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カテゴリー: 宇宙

宇宙検閲官仮説

カテゴリー:宇宙

(霧山昴)
著者 真貝 寿明 、 出版 講談社ブルーバックス新書
 宇宙のなりたちに関心のある私ですから、さっぱり理解できないながらも、どこか分かりあえるところがないかと手探りですすみながら、ともかく読みすすめてみました。
 アインシュタインの一般相対性理論は、「質量があると時空が歪(ゆが)み、歪んだ時空が重力の源である」と説明するもの。こんなこと言われても、まるで理解できませんよね…。
 ブラックホールが宇宙に存在するのは確実です。このブラックホールは、一般相対性理論が予言した天体。一般相対性理論の根幹をなすアインシュタイン方程式の解は、ブラックホールの内側に特異点が存在することを示している。特異点は、時空の対称性などの仮定によらず、一般的に存在することが、特異点定理によって数学的に証明されている。
 宇宙検閲官仮説とは、この特異点が発生しても、ブラックホールの中に閉じ込められているから心配しなくてもよいだろうとする仮説。すなわち、ブラックホールなしに「裸の特異点」が出現すると、それは自然界の検閲に引っかかって隠されるはずということ。いやはや、これまた私の理解をこえてしまいます。
 裸の特異点とは…。巨大な星が重力崩壊して、電子の反発力で支えられず(白色矮星となれず)、中性子の反発力で支えられず(中性子星となれず)、さらにつぶれ続けるならば、支えるものがなく、一点に無限大の質量が蓄積する時空特異点が出現する時空になってしまう。でも、時空特異点が生じても、それがブラックホール地平面の内側のことなら、外側の世界には影響が出ない。
 ブラックホールは発生できるが、消滅できない。
 ブラックホールは合体できるが、分裂できない。
皆既日食のとき、太陽の近くに見られる星の位置が通常とは異なるという観測データによって、太陽の質量によって空間が歪み、その歪んだ空間を光が進むため、皆既日食以外のときとは光の進む方向がずれてしまう。
 遠くの銀河にある変光星ほど、赤っぽく見えている。これは、宇宙全体が膨張していることの証拠。つまり、ドップラー効果によるもの。
 分からないながらも、宇宙について考えると、自分の死後、宇宙はどうなるんだろうか…というのが、実にちっぽけな、とるに足らない心配だと、いつのまにか雲散霧消してしまうのです。
(2023年2月刊。1100円+税)

ワンルームから宇宙をのぞく

カテゴリー:宇宙

(霧山昴)
著者 久保 勇貴 、 出版 太田出版
 著者は、どうやら独身のようで、ワンルームマンションで10年も一人暮らし。そして、そのワンルームでやってる仕事は、なんと、広大な宇宙に飛んでいく宇宙探査機をどうやって上手に制御するかを研究すること。ええっ、そんなこと、ワンルームの自分のパソコンで一人で出来るの…、驚いてしまいました。ところが、著者はできると断言しています。
 宇宙機を目的地まで正確に飛ばす方法を考える軌道制御の分野では、宇宙機の運動や制御入力を数学的に方程式化して、その方程式をパソコンで解いて、制御がうまくいくかどうかを確認する。
 自分のパソコンで計算した宇宙機の軌道を初めて見たら、自分の目で宇宙の真理をのぞいたような感覚になるだろう…。いやはや、そんなことが宇宙航学研究所ではなく、ワンルームにある自分のパソコンで可能な世の中なんですね…。
 宇宙機の制御というのは、高校の物理で習う方程式でも、そこそこ太刀打ちできてしまうものなんだそうです。ええっ、えっ、ホ、ホントなんですか…。ウソでしょう。
 著者の研究は、多くの場合、パソコンひとつで完結してしまう。ワンルームの白いデスクにA4サイズのノートパソコンを広げ、ひとり黙々と研究する。うひゃあ、なんだかイメージが狂ってきましたよ…。
 著者は福岡生まれの兵庫県育ち。東大の航空宇宙工学科に入った。宇宙飛行士になるのを夢見て…。ところが、現実には足切り不合格。試験も受けられなかった。いやはや、すごい試験なんですよね。
 宇宙工学は、人間を乗せた宇宙船を正確に月にたどり着かせたり、3億キロメートルも彼方(かなた)の小惑星に60センチメートルという精度で探査機を着陸させる。
 宇宙機の設計での絶対的なルールは、とにかく制限重量を守ること。決められた重量の中で各システムのバランスを絶妙に調整し、ちょうどうまいこと全体のシステムを成り立たせて初めて宇宙機はミッションを遂行できる。
 宇宙空間は熱や放射線で機器が壊れやすく、しかもいちど壊れたら基本的に修理に行けない。そんな厳しい世界で、いかに巧妙に重量リソースを配分して、ミッションの成功率を高めていく。実際には、現実的な安全策を優先したり、機能を切り捨てたりという決断の繰り返しだ。JAXAで働きながら、なんと週1回はボクシングジムに通っているというのです。
 著者の書いていたブログが本になったものだそうです。書くのが好きというのも、いいことですよね。まあ、私も書くのが命ですけど…。
(2023年3月刊。1800円+税)

地球を掘りすすむと何があるか

カテゴリー:宇宙

(霧山昴)
著者 廣瀬 敬 、 出版 KAWADE夢新書
 地球の地下を実際に掘ったときの最深は12キロ。わずかとしか言いようがありません。だって地球の半径は6400キロもあるのですから、1%にもなりません。
 そして、地球の内部の核、マントルは赤くなければ、ドロドロでもない。
 地球を12キロ以上に掘りすすめないのは、高温になるため。1キロメートル堀りすすむごとに30度上がっていく。ドリルの先端に取りつけたダイヤモンドは、実は熱に弱い。ダイヤモンドを使わない別の方法を考える必要がある。
 ダイヤモンドは、深さ150キロよりも深いところでしか出来ない。ダイヤモンドが出来るには、それだけ高い圧力が必要になる。
 地球の表面は十数枚のプレートで覆われている。プレートとは、堅い板のこと。大陸プレートと海洋プレートの二つがあり、それぞれが別の方向に異なるスピードで動いている。大陸プレートの移動速度は、海洋プレートよりも遅く、年間数センチほど。たとえば大西洋は少しずつ拡大している。毎年2~3センチほど。ヨーロッパとアメリカは遠ざかっている。
 大陸が分裂したのが2億5000万年前。大西洋は、今も拡大中。
 プレートを動かしているのは、自らの重さで沈み込む力。この力でマントルからマグマを引き出している。海があるからプレートが冷やされ、重くなり、沈み込んでいくという循環が生まれる。
 マントルは岩石でできていて、コアは鉄を主体とする金属でできている。
 地球の表面の7割が海に覆われているが、海の深さは平均3キロほど。すると、表面にわずかに水がはりついている程度で、全質量の0.02%にすぎない。地球の1000分の1の隕石ひとつで、海の全水量と同じだけの水がもたらされる。現在の海の全水量を1海水とすると、太陽系の初期に降り注ぐ隕石によって100海水以上の水がもたらされたとしても、不思議ではない。
 コアは地球磁場をつくっている。磁場がなければ、地上にすんでいる生物は、有害な太陽風や宇宙線にさらされてしまう。
 地球に磁場がなければ、海がなかったかもしれない。海だけでなく、大気もなくなっていたかもしれない。
 火星には昔は海が存在した。火星の海がなくなったのは38億年前のこと。火星ができてから7億年後に海は焼失してしまった。磁場がなくなったからだと考えられている。
 磁場が消滅すると、太陽風の影響を受けて大気が剥ぎとられ、海が消滅した。
 この本では、火星はなぜ小さいのか、月はどうして生まれたのか、まだ完全に解明されていないことが示されています。そして、地球のマグネシウムが多い理由も説明が尽くされていないとのこと。世の中は、まだまだ謎だらけなのですね。そのことが分かっただけでも本書を読んだ甲斐があります。
(2022年7月刊。税込990円)

空のみつけかた

カテゴリー:宇宙

(霧山昴)
著者 武田 康男 、 出版 山と渓谷社
 今から30年以上も前、40代初めに南フランスへの語学研修のツアーに参加しました。もちろん夏休みを利用してのことです。学者のサバティカル休暇を真似た法律事務所があると聞いて(北九州第一)、早速とり入れ、実践したのです。
 夏の南フランスは雨が降らず、夜10時まで明るく、そして食事は美味しく、人々はワインを飲みながらたっぷり2時間かけるのです。人生を味わい尽くすというフランス人の生き方を私も身につけたいと思いました。
 午前中のフランス語教室が終わると、学生食堂で安くて美味しい食事をとります。なんと、ワインつきです。そのあとはまったくの自由時間。広々とした大学構内で空を見上げると抜けるような青空が広がっています。これこそが生命(いのち)の洗濯だと思いました。25歳で弁護士になって20年近くになっていましたから、気分転換が絶対に必要でした。南フランスの青空のすごさは今もくっきり思い出すことができます。
 この本は、たくさんの空の現象を長く観察してきた著者による集大成の写真集です。その一は、年に数回はみられそうな空。その二は、年に1度くらいは見られそうな空。その三は、一生のうちに見られたらラッキー、というレアな空。この3つのステージで空が紹介されています。それにしても笠雲というのは、すごいですね。まるで、UFOです。こんな奇妙な形の曇って、見たことがありません。
 線状降水帯というコトバを最近知りました。そこでは、にゅうどう雲(「入道雲」とは書いていません)が次々に生まれ成長していきます。にゅうどう雲は、真夏そのものの雲ですね…。
 秋空に天高く見えるのは、うろこ雲。これは、空に小さな細胞上の対流がたくさん出来ていて、対流の中に、この雲が発生する。これは私も子どものころから見たことが何回もあります。
 この本では、真っ赤な夕日というのは、実はあまりない、としています。空気の澄んだ場所では、橙(だいだい)色の眩(まぶ)しい太陽が沈んでいく。ハワイの夕日は、眩しくて、とても見ていられない。そうなんですか…。
 日本は湿気が多く、空はかすみがちなので、赤い夕日を見やすい。
 そして、夕日の赤い太陽は、実は丸くない。上下にややつぶれている。これは、上空ほど大器の密度が小さいため。太陽の光が低空ほど浮き上がって見えるからだ。なーるほど。
 太陽の左右に、色づいた輝きが見られることがある。まるで、太陽が他にもあるかのようなのに、幻日(げんじつ)と言われた。
 虹の色は、アメリカでは6色、ドイツでは5色、イギリスは「ニュートン」以来7色。日本では、7色ですよね。こんなに国によって違うものなんですね。
 いくつもの空の写真があって、楽しく眺めることができました。
(2022年8月刊。税込1700円)

ブラックホール

カテゴリー:宇宙

(霧山昴)
著者 二間瀬 敏史 、 出版 中公新書
 ブラックホールの姿が見えた、だなんて、不思議ですよね。だって、光が吸い込まれていくんでしょ。その姿が見えるはずありません。なので、ブラックホールの周囲が見えたので、その真ん中の黒いものがブラックホールというわけです。なるほど、なーるほど・・・。でも本当なんんでしょうか。ブラックホールって、いったい何でしょうか・・・。
そこにある物質が詰まっているわけではない。物質のかたまりではなく、時間と空間のかたまり、のようなもの。ええっ、いったい何のことでしょう・・・。ともかく、わけが分からないまま、読みすすめました。この世の中、わけが分からないけれど存在するものというのは、いくつもいくつもあります。コロナ禍が爆発的に増えているのに、行動制限なし。旅行するのも自己責任で自由。ロシアのウクライナ侵略戦争が終わる目途が立たないなか、日本も核をもてという声が強まる不思議さ。日本が核をもったら攻められないなんてノーテンキな幻想でしょう。いったい日本に原発(原子力発電所)がいくつあるのか知っているのでしょうか。休眠を入れたら50ヶ所以上になります。その一つでも攻撃されたら、日本はおしまいなんですけど・・・。
 ブラックホールの中に物質はない。どこにも物質はない。重たい割にはすごく小さい天体。そして重力がとても強い天体、それがブラックホール。
 えぇ、物質がないのにすごく重く、重力がとても強いって、どういうことなんでしょうか・・・。
 ブラックホールの表面は、時間が凍りつくところ。時間の流れが止まるところ。
それではブラックホールをつくった物質、その後にブラックホールに落ち込んだ物質は、いったいどこに行く、行ったのか・・・。これは、今なお答えが見つかっていない現代物理学の宿題だ。
 ブラックホールの正反対のものとしてホワイトホールと呼ぶものがある。このことも知りませんでした。外向きに一方通行の面に囲まれた時空の領域です。
 この宇宙には、大小無数のブラックホールが存在している。これらのブラックホールは、太陽質量の10倍以上重い大質量星の重力崩壊で形成されたものと考えられている。
 かの有名なホーキング博士は、タイムマシンができないことを意味する「時間順序保護仮説」を主張した。ホーキングはいまだかつて未来からの旅行者がいないことがその証拠だとした。そうですよね。映画や小説だとタイムマシンで時空を行ったり来たりしますし、できますけど、いったい父親が母親と巡りあわずに私が存在できるものでしょうか・・・。どう考えてもおかしいです。
 光さえも逃げ出せない時空の領域、それがブラックホール。では、それは何なのか・・・。こんな日常生活とはまったく無縁な思考の遊びのような世界に、しばし浸っているのも心地良いものなんですよね・・・。
(2022年2月刊。税込946円)

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