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カテゴリー: アメリカ

CIA秘録(上)

カテゴリー:アメリカ

著者 ティム・ワイナー、 出版 文芸春秋
 CIAのおぞましい歴史が次々に明らかにされています。腐臭プンプンで、読み続けるのが厭になってしまいますが、目をそらすわけにはいかないと思い、読みすすめました。
 CIAの秘密工作は、おおむね闇夜に鉄砲を撃つようなものだった。CIAは海外での失敗を隠し、アイゼンハワー大統領にもケネディ大統領にも嘘をついた。ワシントンでの自分たちの立場を守るためだ。CIAは、大統領が聞きたくないことを取り入れることが危険であることを学んでいた。
 CIAはソ連の内実を知るスパイを一人としてリクルートできたことはなかった。スパイはいたが、いずれも先方からの自発的協力者であり、CIAが獲得したわけではない。そして、これらのスパイは、みな死んだり、ソ連によって処刑された。そのほとんどは、アメリカにいるCIAのソ連部門の職員に裏切られたためだ。
CIAは、イラクに大量破壊兵器があるという間違った報告をホワイトハウスに送った。ほんのわずかな情報をもとにして大量の報告をでっちあげた。
CIAは日本の右翼そして自民党を育成するため大金をつぎ込んだ。
 児玉誉士夫についてのCIAの報告は次のとおり。
 児玉は職業的な嘘つきで、暴力団、ペテン師で、根っからの泥棒。児玉は諜報活動のまったくできない男で、金儲け以外のことには関心がない。
 CIAは、そんな男と長く密接な関係を持っていたのでした。
 CIAと自民党とのあいだでは情報とお金が交換されていた。自民党を支援し、内部の情報提供者を雇うため、お金が使われた。将来性のある若手政治家にお金をつぎこみ、力を合わせて自民党を強化し、社会党や労働組合を転覆しようとした。
 自民党にお金を渡すのは、高級ホテルで手渡すというやり方ではなく、信用できるアメリカのビジネスマンを仲介役に使って協力相手の利益になるような形でお金を届けた。
 岸信介は、CIAと二人三脚で日米安全保障条約をつくりあげていった。
 CIAの役割を知らない日本の政治家は、アメリカの巨大企業から提供されたお金だと伝えられた。自民党へは、4代15年間、CIAからお金が流れ、自民党の一党支配を強化するのに役立てられた。1960年には7万5000ドル、1964年には45万ドルがCIAから自民党に提供されている。
 むひょーっ、自民党はCIAのお金で育成されてきた政党なんですね。こんな政党が日本人に愛国心を持てと説教をしているのですから、世の中の倫理が間違ってしまうのも当然です。それにしても情けない話ではありませんか。自民党の側から反論も弁明も何もなされていないことにも腹ただしい限りです。黙殺してしまおうということなのでしょうか……。
 ケネディ兄弟(大統領と司法長官)は、キューバのカストロ首相(当時)の暗殺にゴーサインを出し、その実行に執念を燃やしていたことが明らかにされています。ケネディ暗殺は、その仕返しだったと言わんばかりの記述がなされています。これは、本当でしょうか。
 CIAがその名前から想像されるほど、インテリジェンスに富んだ集団でないことがよくよくわかる本でした。
(2008年11月刊。1857円+税)

黄金郷伝説

カテゴリー:アメリカ

著者:山田 篤美、 発行:中公新書
 まったくの偶然ですが、イギリスのサー・ウォルター・ローリーについて書かれた本を同じころに読みました。エリザベス女王のころ、イギリスはスペインとはりあってアメリカ大陸へ進出(侵略)しようと必死だったのですね。そのころ、イギリス側で活躍した一人が、このサー・ウォルター・ローリーだったのです。結局、エルドラド(黄金郷)を発見することができず、失意のうちにイギリスに戻って、逮捕され、スペインの要求どおりに死刑に処せられてしまうのでした。
 コロンブスのアメリカ大陸発見というのは日本では定着した考えです(私の高校生時代、教科書でそう習いました。今でもそうだと思います)。しかし、アメリカ大陸にはそれ以前も多くの「インディアン」が平和のうちに生活していたのだから、「発見」というのはおかしいと指摘されています。私も、なるほど、と思います。それは、ともかくとして、コロンブスは
1498年の第3回航海で南米大陸のベネズエラに到達しました。そうです。今、反アメリカで健闘しているチャベス大統領のいるベネズエラなのです。
 コロンブスが他の人と違っていたのは、地球球体論を取り入れ、東方世界に行くために西を目ざした逆転の発想だ。コロンブスの計算では、西に向かうとまず日本(ジパング)に到達し、その後に中国に到達できると考えた。目ざす財宝は真珠と黄金である。
 コロンブスの到達を祝う記念日は、今では先住民の受難がはじまった日と考えられている。この日は、中南米の各地で「民族の日」と呼ばれ、民族の権利回復を求める先住民族によるデモや集会が行われている。
 さて、ローリーである。ローリーは、エリザベス女王の近衛隊長に就任し、出世していった。その本質は、エルドラド探検隊であり、海賊、つまり侵略者であった。
 当時、イギリスはスペインと敵対関係にあった。スペイン船団を襲撃するイギリス人は国から特命状をもらっていたので、単なる海賊ではなく、私掠船(しりゃくせん)と呼ばれていた。ローリーには、キリスト教徒の君主が所有していない土地を征服する権利が与えられていた。だから、その地を未発見の地にカモフラージュする必要があった。そこで、スペインが発見したグアヤナではない、別のギアナという地方を発見したと言いつのった。
 ローリーたちは発見できなかったが、ベネズエラには、本当に金を産出する地方があった。これが今の悲劇をもたらしている。
 大航海時代から続く大土地所有のルールでは、先住民しかいない土地は誰もいない土地であり、最初に到着したヨーロッパ人が、その地を領有することができた。
 いやあ、、これって、よく考えたら、とんでもないルールですよね。私も高校時代まで習った世界史で、このことをまったく疑いもせず、ただひたすら暗記していました(日本史も世界史も私の得意科目でした)。しかし、先住民がいるのに、なぜ、突然現れた「先進国」が勝手に自分の領土だと宣言できるのでしょうか。おかしなことです。人間みな平等なんですからね。
(2008年9月刊。940円+税)

対テロ戦争株式会社

カテゴリー:アメリカ

著者 ソロモン・ヒューズ、 出版社 河出書房新社
 イギリスのジャーナリストが、対テロ戦争と名付けて金儲けに狂奔している保守本流やネオコンの政治家たちを鋭く告発しています。思わず身震いするほどのおぞましさです。
 9.11のあと、投資家たちに現金を出資しないかと声がかかった。アメリカは、以前から、災害をタネに金を稼ごうという企業家たちに事欠かない。見積もりによると、9.11のあとアメリカ政府はテロ対策費に600億ドルを費やすと考えられた。
 対テロ戦争とは新しい奇妙な混合物であり、新たな脅威に立ち向かうべく増大する国家の力と、縮小に向かおうとする民営化論の現状を融合させたものだ。英米の政府は新しい力を握り、それをすみやかに民間企業にゆだねることで、新たな安全保障産業を生み出した。
新しい警備保障会社は国内にある民間の拘置所に人々を監禁し、外国では銃をうつことができるようになった。刑務所や難民収容所の民営化によって、国が独占してきた力を営利企業に下請けさせられるという原則がうちたてられた。アメリカで1984年に民間刑務所が開設し、イギリスで初めてのウォルズ拘置所が開所したのは1992年。
ところが、現実には、新しい民間刑務所は、公営の刑務所より効果的でないことが明らかになった。民営化された刑務所で、企業は犯罪者の更生には関心を持たない。収監者の自殺や自傷行為の発生率が全国平均よりも高くなった。やる気をなくした職員は、自分たちの困難な任務に対処できなかった。民営化された少年院では、暴力と虐待が横行した。
 イラクのアブグレイブ刑務所における収容者への虐待行為には、アメリカの民営刑務所で懲戒処分を受けた3人の男たちも関与していた。
 イギリスでテロ容疑者として逮捕された人々が裁判手続によらずに自宅監禁とされ、電子タグをとりつけられた。電子タグを監視するのは民間の警備保障会社である。ところが、この電子タグが実はいいかげんなもので、現実には機能していなかった。
 民間による安直な自宅監禁が、その指令に従った善良な人々の精神を破壊し、もとから強い意志を持っていたテロ容疑者は逃亡をゆるした。
 うへーっ、これって、ひどいですね。そんな杜撰なものなんですか、電子タグって……。
 アフガニスタンにおいて、アメリカのダインコープ社は警察の再建に取り組んだことになっている。5年間でダインコープ者は11億ドルを受け取った。しかしながら、アフガニスタン国家警察は、犯罪に対してもタリバンに対しても何ら有効に機能していない。
 イラクにおいて、英米の当局は、契約書に署名するだけで、契約した民間業者が軍事機構に熟練した人員をたっぷり補ってくれるものと信じていた。市場の優越という原理によって、イラクの民間兵士が占領軍に効率と創意をもたらすだろうと確信していた。ところが、現実には、民営化は占領の妨げになった。民間業者がもたらしたのは、腐敗と失敗そして暴力だった。重要なことは、民間業者がイラクという国家の崩壊に貢献したことだ。イラクの政府と経済はバラバラに解体された。
 イラクにおけるもっとも重要なアメリカの財産の2つ、アメリカ大使館と司令官はアメリカ軍によってではなく、雇われた兵士の手で守られていた。
 イラクにいるアメリカ軍部隊は14万人。民間業者に雇われている人は10万人。ある人は4万8000人の警備員が180もの別々の会社にやとわれていると見積もっている。
 しかし、民間軍事会社のもたらす最大のコストは、政治的なコストだ。彼らの存在や影響は、戦略を捻じ曲げ、テロ戦争をさらに大きな軍事行動へと押しやった。
 民営化された占領は、実際には、欠陥だらけの困難なものだったが、企業は公共セクターより効率的であるという先入観を持つ英米当局は、民間軍事会社の売り口上を素直に受け入れた。民間軍事会社にしてみれば、商売の宣伝をしていたわけで、自分たちの能力を過大評価気味に言いたてるのは当然のことだった。
 イラク経済へのアメリカ企業の侵攻は、再建の失敗によって、反乱者となる敵を増やす結果となった。第一に、基本サービスの失敗がイラクに住む人々を遠ざけてしまった。サダム体制のころより水が汚れ、電気が足りず、病院や学校が貧しくなった。お金はアメリカ企業を伝って、イラクに届く前に湾岸諸国の契約業者に滴り落ち、現金の鎖は、情実・賄賂・腐敗のためにすり減って切れた。そのあとに残ったのは怒りだった。失業者やろくにサービスを提供されない人々は、反乱の呼びかけにすぐ反応した。
 イラクの安定のために雇われた兵士を使うという決定は、サダム後のイラクの失敗の原因となった。アメリカ・イギリス連合軍はイラクで敵を打ち負かしたが、気がつくと、周囲に友人はほとんどいなかった。サダム体制が終わったことへのイラク国民の安堵は、まもなく米英占領軍への怒りに変わった。加えて、占領軍の悪行は、ただイラクの人々の心を失う方にしか作用しなかった。
 2003年の侵攻から数年のうちに、イラクとアメリカの何億ドルものお金が帳簿から消え失せた。それでも、腐敗の罪を問われる当局者はほとんどいなかった。
 イラクで活動する最大の傭兵グループの一つは、南アフリカから来た。
 イラクは戦場の民営化、占領業務の契約業者への移譲という試みの、きわめて壮大な実験場となった。その結果に疑問の余地はなかった。新しい傭兵たちはイラクの失敗を助長した。彼らはひたすらイラクからお金をしぼりとった。イラク自身の治安部隊をつくる代わりに、警備保障会社を利用することの利点と見えたものは、すべて空論だということが判明した。軍事部門の民営化がおしすすめられていったとき、その民間企業の経営陣には、ネオコンやタカ派の政治家たちが名を連ねている。ディック・チェイニー、ドナルド・ラムズフェルド、リチャード・パールなど……。
ひどい、ひどい。「民営化」の美名のもとに、自分たちはぬれ手に粟でもうけていたわけですよ。許せません。ネオ・コンの連中なんて、汚い金もうけの戦争屋でしかありません。広く読まれてほしい本です。
(2008年10月刊。2400円+税

ジャガイモのきた道

カテゴリー:アメリカ

著者:山本 紀夫、 発行:岩波新書
 わたしたちが日常食べている「栽培植物」は、すべて人間が作り出したもの。栽培植物とは、栽培の過程で植物を人間にとって都合よく改変した結果、野生の植物とはすっかり違ったものになっている植物のこと。つまり、栽培植物とは、まさしく人間によってつくられた植物なのである。
 たとえば、種子植物は熟すと種子がパラパラ落ちたり、風に吹かれて飛ばされる。これは野生の植物にとって繁殖のために必要な性質で、種子の脱落性という。この種子の脱落性は、人間が利用するのには不都合なので、種子を利用する栽培植物ではほとんど例外なくこの性質を欠かせたものになっている。人間は収穫するときまで、種子が脱落しないものを選び出し、それをもっぱら栽培するようになったのだ。
 ふむふむ、なるほど、なるほど、そういうことですか……。
 野生のジャガイモは、ソラニンやチャコニンなどのアルカイド性の有毒物質を多量に含んでいる。そこで、アンデスの人々は、ジャガイモの毒抜き技術を開発した。
 世界各地で栽培されているジャガイモは、すべて、元をたどればアンデスで生まれたトゥベローサム種の一種に由来し、アンデスを離れてから分化したもの。
 ジャガイモの栽培化は、紀元前5000年ごろなので、その栽培化までには、最初のアンデス人がジャガイモの利用を始めてから数千年もの長い年月を要している。
 アンデスでは、穀類がまったく栽培化されなかったのに、イモ類は多種多様なものが栽培化された。ジャガイモこそ、アンデスの山岳文明を生んだ。
 人骨のタンパク質(コラーゲン)を抽出し、それを構成する主元素である炭素と窒素の量を測定し、その値から人骨の生前の食生活を復元する方法が開発されている。
 いやあ、すごいですね。骨を分析すると生前に何を食べていたか分かるなんて、すごいことです。
 苦いジャガイモは寒さに強いだけでなく、病害虫にも強い。このジャガイモを加工したチューニョは、貯蔵食品としてすぐれていて、腐らず、何年でも貯蔵が可能である。
 インカ帝国では、就職としてジャガイモ、儀礼的な作物としてトウモロコシが作られていた。トウモロコシは、酒を造るための材料だった。
 ジャガイモの耕地は休閑システムを取っていた。地力の疲弊を防ぎ、病気の発生を抑える効果もある。家畜の糞を肥料としていたのも生産性の向上に役立った。
 フランスでは、19世紀になってからジャガイモが普及した。18世紀末から19世紀半ばまでに、食事の中心は穀物のカユからジャガイモに大きく転換した。
 ジャガイモは栄養バランスに優れた作物であり、ビタミンやミネラル類にも富んでいる。あとは少しのミルクを飲むだけで、栄養は十分に補えた。
 ジャガイモは江戸時代に徐々に日本各地に広がっていった。長崎に渡来したジャガイモは日本各地に広がった。真っ先に栽培されたのは北海道地方だ。
 ジャガイモという偉大な作物について知ることができました。
 きのうの日曜日、朝からフランス語の口頭試問を受けました。まったくしどろもどろとはこのことです。大変みじめな思いをさせられました。3分前に問題を渡されます。2問(もちろん、フランス文です)あるうちから1問を選び、答えを考えて面接室に入ります。面接官は、フランス人と日本人ですが、質問と問答はフランス人がします。私は、高速道路を日本で作り続ける必要があるか、という設問を選びました。日本語ならそれなりにしゃべる自信はありますが、フランス語が全然出てこず、苦悶しました。3分間スピーチしたあと、問答するのです。冷や汗三斗とはこのことを言うのでしょう。うまく言いきれないうちに面接官が終了を宣言しました。7分間の諮問ですが、1時間もかかったほどの疲れを覚えました。
 駅への帰り道、言いたいことが言えなかったもどかしさからでしょう。自然とぶつぶつつぶやくのです。気づいた人がいたら、気の変なおじさんと間違われたと思います。
(2008年6月刊。740円+税)

アマゾンの森と川を行く

カテゴリー:アメリカ

著者:高野 潤、 発行:中公新書
 アマゾンというと、大自然そして密林(ジャングル)というイメージですが、実際には鉱物資源の開発、牧場用の開拓などで、どんどん切り拓かれているようです。といっても、まだまだ奥地のジャングルは残っています。そこへ大胆にも入りこんで生活し、写真を届けてくれる著者の行動力は、いつものことながら感嘆させられます。この本はカラー版なので、アマゾンの大自然の威容を居ながらにして少しばかり味わうことができます。
 ワニの叫び声を模写してワニを呼び寄せる現地の男性がいます。寄って来たワニは、舟のすぐ近くまで「何だい、何だい」と咆哮を上げながら近づいてきます。夜の川に目をギョロギョロさせて舟に近づいてくる大きなワニなんて、不気味そのものですよね。
でも、怖いといえばやっぱり蛇です。黒くて太い大蛇がアマゾンにはうじゃうじゃいるのです。木の上で昼寝しているアナコンダ。川の中を泳ぐ模様つきのボア。シカも丸呑みするのです。うっかりジャングルに踏み込むと、大蛇に飲み込まれてしまいそうです。おー、こわ、こわーい。
 いえいえ、ジャガーもいます。人間が一人だと分かると襲ってくるほど賢いジャガーです。よく見張っているのです。ブルブルブルッ。寒気がしてきました。ジャガーは、森の王、というべき存在なのです。
 アマゾン特有の風土病もある。治ったはずの風土病が再発した。寄生虫が皮膚を食い荒らす。これには抗生物質は効かない。そして、原因不明の肺炎にもかかった。
いやあ、大自然のなかには素晴らしい自然とともに自然の脅威にみちみちているのですね。私は、アマゾンは写真だけで結構です。写真でガマンすることにします。
 水曜日、朝からハローワークそばの空き地で相談会があり、担当者の一人として参加しました。医師や医療関係者が大勢きていました。法律相談のコーナーに来た人は2人だけでした。過払いの可能性が大いにあります。もう一人は、昨年12月に解雇され、2月から失業保険はもらえるけれど、その間のマンションのローンの支払いが大変だという話でした。こんなとき、つなぎ資金の制度があれば、と思いました。
(2008年10月刊。1000円+税)

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