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カテゴリー: アメリカ

ジャニー・オブ・ホープ

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 坂上 香 、 出版 岩波現代文庫
 1999年1月に刊行された本を、新たに最新の状況を紹介する末尾の文章を付加して出来ている本です。
 世界では死刑廃止が圧倒的で、EU加盟の条件にもなっています。アメリカですら死刑廃止へ動きつつあります。日本は完全に遅れています。そのなかで弁護士会は死刑廃止を求める声を上げています。
 アメリカでは年間100人近くが処刑されていましたが、今では激減しています。既に死刑廃止を決めた州は11州から23州へと増え、さらに6州では知事が執行を停止しています。これに対して日本では今も100人近い死刑囚がいて、処刑の日を日々、恐れながら過ごしています。
私は長い弁護士生活のなかで1回だけ死刑判決を受けた事件の弁護人だったことがあります。まったく気持ちのいい判決ではありません。そして、死刑(処刑)に従事する拘置所の職員や立会検察官の心労はすさまじいものがあると考えています。私は国家が人を殺していいとは考えられません。
 アメリカでは、死刑囚は黒人に偏っている。そして、死刑囚の多くは、幼少期に深刻かつ複数の虐待を常態的に体験している。学校でも深刻な問題行動を起こしていた。
 カリフォルニア州では、州知事が死刑の刑場そして死刑囚監房を閉鎖して、一般受刑者と同様に処遇されることになったようです。私も、これはいいことだと思います。生きてる限りは、人間ですから、なるべく平等に、差別なく処遇したいものです。
 日本の無期懲役は、建て前では刑務所から出て祝い事に参加できたりはしませんが、実際には満期になる前に出獄できることがありました。でも、今ではかなり難しくなっていて、平均の拘禁日数は30年以上になっています。
 犯罪を犯す人は、人生のある時点では、みな、被害者だった。
 アメリカの「ジャーニー・オブ・ホープ」は死刑囚の家族と被害者の遺族が一緒になって、50人前後の参加者が全米各地を車で移動しながら、一般市民に向けて、自らの体験を語って歩くという運動。日本では、とても考えられない運動です。
 アメリカでは、1973年から1997年までの24年間に、6000人に死刑判決が下されたが、そのうち69人が、あとで「無罪」になって釈放された。死刑と無罪とでは、天と地ほどの違いがありますよね。死刑判決が出て、処刑されたあと、形だけ無罪になっても、「時、すでに遅し」です。死んだ(殺された)人がこの世に戻ってくることはありません。
アメリカの死刑執行は電気椅子によるのではなく、致死薬注射によるもの。まず硝酸ナトリウムで眠らせ、そのあと臭化パンクロニウムによって息を止め、さらに塩化カリウムで心臓を停止させるというもの。
あらかじめ処刑の日時は公表され、被害者の家族(遺族)は希望すると身近に立会ことができる。また、このとき、死刑支持者は、刑務所の外で「お祭り騒ぎ」を起こす。
 2000年ころ、アメリカでは年間2万件ほどの殺人事件が発生していた。いやあ、怖い国ですね。なので、護身用ピストルを持つという人がインテリ層にもいるわけです。
遺族が死刑執行に立ち会って満足するかというと、必ずしもそうではない。むしろ、「加害者は苦しまずにいとも簡単に死んでしまった」と不満を募らせたりもする。そして、その後は生きる目的を見失ってしまう人が出てくる。うむむ、なるほど、難しいのですね…。
 アメリカでは胎児性アルコール症候群(FAS)というのが問題になっているそうです。毎年5千人をこえる乳児がFASをもって生まれている。そして、それは知能障害・発育障害などとしてあらわれ、思春期になると問題行動を起こし始めるのです。母親がアルコール依存症で、妊娠中に大量のアルコールを摂取していたことによる病気です。日本でも同様なことが起きているのでしょうか…。
 なんでも死刑にしろと簡単に叫ぶ人がいますが、世の中はそんなに簡単なものではないと50年以上も弁護士をしている私は思います。幼少期に人間として大切に育てられた体験のない人は社会に対して復讐を始めるのです。もっと優しい社会にしないと、結局は、みんなが安心して生活できる社会にはなりません。大いに目を開かせてくれる本でした。
(2024年12月刊。1430円+税)

遥かなる山に向かって

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 ダニエル・ジェイムズ・ブラウン 、 出版 みすず書房
 日米開戦によってアメリカ在住の日本人と日系人(2世)は強制収容所に入れられてしまいました。ドイツ人はそんなことはなく、ドイツ兵の捕虜もきちんとした処遇を受けました。日系人は「ジャップ」として、いわば「猿」扱いされたのです。
アメリカに生まれ育った2世(ニセイ)たちは、日本人というよりアメリカ人。日本の天皇に対する崇拝の気持ちなど持っているはずもありません。
 アメリカ軍はやがて日系2世の青年たちを兵士として、ヨーロッパ戦線そして太平洋戦争のなかで使う方針を打ち出しました。子どもたち(日系2世)が従軍したからといって、親たち(1世)が収容所から出られることはありません。だから、兵役に応じないという声もありましたが、多くの青年がアメリカ軍兵士になりました。
ヨーロッパ戦線に送られるときには日系2世のみの部隊がつくられ、白人が指揮官となりました。果たして、アメリカ軍の期待に応える兵士なのか、疑問(不安)も当局にはあったようです。しかし、日系2世の部隊はヨーロッパ戦線では大活躍したのです。
 前に「ゴー・フォー・ブローク」という本(渡辺正清・光人社)を読んでいましたので、およそのことは承知していましたが、前の本は250頁、今回は600頁というボリュームからも分かるとおり、圧倒的な詳しさです。なにより、2世を含む日系人が強制収容所に入れられる状況、そしてヨーロッパ戦線で大活躍したにもかかわらず、アメリカでは「大歓迎」どころではなく礼遇されたままだった状況を知り、心が痛みました。
戦争に行ったアメリカ人は1600万人のうち、名誉勲章を授与されたのは473人。うちの21人が日系2世の442連隊の兵士。442連隊は1万8000人いたのでアメリカ軍の0.11%にすぎない442連隊が名誉勲章の4.4%を受章したということ。このほか、殊勲十字章29、銀星章を560もらっている。
 1946年7月、トルーマン大統領はホワイトハウス近くの広場で442連隊を閲兵し、次のように演説した。
 「君たちは敵と戦ったのみならず、偏見とも闘い、そして勝利した。これからも闘い続けてほしい。そうすれば、我々は勝利するだろう」
 トルーマン大統領の言葉は気高く、誠実だったが、アメリカ人の人種差別は根強かった。
 1941年ころ、ハワイの人口42万3千人のうち、日系人は3分の1近く13万人近くいた。そしてハワイ準州警備隊員の4分の3以上日系アメリカ人だった。
 真珠湾攻撃があったあと、アメリカ人の多くは、国内にいるスパイの手引があったはずだと信じた。実際、日本人がハワイの真珠湾の状況を調べていたようですね。でも、それは日系人を組織的に使ったものではなかったと思います。日系人の家への嫌がらせも起きています。
日系人を収容した強制収容所は、1日1人あたり食費はわずか33セントでしかなかった。米かジャガイモだけ、肉は出ることはほぼなかった。
 ゴー・フォー・ブロークは「当たって砕けろ」と訳されています。日系人兵士たちがサイコロを振って遊んでいるときにも使っていたコトバのようです。
日系2世兵士の442連隊は、まずはイタリアのトスカーナ西部の戦線に送られます。ドイツ軍は88ミリ砲を搭載したティーガー戦車で対峙します。また、ドイツのMG42機関銃は「ヒトラーの電動のこぎり」と呼ばれ、切り裂くような長い音を立てながら、1分間に1200発もの弾丸を吐き出すのです。アメリカ軍のトムソン短機関銃より強力でした。そのなかで死闘を展開して注目されたのです。
 次は、フランスのブリュイエールに行き、ドイツ軍に包囲されたテキサス大隊の救出作戦。この本の著者は、これはダールキスト少将の誤った作戦指揮のためにテキサス大隊200人が包囲されたものと強く非難しています。そして、日系2世部隊(442連隊)は、このダールキスト少将によって、ともかし一刻も早くテキサス大隊を救出しろと厳命されたというのです。ともかく、ドイツ軍が厳重な包囲網を敷いているなか、無謀な空撃を余儀なくされました。その結果、テキサス大隊の救出は出来ましたが、442連隊も大打撃を受けています。180人いたK歩兵中隊で無事に生きていたのは17人だったというのです。士官は全員が戦死か負傷したので、軍曹が指揮をとりました。そして、戦闘後、ダールキスト少将が閲兵したとき、あまりに兵士が少ないので、「全員を整列させろと言ったはずだ」と怒り出したのでした。
 それに対して、「これが連隊全員です。残ったのはこれだけです」と実情をよく知っているミラー中佐が答えた。いやはや、なんということでしょうか…。200人のテキサス大隊を救出するために、442連隊は790人におよぶ死傷者を出したのでした。
 そして、最後に、再びイタリア戦線です。アプアン・アルプスの山頂にドイツ軍が堅固な陣地を構えているのを、442連隊が攻め落としたのです。このときには日系2世の兵士32人が亡くなり、負傷者も数十人出しています。
 この山を著者は2019年春にジープでのぼったそうです。とんでもなく高い山でした。
これもまた忘れてはいけない戦争体験の発掘と思いながら、ゴールデンウィークの1日に読了しました。
(2025年2月刊。4800円+税)

南北戦争英雄伝

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 小川 寛大 、 出版 中公新書ラクレ
 アメリカの南北戦争は1861年から1865年までの4年間です。日本では明治維新のころになります。明治10年に起きた西郷隆盛の起こした西南戦争のときにも、南北戦争が終わって不用となった銃砲が大量に日本に入ってきたとされています。
南北戦争は、アメリカ史上、事実上唯一の内乱で、当時34あった州が、北部に23州、南部に11州に分かれて4年間争い、60万人近い戦死者を出すという非常に大きな戦いだった。
当初は、なぜか南北双方とも、「この内乱は、ほんの数ヶ月ほどで終わる」とみていた。
 開戦後初の本格的開戦(1861年7月21日の第一次ブルランの戦い)は、お互いが急ごしらえでつくり上げた素人同然の軍隊で、まともな統制もなく、戦場で支離滅裂な衝突をくり返し、北軍は敗北して潰走し、勝った南軍も極度の混乱状態に陥り、敵の追撃など不可能だった。
 当時のアメリカに存在した黒人奴隷制度がなければ、この巨大な内乱は決して起きなかった。トラクターなどの農業機械のない時代なので、黒人奴隷なくしてプランテーションは維持できなかった。
 アメリカ北部は寒冷なので、綿花の栽培には向いていなかった。だから、北部にはそもそも黒人奴隷を必要とする産業が存在していなかった。
南部連合の指導者たちは貴族的な上流階級であるので、協調性に欠け、他者とじっくり話し合うのを苦手とした。
 南部連合の政府は、何かを誰かに強制できる権限をほとんど持っていなかった。
 アメリカ建国の父の大半は、社会の上流階級であり、ジョージ・ワシントンやトマス・ジェファーソンは富裕な農園経営者であり、黒人奴隷の所有者でもあった。
南北戦争の前半期では、南軍は北軍よりも強かった。南部は人材の力で支えられていた。
南部は遅れた農村社会だったので、人々は、自然に射撃や乗馬に親しんでいた。つまり、軍人として高い適性をもつ人々の割合が南部では高かった。
 北軍が、経済力や兵力で南軍に勝っていながら、戦争の主導権を握れなかった原因は、国家指導者であるリンカーン大統領と軍上層部の意思疎通があまりうまくいってなかったことにある。リンカーンを田舎者だと馬鹿にしていたようです。
丸4年も続いた南北戦争で北軍に35万、南軍に20万の戦死者を出した。ベトナム戦争で死んだアメリカ人は5万人だった。
北軍の多くの一般兵には、黒人のために自分の命を投げ出すことへの違和感があった。独立戦争後、アメリカ人はイギリスのような強力な常備軍をもつことを選択しなかった。
リンカーンの共和党は、北部のみを基盤とする地域政党でしかなかった。それでも民主党の候補に勝てたのは、1828年に設立された全国政党である民主党が、このとき分裂していたから。
北軍が海上封鎖に成功したことから、南部は綿花をヨーロッパに輸出できなくなり、経済が大打撃を受け、南部の経済は滅茶苦茶なインフレに襲われ、市民生活はほとんど破綻していた。
 南部連合のジェファーソン大統領は、お山の大将気どりの気難しい人物で、閣僚や将軍たちと口論ばかりしていた。それで、南軍には、総司令官職がおかれていなかった。
 このころ、アメリカの白人たちは、インディアン(先住民)について、「なぜか人の言葉を理解できる害獣」くらいにしか思っていなかった。
 なーるほど、同じ人間だと思わないどころか、「害獣」だとみていたのですね。そうだとすると、インディアンをだまし討ちして皆殺しするのに、何のためらいもなかったのも、よく理解できます。
 少し前の映画「ダンス・ウィズ・ウルブズ」は本当によく出来た映画でしたね。「狼とともに踊る男」という意味でしたか…。インディアンを人間として交わった白人の話でした。
アメリカのシヴィル・ウォー(南北戦争)について少し勉強することができました。
(2024年11月刊。1100円)

アンデス文明ガイドブック

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 松本 雄一 、 出版 新泉社
 南アメリカの古代アンデス文明には大いに心が惹かれます。マチュピチュ遺跡を見てきたという人は私の身の回りにも何人かいますし、ナスカの地上絵は今なお新発見が続いています。そして、シカン文化は黄金製品で有名ですよね。
 私は現地に行くことはとっくにあきらめましたので、こうやって本を手にとって写真を眺めて心を踊らせ、解説文を読んで、なるほどそうだったのかと膝を叩いています。
 アンデス山脈は、南アメリカ大陸の西側、南北8千キロに及びます。アンデス文明は、この地域で4000年以上にわたって盛衰した文明です。
アンデス文明の特色は三つ。その一つは、他の文明から何の影響も受けていない、独自のもの。その二は、文字、鉄、車輪がない。それでも、絵文字とキープはありますよね…。その三は、自然環境の多様性。砂漠、山地そして熱帯雨林まで…。
アンデスでは、土器が出現するより前に神殿が出現した。土器がなくて、いったい料理と食事はどうやってしていたのでしょうか…。
 神殿は「王様」が君臨して人々に強制的につくらせたものではなく、小規模な集団で、階層化も進んでいない社会が何百年にもわたって造り続けたもの。「王様」が命令して造らせたのではないなんて、驚きです。「王」はいなくてもリーダーはいたようで、女性のリーダーもいたようです。
 紀元前後ころのモチェというアンデス最初の国家は、北海岸により、1億4千万個の日干しレンガによって神殿をつくった。そして、戦争捕虜を人身供犠していた。
 同じころ、南海岸ではナスカ文化が興隆していた。地上絵だけでなく、地下水路の技術も発達させた。
北海岸で黄金文化を誇ったシカンは単一王朝による国家ではなく、複数の有力な家系に連なる人々が支配階層を構成する連合政体、多民族的な社会だった。黄金の仮面には圧倒されますよね。
インカ帝国を構成するインカ族は80以上もの民族集団を支配下におさめていた。インカ帝国というのは、スペイン人征服者がつけたもので、当時の人々が使っていたのは「タワンティンスーユ」というもので、これは「4つの地方」を意味している。
インカ帝国の王は、誰が次の王になるか決まりがなかったので、継承をめぐる争いが頻発した。新たな王は、大地や建物をはじめとする先代の財産を引き継ぐことはできなかった。インカの王は、それぞれが自分自身を支える「パナカ」という親族集団をつくりあげ、首都クスコに王宮を構えた。新たな王は、自分のパナカを養うための土地を初めとする財を一からつくりあげる必要があった。
 インカ帝国は総延長4万キロという「インカ道」という幹線道路を整備した。宿駅を配置し、飛脚をつかった情報伝達システム、キープ(結縄)という記録手段をもっていた。キープは誰でも解読できるものではなく、キープカマヨックという解読専門家がいた。
マチュピチュは都市ではない。最大でも750人ほどしか居住できない。宗教色の濃い建築物がほとんど。男女比は男3:女2で、さまざまな民族集団に属する人々がいた。
 アンデス文明の解読に日本人が大いに役立っているというのもうれしい話ですね。
(2025年1月刊。1980円)

沈没していくアメリカ号を彼岸から見て

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 エマニュエル・パストリッチ 、 出版 論創社
 日米で学び、米韓の大学で教え、アメリカ大統領選挙に立候補したアメリカ人の学者が、アメリカを語り、日本人に訴えています。とても共感できる内容でした。こんなアメリカ人学者がいるのを私は初めて知りました。
 ロバート・キャンベルは私も知っていますが、文学以外の政治について語らないのを著者は不満なようです。それにしても、著者の語学力はすごいです。日本語も韓国語も、そして中国語も話します。どうやらフランス語も話せるようです。それでも、ロバート・キャンベルのように天才的な語学力があるわけではなく、努力したのだといいます。
アメリカの大学は、イエール大学で学び、教え、またハーバード大学で学んでいます。東大では大学院で勉強しています。韓国でもいくつかの大学で教えています。
 日本の平和憲法の意義を高く評価していて、アメリカの憲法を日本国憲法のように変えるべきだと提言しています。そして、日本人とアメリカ人の人的交際が少なすぎる、市民同士のつながりをもっと強める必要があると強調しています。その点、日本(東京)の笹本潤弁護士を高く評価しています。国際法律家協会で世界的に活躍している弁護士です。
 アメリカは日本に企業の支配を押し付け、日本を危険な海外戦争に引きずり込もうとしている。日本とアメリカは、平和を大切にする経済関係に戻るべき。機械やコンピュータではなく、人間性に、コンクリートやプラスチックや鉄鋼ではなく、自然に置かれるべき。人間の心の奥底を探る知的探求にもとづく、新たな強固な関係を目ざすべき。
 今の日米合同委員会は非公開だけど、平和委員会という名称に変え、委員会の透明性を高めて、東アジアの平和体制の構築を目ざすべき。いずれも実にもっともな指摘で、とても共感します。
 日本のテレビニュースの質は著しく低下している。著者は厳しく指摘しています。私はテレビを見ませんが、たまに見ると、くだらないワイドショーやお笑い番組ばかりです。著者は1988年のリクルート・スキャンダルの報道以来、質が劣化しているといいます。NHKをはじめ、いかにも「政府広報」番組ばかりになってしまいました。
 日本人学生は自分の中に閉じこもりがちで、東大生は友だちになるのが一番難しいと言われているが、本当だった。そして、東大でバドミントン部に入ったけれど、厳しい上下関係にはなじめなかったとしています。
今、ハーバード大学はトランプ大統領から目の敵にされ、国の補助金が停止され、ハーバード大学は国を訴えて係争中です。ところが、著者は、このハーバード大学について、厳しい評価をしています。効率性と生産性を追求するあまり、かつてはあった知的自由の多くが破壊されてしまった。この変化は、大学に対する銀行の力が強まった結果であり、ハーバード大学理事会の超富裕層の力が強まった結果である。知的自由の喪失はひどいものだ。 
アメリカでアジアにかかわる政策を立案して推進している人々は、アジアに関する専門知識をもたず、アジアをほとんど理解していない人々でしかない。
 アメリカは、アジアで武器を売る市場を確保することを最優先課題としている。
キッシンジャーは、自分のコンサルティング会社に連邦政府の資金を投入させることを主眼としているビジネスマン。
 韓国社会は深刻な問題をかかえている。高い自殺率、汚染された空気、学校での容赦のない競争、若者たちが感じる疎外感、輸入食品・輸入燃料への過度の依存。そしておびただしい数の貧困な高齢者の存在。
 韓国政治では理想主義的な若い政治家たちも腐敗している。
 韓国では政党の重要性ははるかに低く、個人的な関係、個人の美徳のほうが政治的行動の中心となっている。
 アメリカでは、警察があまりにも残忍になっている。これに対して、日本の警察は国民に対して残忍な弾圧をしていないと評価しています。アメリカでは、警察を呼ぶこと自体が危険、市民にとっても危険だという著者の指摘には驚きました。
 日本人は、多国籍企業や銀行に支配されてはいけない。アメリカが支配権をもっている腐敗した政治・軍事システムから日本は独立すべきだ。まったく同感という思いで230頁の本を読み終えました。
(2025年2月刊。2200円+税)

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