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カテゴリー: アメリカ

閉じこもるインターネット

カテゴリー:アメリカ

著者   イーライ・パリサー 、 出版   早川書房
 インターネットで世界が広がったというのは単なる錯覚ではないのか、著者は鋭く問題を投げかけています。
 我々は、ある狭い範囲の刺激に反応しがちだ。セックスや権力、ゴシップ、暴力、有名人、お笑いなどのニュースがあれば、そこから読むことが多い。
 パーソナライズされた世界では刑務所人口が増えているとか、ホームレスが増えているとか、重要だが複雑だったり不快な問題が視野に入ることが減っている。
 アマゾンは、あらゆる機会をとらえて、マーザーからデータを集めようとする。たとえば、ギンドルで本を読むと、どこをハイライトしたのか、どのページを読んだのか、また、通読したのか行ったり来たりしたのかといった情報が、アマゾンのサーバーに送られ、次に購入する本の予測に用いられる。
 グーグルもフェイスブックも、関連性の高いターゲット広告を収益源としている。このように人々の行動が商品となっている。インターネット全体をパーソナライズするプラットフォームを提供する市場で取引され小さな商品に、関連性を追求した結果、インターネットの巨大企業が生まれ、企業は我々のデータを少しでも多く集めようとし、オンライン体験は我々が気づかないうちに関連性にもとづいてパーソナライズされつつある。
 アメリカ人は、とても受動的にテレビ番組を選ぶ。テレビ広告はテレビ局にとって宝の山となる。受け身でテレビを見ているから、広告になっても何となく見つづける。説得においては、受け身が大きな力を発揮するのだ。
 インターネットの草創期には、自分のアイデンティティを明らかにしなくてよいことが、インターネットの大きな魅力だと言われていた。好きな皮をかぶれるから、この媒体はすばらしいとみなが大喜びした。ところが、ウェブの匿名性を排除しようとする企業が数多く出現した。
 今では、顔認識さえできる。被疑者の顔写真をとると、数秒で身元と犯罪歴が確認できる。顔からの検索が可能になると、プライバシーや匿名性について我々が文化的に抱いている幻想の多くが壊れてしまう。顔認識はプライバシーを途切れさせてしまう。うひゃあ、これは怖いです・・・。
最近のインターネットは、いつのまにか、自分が興味をもっていること、自分の意見を補強する情報ばかりが見えるようになりつつある。おもわぬモノとの出会いがなくなり、成長や革新のチャンスが失われる。世論をある方向に動かしたいと思えば、少しずつそちら向きの情報が増えるようにフィルターを調節してゆけばいい。
 うへーっ、これって本当に怖いことですよね。すごい世の中になってきましたね。とてもインターネット万歳とは言えませんよね。
(2012年2月刊。2000円+税)

FBI秘録

カテゴリー:アメリカ

著者   ロナルド・ケスラー 、 出版   原書房
 アメリカのFBIがどんな違法な活動をしているのか、興味があります。
司法公認の極秘侵入であり、住宅やオフィス、自動車、ヨット、飛行機そして大使館などに隠しマイクやビデオカメラを設置し、コンピュータや机の中を覗きまわった。
 極秘侵入の回数は年間400件にものぼる。その80%は、テロ事件や対敵諜報活動にかかわる国家安全保障問題が対象である。残りは、組織犯罪や知的犯罪、政治家の汚職事件などが対象になっている。
 嘱託を含めると1000人もの職員をかかえる作戦技術課には工学研究施設が含まれる。そこではFBI特注の盗聴装置や追跡装置、センサー、そして犯罪者を監視し、行動を記録できる監視カメラなどが作られている。
 FBIの捜査官1万4千人ほどのうち、20%が女性だ。捜査官は4つのグループに分けられる。現場をくまなく調査してコントロールする調査グループ。錠前を破り、金庫や郵便物を開けるメカニックグループ。コンピュータや携帯電話の取り扱いが専門のエレクトロニクスグループ。そして、開封と封印(フラップ・アンド・シール)グループである。このグループは、現場の回復も担当し、捜査官が侵入した痕跡を一切残さないよう気を配る。一回の作戦に100人以上の捜査官が関わることがある。
 極秘侵入では、捜査官の一人は、すべてが元通りになっていることを確認する責任を負う。現場に何ひとつ置き忘れてこないように、作戦中に使用する器具には、すべて番号と目印が付けられ、使用した捜査官を特定できるようになっている。
 隠しマイクや隠しカメラを設置するとき、人間の髪の毛ほど細さの光ファイバーで、音声や画像を送信することがある。そのため、盗聴器解除の専門家にも、電子の放出を検知されることはない。
 FBI長官をながくつとめたフーヴァーは、マフィアに目をつぶった。組織犯罪は、合衆国に対する唯一最大の犯罪的脅威であるという周知の事実をフーヴァーは否定し続けた。フーヴァーは、マフィアの構成員は地方のチンピラに過ぎず、全国犯罪組織には関与していないと主張した。
 きっとフーヴァーとマフィアはくされ縁があったのでしょうね。
 フーヴァーはトールソン副長官と切り離すことのできない仲だった。毎日、昼食をともにし、夕食もほとんど一緒にとった。いずれも独身を通した。これって要するに、二人ともゲイだったということですよね。先日のアメリカ映画も、そのことを強く示唆していました。
 フーヴァーとトールソンは、広い意味で夫婦同然の関係にあった。
 ところが、フーヴァーは、表向きでは、ゲイを口汚くののしっていたようです。それも自分の「弱点」を隠すためだったのでしょうね。
 ウォーターゲート事件について内部告発した「ディープ・スロート」が誰であるか、今では明らかになっています。フーヴァーの下にいたフェルト副長官でした。2005年にフェルト自身がディープ・スロートであることを告白したのです。
 映画『アメリカを売った男』の主人公であるFBI捜査官ロバート・ハンセンは、ロシアのスパイとして21年以上にわたって、ソ連そしてロシアに機密情報を売り渡していた。始まりは1979年のこと。ところで、このハンセンは、教会のオプス・デイという強硬な反共主義を唱える保守的団体に属していた。さらに、ハンセンはワシントンのスリップクラブで働く女性と親密な関係にあり、彼女にベンツや宝石を買い与え、香港に同伴していた。
あらゆる人間を蔑視していたハンセンは、とりわけFBIの女性職員を蔑視していた。ハンセンは、金銭的報酬以上に、FBIへの意識返しや、インテリジェンス・コミュニティーを出し抜くスリルや、支配権を手にした感覚を楽しんだ。ハンセンは2001年7月に保釈なしの終身刑を言い渡され、今もアメリカの刑務所にいる。
 ハンセンの妻は、今もなお妻であり、1980年ころから妻がソ連と取引していたのを知っていた。
 FBI捜査官について当局の承認を得て書かれた本です。その制約はありながら、よく実情が紹介されていると感心しながら読みすすめました。
(2012年3月刊。2200円+税)

タックスヘイブンの闇

カテゴリー:アメリカ

著者   ニコラス・シャクソン 、 出版   朝日新聞出版
 税金は庶民が払うものだ。
これは、アメリカの大富豪(レオナ・ヘルムズリー)の言葉だ。
 そうなんですよね。民主党政権が自民党のできなかった消費税を10%にしようと奔走していますが、大企業と大金持ちへの減税をすすめながらのことですからね。そして、マスコミは大新聞そろって消費税率アップに大賛成です。
 タックスヘイブンは避難所である。ただし、一般庶民にとってではない。オフショアは、冨と権力をもつエリートたちが、コストを負担せずに社会から便益を得る手助けをする事業なのだ。オフショア・ビジネスとは、本質的には、国境を越えた資金移働の書類上のルートを人為的に操作することだ。
 人口2万5000人ほどのイギリス領ヴァージン諸島に80万社もの企業が置かれている。アメリカを中心とするオフショア・システムは三層構造になっている。連邦レベルでは、アメリカは外国人の資金を本格的なオフショア方式で引き寄せるため、さまざまな免税措置や秘密保持規定を設けている。たとえば、アメリカの銀行は、盗品の取扱などの犯罪から得た利益を受け入れても、その犯罪が海外で行われたものである限り、罪には問われない。きわめて低コストで、きわめて強力な守秘性を提供することで、世界中から不法資金はもちろん、テロ資金まで大量に引き寄せている。
 世界でもっとも重要なタックスヘイブンは島だと言っても誰も驚かない。しかし、その島の名はマンハッタンだと言ったら、人々はびっくりする。さらに、世界で二番目に重要なタックスヘイブンも島にある。それはイギリスのロンドと呼ばれる都市にあるのだ・・・。
 租税回避と脱税の差は、刑務所の壁の厚さだ。
世界的に著名な金持ちが税務当局の調査を受けたとき、こう言った。私が刑務所に行くという噂があるが、言わせてもらえば、私より先に刑務所に行かなくてはいけない法律事務所が四つほど、それに会計事務所が五つほどある。どれも、世界最大手の部類に入るところだ。
世界最大の法律事務所や会計事務所が脱税の手伝いをしているというわけです。これが悲しい現実なのでしょうね。
 スイスは依然として、ダーティーマネーの世界最大の保管場所の一つである。2兆ドルとか3兆ドルと言った規模である。ヨーロッパからスイスに持ちこまれる資金の80%、イタリアからだと99%が、税務当局に申告されていないお金である。
 ケイマン諸島にあるマグラントハウスには1万2000以上の企業が入居している。オバマ大統領は、かつて、この建物について、「これは史上最大の建物か、でなければ史上最大の税金詐欺だ」と批判した。しかし、ケイマン諸島の金融庁長官は次のように反論した。「オバマはアメリカのデラウェア州に関心を向けるべきだ。ウィルミントンの町には、全部で21万7000の企業が入っているオフィスがある」
 2008年には、デラウェア州は88万2000の活動中の企業が登記されている。
 1970年代になって、世界中で税率が急激に下がり、同時に国際的な脱税が世界各地で急増し、資本逃避という突然の災厄が頻発するようになった。タックスヘイブンが爆発的に増え、金融規制が緩和され、その後脱税と資本逃避が急増したのだ。
 大企業への課税税率を上げると外国へ逃げ出すからあげるべきでないという意見がありますが、それは実態を反映しないものだということがよく分かります。担税力のある大企業にきちんと税金を負担させ、庶民の負担は軽くして、福祉を充実させる。この方式の導入を日本人はもっと真剣に考えるべきではないでしょうか。大企業のインチキ宣伝なんかに負けてはいけません。
(2012年2月刊。2500円+税)

パブリック

カテゴリー:アメリカ

著者   ジェフ・ジャービス 、 出版   NHK出版
 若者たちは、古い世代が戦々恐々とするパブリックな未来に生きている。自分をオープンにすることへの見返りを分かっているからだ。
 インターネットは、ただのコンテンツを運ぶ媒体ではない。それは、人と人とがつながりあう手段だ。インターネットは既存世界の一部だという考え方には異議がある。それはもう一つの並行宇宙なのである。それほど「別物」なのだ。
 インターネットは、この世界の新たな層、新たな社会、または、よりパブリックな新しい未来へのもうひとつの道筋なのだ。インターネットは、破壊の道具、つまり古い絆を再び分断し、ぼくらを制約から解き放ち、未来の姿をあらためて模索させる触媒だ。インターネットが再びぼくらを原子にする。
 社会がパブリックになることは明らかだし、避けられない。抵抗してもムダなのだ。だが、その新しい社会がどんな形になるかは、まったく予想もつかない。
インターネットをうろついているとき、それを見られるのはうれしくない。
 インターネットは「深い読書」と、それがもたらす「深い思考」を阻むと言う人がいる。そこには、本こそが思考を刺激する唯一の、または最良のものだという思い込みがある。
インターネットができてから読む本の数は減ったが、インターネットのおかげで知識欲は増えた。なぜなら、インターネットは好奇心を呼びさまし、それを簡単に満たすことができるからだ。
 2011年の初め、13歳以上のアメリカ人の半数以上がフェイスブックに登録している。
 アメリカのティーンエイジャーと若年層の4分の3と、成人の半分がソーシャルネットワークを利用していた。1億7500万人をこえるツイッターユーザーが毎日1億回ツイートし、合計で250億のつぶやきを残している。アメリカの成人の1割は、ブログを管理している。
 ユーチューブは、毎分35時間分の動画を受けている。
 果たして、本当にインターネットは人類の知恵を向上させ、相互の結びつきを深めるものなのでしょうか。今の私には、大いに疑問です。
 私の身近な人がツイッター中毒となり周囲の状況が目に入らなくなって周囲の人が困ったということが起きました。その人を見ていて、あまりにインターネットの世界に入りこみ過ぎていて、じっくり落ち着いて考えることが出来なくなっている気がしました。
 インターネットの怖さは依然として小さくないというのが私の意見です。
(2011年6月刊。760円+税)

キレイならいいのか

カテゴリー:アメリカ

著者   テボラ・L・ロード 、 出版   亜紀書房
 アメリカの女性弁護士の書いた本です。ABA(アメリカ法曹協議会。日弁連みたいな団体ですが、強制加入ではなく任意加入)の女性法律家委員会委員長もつとめました。
 容姿に関して、男性と女性は別々の基準が適用される。ダブルスタンダードがある。
 男性は買い物代行サービスや美容のプロの世話にならず、そのための費用を払わずともちゃんとした身なり整えることができる。それなのに、なぜ女性はそれが出来ないのか。
 たとえば、女性のはくハイヒールはひどい腰痛や足の障害の大きな原因になる。女性の5分の4がこうした健康問題をいつかは経験する。
 アメリカ人は、年間400億ドルを投じてダイエットに励んでいる。
 ダイエットに励む人の95%は1~5年のうちに体重が元に戻る。
 消費者が化粧品に投じる180億ドルのうち、材料費が占める割合は7%にすぎず、残りは高価な包装費や、科学者に言わせると効果のない商品の広告費である。
 身だしなみへの投資額は全世界で年1150ドル。ヘアケアに380億ドル、スキンケアに
240億ドル、美容整形に200億ドル、化粧品に180億ドル、香水に150億ドルである。
 だが、このようにお金を使っても、効果はめったに上がらない。
 アメリカの女性は、毎日平均45分かけて基本的な身づくろいをする。
 アメリカでは、成人の3割、思春期の女性の6割がダイエット中だ。
 アメリカ人の1%弱が無食飲症を患い、4%がむちゃ食いをする。
きれいになるための努力から満足感を味わうこともあるだろう。だが、こうした努力は、不愉快な重荷になるし、恥辱感や挫折感の源ともなり、不必要な出費を強いることもある。
 イギリスの有名な女性歌手スーザン・ボイルがイメージチェンジしたとき、マスコミが叩いた。背が低くて太っているけれど、それがスーザン・ボイル。それで何がいけないって言うの?スーザン・ボイルはそう言って開き直った。しかし、それでも周囲からの重圧に耐えかねて、ストレス治療のため入院することになった。
 性的嫌がらせを禁止する法律が出来た。その問題点は、過剰反応ではなく、被害申告があまりに少ないことだった。
 明白な容姿差別禁止令をもつ国はアメリカのほかはオーストラリア一国のみ。アメリカと同じく、オーストラリアでも、審判所に持ち込まれる容姿差別の訴えの大部分(6割)は、人種、性別、宗教、障害など、容姿以外の要因が関係している。訴えの大多数(9割)は成功していない。
女性にとっての美しさのもつ問題点を多角的に検討した本です。
(2012年3月刊。2300円+税)

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