著者 トーマス・フリードマンほか 、 出版 日本経済新聞出版社
いまやアメリカの全盛期は去り、中国の全盛期に取って代わられた。アメリカ人の多くがそう思っている。
アメリカ人の切迫感は、アメリカの政治体制が、最大の難問と取り組むどころか、きちんと組み立てられてもいないという事実から生じている。
現在、MITの工学部の教授団375人の4割は外国生まれだ。
アメリカでは、破産にそんなにひどい汚名は伴わない。しかし、だれも破産を奨励してはいない。破産すると、数年間は与信に汚名がつくが、そのうちにそれも消える。簡単に破産できる分、簡単にやり直せる仕組みになっている。
シリコンバレーの起業家たちは、なにかに挑戦して失敗し、破産を申告して、また挑戦し、それを何度もくり返し、やがて成功して金持ちになる。
アメリカ人には、政府は経済で積極的な役割を果たすことができないという誤った考えがある。これは危険だ。
法律事務所で最初に解雇される弁護士は、信用バブルと住宅バブルの最中に仕事が急増したときに就職し、仕事をやり、やり終えると仕事がなくなった連中だ。
いまも仕事があるのは、新しいテクノロジーや新しいプロセスを使って従来の仕事をもっと効率的にやる新しいやり方を見つけたり、これまでは存在しなかった仕事を考案し、新たなやり方でやったりしている弁護士だ。法律事務所も、あらゆる面でもっとクリエイティブかつ柔軟になる必要がある。
アメリカの富裕層の上位1%が国民の年間収入の4分の1を手にしている。これを資産でみると、上位1%が全体の40%を支配している。25年前は、それぞれ12%と33%だった。
その間、上位1%は10年間に18%収入増となったが、ミドルクラスの収入は逆に減少している。
現在の富裕層は社会一丸となった行動の恩恵を必要としていない。自分たちの公園がある。自分たちだけのカントリークラブがある。自分たちの私立学校があり、公立学校に通う必要はない。自家用ジェット機や運転手付き自家用車など、自分たちの輸送システムがあるから、公共交通が老朽化しても平気だ。
なーるほど、それで大金持ちは社会全体の福祉向上に関心がないのですね。それでも、一歩外に出たら多発する犯罪にビクビクしなくてはいけないと思うのですが・・・。
民主党も共和党も、それぞれ中道派が消滅した。この2党は、互いをますます敵視し、相手の「皆殺し」を図っている。
つい先日も、アメリカの小学校で痛ましい大量殺人事件が起きましたが、銃規制が進まないアメリカを見ると、いったいこの国はまともな国かと疑います。ましてや、全教員に銃を携帯させて教壇に立たせたらどうかという意見が出ているというのですから、アメリカは狂っているとしか思えません。
それもこれも、殺し、殺されるのが昔からあたりまえという国だからなのでしょうね。ベトナム戦争、そしてイラク、アフガニスタンと戦後ずっと侵略戦争を仕掛けてきた国は、アメリカ国内の社会と人心を荒廃させてしまったのでしょう。
そんなアメリカに盲従してきた日本政府も同じレベルだというのが悲しいところです。
この本に、アメリカのしてきた侵略の歴史についての反省が見あたらないのが残念に思いました。
(2012年9月刊。2400円+税)
かつての超大国アメリカ
アメリカ

