(霧山昴)
著者 塚谷 裕一 、 出版 山と渓谷社
多種多様な植物について、実に不思議だらけ、奇妙な生態を面白く説明していて、少しも飽きることなく、最後まで一気読みしました。
コアラの食べるユーカリは等面葉をもつ。葉に表も裏もないように見える。
なぜか・・・。オーストラリアの夏の光は強すぎるので、表だけに直射日光があたることのないようにしたのだ。
楠(クスノキ)は、自らダニ室をつくって、善玉のダニを住まわせている。ハダニを退治してくれるのを期待して・・・。
新緑の葉が赤いのはカナメモチやイロハモミジ。でも、なぜ赤くなるのか。その理由は解明されていない。
ネギの葉は、もともとは中空ではなく、中が詰まっている。それが成熟するにつれ、中空になっていく。
カエデは蛙手から来ている。
わくらば、とはお酒に酔って寝入ってしまうこと。病葉と書く。
ソメイヨシノの片親はオオシマザクラ。河津桜はカンヒザクラの血の入った自然雑種。
変化(ヘンゲ)朝顔は江戸時代に大流行した。大名家などの富裕層のあいだにあまりに流行したため、禁止令が出たほど。そして、明治・大正と何度も繰り返しブームになった。葉と花の形を見ても、まさかこれが朝顔とはとても思えないものになっている。突然変異体なので、その系統の維持には、本来、遺伝学の知識が必要。しかし、江戸の人々は、それなしに、広い場所と根気でやり遂げた。漱石の『行人』にも変化朝顔が登場している。確かめてみました。たしかに登場しています。1912年ころの風俗です。
カリフラワーは、自然界ではありえない姿形。人間が長い期間をかけてつくりあげた食物。
チューリップにもバラにも青い花はない。黒いチューリップは出来た。
ヒスイ色したヒスイカズラは育てるのが難しい。ともかく、見事なヒスイ色の花です。びっくりします。
似た色の碧(あお)い花が紹介されています。屋久島固有種のヤクノヒナホシです。とても不思議な色と形をしています。
大変勉強になる植物のはなしでした。
(2025年8月刊。1980円+税)