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カテゴリー: アフリカ

マリ近現代史

カテゴリー:アフリカ

著者  内藤 陽介 、 出版  彩流社
マリ内戦にフランス軍が介入したとき、マリって、どこにあるの、どんな国なの・・・、と思いました。この本は、そんな疑問を絵葉書と切手をたっぷり載せて解明してくれます。
 フランスは17世紀、国王ルイ14世の時代にアフリカに進出し、西アフリカを拠点とした奴隷貿易を開始した。イギリスのリバプールやフランスのボルドーから積み出された銃器や繊維製品がアフリカにもたらされ、アフリカ諸国は奴隷と交換した。そして、ヨーロッパ商人は奴隷を西インド諸国やブラジルに売り渡し、タバコ、サトウ、綿花などをヨーロッパに持ち帰った。
 西アフリカは、今でも金や鉄鉱石などの鉱山資源が豊富にとれる。現在、マリはアフリカ大陸において、南アフリカ、ガーナに次ぐ第3位の金生産国となっている。金鉱山の総重量は4トンで、輸出先は、スイスとアラブ首長国連邦(ドバイ)が中心。そこには2万人の子どもが働いている。もちろん、学校へ通うこともない。
独立以降のマリの現代史は、旱魃や洪水、そして最近の北部紛争に至るまで、いずれも自分で解決できず、ひたすら政府と国民は諸外国の援助をあてにし続けた。
部族の対立、宗教の対立そして、汚職と権限濫用。アフリカ諸国の人々が平和に生きることは依然として難しいように思われます。でも、ここが安定しないことには地球上の戦争はきっとなくならないのだと思います。
 マリの過去および現在の状況をイメージをもって概観することのできる本でした。
(2013年3月刊。2500円+税)

謎の独立国家リマリランド

カテゴリー:アフリカ

著者  高野 秀行 、 出版  本の雑誌社
500頁もある分厚い本です。面白くなかったら読みとばそうと思って読みはじめました。すると、面白いのです。いやあ、フリーのジャーナリストって大変なんだねと感嘆しながら頁をめくるのももどかしい思いで読みすすめました。そしてアフリカのソマリアについての認識をすっかり見直しました。ソマリアといったら、モガディシオです。アメリカ軍がコテンパにやられてしまいました。その惨状は映画にもなりました(『ブラックホークダウン』)。今なお戦闘状態の絶えない怖い国というイメージがあります。ところが、そのソマリアには北の方にソマリランドという平和な国があるというのです。そして、日本の海上自衛隊が出かけた海賊の国プントランドの実態が突撃取材で明らかにされます。最後に、ついに著者はかのモガディシオにも潜入に成功するのでした・・・。すごく面白い本です。半日かけて一気に読了しました。
 ソマリランドで走っている車のほとんどは日本の中古車。清武温泉、弘前セレモニーホール、はくあい幼稚園などとボディに大書された車が走っている。丈夫な日本車がドバイ経由で輸入されている。日常生活で通用しているのはソマリランド・シリング。ソマリランドで印刷しているのではない。イギリスで印刷して空輸している。
 ソマリ人は根っからの遊牧民。遊牧民の生活をそのまま都市にもち込んでいる。
 ところが、ソマリランドの町のなかで銃を持った人間を見かけることはない。過去には内戦をしていたが、氏族の長老の話し合いで終結させ、武装勢力は武器を返上し、民兵は正規軍兵士や警察官に編入された。
 実のところ、家庭には銃はあるようです。それでも、町では銃声を聞くこともありません。
ソマリランド中央部は、一般の人でも十分安全に観光旅行ができる。1泊50ドル程度の清潔なホテルがいくつもある。そして、庶民の料理はびっくりするほど美味い。味がマイルドで、肉は軟らかく、火の通り方や塩加減、油の量など、何をとっても日本人の標準値に近く、日本的な味。ただ、ソマリア人は手づかみで食べる。
 ただし、車に乗ると、1日に少なくとも1回はパンクする。道路が悪いうえに、古タイヤを修理して繰り返し使っているから。
 ソマリランドは、朝のうちは仕事をするけれど、それは朝8時に始まって昼の1時まで。そのあと5時まで仕事はしない。じゃあ、そのあと何をしているのか?
 カート宴会だ。カートとはアラビアチャノキ。見かけは、ただの木の葉っぱだ。枝からむしって、若い葉や柔らかい茎の部分をばりばり食う。葉っぱだから、まずい。土埃もついている。しかも、胃から消化吸収するため、効き始めるのに30分以上かかる。効くまではがんばって食べなければいけない。やがて、体の内側から、とても懐かしい心地よさが広がってくる。体の芯が熱くなり、意識がすっと上にもちあがるような感じがする。
 お酒と違って、カートは意識の明晰さは失われない。そして、記憶を失うこともない。カートをやると、気が大きくなり恐怖心がなくなって、集中力が増す。だから、受験生にも人気だ。ドライバーもカートをかむ。眠くならず、集中力が持続するからだ。
ソマリランドの治安がいいのは、氏族の網があるおかげだ。掟を破ったら、氏族の網を通じて必ず捕まる。
 ソマリランドには何の産業もない。国を支えているのは、海外に住むソマリア人からの送金だ。毎月1人500~1000ドルを送ってくる。故郷の人に忘れられたくないからだ。
 成人男子の多くが毎日1ドル以上はカートに費やしている。海外からの仕送りの大半はカート代に消えている。このカートは9割以上がエチオピアからの輸入。ソマリランドは1日に3000万ドルも輸入している。
 世界最大のソマリ人コミュニティは、アメリカのミネソタ州のシネアポリスにある。そこにソマリ人が10万人は暮らしている。
 ソマリランドが平和なのは、何も利権がないことにもよる。牧畜しか産業はない。利権がないから、汚職も少ない。土地や財産や権力をめぐる争いも熾烈ではない。銃がないのに反比例して、言論の自由は広く浸透している。
 ソマリ人は、いくつもの国に分かれているが、ソマリ語はどこでも通じる。ただし、外国人には難しい。ソマリア人は、人なつっこさゼロ。ソマリ人は絶対に自分を安売りしない。安いカネで働くなら、何もしないほうがマシと考える。
 ソマリランドは選挙を実施し、野党が勝利すると、与党が受けいれた。民主的な政権交代が実現した。
 ソマリア・シリングはソマリアが無政府状態になっても通用している。これは経済学の常識を越える事実だ。
 海賊は基本的に個人がやるもの。カネを出した人間は経費一切を負担する代わりに身代金は全額もらう。海賊が人質を傷つけることはまずない。ソマリの掟で、捕虜に暴力をふるうことが禁止されているから。身代金は人質に対してではなく、積み荷に支払われる。
モガディシオは、完全民営化社会。政府はなく、すべて氏族が支配している。携帯と送金の会社は襲われない。モガディショは、トラブル全般が基幹産業になっている。だから、誰も真剣にトラブルを止めようとはしない。
内戦を止めるために、敵対する氏族が娘20人ずつを交換した。美しい娘を選んで送り出す。初めのうちはいじめられていても、子どもが産まれると変わる。両方にとって孫になるから。なーるほど、そんな解決法もあったのですね。
ソマリランドに行ってみたくなるような面白さにあふれた本です。一読をおすすめします。
(2013年3月刊。2200円+税)

アフリカの風に吹かれて

カテゴリー:アフリカ

著者   藤沢 伸子 、 出版   原書房 
 なんだか気楽なタイトルですが、読みはじめると、アフリカ大陸の国々は依然として深刻な状況におかれていることがよく伝わってきます。そして厳しい自然と社会環境のなかでも日本人女性がたくましく活動しているのです。それを知ると、頭が下がります。
スーダンという国は南と北で人々が違うというのをはじめて知りました。南スーダン人は肌がとても黒く、顔も北部の人々にくらべると平面的。それに比して、北スーダン人はアラブ系で彫りが深く褐色の肌の色をしている。
 アフリカの女性は、髪のオシャレにこだわりがある。しかし、髪型にこれるというのも経済力のあかしだ。
 南スーダンの多くの家庭では男の子に教育の機会を与えても、女の子の教育にはまったく力を入れない。小学校を卒業した女性は1%ほどしかいない。女性が教育を受けられない理由のひとつに早婚の習慣がある。場合によっては、わずか7、8歳でヨメに行かされることもあるし、生まれたばかりの乳児が婚約させられることもある。
結婚しないで女性が一人で生きていこうとすると、所得者がいないから好きに扱っていいと思われて、レイプの被害にあう危険がある。うひゃあ、それは困りますね・・・。
日本のJICAが地域改善活動でボランティアを募集すると、活動に参加していると、この先、日本人が何か職をあてがってくれるかもしれないという根拠のない、しかし切実な期待をもつ人々が集まってくる。なーるほど、難しいところですね。
どれほど目的が崇高でも、手段を間違えると、マイナスの影響のほうが大きくなることがある。信頼してまかせきっていた人間に手ひどく裏切られるというのは、アフリカで仕事をしていくうえでの、一種の通過儀礼のようなものである。
 サンビアでは全国民の5人に1人がHIVに感染し、多くの人が家族や友人を亡くし、また自らも感染の恐怖におびえている。
 日本のNGO団体が、日本人ではなく途上国出身の医師を派遣する理由は、人件費が安いこともあるが、施設や機材のととのった病院勤務に慣れた先進国出身の医師では、限られた条件の環境で聴診器と血圧計のみで診察するのは厳しいことがあるからだ。
 エチオピア人は、もともと勤勉でアフリカで唯一独自の文字を持つ国民としての誇りをもっている。
 ここで働いていると、いつのまにか難民を厄介な人々の集団としてしか見られなくなる。彼らのやむことのない要求や不満にうんざりもする。でも、そのなかには、こたえてあげなければいけない、まっとうなものだっていくつもある。
 アフリカのなかでの活動というのは、まさに自らの人間性をためされ、生きる目的を考えさせられるものだということがよく分かる本です。
(2012年7月刊。1800円+税)

国家救援医

カテゴリー:アフリカ

著者   國井 修 、 出版   角川書店
 世界中の無医地区に出向いた日本人医師のすさまじい体験記です。こうしてみると、日本人の男子も、なかなか捨てたものではありません。これまで日本人女性の海外での活躍ばかり目立っていましたが(なでしこジャパンも)、日本人男性もやりますね。著者の大活躍に、心から拍手と声援を送ります。
 1962年生まれということですから、ちょうど50歳。まさに働き盛りの医師です。
 ユニセフ(国連児童基金)の医師として世界中を駆けめぐり、これまで110ヶ国で医療活動に従事してきたそうです。いやはや、超人的な経歴です。
私がこの本を読んでもっとも驚いたことの一つは、人道援助のつもりで送られた粉ミルクが現地の子どもたちの生命を奪っているということです。
飢餓で栄養不足の子どもがいることを知って、粉ミルクを送りたいと思うのは人々の善意からです。ところが、粉ミルクを溶かす水に問題があります。殺菌のために水を湧かせばいいのですが、災害現場には煮沸する手段・道具がありません。乾燥した粉ミルクでさえ細菌は繁殖できるのです。まして、汚染された水を粉ミルクに混ぜたらどうなるか。汚い水に混ぜて作ったミルクを子どもたちに与え、そこで残ったミルクを暑い環境に放置して、数時間後、また翌日飲ませたらどうなるか。さらに哺乳瓶や乳首を消毒もせずに使い続けると、どうなるか。うひょう、こ、こわいです・・・。
 その結果として、粉ミルクを使用した子どもは母乳保育児に比べて、死亡率がとても高い。そこで、ユニセフは、援助物資として粉ミルクを供与しないようにした。うへーっ、そうなんですか、ちっとも知りませんでした。善意が仇(あだ)になるという典型ですよね、これって・・・。
 著者は若い人たちについてきて欲しいと訴えています。日本の若者たちに、福島そして世界各地の病める人々のいるところに次々に飛び込んでいってほしいなと私も思いました。
(2012年1月刊。1400円+税)

中東民衆革命の真実

カテゴリー:アフリカ

著者   田原 牧 、 出版   集英社新書
 2011年2月、アラブの大国エジプトで革命が成功した。30年間にわたってこの国を統治してきたムバラク政権が民衆のデモによって倒された。
 エジプトの人口は国連統計で8400万人。実際はもっと多い。24歳以下の人口が半数をこえる。これって暑い国では人は長生きできないっていうことかしらん・・・?
 15歳から24歳までの85%は字が読めるものの、国民全体の非識字率は3割を超える。その人々にとってはフェイスブックは無用の長物だ。
 エジプト人は物知り顔で、見栄張りだ。一般にエジプト人は「口から生まれる」と言われるほどよくしゃべる。
 エジプトの失業率は9%。しかし15歳から24歳までをみると33%にもなる。1日2ドル以下で暮らす人が人口の2割いる。
エジプトはイスラエルと平和条約を結んでいるが、大半のエジプト人はイスラエル人を嫌っている。和平の現実は「冷たい平和」である。
 再びイスラエルと戦争したいというエジプト人は、まずいない。軍事的にも勝てる見込みは薄い。だから、エジプトの平和は屈辱によって支えられている。ところが、エジプトはイスラエルの電力施設が必要とする天然ガスの45%を供給している。矛盾ですね。
 エジプトには、複数の治安機関に100万人をこす職員がいると言われてきた。不当逮捕、拷問、こうした機関に支えられた政権は西欧の基準からいうと、独裁体制以外の何者でもない。
 ムバラク大統領は30年間の統治の間に、自らの腹心たちを軍から次第に内務官僚、政権与党に移していた。この変節が生んだ両者の隙間が、軍により自由な選択を許したといえる。
 エジプト軍は、単なる武力集団ではない。エジプトの反体制運動の主役だったイスラーム主義者たち、とりわけ急進主義者たちは革命前夜どうしていたか。結論をいえば、昔日の影響力を失い、社会の片隅で沈黙していた。
 これまでアメリカに追随してきたチュニジア、エジプトの独裁政権が倒れてしまった。アメリカの存在感は著しく凋落している。アメリカの対テロ特殊機関が捕まえたイスラム過激派をこっそりエジプトの移送し、ムバラク傘下の治安機関で拷問にかけるような秘密工作が横行していた。しかし、これからはそんな無茶は通らなくなるだろう。
 1979年のイラン革命以来、30年間のアメリカの中東戦略は、戦略と呼ぶには、あまりに場当たり的で、お粗末である。
 エジプト革命の実現について、現場からのレポートの一つとして興味深く読みました。中東も大きく変わりつつあります。日本も早く変えたいものです。
(2011年7月刊。760円+税)

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