著者:ゲーリー・ブルーノ・シュミット、出版社:アスペクト
世にも残酷な実験をした皇帝がいる。ホーエンシュタウフェン朝のフリードリヒ2世(1194〜1250年)だ。皇帝は孤児となった新生児を選んで、乳母係に命令した。母乳を与え、入浴させて世話をすること。ただし、決して子どもをあやしたり、話をしてはいけない。皇帝は、子どもたちが話しはじめるとき、ヘブライ語かギリシャ語、あるいはラテン語、それとも親の言語で話すのか、それを知りたかった。
しかし、それは子どもたちの死によって達成できなかった。子どもは、乳母が手をふって楽しげに顔をほころばし、自分をあやす言葉なしには生きることができないのだ。母乳があれば生きるというものではない。愛情は生きる養分となっている。関係の喪失は致命的なのだ。
この本は、妻に先だたれた夫がなぜ早死にするのかというメカニズムを解明している。そのうえで、生きる力は、自分自身から創造的にあらわれるとして、次のように助言している。
・出口なしの状態を回避するためには、過去に同じような状況を解決したことを思い出す。
・助けのない状態を回避するためには、現在における解決を探す。
・希望のない状態を回避するためには、未来における解決を信じて先を見る。
・情緒的孤立状態を打破するためには、自分自身を鏡に映してみる。
つまり、想像力や人間関係が「治療手段」になりうるということなのだ。私も、それを信じて、明るく前向きに生きていくつもりだ。
人は悲しみで死ぬ動物である
