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カテゴリー: アフリカ

ライオンの咆哮のとどろく夜の炉辺で

カテゴリー:アフリカ

 著者 ジェイコブ・J・アコル、青娥書房 出版 
 
 アフリカは南スーダンの民話です。紛争が絶えず、大虐殺の続くスーダンに、このようなすばらしい民話があったとは・・・・、驚きました。
 人類発祥の地であればこその民話の数々です。
 取り囲んでいるのは暗闇ばかり。雨が降って、雷が鳴り響き、稲妻が走る、そんな夜。すぐ近くの森からは、襲いかかるヒョウを迎え討つ雄のヒヒがフーフーと荒い息を吐きかけ、それに応戦するヒョウが喉をしぼった脅し声を立てるのが聞こえてくる。あたりでは、ハイエナがまるで人のように笑い声を立てる。ライオンが吼え、草葺き屋根の天井では、白蟻たちが恐れおののいてチリンチリンと鈴の音のような音を立てはじめ、そして思わず小屋の床にポトポト落ちてくるのだ。蛙やコオロギなどの虫たちのうたう声が、その背景に天然のオーケストラのごとく満ち満ちている。
 このように語られると、昔話の語られる情景が眼に浮かんできますよね・・・・。
ロンガール・ジェルの子孫は、ゴンの人びと、あるいはパゴン氏族として知られるようになった。パゴン氏族の人びとは、今日でも、ゴン、つまりヤマアラシを温かく自分たちの家に迎え入れる。そして、ヤブに戻す前に、ヤマアラシに牛乳とバターをご馳走してやる。アチュイエル(鳶の人びと)として知られるパイィー氏族がいて、彼らは鳶(とび)を殺さない。ミイル(キリン)の人びとと呼ばれるパディアンバール氏族はキリンを殺さないし、その肉も食べない。コオル(ライオン)の人びと、つまりバドルムオト氏族は、ライオンに獣を与えたやることはあっても、ライオンを殺すことはない。
人間がライオンになり、ライオンが人間になるという前提で語られる民話があります。動物の世界と人間の世界は紙一重で、自由に行き来できるのです。
 デインカの知恵の類ないふところの深さを直に本書は伝えてくれる。そこは、人生の真実を語るがゆえに、悪夢がその中に居すわるという、魅せられたる魂の物語をつむぎ出し、ライオンの咆哮ととどろく夜の炉辺で心静かに耳を傾ける人びとの住む土地なのである。
 スーダンという国を知るうえで欠かせない本だと思いました。
(2010年6月刊。1500円+税)

南アフリカらしい時間

カテゴリー:アフリカ

著者:植田智加子、出版社:海鳴社
 しっとりした雰囲気に浸ることの出来る本です。列車に乗って1時間で読みきれず、目的地に着いてから、しばしホームで読みふけって、なんとか読了しました。
 先に「インビクタス」(NHK出版)を読んだばかりでしたので、27年間の囚人生活を過ごしたマンデラ大統領に親近感を抱いていたところ、なんと著者はマンデラ氏を鍼治療していたというのです。しかも、大統領になる前からのことでした。マンデラ氏の早朝散歩にも一緒につきあっていたというのです。
 マンデラ氏だけではありません。タンボ氏そして、シスルも、著者の患者だったというのですから驚きです。日本人女性が、南アフリカでも鍼灸師として活躍していたなんて、まったく信じられないことでした。
 この本は、日本人女性が妊娠して出産し、一人で子育てする生活が淡々と描かれています。いえ、実は「淡々」どころではありません。「子殺し」がよく分かる心境が語られているのです。でも、それに待ったをかけたのが現地の人々でした。アパルトヘイトに身をもって反対した人々たちが、さりげなく著者の子育てを支え、また、子だくさんのなかで育ちあっている子どもたちにも助けられたのでした。
 南アフリカの治安の悪さ、そしてストリート・チルドレンの子どもたちの様子も紹介されています。
 10年ほど前に雑誌に連載されていたものが最近になって単行本化されています。
 この本に登場してくる長男さんは、今はどこで何をしているのでしょうか・・・?
(2010年4月刊。1800円+税)

南アフリカの衝撃

カテゴリー:アフリカ

 著者 平野 克己、日経プレミアシリーズ 出版 
 
 南アフリカの寒々とした実情が紹介されています。
サッカー・ワールドカップを成功させた南アフリカは、凶悪犯罪の発生率が群を抜いている。5000万人の人口のうち、毎年2万人が殺人事件で殺される。日本では600人なので日本の100倍だ。
 南アフリカには組織犯罪がはびこっていて、警察も腐敗している。警察官は一般公務員にくらべて薄給のうえ、毎年200人も殉職している。2008年には、犯罪組織から賄賂を受け取っていたとして、こともあろうに警察庁長官が逮捕された。この人は元国連大使で、警察庁長官時代にはインターポール(国際刑事警察機構)の総裁もつとめていた。逮捕される前には、ワールドカップの開催期間中は売春を合法化するよう主張していた。売春は犯罪組織の主要な収入源のひとつである。うひゃあ、なんということでしょう。信じられません。ただ、日本の警察庁長官も身分(収入)不相応の億ションに住んでいると指摘されたことがありました・・・・。
 南アフリカでは、授業ボイコットがアパルトヘイトへの抗議と考えられ、学校をドロップアウトする若者が続出した。アパルトヘイトが終わった今、彼らの多くは学校教育を受けていない、単なる無学歴者になった。労働経験がなく、労働意欲のないものも多い。民主化のために戦ってきたものの、民主化の恩恵を受けることはなく、多くが失業者か犯罪者となった。そんな人々が100万人から200万人もいる。
1750万人の労働人口のうち400万人が失業している。失業率は24%にもなる。
大量失業を生んだもう一つの原因は農業にある。アパルトヘイト体制化で黒人から土地を奪ったため、黒人農村が消滅してしまった。
うまく立ち回ったものだけが望外な報酬を手にするという社会では、相互信頼のかわりに嫉妬が発火するだけ。狡猾と嫉妬が生み出すものは、汚職と犯罪だ。
 南アフリカには1300人の日本人が生活している。日本とアフリカの経済関係は南アフリカに集中してきた。日本は、プラチナ、マンガン、クロム、バナジウムを南アフリカから輸入している。
 日本で販売されているベンツやBMWの多くは南アフリカ製である。南アフリカの自動車製造は、国の基軸的産業になっている。 
2000年以降、中国のアフリカ攻勢はすさまじい。1990年代にはアフリカ大陸全土で5万人といわれていた中国人は、今や75万人といわれる。中国製品は、アフリカのどんな国にもありふれている。なかでも一番、中国人の多いのが南アフリカだ。少なくとも20万人の中国人が住んでいる。だから、犯罪被害にあう中国人も多く、2005年に22人だったのが、2006年には14人が殺害された。
 中国から南アフリカに進出している企業は30社だが、南アフリカから中国へ進出した企業は300社もある。
 南アフリカという国を少しばかり知りました。やっぱり怖い国だなと、つい思ってしまいました。スミマセン・・・・。
 
(2009年12月刊。850円+税)
 フランスには回転ずしまで進出しているのですね。ちっとも知りませんでした。パリのカルチェラタンには、漢字で「寿司」と書いた店がありますが、なかは回転寿司でした。
 デイジョンで泊まったホテルの隣にも、小さな回転寿司の店がありました。こちらは立派そうなカウンターでしたから、高級回転寿司の店のようです。
 リヨンには、町のあちこちに見かけました。
 魚、そして寿司は、健康に良いという評価がフランスで定着しているのでしょう。値段も安いですしね。

出口のない夢

カテゴリー:アフリカ

著者:クラウス・ブリンクボイマー、出版社:新曜社
 まず、鉄砲がアフリカにやって来た。その後、ムスリムとキリスト教徒の宣教活動が始まった。そうしてアフリカで奴隷制度が始まった。組織的な人さらいの時代が400年も続いた。アフリカ大陸の歴史の暗黒部分の下手人がヨーロッパ人であったことは間違いない。
 だが、アフリカ人も、これに手を貸していた。西アフリカの諸部族は相戦っており、勝者となった族長たちは、敗者の戦士を白人に売っていた。敗者の数が十分でなく、捕虜が足りないときには族長は自身の部族民も売った。族長は兵士に村々を襲撃させ、部族民の小屋から息子や娘を連れ出した。奴隷市場で売りに出すため、つまりは族長の富を増やすためだった。多くの奴隷と交換に多くの武器が手に入った。その武器で、さらに多くの奴隷を捕らえることができた。
 奴隷制の歴史は、アフリカの歴史の核心部分をなす。トータルで6000万人の人間が絶え間なく消滅し、死亡した。火器と王たちに対する恐怖と無力感。これが記憶に刻み込まれ、それが部族を変え、民族を変え、大陸全体を変える。それは自画像も、イメージも変える。
 アフリカのイメージ・・・?
 取り残されて腑抜けの卑屈で追従的、迷信深くて怠惰、不潔で原始的。
 アフリカ大陸は、しばしばこのように見られ、記述され、扱われている。植民地を経営する国々は、アフリカには自己管理能力が欠如しているという理由をつけて植民地政策を正当化する。
 アフリカは一族郎党(クラン)の大陸だ。成功を収めた者は、分かち与えなければならない。単独であることは、アフリカでは天罰を受けるふるまいであり、呪詛を意味する。一方、集団は聖なるものだ。それは、たとえば、100ドルを稼いだ者は、50ドルを誰かに分け与えることを意味する。ここらは、日本人とかなり異なった感覚ですよね。
 ビッグ・マンという概念は、アフリカの全能の支配者。つまり諸部族の有力者、神々、虐待者をさす言葉だ。モブツ、アシン、ボカサ、ドウ、セラシェたちは、ビッグ・マンの系譜に連なる名前だ。彼らは、誇大妄想を体現する権力の象徴的人物であり、彼らの本質的な目的は、自分自身を維持することにあった。
 ハンセン病は、今日なおナイジェリアの国民的な病気であり、毎年、数千人が罹病する。その理由は、薬がないからだ。抗生物質を用いれば、ハンセン病はきわめて容易に治癒可能な病気である。
 今日、ナイジェリアは、娘たちを輸出している。少女たちは13歳か14歳だ。胸がふくらみ始めると、彼女たちは商品になる。そうなると、彼女たちは、家を、部落を、そして国を出ていかなければならない。ここでは、誰もが、それを知っているし、あまりに多くの者たちが同じことをする。
 アルジェリアは、1992年に内戦が始まり、7000人が行方不明、12万人ないし20万人が死亡した。そして今日、アルジェリアは、30以上の政党を有する民主主義国家だが、実際には、相変わらず軍事独裁国家である。
 リベリアでは、テーラー大統領による7年にわたる戦争で20万人が死んだ。テーラーは、ダイヤモンド、生ゴム、木材を売った収入で少年兵たちのための武器の購入費用に充て、残りは外国の銀行口座にためこんだ。税収およびダイヤモンド、木材取引による収入の7000万ドルから1億ドルをテーラーは自分の懐に入れた。テーラーの資産は30億ドルに上った。2006年春、テーラーはナイジェリアで逮捕され、シエラレオネに引き渡された。戦争犯罪人として裁かれる。
 ヨーロッパにおいて、1990年から2000年にかけて人口増加の89%は移民によるもの。2010年以降には100%になる。移民がなければ、ヨーロッパ大陸の人口は、この5年間に440万人減少していたはず。
 移民は、2004年に、銀行を介して1500億ドルを故国に送金した。別のルートによる送金額は3000億ドルと推定されている。
 なんと、日本にも1000万人の移民を受け入れる構想を自民党の政策チームがまとめて福田首相(当時)に提出したそうです。
 日本の人口は現在、1億2700万人ですが、50年後には、9000万人を割り込み、100年後には4000万人台になるという予測を立てて、今後50年間に1000万人の移民を受け入れて1億人の人口を維持しようという構想です。しかし、こんな議論はまったくされたことがありませんよね。
 アフリカで起きていることは、決して他人事(ひとごと)ではありません。
(2010年4月刊。3200円+税)

インビクタス

カテゴリー:アフリカ

 著者 ジョン・カーリン 、NHK出版 
 
  映画を見損なってしまったので、せめて原作本でも読もうと思って手にとりました。いつものように列車のなかで読みはじめると、いやあ実に面白い。あまりに面白くて、目的地にいつもより早く着き過ぎたとJRに文句の一つも言いたくなったほどです。
1995年に南アフリカで実際にあった出来事です。ラグビーワールドカップで、南アフリカチームが世界の強豪を相手に互角に戦い、ついに優勝の栄冠を勝ちとったのです。
 この本は、それに至るまでの南アフリカでの反アパルトヘイトの戦い、そしてネルソン・マンデラの不屈の行動を実によく紹介しています。本を読み、感動を味わう醍醐味をじわりじんわり、たっぷり味わうことができました。
 南アフリカでサッカーのワールドカップが開催されます。あんな危険な土地にどんな物好きが出かけるのかと冷ややかにみていましたが、そんな傍観者であってはいけないとも思わず反省させられました。平和も、たたかってこそ、努力して手に入れることが出来るものなのですよね。もちろん、これは、平和を手に入れるために、本物の銃を取れということではありません。もっと知恵を働かせよ、ということです。
マンデラは、1964年、ケープタウン沖に浮かぶロベン島の刑務所に入れられてから、18年間、小さな独房を離れることが許されなかった。その部屋で、マンデラは毎朝1時間、その場かけ足をした。1990年、71歳で釈放されてからは、朝4時半に起床したあと1時間歩いた。すごいことですよね、これって・・・・。
マンデラは刑務所に入って2年間、アフリカーンス語を学んだ。南ア白人の言葉だ。マンデラは、白人看守たちの心を溶かした。その鍵は、敬意、あたりまえの敬意にある。
看守の多くが残酷なのは組織のせいだ。心の底をのぞけば、看守だって弱い人間なのだ。
マンデラは、南アのボタ政権による一般黒人の扱いがひどくなるなかで、独房を出され、ついには広々とした一軒家に住むことを許されるようになった。
ボタは、マンデラに最大限の敬意を表した。その一方で、ボタの了解を得て組織された軍の暗殺隊と警察が、国にとってとりわけ危険とみられる活動家を次々に消していった。 
マンデラは1990年2月、晴れて出所した。そのとき、自分は復讐心を抱いて刑務所から出てきたのではないという強いメッセージを発した。
そうなんです。ここがマンデラの偉いところです。血で血を洗う復讐戦がいまにも始まると心配した多くの白人の心をマンデラはぐっとつかみました。
頭に訴えてはいけない。心に訴えることだ。マンデラは言った。
そして、ほとんど白人ばかりのラグビーチームに対して、きみたちは南アフリカを代表している、祖国に貢献し、国民をひとつにするまたとない機会だと、強く訴えかけたのでした。
この試合の展開はすごいものです。ぜひ映像でたしかめたいと改めて思いました。昨日までお互いを敵とみて殺しあっていた黒人と白人が平和に住める国に作り変えるためには、努力が必要だ。それも並はずれた努力をしないといけない。そのことを、実感をもって伝えてくれる感動の書です。読んで絶対に損をしない本です。一読をおすすめします。
 
(2009年12月刊。2000円+税)

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