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カテゴリー: アメリカ

沈まぬアメリカ

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者  渡辺 靖 、 出版  新潮社
  軍事力で世界を思うままに支配しようとしてきたアメリカも、今やさっぱりです。もちろん、今でも軍事力は世界一です。でも、軍事力だけでは何も変わらないどころか世の中をかえって悪くしてしまうという実例が、最近のイラクであり、シリアです。IS(イスラム国)の暴挙なふるまいは、アメリカが生み育てたものでしかありません。ここは、やっぱり日本国憲法9条の出番ではないでしょうか・・・。
  著者は日本の大学を出てアメリカのハーバード大学に入って、今は慶應大学で教授をしています。そのためでしょうか、アメリカのいいところを紹介する本です。たしかにアメリカにもいいところはたくさんあります。それは、わが日本にもいいところがたくさんあるのと同じようなものです。
  でも、軍事力に頼るばかり、社会保障制度は不備だらけ、銃の規制はできず、今や排外交主義にこり固まっていて、移民排斥を叫ぶ大統領候補の評価が高いだなんて、そんな遅れたアメリカのどこを学べというのでしょうか・・・。
  アメリカの人口は増大しつつあり、2050年までに1億人以上は増える見込みだ。労働力も40%は拡大する。
  シェール革命の成果によって、アメリカは世界最大の自然ガス産出国となった。2014年には、39年ぶりにアメリカは世界最大の産油国になった。
  ハーバード大学の学費は年間4万ドルから6万ドルに値上がりした。600万円というのは明らかに高い。わが日本でもアベ政権は年間50万円に引き上げようとしている。とんでもないことだが、アメリカは一桁ちがう。ところが、アメリカでは収入によって免除される。年に1万3千ドルで学生は勉強できる。これだったら130万円ということなので、日本の2~3倍です。
それでも高いですけどね・・・。ちなみに、アメリカの大学院は、授業料免除が一般的。
アメリカの大学は、今ではアブダビやドバイなどに分校をかまえているところが増えている。日本からアメリカへの留学生は、1997年の4万7000人をピークにして、2014年には1万9000人だから、6割減となっている。
  アメリカの大学に在学する留学生の出身国・地域は、220以上、90万人に達する。もとから移民大国だが、現在も毎年70万人もの移民を受けいれている。難民認定者も7万人と、世界最大だ。
世界最大のメガチャーチは、アメリカではなく、韓国にある。ソウルにある聖霊派のヨイド純福音協会だ。信者数は100万人である。アメリカのメガチャーチの影響は、アメリカ国外へと及んでいる。
  私の嫌いな、偽善そのもののアメリカにも一つくらいはいいところがあっていいのです。
  アメリカ社会の一断面を切り取った本です。
  
(2015年10月刊。1600円+税)

カルフォルニア先住民の歴史

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者  野口 久美子 、 出版  彩流社
 西部劇は大好きな映画でした。いつもインディアンが悪者というか敵役で登場してくることに何の違和感もありませんでした。映画の始まりに、大草原の彼方から主人公が馬に乗って登場するのを見て心を躍らせたものです。
 大学生のころは、マカロニ・ウエスタンです。ここでは、悪役は町のボスたちであり、インディアンではありませんでした。
 そして、弁護士になって、「ダンス・ウィズ・ウルブズ」をみて、インディアンのなかで生活する白人がいたことを知りました。
 実は、インディアンこそアメリカの先住民であり、遅れてきた白人は、侵略者だったことに遅まきながら気がついたのです。そこで加害者と被害者が逆転したのでした。
 15世紀末のアメリカ先住民は500万人から1000万人いた。ところが、20世紀の初めには、その40分の1でしかない24万人まで減少した。
 2015年現在、アメリカ内に322ある先住民保留地は、全国土の2.3%を占めるにすぎない。アメリカの歴史は、その土地に脈々と社会を継承してきた先住民の大きな犠牲の上に構築されてきたのだ。
2014年現在、カルフォルニア州には109の先住民の「部族」が存在する。「部族」は、部族を基盤としながらも、その内実は、多様な歴史的経験のなかで、部族の文化的、社会的境界を大幅に脱構築して組織された集団である。
 現在、カルフォルニア州内には100の先住民保留地があり、そこに109の連邦承認部族、1つの州承認部族が存在し、78の部族が連邦政府による承認を求めている。 
 日本人女性(研究者)がカリフォルニアにあるトュールリヴァー部族に長く通って、その歴史を明らかにした本です。その粘り強い調査には大変な苦労があったと思われますが、こうやって日本に住む私たちが、居ながらにしてアメリカ先住民のことを知ることが出来るわけです。本当にありがたいことです。
(2015年8月刊。3500円+税)

動くものはすべて殺せ

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者  ニック・タース 、 出版  みすず書房
 アメリカのベトナム侵略戦争は、アメリカの退廃を加速化させた戦争でした。
 アメリカ兵はベトナムで何をしたか。ここでいうアメリカ兵というのは、当時の私と同じ20歳前後の青年です。5万人ものアメリカ兵が戦場で生命を落としています(ベトナムの青年は、それより桁が2つくらい多く亡くなっています)。若いときに人非人の行いをした人が、成人になったとき、まともに生きていけるはずはありません。無数の「殺人鬼」を内包するアメリカ社会が一段と病的なものになったのも必然です。
この本は、アメリカ兵がベトナムでした残虐行為を改めて明らかにしています。この本を読むと、ソンミ村虐殺事件は日常的に起きていたものの一つだったことがよく分かります。
上官は、兵士が「女性も子どもも殺すのですか?」と訊いたとき、こう答えた。「動くものは、すべて殺せ」。
アメリカ兵がベトナムの無抵抗な民間人を殺し続け、その死体の山を築いていったあと、何と公表したか。「手強い敵の部隊との正当な戦闘の末、アメリカ軍は、ひとりの戦死者も出さずに敵兵128人を殺害した」。
ソンミ事件(ミライ事件)では、C中隊のカリー中尉だけが罪に問われた。30人の将兵が関わり、28人が士官、2人が将官だとされながら・・・。そして、カリー中尉は民間人22人を計画的に殺害したとして終身刑を宣告された。ところが、ニクソン大統領はカリーを釈放し、自宅軟禁とした。カリーは40ヶ月間の刑に服したが、そのほとんどを快適な士官宿舎の自宅で過ごした。なんということでしょう。一人を殺したら、殺人犯だけど、大勢の人を殺せば英雄なんですね。
 私が大学2年生のころ(1969年)、アメリカン軍兵士は、ベトナムに54万人、ベトナム国外に20万人もいた。総計300万人ものアメリカ軍兵士が東南アジアに派遣された。ベトナム共和国陸軍は100万人。これに対して、北ベトナム軍は5万人の兵士と、軍服を着た人民解放軍兵士6万人、更にゲリラが数十万人いた。
アメリカ軍は、共産主義者の侵略から南ベトナムの人々を守るために戦っていたはず。しかし、現実には、ベトナムの農民の大半は敵と通じているか、日が沈めばゲリラになるものと決めつけ、平気で民間人を殺していた。
ベトナムの人々にとっては、家族のため、故郷のため、祖国のための闘争だった。
アメリカ兵の訓練の過程で、新兵士たちは、ためらうことなく人を殺すことを最善とする、暴力と残忍の文化に取り込まれる。
ベトナム人については、グーク、細目、キツネ目、吊り目、半食い虫といった、人間性を完全に否定するような呼び名を使っていた。
あいつらは動物みたいなもんだ。人間じゃない。
ベトナム人が人間であるかのように話すことは許されなかった。ベトナム人に対しては、どんな情けも無用だと言われた。これは、ナチス・ドイツ軍がユダヤ人を殺すときの状況とまったく同じですね。ユダヤ人は人間じゃないと、ドイツ兵は繰り返し叩きこまれていました。
戦場に出て6ヶ月で実力を証明しなければ昇進が望めなかった下位ランクの士官と彼らが指揮をとっていた戦闘部隊は、つねに敵の「殺害数」をあげなければならないというプレッシャーにさらされていた。事実上は殺人ノルマだったこの数値の達成や超過達成は、ベトナムでの任務に大きな影響を及ぼした。いちばんボディカウントの多かった部隊には、保養休暇か、ビールがひとケース余分に与えられた。
19歳の若造に、人殺しをしてもいいんだ、そうすればご褒美がもらえるぞというわけだ。頭がおかしくなっても不思議ではない。
ボディカウントに民間人死亡者数が含まれていることなど問題にならなかった。殺害数が足りないときには、捕虜や拘留したものをさっさと殺してしまった。
ジョンソン大統領は、ベトナムを「くだらないカスも同然の小国」と考えていた。ベトナムは「アジアの屋外使所」「文明のごみ捨て場」「世界のけつの穴」と蔑んだ。ところが、文明国・アメリカは、その軽蔑した「けつの穴」に見事に惨敗・敗退したのでした・・・。
「何も気に病むことはない。またグークの死体がいくつか増えるだけのこと。早いとこ、やつらを皆殺しにしてしまえば、それだけ早く、オレたちは帰国できるんだ」
アメリカ軍によるサーチ・アンド・デストロイ作戦は、むしろ革命軍を戦術上、圧倒的な優位に立たせてしまった。アメリカ軍はいつも必ず守勢にまわる破目に陥った。
ベトコンがアメリカ軍部隊に奇襲をかけたケースが全体の8割近かった。アメリカ軍は効果的に敵軍と闘えなかったため、とりあえず何でも攻撃できるものを標的にした。つまり、民間人がもっとも重い代償を支払うことが多かった。
「そこにいるのは、みんなベトコンだ。殺してしまえ」
これは、現在、アメリカ軍がイラクやアフガニスタンで置かれている状況とまるで同じですよね。侵略軍の宿命ですね・・・。
アメリカ軍でも、将官や佐官は戦場に出ない。彼らは基地でゆったりくつろぐか、ヘリコプター座席にすわって細かく指示を飛ばすだけ。兵士は汚れた体で腹を空かせ脱水症状に悔やまされながら、足を引きずるようにして泥や牛糞や水のなかを歩く。熱疲労に襲われ、ヒアリに咬まれ、蚊に刺される。
戦争が終わったとき、ベトナムでは50万人もの女性が売春婦に身を落としていた。
ベトナムの民間人にとって最大の脅威は、逃げる者は撃つというアメリカ軍の方針だった。
1971年アメリカ軍は、崩壊寸前だった。アメリカ軍の士気、規律、戦闘対応能力は、わずかな例外を除いて、史上最低にして最悪であった。ベトナムに残っているアメリカ軍の陸軍は崩壊に近づきつつある。各部隊が戦闘を避け、拒み、自分たちの士官や下士官を殺害し、麻薬漬けになっている。暴動寸前ではない部隊では、隊員がすっかり気力をなくしている。
第九歩兵師団は、ある作戦のなかで1万人以上の敵兵を殺害したと報告したのに、回収した兵器は、わずか750点でしかなかった。ある一週間に700人のゲリラを殺害したというのに、捕獲された武器はわずか9点でしかなかった。これは、どういうことか・・・。武器を持たない民間人を一方的に殺害したということ。
アメリカ軍のなかでは狂気にみちた殺人鬼のような兵士が出世していった。
戦争は人を気狂いにしてしまうこと、それを英雄視することから、社会全体が狂っていくことがよく分かります。今ごろ何で40年以上も前のベトナム戦争を振り返るのか・・・。それは、アメリカ軍が今もイラクやアフガニスタン、そしてシリアで空爆したり、戦争を仕掛けている現実があるから、この本はまさしく今日的意義があります。
武力に対して武力で対抗しても勝てないし、平和は生まれないということです。全世界の人々が一刻も早くこのことを自覚する必要があります。憲法九条の精神を国際社会に広めたいものです。
(2015年10月刊。3800円+税)

武器ビジネス(下)

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者  アンドルー・ファインスタイン 、 出版  原書房
  アメリカの武器製造は、1941年から43年にかけて、8倍に増大した。
  戦争は芸術ではなく、ビジネスでありアメリカは巨大な、超巨大な企業である。
  アメリカ海兵隊出身の将軍は退役してから、自分の半生をふり帰り、「大企業の高級用心棒として過ごした。つまり、ゆすり屋、資本主義のためのギャングだった」と述懐した。
  アメリカの武器ビジネスは、軍需品製造業者と軍部だけでなく、議会も加わった組織的共謀である。
  1980年代を通じて、アフガニスタンのムジャヒディンは、ソ連にとってのベトナム戦争になった過酷なゲリラ戦におけるアメリカの代理兵士だった。要するに、アメリカは、ムジャヒディンを養成していたのです。そして、養成された彼らが今、アメリカに歯向かっています。なんという皮肉でしょうか。
1980年代のアフガンの自由の戦士たちは、1990年代と2000年代のアルカイダとタリバンの戦闘員の先祖だった。アフガニスタンの真の勝利者は、アメリカの軍産複合体だった。
  オバマ大統領は、世界最強の軍隊を受け継いだ。それは、もっとも高価で、間違いなく、もっとも組織的に腐敗した軍隊でもあった。
  アメリカは群を抜いて世界最大の武器製造国であり、売却国であり、輸入国でもある。
2008年の61%を最高に、世界の武器の40%を売却している。その軍事支出は、2001年以降、81%も増加し、今や世界の43%を占めている。それは、第二位の中国の6倍である。
  「我々の腐敗行為は合法である。合法的な贈収賄だ」
世界最大の防衛受注企業であるロッキードは、同じアメリカの巨大企業ボーイングとノースロップ・ブランマン、イギリスのBAEとともに武器ビジネスを支配している。
  政府と防衛受注企業とのあいだには、「回転ドア」と称される激しい人の出入りがある。
  1969年の1年だけで2000人以上の軍将校が主要な防衛受注企業のために働こうとしていた。ロッキードは、210人の元軍将校を雇用してトップに立った。
  アメリカでは、融資は受注企業だけでなく、その顧客にまで行われる。たとえば、1970年代、アメリカ政府のチリ向け融資は、独裁者ピノチェト将軍のもとで軍事費3倍増となる資金を供給した。アメリカ国防総省の受注企業の上位10社の取引総額は2001年の460億ドルから、2003年には800億ドルとなり、75%ほど上昇した。
  アメリカの副大統領となったディック・チェイニーは、「ハリバートン」のCEOになった。チェイニーは、在任中、定期的に「ハリバートン」を賞賛した。副大統領として「ハリバートン」の
120万ドルのストックオプションをもち、そこから毎年、何百万円もの配当を受けていた。
  過去2年間に、イラクでは30億ドル分もの武器取引がおこなわれた。イラク軍へ36万挺という小火器が取引された。その多くは、アメリカ製とイギリス製。
  そのほか、6万4000挺というカラシニコフがボスニアからイラクへ送られた。
  防衛に10億ドルを投資するごとに、8555人の雇用が創出される。これに対して、医療に同額を投資したら、18万3千人の雇用。教育分野では、1万8000人の雇用が創出される。
  イスラエルは、アメリカの軍事援助の大半を、対外軍事融資と呼ばれるものを通じて受け取っていた。アメリカの武器購入助成金である。イスラエルは、アメリカの軍事援助を受けて成り立っている国なのである。
戦争で人を「合法的」に殺すのに加担し、推進する軍事ビジネスが日本で栄えることを、日本人として許すわけにはいきません。
  
(2015年6月刊。2400円+税)

アメリカの卑劣な戦争(下)

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者  ジェレミー・スケイヒル 、 出版 柏書房
 安保法制が強引に成立して、これから日本は「戦争する国」になる危険が現実化しています。この法制によって「抑止力」を強める、なんて言ったって、世界最強の軍事大国であるアメリカに抑止力がないのですから、日本がどうあがいたって抑止力を持てるはずがありません。その意味でも大ウソつきのアベ・自公政権は絶対に許せません。
日本は、これからテロ攻撃の対象にもなる危険があります。自爆テロは、自分の体に爆弾を身につけています。それも、最新のケースでは、自分の直腸内に仕込んでいたというのです。これでは、身体検査で見つかるはずもありません。
2009年12月3日、ソマリアのモガディシュ市内の大学医学部の卒業式で自爆テロが起きた。犯人はブルカという女性の服装をした男たちだった。死者25人、負傷者55人だった。  
アラブの女性が全身を覆う服装をしているのを自爆テロ犯人が利用したというわけです。このソマリアに、日本の自衛隊が安保法制法の具体化として派遣されそうです。言葉も話せず(英語は通用しません)、生活習慣がまるで違うアフリカに行って日本の自衛隊が何が出来るというのでしょうか、、、。そんなことして、日本の安全が守れるなんてウソもいいとこです。かえって、日本国内にテロの危険がますばかりでしょう、、、。
オバマ政権は、前任者の対テロ対策をほとんどすべて受け継いだ。国家機密の秘匿特権と国家安全保障の保護という主張を十全に活用し、殺害プログラムの詳細を国民の目から隠し続けた。
2010年半ばまでに、オバマ政権は特殊作戦部隊の駐留先を60ヶ国から75ヶ国に増やした。特殊作戦軍は、イラクとアフガニスタン以外の、世界中の国々に4000人を派兵していた。
特殊作戦部隊の出身者は、大きく稼ぐ。
統合特殊作戦コマンドは、高度に専門家された極秘の機密作戦集団で標的殺害あるいは拉致に備えたデリケートな監視と情報作戦の任務にあたる。
アメリカの統合特殊作戦コマンドによるビンラディン暗殺計画についても触れています。
アメリカ映画『ゼロ・ダーク・サーティ』でも紹介されていますが、ビンラディンは武器をもって抵抗したのではなく、アメリカ兵は無抵抗のビンラディンを一方的に射殺したのでした。
このとき、屋内にいた大人11人のうち7人をアメリカ兵が撃ち、男4人、女1人が殺されている。その犠牲者は誰も武装していなかった。
アメリカ政府は、国際人権法を軽視する手段で作戦を敢行したのである。そして、アメリカはパキスタンの主権も侵害した。アルカイーダの指導者が死んだからといって、現地の抵抗が沈静化したことはなく、むしろ活発化している。
アメリカはアルカイーダをテロリストと呼ぶが、むしろ無人航空機のほうがテロリストだ。無人航空機は昼夜を問わず飛び回り、女や子どもを怯えさせ、眠りを妨げる。そのほうが、よほどテロ行為だ。
アルカイーダは、本当にアメリカの存在なのか?
もちろん、違う。絶対に違う。連中は、誰ひとりとしてアメリカの存在を脅かすほどの脅威ではない。過剰反応しているだけだ。こういうヒステリックな反応こそが危険だ。
ソマリアには、政府という名の「泥棒」か、アル・シャバーブという名の「犯罪者」か、ふたつの選択肢しかない。
脅威を取り除くことを目的としたアメリカの政策は、逆に、その脅威を増強することになった。ソマリアにおけるアメリカの多面的な作戦は、結局、かつてアル・シャバーブを仲間であり味方であるとしていた者たちや軍閥を強く後押しすることになった。
無人機をつかい、狙った者を始末して、良しとする。こうやって、たしかに個人は排除出来る。だが、争いの根本的原因は解決されずに残っている。根本的な原因とは、治安ではない。政治と経済だ。
武力に対抗するには武力だという単純な発想ですすめると、日本だってアメリカの9.11事態7に直面することになりかねません。
安保法制を一刻も早く国会で廃止してほしいものです。
(2014年10月刊。2500円+税)

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