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東大講義録

カテゴリー:未分類

著者:堺屋太一、出版社:講談社
 なるほど勉強になったところもありました。しかし、全般的に堺屋太一の自慢話と独自の歴史観が強すぎて、客観性に乏しい気がしました。
 長篠の戦いで、織田信長の軍隊が3000丁の鉄砲を横一列に並べて発射したため、武田軍が崩壊したという話は初耳です。通説は3000丁を1000丁ずつ3段に構えて武田の騎馬隊を打ち破ったことになっています。
 ところが、この通説は間違っていると解説した本が最近出ています。『鉄砲隊と騎馬軍団』(洋泉社新書)です。この本を読むと、横一列はおろか3段構えも事実に反するということが論証されています。何事によらず通説(常識)は疑ってかかった方がいいということです。その意味で堺屋太一は、もっと学生に対して、何事も既成の概念は疑ってかかれとていう点をもっと強調すべきだったように思います。

帝国以後

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著者:エマニュエル・トッド、出版社:藤原書店
 フランスの学者による知的刺激にみちた本です。
 世界の進歩は大衆の識字化の進行と受胎調整の普及の2つによると著者は主張しています。なるほど、そうかもしれません。アメリカの貿易収支の赤字は年々大きくなっていくばかりで、アメリカ経済は日本とドイツが支えているのに、アメリカは日本を軽蔑している。アメリカの労働者は相対的貧困化だけでなく、ときに絶対的貧困化にも直面している。私は、久しぶりに「絶対的貧困化」という言葉に出会い、30年前の大学生時代を思い出しました。
 アメリカは至るところで悪を告発するが、それはアメリカが思わしからぬ行動をしているからだ。「悪の枢軸」というのは、アメリカの悪への強迫観念を表現している。その悪は国外に対して告発されるが、現実には、アメリカの内部から生まれている。アメリカ国内では、至るところに悪の脅威が潜んでいる。平等の放棄、責任を負わない寡頭支配集団の勢力伸長、消費者と国そのものの借金性格、ますます頻繁な死刑、人種の強迫観念の復帰。今のところ、ドイツと日本はもちこたえている。そのきわめて強力な経済がつい最近まで労働者と民衆を保護してきたから。社会的団結性の強い両国で、アメリカ流規制廃止をすすめるなら、極右の抬頭をひきおこすことになるのは確実だ。もし、ドイツと日本がアメリカ型の貿易収支の赤字を出すようになったら、世界経済はどうなるのか?
 アメリカ帝国の反映も今のままでは長くはないと大胆に予測しています。そうなってしまうのではないか・・・、私も、いろんな意味で大変心配しています。

ピアフ、愛の手紙

カテゴリー:未分類

出版社:平凡社
 エディット・ピアフの「愛の讃歌」は有名なシャンソン。この本はピアフが妻子ある男性で、プロ・ボクサーのマルセル・セルダンとかわしたラブレターを集めたもの。いわば不倫の男女の恋文集。
 あたし幸せよ。あたし日に日にだんだんと身が清まっていく感じだもの。汚れない身になるの。あなたがあたしにしてくれたことは、もうひとりの別のあたしに変えてくれたこと・・・。ありがとう、モナムール。だってあたしは今、怖がらずに人生を真正面から見つめているもの。あたし心の底から女になるって感じてるのよ。生まれて初めてよ。それもあなたのお陰ね。あたしの恋心はあなたを待っていて、あなたを愛したその日から人生が始まったの。とってもシンプルなことよ。
 弁護士として不倫事件を扱い、男女間のラブレターを読まされることは多い。しかし、本にできるほど読む人の心をあたたかくする手紙は少ない。ピアフの手紙は心のときめきがまっすぐ伝わってくる。最近のメールはたいていは赤面してしまうだけのものが多い気がする。

平成14年版・現代法律実務の諸問題

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出版:第一法規
 日弁連が毎年、全国で実施している夏期研修を再現してまとめた本です。6200円もし、1100頁もありますが、私は30年前に弁護士になって以来、少なくともパラパラと通読するようにしています。さすがに一流の選ばれた講師による話なので含蓄があります(といっても、私も一度だけ講師になって、この本にのったことがありますが・・・)。
 文庫本ではないので、持ち運びながら読むというわけにはいきませんが、そのときどきの法律実務で何が問題となっているのかを広く知るには絶好の書です。今回、私は弁護士倫理関係は全部読みました。弁護士公告と市民窓口の実情は、とくに興味をもちました。まだまだ一般の弁護士は公告とは無縁ですが、果たして市民にとってそれでよいのでしょうか。ホームページの活用も依然として盛んとは言えません。市民窓口でもっとも多いのは依頼者から頼んだ弁護士に対する不満です。要するに説明不足です。私も何回もクレームを受けていますので、偉そうに言うことはまったくできませんが、今でもオレにまかせとけ式の必殺請負人方式の弁護士が老若男女を問わずいることには驚かされます。(

したたかな植物たち

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著者:多田多恵子、出版社:SCCガーデナーズ
 私がガーデニングを楽しみはじめて10年以上になる。犬を飼っているときには難しかった。犬が庭を走りまわって、せっかくの花や野菜と枯らしてしまう。
 愛犬マックスを病気(ジフテリヤ)で死なせてしまってから、花と野菜づくりにいそしむようになった。土いじりは幼いころのドロンコ 遊びとひとつも変わらない。だから、無心で遊べる。ミミズにこんにちわを言い、モグラの穴とぶつかる。気をつけないとヘビにニアミスしてしまう。
 花も野菜も、手をかけた努力に精一杯こたえてくれるのがうれしい。花の美しさも、妖艶、艶(あで)やか、艶麗、という形容動詞をつけることができる。たとえば今咲いているノウゼンカズラは、まさに肉感的な橙々色の花だ。
 この本を読むと、植物が生き残りのために、あの手この手の作戦をねっていることが、美しい花の写真とともに見事に解説されていてよく分かる。
 「植物だって恋をする」、たしか、そんな本があったと思うが、生き物はすべてつれあいを求めて、その本能につき動かされながら生きている。人間様だけが恋に悩んでいるわけでは決してない。

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