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まちぼうけの生態学

(霧山昴)

著者 遠藤 知二・岡本 よしろう  、 出版 福音館書店

 著者は人間科学部の教授。でも、研究しているのは、虫そのものというより、虫と虫の関わりあい、生態学。

 草むらに潜むアカオニグモは、草むらにクモの網をはって、じっと待つ。昆虫が網にひっかかると、糸の振動で素早く行動し、獲物にクモ糸を張りめぐらせ、動けなくして、キバをさしこんで消化液を注入し、体のなかを溶かして吸って(食べて)しまう。

 でも、いつもうまくいくわけではない。テントウムシは網にからまると、足の関節から、アルカロイドという苦みのある黄色い汁を出して、逃亡した。

 ガが飛んできた。クモの網にひっかかるかと思うと、かの体や羽をおおっている鱗粉(りんぷん)を出して、クモの網から逃げていく。

 観察して3日間、クモは獲物を捕まえることが出来なかった。しかし、クモは飢えにとても強く、何も食べなくても、水さえあれば何十日も生きていける。これは、すごいことですよね…。

 アカオニグモを捕まえて食べようとしたキスジベッコウが、逆にアカオニグモに食べられているのも目撃した。どこの世界も一筋縄では行かないもの。

 要は、自分にあった場所で生きていくことなんですよね…。それにしても、草むらの中に夜までじっといて観察するなんて、本当に大変そうです。

 北海道の札幌市郊外での観察を踏まえて刊行された本です。絵もよく出来ています、まだ暗いうちの朝4時から草むらに入って、じっと虫たちが動き出すのを待ちかまえて観察するのです。学者って、本当にチャンス(機会)と辛抱強さが必要なんですよね。心からの拍手をお送りします。

(2025年9月刊。1430円)

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