著者:辻 仁成、出版社:新潮文庫
刑務所を舞台とした一風変わった小説です。いま、私は毎週のように刑務所通いをしています。そこは山の奥の方にあります。下界から3度は気温も低いそうで、なかは凍えるほど寒いとのことです。
刑務所はいまどこも満杯です。ここにも高齢化現象が現れているというのです。なんだか寂しくなります。面会のとき、奥の方から、「オイッチニ」の大きなかけ声が聞こえてきました。収容者が工場から帰ってくるときには一列に並べさせ、大きなかけ声とあわせて軍隊式の行進をさせられるのです。これは昔から日本の刑務所でやっていたのかと思うと、そうでもなく、30年ほど前からのことにすぎないそうです。がんじがらめの規則のなかで生活するうちに、社会での自由な生活への適応力を喪ってしまう人もいるということです。
刑務所の職員に対して、「あんたたちも大変だね。一生、ここから出られないんだから・・・」と言ったというセリフが出てきます。本当に看守の気苦労は並大抵のものではないと思います。なにしろ定年までずっと何十年と続くのですから・・・。
刑務所のなかで拳銃が密造されていたことが発覚したのは20年以上も前のことだったと思います。そのとき、刑務所から出てきたばかりの人に実情をきいたことがありました。そりゃ、ありえますよ。わたしなんかも房内でタバコを隠れて吸ってましたしね・・・、という答えだったので、ア然とした記憶があります。
偽善者をキーワードとした小説でもあります。
海峡の光
