著者 高橋 順子 、 出版 デコ
満月を眺めるのは、いつだって心地よいものです。屋根の上にポッカリ浮かぶ大きな満月は頭上にあるより親しみを覚えます。
夏の夜の楽しみは、ベランダに出て天体望遠鏡で月の素顔をじっと観察することです。まるで隣町のように、くっきり表面のでこぼこを観察することができます。下界の俗事を忘れさせてくれる貴重なひとときになります。
9月の中秋の名月を祝うのは、このころの月が美しいからというだけではない。気温は快適だし、月の高度もよろしい。しかも、もっと説得的な理由は、芋名月、栗名月、豆名月という名称からも察せられるように、このころが秋の農作物の収穫の時期だということ。
お月見は、農作物の豊穣を月の神に感謝し、来年の豊作を祈願する秋祭の一つだ。
この本は、月にちなむさまざまな呼び名を、写真とともに紹介しています。知らない呼び名がたくさんありました。
十七屋。江戸時代の飛脚便のこと。たちまち着きの語呂あわせから。
今宵は中秋の名月
初恋を偲ぶ夜
われらは万障くりあはせ
よしの屋で独り酒をのむ
「われら」と言いながら、「独り酒、をのむ」というのも奇妙ですが、フンイキが出ています。
月には、中国古代の伝説では、仙女、桂男(かつらおとこ)、ヒキガエル、兎などがすんでいた。兎は、不老長生。仙薬を臼でつく。この兎は韓国や日本では餅をつく。桂男とは、月の中に住むという仙人。転じて、美男子をいう。月の桂を折るとは、むかし文章生(もんじょうせい)が官吏登用試験に及策することをいった。
菜の花や月は東に日は西に
与謝蕪村がこの句をつくったのは、1774年(安永3年)のこと。58歳の蕪村は、当時、京都に住んでいた。
名月をとってくれろとなく子哉
これは一茶の句です。いいですね・・・。
(2012年10月刊。2500円+税)
月の名前
