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カテゴリー: アメリカ

ベストセラーで読み解く現代アメリカ

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 渡辺 由佳里 、 出版 亜紀書房
アメリカでベストセラーになっている本を紹介し、解説している本です。とても勉強になりました。なるほど、アメリカではこんな本が今売れているのか、その理由はこういうことなのか…、よくよく理解できました。
著者は日本でアメリカ人と知りあってアメリカに渡った日本人です。私と同じ活字中毒症だそうですが、私と違うのは、もちろん私は日本語の本ばかりですが、著者は英語の本が中心ということです。
アメリカのベストセラーを紹介しても、広告料でお金が入ってくるシステムはとっていないそうですから、このコーナーの私とまったく同じです。といっても、実は、私だって糸井重里や松岡正剛のように好きな本を読んで、その本の書評を書いていたら、お金がガッポガッポ入ってくることを夢見て久しいのですが…。残念なことに、どこからもそんな座敷にお呼びがかかりません。いったい、この書評って、毎日、何人くらい読んでいるのでしょうかね…。
 著者は、2009年から、「これを読まずして年は越せないで賞」というものを始めたとのこと。最近よんだアメリカのベストセラー本、『ザリガニの鳴くところ』も紹介されているかと思ったのですが、残念ながら本書で紹介されている65冊のなかには入っていませんでした。
 アメリカのトランプ大統領は知性がまったく感じられませんが、群集心理を察知する点では天賦の才をもっている。小学校レベルの単純なコトバだけを使ってオバマをはじめとする「敵」をけなしてきた。トランプは「繁栄に取り残された白人労働者の不満と怒り」そして「政治家への不信感」をかぎつけ、それに乗った。
日本の安倍首相と、その取り巻きの官僚たちも知性のなさでは際立っています。といっても、官僚のほうは、灘高・東大そして経産省という超エリート官僚たちではあるのですが、その「バカ」さ加減にはつける薬もありません。そして、マスコミは、いつだって「安倍首相を追い詰め切れない野党の不甲斐なさ」を強調して、安倍政権を裏から下支えするばかりです。「首相官邸記者クラブ」って、出世の野心ばかりの「無能」記者の吹きだまりなのかと苦々しく思うしかありません。
トランプ支持者の集まりに行くと、みな楽しそうだというのに驚きます。努力はしないが、馬鹿にはされたくない。そんな歪んだプライドを、無教養と貧困とともに親から受け継ぐ。彼らにとってトランプは、自分たちに分かる言葉でアメリカの問題を説明してくれた人物なので、目を輝かせ、ウキウキした口調でトランプを語る。この本で紹介された『ヒルビリー・エレジー』(光文社)は、今のアメリカで、どんな人がトランプ大統領を支持しているのかを具体的に明らかにしてくれる本です。このコーナーでも既に紹介しています。
アメリカの政治をコーク兄弟のダークマネーが動かしているという本が紹介されています。コーク兄弟って、日本ではほとんど知られていませんが、石油成金でコーク財団をつくって、ヘリテージ財団などの保守系シンクタンクを支援し、ティーパーティーなどを動かしてきた。日本でも、日本会議を動かし、支えている超金持ち集団がきっといるんでしょうね。
トランプ大統領の言動は、自己愛性パーソナリティ障害、精神病質が混ざりあったときの悪性の自己愛だと診断されています。
深刻なソシオパス(社会病質者)の多くは、社会から脱落するが、チャーミングで思いやりのあるフリができるソシオパスも存在する。そんな人は人間の操縦にたけているので、成功していることが多い。まさしくトランプにぴったりの診断です。
では、わが安倍首相はどうなんでしょうか…。コロナ禍でほとんどの国民が大変な「国難」にあっているのに、国民の前にはほとんど姿を見せず、自宅にこもって愛犬とたわむれているのが実態。それなのに右翼雑誌は「不眠不休でがんばる我が安倍首相」というタイコ持ちの記事を堂々と書きつのっています。
マティス元国防長官は、トランプ大統領は小学5年生レベルで振る舞うし、その程度の理解力しかないと言う。トランプは病的な嘘つきで、証拠は前にあっても平然と嘘をつく。
われらが安倍首相夫妻とあまり変わらないレベルだということですね、これって…。
トランプ大統領にとって、日本と安倍首相は、話題にする必要もないほど軽い存在でしかない。
そりゃあ、そうでしょうよ。だって、アベはゲタの雪なんですから。いつだって、どんなときだって、アメリカにさからうことなく、自分と取り巻きの利益しか考えていないのですから…。
ブッシュ元大統領は、オバマ大統領を一度も公の場で批判したことがない。ところが、トランプについては同じ共和党なのに、公の場で批判した。
私はヒラリー・クリントンの本もミシェル・オバマの本も読みましたが、この本で紹介されているとおり、ミシェル・オバマの本のほうが、200万部も売れるほど面白いと思いました。
ミシェルは、奴隷を先祖にもつ黒人であり、シカゴのウェストサイド地区で育ち、ついにはプリンストン大学そしてハーバードロースクールで学んだあと、シカゴのローファームでオバマに出会ったのでした。
アメリカで黒人の親は、わが子に、「おもちゃでも銃を持ってはいけない。フード付きのジャケットは着てはならない。警官にどんなに侮辱されても、言い返してはいけない」と教えなければいけない。これを守らないと、射殺されてしまう危険がある。
アメリカは、黒人をモノとして保有し、使い取引することで富と力を得た図だ。その歴史は、今なお、白人と黒人とのあいだに深い溝をつくっている。
アメリカをす知るために欠かせない本がたくさん紹介されていて、勉強になりました。
(2020年3月刊。1800円+税)

アメリカを蝕むオピオイド危機

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 ベス・メイシー 、 出版 光文社
日本でも、ひところほどではないように実感するのですが、覚せい剤使用事件をときどき弁護します。先日は久しぶりに大麻事件を扱いましたし、覚せい剤に似た新種の薬物事件も扱ったことがあります。
ところで、アメリカの薬物汚染は日本よりはるかに深刻な状況にあるようです。
最近、復活を遂げたタイガー・ウッズもオピオイド中毒をなんとか脱出した奇跡的な存在だということも、本書を読んで知りました。
アメリカ全土に広がったオピオイド禍は、今や過剰摂取により年に5万人もの生命を奪い、400万人もの依存症患者をつくり出している。
薬物の過剰摂取は、過去15年間に30万人のアメリカ人の命を奪い、次の5年間にさらに30万人以上が死亡すると予測されている。今や薬物の過剰摂取による死者は、銃や交通事故の犠牲者を上回っていて、50歳未満のアメリカ人の死因のトップになっている。そして、その増加のペースは、HIVの最盛期を上回る。
今日のアメリカでは、中流や上流階級に麻薬が蔓延しており、これこそが切迫した絶望的な問題となっている。
アメリカ人が全般的に早死になっているのではなく、アメリカ人の白人だけが明らかに若くして死んでいる。
アメリカでは医薬品の広告費は、1995年に400億円ほどだったのが、3年後の1998年には1430億円へと急増した。
2000年、製薬業界は、医師への直接業だけで4444億円をつかった。ゴルフ接待、無料ランチなどなど…。パデューという製薬会社はオーナーのサクラー一族に支配されていた。このパデューは、オキシコンチンの販売で3080億円の利益を得ていた。2006年の1年だけで654億円も稼いだ。その結果、サクラー一族は、1兆5400億円もの資産を有し、メロン家やロックフェラー家のような名門一族を上回った。そして、サクラー一族は、博物館や大学に次々に多額の寄付をしていった。
オピオイド関連の犯罪を撲滅するため、アメリカ全体で8360億円もの大金をつぎ込んでいる(2013年)。
ケータイの普及によって、屋外での取引市場はなくなり、ガソリンスタンドやショッピングモールなどの駐車場など、人目のつかないところでの麻薬の売買・受け渡しが可能になっている。私もパチンコ店の店先の路上での取引を「目撃」したことがあります。
アメリカには薬物裁判所なるものがあるそうです。薬物常習性や再発を防止するための治療システムの一部です。被疑者が1年から1年半の再生プログラムに参加し、完了したら、起訴を取り下げるのです。再犯の可能性は半分から3分の1に下がっているとのこと。日本でも必要なシステムと思います。でも、そのためには人的体制が不可欠ですので、司法予算の拡充が前提として必要になります。
アメリカの黒人男性の3人に1人が刑務所に収監されている。出所しても黒人は二級市民の烙印を押され、まともな職につけないため、再犯の可能性は高い。薬物事犯の4分の3は黒人とヒスパニック系が占めている。受刑者の半分を占める薬物事犯者の再犯率は75%にも達している。
製薬会社(パデュー・ファーマ社やジョンソン・エンド・ジョンソン社)は、あまりにも巨大なもうけをあげている(売上額は年に9兆円近い)ため、巨額のはずの賠償額629億円さえ、かすんで見える始末だ。
もうけるためには何をしてもいいかのように行動している製薬会社は、ユダヤ人を大量殺害したナチスと同じ発想で行動しているとしか思われないのですが、それがユダヤ系のサクラー一族だというのですから、世の中は魔訶不思議です。
(2020年2月刊。2200円+税)

アメリカ白人が少数派になる日

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 矢部 武 、 出版 かもがわ出版
今から25年後の2045年、アメリカは白人が半分以下の49.7%、有色人種が半分をこえて50.3%になる。このとき、ヒスパニックは24.6%、黒人13.1%、アジア系7.9%そして多人種3.8%。というのも、白人は高齢化がすすみ、2025年以降は自然減少によって減り続ける。これに対してヒスパニックとアジア系は86%の増加率を示し、黒人系は34%。
白人優位を守るため、1882年に中国人排斤法、1913年に外国人土地法、1952年に移民国籍法(アジア人への移民制限)が制定された。
アメリカの白人には、アメリカは白人がつくった国だというホンネがある。そして、白人の特権を失うことへの不安と恐怖がある。白人の特権とは…。
① 車を運転しているとき警察官に呼びとめられたり、納税申告で税務署から呼び出されても、白人だからということはないと確信できる。黒人は黒人だから呼びとめられることがあるが、白人はそれがない。
② 公共の施設の利用を拒否されることがない。黒人だと、実際には空きがあっても「満 室だ」と言って断られる。
③ 小切手やクレジットカードを使ったり、現金払いするとき、何の不都合もない。黒人だと、カードが念入りにチェックされる。
④ 店でショッピングしているとき、警備員に万引きしないか付け回されたりすることはない。
⑤ お金さえあれば、好きなところに家を買ったり、アパートを借りることができる。黒人や アジア系は、白人密集地域に住もうとすると拒否される。
⑥ メディアでポジティブかつ好意的に報じられることが多い。黒人はネガティブに報じられることが多い。
⑦ 白人は国の創始者としてその功績が紹介される。学校の教科書も白人の視点で書 かれている。
⑧ アファーマティブ・アクションがあるため、個人の能力ではなく、人種のおかげで採用されたという陰口を言われることがない。
以上のように、アメリカでは白人に有利な社会システムができているため、白人は有色人種ほど努力しなくても、ある程度の成功をおさめることができる。
なーるほど、これはたしかに「白人の特権」と言えるものですよね。
トランプが前回の大統領選挙で勝ったのは、有色人種の人口増加によって白人が少数派になる現実を認識した白人層の不安があり、トランプがそれをうまく利用したので、トランプを支持することにつながった。
なるほど、なるほど、そうだったんですか。それでトランプが今でも白人優位をあからさまに唱えて、自分への支持をつなぎとめようとしているのですね。
あんなひどい嘘をまきちらしても、トランプの支持率が33%を下がらないのは、それだけ熱烈なトランプ支持者が多いことを意味している。そして、人種差別は巧妙化している。また、メディア業界は、白人男性がほとんど牛耳っている。
トランプのアメリカを現状分析した本です。一読に値します。
(2020年5月刊。1800円+税)

シークレット・ウォーズ(下)

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 スティーヴ・コール 、 出版 白水社
2001年の9.11同時多発テロ事件のあと、アメリカは「テロとの戦い」を宣言して、アフガニスタンへの攻撃を開始した。タリバンとアル・カイーダはたちまち敗走し、カルザイが大統領になった。しかし、20年たった今も、アフガニスタンは安定とはほど遠い状況にある。
オサマ・ビン・ラディンもその後継者たちも、アメリカは殺害には成功したものの、アル・カイーダは世界中に拡散し、タリバンも復活して南部などで大きな存在感を示している。
なぜ、そうなのか、本書はアメリカの軍事戦略、CIAの暗躍などに焦点をあてて解明していきます。ただし、日本とアフガニスタンとの関わりはまったく欠落しています。ペシャワール会の中村哲医師の取り組みなど、一言も触れられていません。すべては軍事と謀略の観点から物事をみようとしています。そこに「ワシントン・ポスト」支局長というアメリカのジャーナリストの限界があると思いました。それでも、アフガニスタンに派遣されたアメリカ兵の手記と、その悲惨な実情は恐るべきものです。
カンダハルに兵士を送り込むのは、1920年代のシカゴに兵士を送り込むようなものだ。当時のシカゴ市政はアル・カポネに支配されていた。
アメリカ軍の小隊の存亡は、もっとも経験豊富な軍曹にかかっていた。第320野戦砲兵連隊第一大隊の第1小隊は当初19人の兵士がいたが、3度にわたる哨戒活動に従事したあとには6人しか残っていなかった。別の中隊は、戦死、四肢切断、脳震盪(のうしんとう)、その他の負傷により人員の80%を補充しなければならなかった。
2010年の夏、第二旅団戦闘団に対して、ブービー・トラップ型や圧力反応型の爆弾攻撃の頻度は、平均2日に1回で、65人の兵士が命を落とし、477人の兵士が負傷した。
アメリカ軍だけでなく、フランス、オーストラリア、イギリス軍の兵士が、ともに任務に取り組んでいるはずのアフガン国軍の兵士や警察官によって殺害される事件が相次いで発生した。
はじめから侵入目的で、入隊したアフガン国軍兵士(殺害事件をおこした兵士)は、5人のうち1人だけで、残りは入隊したあとでタリバンに加わっている。すなわち、外部から潜入したのではなく、途中で立場を変えたのだ。
「グリーン・オン・ブルー」という言葉がある。グリーンはアフガン国軍を、ブルーはアメリカ軍やISAFを意味する。アメリカ軍やヨーロッパの兵士は友軍であるはずのアフガン国軍兵士に殺害される事案のことで、2010年ころ急増した。
アフガン国軍の兵士は、アメリカ軍やISAF軍兵士に対して怒っていた、傍若無人な態度、襲撃を受けたときの容赦ない反撃、あまりに多くの民間人殺害、アフガン人女性を尊重していないこと…。アメリカ兵は多くの一般人を殺す。そして謝罪する。しかし、また同じことをする。我慢できるわけがない…。
2011年5月1日、アメリカはパキスタン領内で、パキスタンの了解を得ることなくオサマ・ビン・ラディンの自宅を急襲し、ビン・ラディン本人と息子などを殺害し、遺体を持ち去った。しかし、その後もアル・カイーダもタリバンもしぶとく生きのびて今日に至っている。
アメリカ軍のオサマ・ビン・ラディン殺害は明らかに国際法にも反する違法な殺人事件です。それを陣頭指揮したオバマ大統領の法的責任は明らかだと思います。
無人機による後継者の暗殺にしても、世間受けするだけで、何らの解決にもなっていないこともまた明らかではないでしょうか…。
オバマ大統領は、アフガン国軍を養成して、治安維持をまかせてアメリカ軍は撤退するという方針だったようです。でも、アフガン国軍の養成は形ばかりで、うまくいっていません。
やはり、根本的な発想の転換が必要なのだと思います。つまり、中村哲医師のような、武器に頼らず、現地の人との対話で少しずつ社会生活を地道に再建していく努力です。軍事力一辺倒では、かえって現地に混迷をもたらすだけだということを本書を読んで改めて痛感しました。
下巻だけでも480頁もある長編力作です。ぜひ図書館で借りて、お読みください。
(2019年12月刊。3800円+税)

島を救ったキッチン

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 ホセ・アンドレス 、 出版 双葉社
カリブ海にある島、プエルトリコってアメリカの一部なんですね。
そのプエルトリコが2017年9月下旬にハリケーン・マリアに襲われ、甚大な被害を受けたとき、水と食料不足に悩む島民に温かい食事を提供したシェフの話です。
なるほど、シェフってすごいことが出来るんですね。この本を読んで、よく分かりました。
著者のホセ・アンドレスは、アメリカで高級レストランを何軒も経営し、メディアによく出るし、大学で講義もするシェフ。2019年にはノーベル平和賞にノミネートされたとのこと。
腕のいいシェフは、腕のいい経営者でなくてはならない。従業員、注文、食材、在庫といったものすべてを管理しなくてはならない。これらを適切に管理できなければ、どんなに腕のいいシェフだろうと店はつぶれてしまう。レストラン経営というのは、とても複雑な仕事なのだ。
この能力が被災地では大いに役立つ。また、シェフは、混乱から秩序を生み出す方法も知っている。
しっかり計画を立ててからやったほうがいいとさんざん言われた。でも、最初からきちんとした計画は立てなかった。島の人たちが飢えているときに、いちいち計画を立てていたら何日も無駄にしてしまっただろう。
人間は飢えると、店に押し入って食べ物を盗むだろう。国土安全保障省の隊員たちは、料理を配ることで、自分たちの仕事がずいぶん楽になると言った。相手に銃を向けるより、サンドウィッチを差し出す方がいいに決まっている。
ハイチとヒューストンの災害の現場に行った経験から、サンドウィッチこそ、手早くつくれて、被災者にとっても都合がいいことを知っていた。それだけでカロリーがたっぷりとれて、保存もできるし、持ち運びしやすいからだ。では、どんなサンドウィッチを…。
スライスした白いパンにハムとスライスチーズとはさむ。しかし、主役はマヨネーズ。隠し味としてケチャップ、ときにマスタードを混ぜ込んだマヨネーズを、これでもかというくらい、たっぷり入れる。これがポイント。そして、気温の高い島をあちこち運んでまわるうちに中身が乾燥しないため、四角い硫酸紙でサンドウィッチをひとつずつ包んでおく。
そして、もう一つ。栄養満点で、舌も大喜びのスープ、サンコーチョをつくった。とろみのあるスープとシチューの中間。何種類もの肉をたくさん入れ、トウモロコシやいろいろな野菜と一緒に煮込む。プエルトリコの人は、このサンコーチョを食べると、みんなお祖母ちゃんのことを思い出し、自然に笑顔になる。
3ヶ月間で、のべ300万食を著者たちは島内いたるところに届けた。
アメリカの連邦緊急事態管理庁(FEMA)はどうしたか。軍の携行食MREを島民に配った。このMREは、3年間は保存できるもので、クラッカーとクッキーもついている。カロリー総量は1250カロリー、脂肪が36%、糖質が51%。ところが、繊維がとても少ないので、何日か食べていると、ひどい便秘に苦しむことになる。
シェフである著者は、料理はただの栄養補給の方法ではないと主張する。それは、人に力を与えるものなのだ。これに対して、MREは、高温にも低温にも、そして洪水にも耐えられる。しかし、味のほうは、袋の中身を三つも食べれば、あとはもう見る気もしないという代物だ。MREは、決してホンモノの食事の代用にはならない。
著者がFEMAと契約できるようにしようともちかけた人間が登場する。手数料は1食につき1ドル。半分にしても100万食を達成したら、50万ドルがその男の懐に入ることになる。
FEMAは、小さな請負業者と契約した。3000万食を配ることで、契約金は1億5600万ドル。この業者は食品製造の経験はなかった。従業員はわずかに1人。
アベノマスクを製造委託した会社が同じでしたよね。実績もない会社になぜか突然、数千万円の注文がアベの政府が出したのでした。また、GOTOキャンペーンのことも、必要性も実効性も疑われているのに、その実施のための手数料として3千億円が支払われるというのです。災害という人の不幸を食いものにする構造というのは、アメリカでも日本でも同じなんですね…。でも、こんなことって、許せません。
アメリカ赤十字社も批判されています。赤十字社は6550万ドルもの義援金を受けとった。しかし、うち3000万ドルしか使わず、3550万ドルは残り、そのうち9%、320万ドルは自らの運営資金にまわした。
シェフの著者たちは、2万人のボランティアとともに、24ヶ所の厨房で300万食の温かい食事をつくりあげ、7台のフードトラックなどで配ってあるいた。
なんとすばらしいことでしょうか。信じられないほどの創意と工夫が生かされて、成し遂げられた成果です。読んでいて胸が熱くなると同時に、官僚組織の金もうけ本位のすすめ方に改めて疑問をもちました。
(2019年12月刊。1900円+税)

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