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カテゴリー: アフリカ

アフリカ、苦悩する大陸

カテゴリー:アフリカ

著者 ロバート・ゲスト、 出版 東洋経済新報社
 アフリカが貧しいのは、政府に問題があるからだ。あまりに多くの政府が国民を食い物にしている。政府は正しく統治するためではなく、権力を行使する人間が私腹を肥やすためだけに存在しているように見える。官僚たちは、仕事の見返りに袖の下を要求する。警察官は正直な市民から金品を奪い、犯罪者たちは野放しだ。多くの場合、国で一番の大金持ちは大統領だ。大統領に就任してから、地位にものを言わせて富をためこんできた。
 うひょう。すごいですね。これでは政治とか国家とかいうものに対する信頼関係が成り立つはずがありませんよね。
 取材に訪れたカメルーンで、ビールを運ぶトラックに同乗した。途中47回も警察の検問で停止を命じられた。そのたびに警官たちにお金をつかませていた。おかげでビールは割高になっていった。賄賂は商売の潤滑油というが、アフリカほど蔓延すると、ほとんど商売にならない。
 富を手にするもっとも確実な道が「権力」だとなれば、人々は権力を求めて殺し合う。アフリカではしばしば内戦に悩まされ、おかげで開発もままならない。
 今やムガベ政府は、ジンバブエという腹に巣食ったサナダムシ同然だ。他人の労働の成果を食い物にし、国民の活力を吸いつくしている。白人は人口の1%にも満たない。白人よりも象の方が多い。そんな白人に、もはや政治力はない。
 アフリカの吸血国家の改革がなかなか進まないのは、多くの場合、必要な改革を断行すれば、国を牛耳っている連中から権力と富を奪うことになるから。彼らは、特権を手放そうとしない。いやはや、どうしようもないという印象を与えます。小泉とか麻生が、まだ善人に見えてくるのですから、やはり異常すぎます。
 銃を持った十代の少年兵はいつ見ても恐ろしい。年長の兵士なら、撃ってくる前に撃つべきかどうか自問する。それに比べて、子ども兵士の行動は予測しがたく、説得するのも難しい。酒やドラッグをやっているときには、なおさらだ。
 1999年に、アフリカの5人に1人が内戦や隣国との戦争に揺れる国に住んでいた。死傷者の90%が民間人で、1900万人が家を捨てて非難を余儀なくされた。アフリカの土の下には、2000万発の地雷が埋もれていると推定されている。
 貧困が戦争を生むだけでなく、戦争も貧困を悪化させる。内戦は、平均所得を毎年2.2%押し下げる。
 アフリカでは、2002年までに1700万人がエイズで死亡し、2900万人がHIVに感染している。4600万人ものアフリカ人が死亡あるいは死すべき運命にある。2002年の時点で、エイズで両親を亡くしたアフリカの孤児は推定1100万人。
 南アフリカでは、2002年のHIV感染率は15倍に跳ね上がり、世界のトップとなった。450万人の感染者がいた。これはアパルトヘイト廃止までの政治暴力による犠牲者の200倍になる。うむむ、これって、すごすぎますよね。政府がきちんと機能しているとはとても思えません。
 カメルーンでは、瓶詰めされた水でも品質は怪しい。しかし、コカ・コーラなら、これを飲んで恐ろしい細菌性の病気にかかることはないという安心感を与えてくれる。だから、アフリカではコカ・コーラを飲むしかない。私は日本では絶対にコーラを飲みませんが、アフリカに行ったら飲むしかないようです。
 ダイヤモンドに本質的な価値はほとんどない。だから、デ・ビアス社は価格を維持するために供給量を抑え、常にこの石ころのイメージアップを図ってきた。世間がダイヤモンドを、永遠の愛よりも恐ろしい戦争と結び付けるようになったらイメージ戦略が苦しくなる。
 紛争ダイヤモンドとか、血のダイヤモンドというイメージを払拭しようと必死なのは、このためなんですね。むかし、映画館のコマーシャルで、ダイヤの指輪を婚約者に贈りましょう。月給の3倍が標準です。こう言っていましたが、これもデ・ビアス社の単なる広告だったのですね。それを知ったとき、私も欺かれた愚かな大衆の一人であったことを自覚しました。
 前途多難なアフリカ大陸ですが、この本の最後のあたりでいくらか光明も見えてきたような気がするのが救いです。
(2008年5月刊。2200円+税)

サバンナの宝箱

カテゴリー:アフリカ

著者 滝田 明日香、 出版 幻冬舎 
 すごいですね、若い日本人女性が、愛犬・愛猫とともにアフリカで一人暮らしをしているというのです。お肌の曲がり角を走りぬけ、あっというまに三十路に突入してしまった顛末がことこまかに語られていて、ハラハラドキドキの展開です。胸のトキメキのほうはあるのかないのか、さっぱり語られていませんので、その点は分かりません。福岡出身の日本人女性(永松さん)がマサイの男性と結婚した話は前に紹介しましたが、著者も同じようにマサイの人々が住む地域で獣医として活躍しています。
 表紙の写真からしてド迫力です。サバンナの大地でジープを止めて、帽子をかぶってお昼寝中なのです。ぐっすり眠っていて、ライオンの群れが来たら、一体どうするんでしょうか。実際、夜のテントで一人寝ているうちに、ライオンがやって来た体験が語られています。
 夜中の3時、ぐっすり眠っていたのに身体に響く低い声で目が覚めた。ウォッ、ウォッ、ウォッ、ウォッ、ウォッ、ウォッ……。テントの5メートル以内にライオンがいる。お腹まで震動が響いてくるほどの声。低音震動が身体に響いてくるので、寝てなんかいられない。少し声が遠ざかったとき、寝袋を持ってすぐ近くの車に走り込んだ。やがてライオンの声は遠ざかった。車の中は寝苦しかったので、またテントに戻った。
 うへーっ、こ、これはまいりました。百獣の王、ライオンなんかと決してお近づきになんかなりたくありません。動物園のオリ越しのご対面で十分です。それにしても、そんなライオンが夜中にうろつくようなところにテントで寝て、また、テントに戻ってきて寝なおすなんて、なんとまあ図太い神経の持ち主でしょうか。いやはや、大和撫子のたくましさには、九州男児の一人として、まさに脱帽です。
 著者は、アフリカで獣医になりたいと思って、アフリカの名門大学の獣医学部に入学します。そこでのハードワーク(猛勉強)はすごいものです。睡眠時間を削りに削って、ようやく卒業することができました。
 獣医だから、牛の直腸検査もします。左手を牛の直腸に突っ込み、直腸の中で手を動かす。このとき、牛は思い切り肛門を締め付けるから、腕は血が通わず、麻痺してくる。腸の動きに負けないように手を動かすので、ものすごく疲れる。途中で腕を牛の尻から出してしまうと、空気が入って直腸がふくれて内臓に触れなくなるので、お尻に腕を入れたまま、牛の腰の上に頭を乗せて休憩する。こんなことを2時間も続けると、牛のウンコまみれとなるばかりか、腕も手もふやけてしまう。
 うひょひょ、そんなー……、牛の尻に2時間も腕を突っこんだまま休憩するだなんて、いやはや、まったく信じられません。
 ケニアのナイロビ郊外に住みながら、ホームページを開設し、ブログで活動日誌を発信中とのことです。ぜひ、人間の立派なオスもゲットしてください。そして、これからも身の安全と健康にはくれぐれも注意して、アフリカの大地でがんばってほしいと思いました。
 きのう、庭にボタンの花が咲いているのに気が付きました。やはり、これだけ初夏みたいにあたたかいと、ボタンの開花も早まったようです。
 淡いクリーム色の大輪の花弁の真ん中に黄色い部分があります。とても気品のある花です。さすが美女の代名詞にふさわしい雰囲気が漂っています。
 近くで小鳥がにぎやかにさえずっています。最後にジジジと特徴のある声で鳴くものですから、ツバメだと分かりました。ひとり楽しげで、聴いている私まで何だか嬉しくなってきました。ツバメは駅舎にもたくさん来ていて、元気に飛び交っています。はるか南方のインドネシアあたりからはるばる日本へ毎年やってくるツバメたちです。お疲れさまと声をかけたくもなります。ツバメが安心して住める平和な日本であり続けたいものです。
(2006年12月刊。1400円+税)

アフリカ・レポート

カテゴリー:アフリカ

著者:松本 仁一、 発行:岩波新書
 この本を読むと、アフリカの現状には絶望的な気分に陥ってしまいます。アフリカ解放運動の栄光が地に堕ちてしまったようで、残念でなりません。
 列強の植民地からの脱却を目指した指導者がとてつもなく腐敗し、堕落してしまったというのを知ると、ええっ、どうして・・・・・!?と、つい叫びたくなります。
 まずはジンバブエ。その人口1300万人の4分の1にもあたる300万人が隣国の南アフリカへ越境出国していった。しかも、不法出国者のほとんどが40歳以下の男性。働き盛りが大量出国するようでは国は壊れてしまう。
 ジンバブエのインフレ率は、政府発表でも年率7634%(2007年7月)。それが2008年には16万%という。まるでなんのことやら、わけの分からない数字ですよね、これって。
 かつて、アフリカには希望の星とも言われたルムンバ大統領がいた。1960年6月にベルギーから独立したコンゴ(旧ザイール)の大統領だ。ルムンバは獄中で暗殺される前に遺書を書いた。
 「子どもたちよ、私はもうお前たちに会えないかもしれない。しかし、お前たちに言っておきたい。コンゴの未来は美しい、と」
 しかし、それから半世紀がたった今、コンゴは美しくない。ルムンバ政府をクーデターで倒したモブツ将軍は、独裁者となった。1997年にモブツ政権が崩壊しても、今なお政情は不安定だ。銅、コバルト、そして希少金属に恵まれたアフリカ最大の鉱物資源国でありながら、その富は国家の会計に寄与することなく消えていく。
 1960年代から70年代にかけて、アフリカの国の多くは農業輸出国だった。しかし、腐敗した指導者たちは、農業に関心を払わなかった。その結果、アフリカは農業輸出国から輸入国に落ち込んでしまった。そのマイナスは年間700億ドルにものぼる。
 アフリカのほとんどの国で、指導者は自分の部族に属するもの、地縁、血縁者に国家利益を分配し、それによって自分の地位の安定を図っている。その結果、国づくりが放置される。指導者が私物化した巨額の公金は海外の銀行に蓄財され、国内の市場に出回らない。蓄財したお金が社会資本として回転しないため、経済の進展もない。指導者は「敵」を作り出すことで自分への不満をすりかえる。そして、それは国内の対立を激化させ、国家的統一とは逆の方向へ国民を駆り立てる。
 南アフリカの国民解放組織(ANC)も、政権の座に就くと、幹部たちはあっけなく腐敗しはじめた。その結果、治安が悪化する。マンデラ政権が誕生した1994年に、1ヶ月平均の殺人事件は1400件を超した。1日あたり47人が殺された。警官殺しも月に15件あった。そして、2005年度は、殺人が1万8千件を超し、強盗は20万件に近く、強姦事件は5万件を超す。
いま、アフリカでは、中国が新植民地主義の主役となろうとしている。中国政府がアメリカの石油を持ち出し、中国人商人が安価な中国製品を持ち込んで、その国の市場を占拠しようとしている。そこで、中国人は、ギャングに目を付けられている。アンゴラで中国批判はご法度だ。
 そんな大変なアフリカにおいて、何人かの日本人が国の再建に貢献している話も最後に紹介され、少しだけほっとします。いやあ、ともかく大変すぎる深刻な状況です。南アメリカで進んでいる革新の息吹とは違って、アフリカには残念なことがあまりにも多すぎますね。人間も大変ですけれど、シルバーバックのゴリラなども破滅の危機にあるようで、こちらも心配です。 
(2008年8月刊。700円+税)

「アフリカに緑の革命を!」

カテゴリー:アフリカ

著者:大高未貴、出版社:徳間書店
 南アメリカには次々にアメリカの言いなりにならない自立的な政権が出来て、国づくりが前進しているように思いますが、アフリカの方はなぜか遅々とすすみません。
 1960年代初頭のガーナのエンクルマ大統領(アメリカによって暗殺)をはじめとして、すごく新鮮な独立の息吹を感じたものですが・・・。一体、どうしたのでしょう。この本は、そんな困難なアフリカで地道な活動を続けている日本人の団体を紹介したものです。なるほど、なーるほど、大変な苦労があるのだろうな、本当にご苦労さまです、と思わずつぶやいたことでした。
 その仕掛け人は、なんと右翼の大立者のあの笹川良一です。うへーっ、そ、それだけでうさんくさい。つい、そう思ってしまいますが、この本で語られていることは、なかなかどうして、アフリカでは立派なことをやっているようなのです。
 当時の日本財団の会長であった笹川良一は、物資援助では根本的な解決にならないと考えて、アメリカのジミー・カーター元大統領にも協力を求めてNGOを設立した。アジアに「緑の革命」をもたらし、ノーベル平和賞を受賞したノーマン・ボーローグ博士に協力してもらった。SG2000とよばれるNGOだ。飢えた者に一匹の魚を与えるよりも、魚を釣る方法を教えるほうが、ずっと効果的で効果がある。なるほど、それは、そのとおりです。
 アフリカに出張するときの必需品は、下痢止め、痛み止め、マラリアの薬、トイレットペーパー、そしてミネラルウォーター。どんなときでも必ず薬とトイレットペーパーをもち歩く。食欲がないときでも、無理にビスケットを食べて紅茶で胃に流しこむ。アフリカではミネラルウォーターでも信じられない。安心して飲める冷たい飲み物はコーラだけ。それから、薬も飲んだらいけない。インドやブラジルから安くて悪質な偽薬が大量に入り込んでいる。うひゃあ、そ、そうなんですか。でも、信じて飲んだら効くのが薬ですよね。
 アフリカでは、今日は1食たべられたぞ。オレはリッチだ!が標準である。アフリカでは、人々は明日どう生きるか、より、今日どういきるのかに主眼を置いている。
 農民は字が読めないので、ビラやパンフレットをつくっても意味がない。アフリカのマスメディアはラジオである。
 アフリカの男性が怠惰な理由はマラリアによる。何度も発病すると、体に力が入らなくなって、だるさから通常の日常生活が送れなくなる。
 アフリカには援助貴族という言葉がある。国連などからの莫大な援助収入の大半が政府高官のポケットに収まってしまう。たとえば、ナイジェリアでは、年間外貨収入120億ドルのうち100億ドルは政府高官のポケットにおさまってしまう。そこで、援助する側が現金でダメなら現物援助にしたら、今度は現物が消えて闇市で高く売られていた。
 SG2000は、無料配布はしない。あくまで農民の経済的自立を促すためのものであるから。従来の援助方式が本当に有効なものだったら、いまアフリカに饑餓や貧困の問題は起きていないはず。
 SG2000は、現地アフリカに甘えの構造をつくらないよう努力している。たとえば、現金のやりとりを一切しない。すごいですね。心からの拍手を送ります。
(2008年4月刊。1500円+税)

ぼくは少年兵だった

カテゴリー:アフリカ

著者:イシメール・ベア、出版社:河出書房新社
 初めて戦争の巻き添えをくったとき、ぼくは12歳だった。
 激しい内乱の起きていた西アフリカのシェラレオネで12歳から15歳まで少年兵士として戦闘に従事し、生き抜いた著者の体験記です。この本は「戦場から生きのびて」というのがメイン・タイトルになっていますが、この本を読むと、まさしく実感させられます。よくぞ戦火のなかを生きのびられたものです。大勢の友人・仲間が次々に銃弾で倒れていくなか家族をみんな失い、著者ひとり生きのびました。それだけ運が強かったのです。
 戦争を賛美する人がいるが、戦争にロマンなどはなく、あるのは悲惨さだけ。人間を殺すことは、相手を非人間化させる行為だが、それは同時に自分の人間性もうしなわせてしまう。
 シェラレオネでなぜ内乱が起きたのかは、この本を読んでもさっぱり理解できません。ルワンダのツチ族とフツ族のような争いという明確なものはなかったようです。政府軍と反乱軍との戦いとしか書かれていません。そして、反乱軍はデビル(悪魔)というべき存在でしかありません。
 反乱軍に捕まった少年はすぐに兵士にされ、熱した銃剣で身体のどこかに反乱軍を意味するRUFを刻みつけられる。これは一生消えない傷痕になるばかりか反乱軍から絶対に逃げられないことを意味した。反逆者のイニシャルの刻印をつけて逃げるのは、殺してくださいと言っているようなもの。政府軍の兵士はそれを見たら一も二もなく殺すだろうし、好戦的な民間人だってそうするだろう。
 歌と踊りが大好きだった著者たち6人の少年は、戦争から逃げようとジャングルの中をさまよったあげく、政府軍に組み込まれてしまいます。そして、わずかの訓練を受けると、たちまち本物の戦場へ駆り出されていきます。
 戦闘行為の前に白いカプセルが渡される。それをのむと夜じゅう目がさえて眠れないのが一週間も続いた。そのうち、平気で銃をうてるようになった。
 火薬とコカインを混ぜたブラウン・ブラウニと呼ぶものを吸引し、白いカプセルを大量に飲む。それがたっぷりのエネルギーをくれる。汗びっしょりになり、着ている服をすべて脱いでしまった。身体がふるえ、目はかすみ、耳も聞こえない。あてもなく村を歩きまわる。そわそわした気分になった。何に対しても無感覚になる。何週間も眠れなくなるほどの莫大なエネルギーを感じた。夜にはみんなで戦争映画をみる。『ランボー』や『コマンドー』だ。
 ぼくらは獰猛になった。死という考えは頭をよぎりもしなかった。人を殺すのが、水を飲むのと同じくらい簡単になった。ぼくの頭は、初めて殺しの最中にぷつんと切れた。良心の呵責に耐えられないことを記憶するのをやめた。
 ぼくらは2年あまり戦い続け、殺人が日常茶飯事になっていた。誰にも同情しなかった。
 そんな元少年兵の社会復帰訓練センターに収容されます。収容所のなかで、元少年兵たちは元いた政府軍と反乱軍の2派に分かれて殺しあいもしてしまいます。
 薬の助けを借りずに眠れるようになるまでに数ヶ月かかった。ようやく寝入ることができるようになっても、1時間とたたないうちに目が覚めてしまう。夢のなかで、顔のない武装兵がぼくをしばりあげ、銃剣ののこぎり刃でぼくの喉を切り裂きはじめる。ぼくはそのナイフが与える痛みを感じる。汗びっしょりなって目を覚まし、虚空にパンチをくり出す。それから外に飛び出し、サッカー場の真ん中まで走って行って、膝をかかえこんで身体を前後に揺らす。子どものころのことを必死で思い出そうとしても、できなかった。戦争の記憶が邪魔をするのだ。
 樹皮に赤い樹液がこびりついている木のそばに行くと、捕虜を木にしばりつけて撃つという、何度も実行した処刑の光景を思い出す。彼らの血は木々を染め、雨期の最中でさえ、決して洗い落とされなかった。
 著者は社会復帰訓練センターを経て、おじさんの家庭にあたたかく迎えいれてもらって社会復帰できました。ところが、シェラレオネそのものがまた内乱の危機におそわれ、ついに国外へ脱出することになるのです。
 少年兵士たちのおかれている厳しい現実、そして少年兵士を社会復帰させることがいかに大変な事業であるかを理解させてくれる本です。
 表紙にうつっている、いかにも聡明そうで、明るい笑顔からはとても想像できない過去をもつ元少年兵士です。
 庭にある小さな合歓(ねむ)の木が花を咲かせています。紅い、ぽよぽよとした可愛らしい花です。
(2008年2月刊。1600円+税)

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