍していましたよね。日本も平和憲法、9条をさらに実現する運動が必要だと思います。
 ほかのキューバ、ウズベキスタン、ミャンマーについては、ぜひ、本書を読んでみて下さい。読んで決して損はしない本です。
(2017年5月刊。1600円+税)

スパイの血脈

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 ブライアン・デンソン 、 出版 早川書房
信じられない実話です。アメリカ軍の兵士がCIAに入り、アメリカという国を守って活動しているうちに、家族(子ども)を守るためと称して、お金のためにソ連(ロシア)にCIAの機密情報を売り渡し、それが発覚して刑務所に入ったあと、今度は、その息子が父親に頼まれて同じようにロシアに父親からの情報を流して大金をもらっていたというのです。この息子もアメリカ軍の兵士でした。いやはや、スパイが父親相伝することもあるのですね。信じがたい実話です。
父親のジム・ニコルソンは1980年にCIAに入ったあと、マニラ、バンコクそして東京で勤務したあと、ブカレスト支局長に昇進した。そして、1994年、クアラルンプール駐在時にロシアの情報部員に接触し、情報を売り渡すようになった。そのあと、CIAの訓練所の教官になり、監視のためCIA本部につとめていたところを1996年に逮捕され、翌1997年に懲役23年7ヶ月の判決を受けて刑務所に収容された。
ここで物語が終わらないところが本書の目新しさです。父親がスパイとして逮捕されたとき12歳だった息子のネイサンを、受刑して7年後に、父親は獄中からロシアに連絡することが出来たのです。それほど、父子の関係は親密でした。ちなみに妻(母)とは離婚して音信不通、他の姉兄は関わってはいません。
いったい、刑務所に入れられた元スパイのもたらす情報がいかほどの価値があるものなのか、門外漢には理解できないところですが、ロシアのほうは気前よく100万円単位で息子に報酬を支払っていました。つまり、スパイを摘発したときのCIAの人事・役割分担などについて知ることはロシアにとっても有益な情報だったということです。
それにしても、CIAにはロシアに情報を売るスパイがいて、ロシアのKGBにもアメリカへ情報を流すスパイがいたというのに改めて驚かされます。いずれも、イデオロギーより、金銭目当てのことが多いようです。
本書の主人公の父親も妻と離婚し、子育てにお金がかかり、新しい女性との交遊のためにもお金がほしかったようです。
父が、子どもたちを養うためにロシアのスパイになったと高言したとき、それを聞かされた当の息子はどのように受けとめるのでしょうか・・・。
息子のネイサンは実刑判決ではなく、5年間の保護観察と退役軍人省での100時間の社会貢献活動が命じられただけだった。
CIAとFBIの関係、そしてKGBとその後身の関係も興味深いものがあります。
スパイする人、その家族、その監視をする人、その家族、いずれもフツーの平凡な家庭生活は保障されていないのですね。大変な職業であり、仕事だと思いました。だって、対象者の会話を24時間ずっと盗聴して異変をつかむのが仕事だというのって、やり甲斐というか、生き甲斐を感じるのでしょうか・・・。私にはとても我慢できませんね・・・。
人間の本質を知ることのできる貴重な本だと私は思いました。
(2017年5月刊。2000円+税)

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