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カテゴリー: アメリカ

米国人博士、大阪で主婦になる

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 トレイシー・スレイター 、 出版 亜紀書房
著者には大変失礼ながら、タイトルからは全然期待せずに読みはじめたのですが、意外や意外、とても面白く、ついついひきずりこまれて一気読みしました。
著者はアメリカ北東部のボストンで、きわめて裕福なユダヤ系アメリカ人の両親のもとに生まれ、豪邸で使用人に囲まれて育った白人女性です。英米文学で博士号をとり、左翼傾向のある36歳の独身女性が初めてアジアにやって来て、神戸で企業研修の講師として活動を始めたのでした。
その前、アメリカでは刑務所で受刑者相手に獄中カレッジのプログラムにしたがって文学とジェンダーを教えたり、ホームレスの大人を対象とした文章教室、スラム街のティーンエイジャーの大学進学準備を手伝い、公立大学で移民一世の学生を教えています。
ところが、裕福な両親が離婚したあと、ひたすら自活を目ざして生きてきた著者は次のことをしないことを誓ったのです。
① 宗教にはまる(ユダヤ教に深入りしないということでしょうか…)
② ボストンの住まいを手放す(日本に来てからも、ずっとボストンに家をもっていたようです)
③ 男に依存する(彼氏はいたようですが…)
④ 両親のような伝統的な核家族を形成する(子どもを産まないということでしょうか…)
⑤ 毎日、晩ごはんをつくる(主婦にはならない、食事は外食でいい…)
日本の企業研修の講師料は、3ヶ月だけで刑務所での丸1年分の5倍以上だったので、まっ、いいかと思って日本にやってきたのでした…。
そして、講師生活を始めてまもなく、受講生の一人、日本人男性と恋におちてしまったのです。ええっ、その彼って、そんなに英語が出来たの…。でも、それほど英語が話せたようではありません。それなのに、著者のハートを射落としてしまったのです。目力(めぢから)なのでしょうね。
「男のいない女は、自転車のない魚のようなもの」
これは、ウーマンリブの有名なスローガンだそうです。知りませんでした。聞いたこともありません。魚に自転車が不要なように、女にも男は不要だという意味だそうです。このたとえは、私にはさっぱり分かりません。
二人はついに結婚するわけですが、そこに至るまでには、いろいろな葛藤もあったようです。それはそうでしょう。口数は少なくても意志の強い日本人と、口数が多くて意思も強いユダヤ系アメリカ人のカップルなのですから…。
この本には、ときどき英単語について正しい解説がはさまれています。たとえば、日本人にとってゴージャスとは、豪華や高級というニュアンスで使われていますが、実は、そんな意味はなく、単に「きわめて美しい」ということだそうです。これも知りませんでした。
日本は、欧米と大きく異なり、人と違うことが驚くほどのひずみとなって、「さざなみ」を立てる、きわめて体制順応的な国だとステレオタイプ的に言われている。そして、著者は、これは完全に真実だと確信したのでした。たしかに、ちょっとでも他と違うと、すぐに叩かれるのが日本社会です。
著者は結婚する前、先の誓いの5番目にあるとおり、料理するつもりはないと、きっぱり断言しました。ボストンでは、ただの一度も料理したことはない。なーるほど…。ところが、結婚したあと、夫の父親(母親は死亡)と一緒に自宅で食事をするため、著者も料理しはじめるのでした。まさに、主婦になっていったのです。
そして、この本の最後のフィナーレを飾るのは妊活(にんかつ)です。涙ぐましい努力をして失敗を重ねたあげく、ついに赤ちゃん誕生…。46歳です。おめでとうございました。
著者は、東京でも、アメリカでやっていたような朗読会(フォー・ストーリーズ・トーキョウ)を主宰しているようです。すごいですね。ですから、著者の肩書は主婦ではなく、作家です。
(2016年10月刊。1900円+税)

「不戦」 2018春季号

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 不戦兵士・市民の会 、 出版 同
ベテランズ・フォー・ピース(平和を求める元軍人の会)は1985年にアメリカで設立された国際的な平和団体。会員8000人で、オノ・ヨーコやオリバー・ストーン映画監督なども参加している。日本にも支部があり、武井由起子弁護士(東京)が事務局をつとめている。日本の不戦兵士の会は1988年に設立された(今は、「不戦兵士・市民の会」)。
この二つの団体が2017年11月25日に早稲田大学キャンパスで開催した講演会の内容を冊子にしたものです。イラク戦争に従軍したアメリカ兵としての体験、そして戦前・戦中の日本軍の過酷きわまりない話が報告されています。
元アメリカ海兵隊員は、愛国心にあおられて海兵隊に入り、2003年にはイラクの最前線にいた。テロリストと戦ってこいと言われて、その任務で戦地に来たのに、実際に自分がやっていることこそがテロ行為ではないかと疑うに至った。イラクの人々にとって、テロリストとはアメリカ兵である自分自身だった。
アメリカでは6000億ドルがペンタゴン(国防総省)が吸いとっている。そして、それは軍産複合体という、ボーイング社やロッキード・マーチン社に流れている。ところが、300億ドルもあれば、世界中から飢餓を絶滅させることができる。戦争という手段をとらず、むしろ国と国との違いを何とか平和的に架け橋をしていけば、きっと本当の平和が築けるはずだ。
元アメリカ海兵隊員は、このように言ったうえで、日本は、アメリカの植民地になっている、日本の憲法9条は、世界に誇るすばらしい憲法だ、と断言したのです。
元自衛隊員は、海上自衛隊の3等海佐としてアメリカのジブチ基地に派遣された。現地に行ってみると、あれ、自衛隊はおかしいなと考え込んだ。現地の人々は今日も家族と一緒にパンが食べられる、これがハッピーなんだという。日本では、みんなハッピーではない。ジブチにこそ、人間本来の豊かさ、幸せがあることに気がつき、55歳定年の9年前に46歳で自衛隊を退職し、それからは農業を営んでいるとのこと。
PTSDは治療して治るものではない。一生、かかえていくもの。PTSDでアメリカでは元兵隊が1日平均20人も自殺している。戦争で亡くなるより、自らの命を絶つ兵士のほうがずっと多い。ところが、このPTSDとのつきあいを覚えたら、PTG(心的外傷後成長)になる。Gは成長の意味。
PTSDの治療法の一つとして、「コンバット・ペーパー」なるものがある。着ていた軍服をチョキチョキと細かく刻む。そして出来た布屑を水につけて回しながらパルプにし、和紙のように紙をすく。この作業を通じて、精神的な立ち直りを目ざすのです。
軍隊にとって、武器は4つの特徴をもっている。一つは、人殺し以外には役立たない。二つは、使えばなくなる。三つは、武器・砲弾・銃弾は大変高価なものであること。四つは、国家が買いあげしてくれるので、絶対に売りっぱぐれがない。だから、軍需産業は喜び、権力者は戦争の危機を国民にあおりたてるのです。
海兵隊では新兵は3ヶ月半ものあいだブートキャンプ(新兵の訓練)が始まる。ここで徹底した洗脳教育を受ける。上官の命令で、いつでも人を殺せるようになる。上官の命令には絶対的に服従し、言われたことには何の疑いも抱かない。上官の命令によって、いつでも人を殺せるような状態になる。
元アメリカ海兵隊員はイラクからアメリカに帰国してたあと、車の運転ができないようになった。高いビルに狙撃兵が忍びこんでいないか、仕掛けがないか・・・、と心配して見るクセがついている。
旧日本軍には、ほとんどPTSDはいなかった。それほど、旧日本軍兵士は、つくり変えられていた。
自衛隊も、他の国の軍隊も、国民を守るのではなく、国家(権力)を守る組織だ。沖縄戦で、このことは実証されている。
戦争体験は私にはありません。なので、こういう戦場で悲惨な体験をした人々の話を聞き、その可能性を探るのは、自分の貧困な想像力を補うものとして、とても大きな意味があると思います。武井由起子先生、ありがとうございます。力をこめて応援します。
(2018年4月刊。500円)

白人ナショナリズム

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 渡辺 靖 、 出版 中公新書
この本を読んで笑ったのは、白人ナショナリズムの人たちが牛乳を一気飲みして、白人の優位性を示しているという話です。ユーチューブで、白人ナショナリストが牛乳を飲みながら、「牛乳が飲めないのならアメリカを去れ」と叫びます。牛乳が白人ナショナリストのシンボルになった。というのは、黒人やアジア系は牛乳を飲むとお腹をこわすが、白人は牛乳にふくまれる乳糖を消化するラクターゼという酵素をもっているから、大丈夫だというもの。
どうして、こんなことが白人優位の根拠になるというのか、理解に苦しみます(たしかに私は牛乳をたくさん飲むと、通じが良くなります)。ことほどさように、白人優位というのが客観的根拠に乏しいということを意味しています。
アメリカには不法移民が1050万人いる(2017年)。これは外国で生まれたアメリカ移住者4560万人の23%に相当する。最高時(2007年)の1220万人よりは減っているが、そのまえの1990年の350万人の3倍だ。メキシコ出身者が半分近い(47%)。
KKK(クー・クラッフス・クラン)は、最盛時の1920年半ばに300万~500万人の会員がいた。KKKは黒人排斥の前に、カトリック・ユダヤ人そして黒人をターゲットとしていた。
いやあ、これは意外でしたね…。
アメリカのトランプ大統領も白人ナショナリズムに同調した発言を繰り返す。
「移民はアメリカにいられることに、ひたすら感謝し、おとなしく服従すべきだ」、「そんなに嫌なら、アメリカから出て行け」というのは、自らを社会の所有者のようにとらえ、新参者を排除しようとする土着主義(ネイティビズム)の典型だ。
白人ナショナリストには高学歴の人が少なくない。リベラル派から白人ナショナリストに転向した人も珍しくはない。反グローバリズムという点ではリベラル左派とナショナリストは合致する。ただし、ほとんどのリバタリアンには、白人ナショナリストのような集合主義とは明確な一線を画している。
白人ナショナリストは、遺伝学に強くこだわると同時に、反ユダヤ主義も根強い。アメリカを第一次世界大戦に駆り立てたのはユダヤ人だ。リンカーン暗殺もユダヤ人の仕業だ。そんな具合だ。
トランプ大統領の世界的評価はとても低いと私は考えていますが、アメリカ国内ではプアー・ホワイト(貧乏な白人たち)の支持は意外にも著しい低下傾向にはないようです。
インチキを重ねて超大金持ちになったトランプが生活に苦しんでいるプアー・ホワイトの味方であるはずもないと思うのですが、まだまだその醜悪な実像がアメリカ国内で広く知られていないようなのが、とても残念です。
(2020年5月刊。800円+税)

ベストセラーで読み解く現代アメリカ

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 渡辺 由佳里 、 出版 亜紀書房
アメリカでベストセラーになっている本を紹介し、解説している本です。とても勉強になりました。なるほど、アメリカではこんな本が今売れているのか、その理由はこういうことなのか…、よくよく理解できました。
著者は日本でアメリカ人と知りあってアメリカに渡った日本人です。私と同じ活字中毒症だそうですが、私と違うのは、もちろん私は日本語の本ばかりですが、著者は英語の本が中心ということです。
アメリカのベストセラーを紹介しても、広告料でお金が入ってくるシステムはとっていないそうですから、このコーナーの私とまったく同じです。といっても、実は、私だって糸井重里や松岡正剛のように好きな本を読んで、その本の書評を書いていたら、お金がガッポガッポ入ってくることを夢見て久しいのですが…。残念なことに、どこからもそんな座敷にお呼びがかかりません。いったい、この書評って、毎日、何人くらい読んでいるのでしょうかね…。
 著者は、2009年から、「これを読まずして年は越せないで賞」というものを始めたとのこと。最近よんだアメリカのベストセラー本、『ザリガニの鳴くところ』も紹介されているかと思ったのですが、残念ながら本書で紹介されている65冊のなかには入っていませんでした。
 アメリカのトランプ大統領は知性がまったく感じられませんが、群集心理を察知する点では天賦の才をもっている。小学校レベルの単純なコトバだけを使ってオバマをはじめとする「敵」をけなしてきた。トランプは「繁栄に取り残された白人労働者の不満と怒り」そして「政治家への不信感」をかぎつけ、それに乗った。
日本の安倍首相と、その取り巻きの官僚たちも知性のなさでは際立っています。といっても、官僚のほうは、灘高・東大そして経産省という超エリート官僚たちではあるのですが、その「バカ」さ加減にはつける薬もありません。そして、マスコミは、いつだって「安倍首相を追い詰め切れない野党の不甲斐なさ」を強調して、安倍政権を裏から下支えするばかりです。「首相官邸記者クラブ」って、出世の野心ばかりの「無能」記者の吹きだまりなのかと苦々しく思うしかありません。
トランプ支持者の集まりに行くと、みな楽しそうだというのに驚きます。努力はしないが、馬鹿にはされたくない。そんな歪んだプライドを、無教養と貧困とともに親から受け継ぐ。彼らにとってトランプは、自分たちに分かる言葉でアメリカの問題を説明してくれた人物なので、目を輝かせ、ウキウキした口調でトランプを語る。この本で紹介された『ヒルビリー・エレジー』(光文社)は、今のアメリカで、どんな人がトランプ大統領を支持しているのかを具体的に明らかにしてくれる本です。このコーナーでも既に紹介しています。
アメリカの政治をコーク兄弟のダークマネーが動かしているという本が紹介されています。コーク兄弟って、日本ではほとんど知られていませんが、石油成金でコーク財団をつくって、ヘリテージ財団などの保守系シンクタンクを支援し、ティーパーティーなどを動かしてきた。日本でも、日本会議を動かし、支えている超金持ち集団がきっといるんでしょうね。
トランプ大統領の言動は、自己愛性パーソナリティ障害、精神病質が混ざりあったときの悪性の自己愛だと診断されています。
深刻なソシオパス(社会病質者)の多くは、社会から脱落するが、チャーミングで思いやりのあるフリができるソシオパスも存在する。そんな人は人間の操縦にたけているので、成功していることが多い。まさしくトランプにぴったりの診断です。
では、わが安倍首相はどうなんでしょうか…。コロナ禍でほとんどの国民が大変な「国難」にあっているのに、国民の前にはほとんど姿を見せず、自宅にこもって愛犬とたわむれているのが実態。それなのに右翼雑誌は「不眠不休でがんばる我が安倍首相」というタイコ持ちの記事を堂々と書きつのっています。
マティス元国防長官は、トランプ大統領は小学5年生レベルで振る舞うし、その程度の理解力しかないと言う。トランプは病的な嘘つきで、証拠は前にあっても平然と嘘をつく。
われらが安倍首相夫妻とあまり変わらないレベルだということですね、これって…。
トランプ大統領にとって、日本と安倍首相は、話題にする必要もないほど軽い存在でしかない。
そりゃあ、そうでしょうよ。だって、アベはゲタの雪なんですから。いつだって、どんなときだって、アメリカにさからうことなく、自分と取り巻きの利益しか考えていないのですから…。
ブッシュ元大統領は、オバマ大統領を一度も公の場で批判したことがない。ところが、トランプについては同じ共和党なのに、公の場で批判した。
私はヒラリー・クリントンの本もミシェル・オバマの本も読みましたが、この本で紹介されているとおり、ミシェル・オバマの本のほうが、200万部も売れるほど面白いと思いました。
ミシェルは、奴隷を先祖にもつ黒人であり、シカゴのウェストサイド地区で育ち、ついにはプリンストン大学そしてハーバードロースクールで学んだあと、シカゴのローファームでオバマに出会ったのでした。
アメリカで黒人の親は、わが子に、「おもちゃでも銃を持ってはいけない。フード付きのジャケットは着てはならない。警官にどんなに侮辱されても、言い返してはいけない」と教えなければいけない。これを守らないと、射殺されてしまう危険がある。
アメリカは、黒人をモノとして保有し、使い取引することで富と力を得た図だ。その歴史は、今なお、白人と黒人とのあいだに深い溝をつくっている。
アメリカをす知るために欠かせない本がたくさん紹介されていて、勉強になりました。
(2020年3月刊。1800円+税)

アメリカを蝕むオピオイド危機

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 ベス・メイシー 、 出版 光文社
日本でも、ひところほどではないように実感するのですが、覚せい剤使用事件をときどき弁護します。先日は久しぶりに大麻事件を扱いましたし、覚せい剤に似た新種の薬物事件も扱ったことがあります。
ところで、アメリカの薬物汚染は日本よりはるかに深刻な状況にあるようです。
最近、復活を遂げたタイガー・ウッズもオピオイド中毒をなんとか脱出した奇跡的な存在だということも、本書を読んで知りました。
アメリカ全土に広がったオピオイド禍は、今や過剰摂取により年に5万人もの生命を奪い、400万人もの依存症患者をつくり出している。
薬物の過剰摂取は、過去15年間に30万人のアメリカ人の命を奪い、次の5年間にさらに30万人以上が死亡すると予測されている。今や薬物の過剰摂取による死者は、銃や交通事故の犠牲者を上回っていて、50歳未満のアメリカ人の死因のトップになっている。そして、その増加のペースは、HIVの最盛期を上回る。
今日のアメリカでは、中流や上流階級に麻薬が蔓延しており、これこそが切迫した絶望的な問題となっている。
アメリカ人が全般的に早死になっているのではなく、アメリカ人の白人だけが明らかに若くして死んでいる。
アメリカでは医薬品の広告費は、1995年に400億円ほどだったのが、3年後の1998年には1430億円へと急増した。
2000年、製薬業界は、医師への直接業だけで4444億円をつかった。ゴルフ接待、無料ランチなどなど…。パデューという製薬会社はオーナーのサクラー一族に支配されていた。このパデューは、オキシコンチンの販売で3080億円の利益を得ていた。2006年の1年だけで654億円も稼いだ。その結果、サクラー一族は、1兆5400億円もの資産を有し、メロン家やロックフェラー家のような名門一族を上回った。そして、サクラー一族は、博物館や大学に次々に多額の寄付をしていった。
オピオイド関連の犯罪を撲滅するため、アメリカ全体で8360億円もの大金をつぎ込んでいる(2013年)。
ケータイの普及によって、屋外での取引市場はなくなり、ガソリンスタンドやショッピングモールなどの駐車場など、人目のつかないところでの麻薬の売買・受け渡しが可能になっている。私もパチンコ店の店先の路上での取引を「目撃」したことがあります。
アメリカには薬物裁判所なるものがあるそうです。薬物常習性や再発を防止するための治療システムの一部です。被疑者が1年から1年半の再生プログラムに参加し、完了したら、起訴を取り下げるのです。再犯の可能性は半分から3分の1に下がっているとのこと。日本でも必要なシステムと思います。でも、そのためには人的体制が不可欠ですので、司法予算の拡充が前提として必要になります。
アメリカの黒人男性の3人に1人が刑務所に収監されている。出所しても黒人は二級市民の烙印を押され、まともな職につけないため、再犯の可能性は高い。薬物事犯の4分の3は黒人とヒスパニック系が占めている。受刑者の半分を占める薬物事犯者の再犯率は75%にも達している。
製薬会社(パデュー・ファーマ社やジョンソン・エンド・ジョンソン社)は、あまりにも巨大なもうけをあげている(売上額は年に9兆円近い)ため、巨額のはずの賠償額629億円さえ、かすんで見える始末だ。
もうけるためには何をしてもいいかのように行動している製薬会社は、ユダヤ人を大量殺害したナチスと同じ発想で行動しているとしか思われないのですが、それがユダヤ系のサクラー一族だというのですから、世の中は魔訶不思議です。
(2020年2月刊。2200円+税)

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