著者:植田智加子、出版社:海鳴社
しっとりした雰囲気に浸ることの出来る本です。列車に乗って1時間で読みきれず、目的地に着いてから、しばしホームで読みふけって、なんとか読了しました。
先に「インビクタス」(NHK出版)を読んだばかりでしたので、27年間の囚人生活を過ごしたマンデラ大統領に親近感を抱いていたところ、なんと著者はマンデラ氏を鍼治療していたというのです。しかも、大統領になる前からのことでした。マンデラ氏の早朝散歩にも一緒につきあっていたというのです。
マンデラ氏だけではありません。タンボ氏そして、シスルも、著者の患者だったというのですから驚きです。日本人女性が、南アフリカでも鍼灸師として活躍していたなんて、まったく信じられないことでした。
この本は、日本人女性が妊娠して出産し、一人で子育てする生活が淡々と描かれています。いえ、実は「淡々」どころではありません。「子殺し」がよく分かる心境が語られているのです。でも、それに待ったをかけたのが現地の人々でした。アパルトヘイトに身をもって反対した人々たちが、さりげなく著者の子育てを支え、また、子だくさんのなかで育ちあっている子どもたちにも助けられたのでした。
南アフリカの治安の悪さ、そしてストリート・チルドレンの子どもたちの様子も紹介されています。
10年ほど前に雑誌に連載されていたものが最近になって単行本化されています。
この本に登場してくる長男さんは、今はどこで何をしているのでしょうか・・・?
(2010年4月刊。1800円+税)
2010年9月18日