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カテゴリー: アメリカ

アマゾンに鉄道を作る

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 風樹 茂 、 出版 五月書房新社
 アマゾンに鉄道をつくる話だというので、ブラジルの話かと思うと、そうではなく、アマゾンの源流のあるボリビアでの鉄道づくりの話でした。
 1986年5月のことです。著者はまだ20代で、体重も50キロありませんでした。
 目的地のチョチスは、熱帯雨林とサバンナの境界にある、人口1000人もない小さな村。1979年1月の豪雨災害によって鉄道が打撃を受け、復旧したものの、本格的な復旧工事が必要だというので、国際入札があって大成建設と日建ボリビアが落札した。総額55億円の予算で、日本がJICAとODAを使った事業をすすめることになって、著者も現地に派遣されたのです。
 ボリビアは一つの国でありながら、実は二つの国。低地と高地で、気候風土、人種、文化、風俗がまったく違う。
 このアマゾンでは、初対面の男女は、口に軽くキスをするのが習慣。ここでは、10代半ばから、男と女は無数の短い恋愛を繰り返す。10代でも夫の違う子どもを2人か3人かかえている娘は何人もいる。アマゾンでは、男女は知りあうには易く、添い遂げるのは難しい。
 このチョチスは陸の孤島で、母系の強い社会。男性は単なるセックスの相手、子種のための存在、だから、遺伝子は遠いほどいい。そして、子どもは成長するのが速い。
 また、子どもは1歳から2歳で死ぬことが多い。兄弟7人いても半分以上は死ぬ。運がよく、強い者だけが生き残る。死はいつでも身近だ。そして、退屈な小村にあって、死は祝祭でもある。
 アマゾンには日系移民がいるから、日本の食材がつくられ、日本食が食べられる。
労働者の主食はイモのほかは牛肉。しかし、やけに固い。むしろ豚肉や鶏肉のほうが高い。牛の頭は、ここではごちそう。
 ボリビアは夜でも街を歩けて安全だった。総じて、ボリビア人は人がよい。
 2008年、22年ぶりにチョチスを再訪。2012年のチョチスの人口は635人。鉄道は立派に残っていた。しかし、貨幣に頼るようになった村人たちは、かえって貧しくなった。
22年前に知っていた人のうち3人が死亡、1人が刑務所にいて、行方不明が3人。男に逃げられた女性は数知れない。
 著者は最後に、アマゾンからの告発をのせています。やたらな開発なんてまっぴら。貧困は環境を破壊しない。環境を破壊するのはあくなき富の追求と、その結果としての環境破壊がもたらす貧困だ。
 まったく、そのとおりですね。アマゾンの鉄道をつくった経験と現在への思いにあふれた本です。大変面白く読みました。
(2023年2月刊。2200円+税)

マヤ文明の戦争

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 青山 和夫 、 出版 京都大学学術出版会
 マヤ文明は、中央アメリカのユカタン半島あたりで、前1000年ころから、スペイン人が侵略する16世紀前半まで、2500年ほど続き、盛衰があった。マヤ文明は、日本でいうと縄文時代晩期から室町時代に相当する。
マヤ文明は「戦争のない、平和な文明」だったとか、「都市なき文明」と誤解されてきたが、実際は、戦争はしばしば起こり、「石器を使う都市文明」だった。マヤ文明の大都市には数万人の人々が住み、国家的な宗教儀礼のほか、政治活動や経済活動もかなり集中し、彩色土器や石器を生産していた。マヤ支配層は、文字、暦、算術、天文学を発達させ、ゼロの文字も発明している。
マヤ文明は、大河がなく、大型家畜もいないので、小規模な灌漑(かんがい)、段々畑、家庭菜園などの集約農業と焼畑農業を組み合わせていた。家畜は七面鳥と犬だけ。文字の読み書きは、王族・貴族の男女の秘儀だった。専業の戦士はおらず、王・王族、支配層書記を兼ねる工芸家は、戦時には戦士となった。マヤ文明は、統一王朝のないネットワーク型の文明で、中央集権的な統一王国は形成されなかった。戦争の痕跡が次々に発見され、戦争を記録した数多くの碑文が解読された。戦争は頻繁にあり、戦争が激化して多くの土地の中心部は破壊された。
戦闘では初めに弓で大量の矢を放ったあと、石槍を手にもって接近戦を展開し、あくまで高位の捕虜を捕獲しようとした。地位の高い捕虜自身が政治・経済的に重要な価値を有し、捕虜を受け戻すための高価な品々、貢納や政治的な主従関係を勝ちとることにつながった。遺跡にはたくさんの壁画が残っていて、捕虜を足で踏みつけるようにして勝者の王が立っている絵が多い。
この本で驚嘆するのは詳細な出来事が年表としてまとめられているということです。もちろん、これはマヤ文字を解読しなければできません。でも、マヤ文字って、要するに絵文字です。人物の顔などが入っています。
たとえば、ヤシュチラン遺跡では130以上の石像記念碑が発見されていて、少なくとも359年から808年まで20人の王が君臨した。こんなことが碑文を解読して判明しているのです、すごいです。
いろんな王朝がいて、初代の王も9代目の王も名前が分かっています。コパン遺跡の祭壇化には、初代王、2代目王、15代目王、16代目王が彫られています。王には、女王もいます。彫像の捕虜にも名前がついていて、捕虜には、その目印として紙の耳飾りがついていた。パレンケ王朝11代目のパカル王は、683年8月に亡くなるまで、なんと68年もの長さの治世を誇った。
マヤ人は、20進法を使った。これは、手足両方の指で数を数えるもの。コパン王朝の人々の人骨を分析すると、8世紀になると農民だけでなく、貴族の多くも栄養不良に陥っていた。環境破壊が進行していた。人口過剰と農耕による環境破壊が要因となって、その結果として戦争が激化し、王朝が衰退した。人骨の分析でこんなことまで判明するのですね…。すごいものです。
数百人のスペイン人が侵略戦争でマヤ人の大群に勝利できたのは、第一に、優秀な通訳による情報戦に長(た)けていたこと。第二に、マヤ人内部の群雄割拠の状況をうまく利用したこと。第三に、マヤ人の戦争は、接近戦で高位の敵を捕虜にするもので、スペイン人のように戦場で大量の敵兵を虐殺するのが戦争とは考えていなかったこと。なので、スペイン総督を捕虜にしようとしていた。第四に、マヤ人はウイルス感染で次々に病死していったこと。マヤ人の人口は100年間のうちに5~10%に減少した。90~95%のマヤ人が死滅した。
ただし、今もマヤ人は生きていて、今ではむしろ増加している。そして、キリスト教を信仰するようになっても、自己流に解釈し、マヤ諸語とともにマヤ文明は生き続けている。マヤ人の心まではスペイン人は支配できなかった。
500頁もの大著ですが、大変興味深い内容なので、3日3晩で読了しました。学者って本当に偉いですね。心から敬意を表します。
(2022年11月刊。6500円+税)

クレプトクラシー,資金洗浄の巨大な闇

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 ケイシー・ミシェル 、 出版 草思社
 世界最大のマネーロンダリング天国、アメリカというサブタイトルのついた本です。
 ウクライナ、赤道ギニア、ハイチなどの独裁者から押し寄せる違法な超大金を洗浄するシステムがアメリカでものすごく活用されているということを今さらながら強く認識させられる本でした。
 アメリカは世界最大のクレプトクラシーの避難地となっていて、今や史上最大のマネーロンダリングの国だ。世界中に張りめぐらされた犯罪ネットワークに関係する、何兆ドルもの資金が手品のようにクリーンで合法的なお金に一瞬で変わり、実際に使えるようになる。
 アメリカはクレプトクラシーの世界が出現するために手を貸し、その過程で利益を受けている。アメリカでは、匿名のペーパーカンパニーが次々に設立されていて、その背景に誰がいるのか、まったく分からない。ペーパーカンパニーとは、ブラックボックスにも似た汚いお金を変換させる魔法の装置だ。洗浄されたお金は、捜査官も解明できない。アメリカでは幽霊会社を設立するのは、許しがたいほど簡単、容易だ。必要な時には、「ノミニ―」と呼ばれる人間が選ばれる。ノミニーは、ペーパーカンパニーの取締役、株主そして共同経営者という登記できる、名目上の第三者。当局の質問に対しては、会社に関わっているのは自分だけだと主張する(できる)。
アメリカでは、連邦ではなく、州政府が法人誘致をめぐって、互いに競い合っている。ニュージャージー州には、企業が殺到した。登記のために駆け込んでくる企業のおかげで、州の財政はありあまるほど潤沢となり、州民に対しては減税するようになった。同じくデラウェア州でも登記した企業から毎年15億ドルもの収入を得て、売上税・資産税を課していない州にとって巨大な財政支柱になっている。年間22万5000件超の企業が設立され続けている。
 チリの悪名高い独裁者ピノチェトも隠れ資産をもって私腹を肥やしていることが明らかにされた。
 ウクライナでも独裁者がせっせと私腹を肥やしていた。ウクライナの銀行、プリヴァトバンクの融資先の99%は内容のない幽霊のような企業だった。
 トランプ前大統領は、自分の不動産を通じて、何十億ドルもの資金洗浄してマネーロンダリングに関わっていた。トランプの所有する物件はどれも、過去数十年にわたって、アメリカに流入していきた汚いお金の大洪水のおこぼれに預かってきた。トランプの物件の最終的な所有者のうち、身元が公表されているのは、ごくわずか。怪しい買い手の大半は、アメリカで登記したダミー会社を徹底的に利用して、アメリカの不動産を購入していた。大統領に就任したトランプは、アメリカ政府が築いてきた反腐敗という壮大な砦を破壊するような行為を始めた。腐敗に対する規制、先例と伝統をトランプはあくことなく破壊した。
トランプ大統領に快く思われるには、トランプのホテルに宿泊するのが一番だと気がついた首相や大統領もいた。
 ウクライナのゼレンスキーというユダヤ人の俳優が世に出たのは、テレビドラマを通じてウクライナの大統領を数年かけて演じカリスマ性を獲得した。クレプトクラットであるコロモイスキーの支援も受けてゼレンスキー大統領は誕生した。でも今なおウクライナは腐敗とは無縁ではない。
 世界中の汚い大金がアメリカに集中している仕組みがあることを認識しました。それも気の遠くなるほどの大金です。世界中の多くの人が食うや食わずの生活をしているというのに、なんということでしょうか・・・。
(2022年9月刊。税込3,080円)

逃亡者の社会学

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 アリス・ゴッフマン 、 出版 亜紀書房
 アメリカの大都市の一つ、フィラデルフィアの黒人居住区に白人(ユダヤ人)の若い女性(社会学者)が入りこんで6年ものあいだ黒人家庭の生態を観察したという大変貴重な記録です。司法の裏で、闇の商売が成り立っているというのには、まさかと驚きました。
 刑務所の看守のなかには、職業上の立場を活用して、お金を工面できるよう被告人たちに対して特別な免除・恩恵を与えている。たとえば、ケータイを売る。薬物やナイフを売っている。また、女性とのプライベートな時間、セックスする時間を15分で100ドルで売っている。
 保護観察所で面談のとき尿検査される。その尿が売られている。買った尿を内股にテープで貼り付けておいて、採尿用のコップに入れる。運転免許証の偽造もある。1000ドルで売られている。
 警察の捜査官は、ケータイの位置情報を追跡して、指名手配犯をリアルタイムで追っている。
 黒人居住区に生活する若者は、まず初めに警察官に対して強く意識する。どんな姿で、どのように移動し、いつどこに現れそうか…。覆面パトカーの車種、警察官たちの体型や髪形、その巡回するタイミングと場所を覚える。そして、予測不能な日常を心がける。
 指紋をとられないように留置場で、鉄格子に指先の皮膚をこすりとってしまう。
 2000年代半ばから、パトカーにはID照会用のコンピューターが装備されている。偽造IDの使用は困難だし、偽名も警察には通用しない。黒人居住区に住み、指名手配中の若者はIDを使っての買物はしない。何の書類も求められない店を探す。
 警察が逃亡中の男性の妻に対する尋問のなかでは、子どもを取り上げるぞという脅しが一番効果ある。指名手配中の夫は居場所を教えないと、児童保護サービスに通報する必要がある…、と言うと、たいていの母親は口を割る。育児放棄と、不適切な生活環境に現存しているから。
 この黒人居住区に暮らす多くの家族にとって、拘置所や刑務所などは多くの親戚がいる場所にすぎない。
黒人居住区の若者たちは、文字どおりフェンスを乗りこえ、徒歩や車で彼らを追跡する警察から逃げている。ところが、別の場所で成功するための資金やスキルをほとんど持っていないため、この地区にとどまる。彼らを匿(かくま)い、生きのびるのを助けてくれる、家族と隣人たちの寛容さに頼る。
徹底的な取り締まりと、それが統制しようとする犯罪は、互いを補強しあう。犯罪厳罰化政策の皮肉の一つは、それが家族や友情、そしてコミュニティの絆(きずな)にとって、きわめて破壊的であるため、誰もが警察や裁判所そして刑務所が不当でありすぎて、違法性の風土の一員だ。
州刑務所で黒人男性に面会に来る女性の多くは白人だ。
著者は、すごく勇気のある女性です。私には、とてもマネできません。社会学者としてのレポートとしては難があるという批判もあるそうですが、ともかく黒人居住区の実際が活字になってレポートされているのはすごいことです。
(2021年4月刊。税込2970円)

アフガニスタン・ペーパーズ

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 クレイグ・ウィッロック 、 出版 岩波書店
 アフガニスタンを軍事的に支配しようとして、アメリカは完全に失敗してしまいました。ソ連(ロシア)の手痛い失敗をアメリカもそのまま繰り返したのです。
 アメリカはオサマ・ビン・ラディンの無法な暗殺には成功しましたが、アフガニスタンという国との関わりにおいて失敗の連続でした。要は、軍事力とそれをバックとしたお金の力では国民を長く治めることはできないということです。ソ連の失敗がそれを証明していたのに、自分ならもっと軍事的にうまくやれるとアメリカは考えていたようです。でも、まったくそのアテは外れてしまいました。
 そこで、アメリカはどうしたか。徹底的に真相を隠し、国民に嘘をつき続け、多くのマスコミもそれに加担したのです。本当に残念な状況がアフガニスタンでは続いています。
 アメリカは20年以上のあいだに77万5千人以上のアメリカ軍兵士をアフガニスタンに配置した。そのうち2300人以上が現地で死亡し、2万1千人が負傷して帰還した。この戦争費用は公表されていないが、1兆ドルを超えているとみられている。
 著者はアフガニスタンに派遣された退役兵士600人以上にインタビューして、その成果をこの本にまとめました。
 当初のアメリカ軍は予測以上に勝利した。ところが、やがて、「終わりの見えない展開」に陥った。2001年12月の時点では、アフガニスタンにいるアメリカ軍兵士は、わずか2500人だけだった。アメリカは、誰と戦っているのかはっきししない(させない)まま、戦争に飛びこんだ。
 アメリカ軍はアフガニスタン現地で、一般のアフガニスタン人と悪者を区別するのに苦労した。だから、住民に向かって無差別銃撃も出来た(した)のですね。恐ろしいです。
 タリバーンの関心は完全に地元にあった。タリバーンの支持者のほとんどは、アフガニスタン南部と東部に住むパシュトゥン人に属している。
 アメリカがタリバーンの活動と呼んでいるものは、実際には部族的なもの、抗争、古くからの確執だった。
 アフガニスタンでの戦争がこんなに長引いた理由の一つは、何が敵に戦う動機を与えているのかを、アメリカは本当の意味でまったく理解していなかった。
 アメリカは、アフガニスタンにおいても、7万人から成る軍隊を創設しようと試みた。ところが、このプロジェクトは、その見かけとは真逆に、最初から失敗していた。
 アフガニスタン人の新兵は、数十年にわたる混乱のなかで基礎教育が受けられなかった。8割近くが読み書きできず、数を数えられなかったり、色が分からなかったりする。単純なコミュニケーションですら、支障をきたした。アフガニスタン人兵士には、基本的な戦闘スキルがなく、絶えず再訓練が必要だった。
 アメリカは、35万2千人のアフガニスタン治安部隊を訓練・維持し、22万7千人を軍隊に入れ、12万5千人を国家警察に所属させた。そのための資金を提供した。
 アフガニスタン軍を訓練するのは難しかったが、国家警察を創設する試みは、さらに大きく失敗した。その給料が少なかったこともあり、多くの警察官は、保護するはずの人々から賄賂を強要する、ゆすり屋になった。
 タリバーンには3種類ある。その一は、過激なテロリスト。その二は、自分たちだけのために参加している。その三は、他の二つのグループの影響を受けた貧しい無知な人々。
 かなりの数のアフガニスタン人は、タリバーンを軍閥と比較してよりましなほうだと認めた。
 ケシの根絶作戦は、政治的つながりや賄賂を支払うお金をもたない貧しい農民に打撃を与えた。疎外された極貧の人々はタリバーンの新兵になっていた。
 タリバーンの弟がアメリカのプロジェクトを爆破し、それから、何も知らないアメリカ人は兄にお金を支払って再建させる。
 アフガニスタンにおける腐敗の唯一最大の発生源は、アメリカ軍の広大な供給網。資金の18%がタリバーンと他の反乱勢力に渡っている。
 2009年から2011年のあいだに、アメリカ軍がアフガニスタンに増派されると、民間人の年間死亡者数は2412人から3133人に増加した。殺害された民間人は5年間で53%も急増している。アメリカと同盟国は、ひどく負けたのだ。
 アメリカ軍は、実のところ、敵を訓練しているようなものだった。ブッシュ・オバマと同じく、トランプはアフガニスタンで勝つという約束を果たすことができなかった。
それにつけても思い出されるのは中村哲医師とペシャワール会の偉業です。鉄砲や戦車ではなく、スコップとシャベル、そしてユンボなどの平和産業こそが国を再建する手助けになるということだと思います。
(2022年6月刊。税込3960円)

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