著者:谷村智康、出版社:WAVE出版
今では、ライフスタイルとしてテレビを持たない人は珍しくない。
これは、この本の出だしの言葉です。そうなんです。私の家にも昨年からテレビがありますが、私自身は今でもテレビとは無縁の生活を毎日送っていますし、私の身近にもテレビを持たない人が何人かいます。テレビを見ないで本当に困るのは災害情報くらいですが、これもイザとなればラジオで足ります。とくに困るということはないのですが、テレビのCMももちろん見ませんので、ほら、今テレビで盛んにコマーシャルしてるでしょ、あれですよ、なんて言われたときにはキョトンとしなくてはいけないのがチョッピリ困ります。いえ、年の功で、なんとかうまく逃げきってはいるのですが・・・。
テレビは、もうかつてのような話題の中心ではなくなった。変わったのは、もっともうけようという貪欲さが増したこと。そして、もうけるためのテクニックが非常に進歩したこと。ところが、それは視聴者を裏切るものだ。テレビ局にとって、本当の商品は広告であり、番組は広告を売るための客寄せにすぎない。
テレビ局はCMを流すにあたって、スポンサーと「量」で契約する。たとえば、合計視聴率100%で1億円と。視聴率20%の番組なら5回、CMを流したら契約を完了できる。災害情報などの臨時ニュースのテロップは、番組中に流されることはあっても、CM中には絶対に流れない。それほどCM放送は優先されている。
「見えない広告」については、日本が世界で一番すすんでいる。たとえば、番組の主題歌も、実は広告枠として売られている。また、ニュース番組に似せて、同じキャスターをつかってニュースではない広告が流されている。これって悪どい騙しの手口と同じです。
月曜日夜9時から始まるテレビドラマは「月9」と呼ばれている。F1と呼ばれる20歳から34歳の若い女性を狙ったドラマだ。働く若い女性は、週末は夜遊びに出る。週初めは残業も少ないので、オフィスで話題となりやすい月曜日の夜に放映しているのだ。
「金ドラ」は金曜日夜10時からのドラマで、こちらはもう少し上の年齢層がターゲット。F2(女35〜49歳)、M2(男35〜49歳)にあわせている。こうした家族持ちは、「ハナ金」にはコンパになんか行かない。トヨタのコマーシャルは、「月9」には比較的安い車のCMを、「金ドラ」には、高級車のCMを流している。
このようにテレビ番組もCMも、視聴者の細かな生活情報をふまえてつくられている。
ところが、視聴者はCMをますます見なくなっている。テレビや新聞の広告売り上げは横ばい。だからサラ金CMにますます依存せざるをえない。
テレビCMの実態と本質について、広告代理店で働いていた経験にもとづく告発の書として、大変勉強になりました。
CM化するニッポン
