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2026年4月 の投稿

あきらめない弁護術

カテゴリー:司法

(霧山昴)

著者 神山 啓史 、 出版 現代人文社

 この本のタイトルには、実は「神山啓史流」というのが頭についています。司法研修所で刑事弁護教官にもなった神山啓史弁護士の弁護の技(わざ)を若手弁護士に継承してもらうことを目ざして、神山弁護士にインタビューした内容が中心になっている本なのです。ですから、話しコトバですし、裁判所に提出した手書きの書面のコピーとか、現場に行って再現実験したときの写真も紹介されていて、とても読みやすい本になっています。

 再審事件は辛い。辛いと弁護士もダメになる。弁護士がダメになったら、誰が冤罪を晴らすんだ。だから楽しくやらなきゃダメ。仲間いて、楽しくやって、あきらめず……、いつも、ワイワイ、ガヤガヤ。「元気のある弁護団」が事件を動かす。

 神山弁護士の弁護活動は、要するに、全部やる、普通にやる、ということ。

神山弁護士は弁護団会議のときホワイトボードを活用する。書き出して議論を整理する。だから、神山弁護士が会議中に座っていたことはほとんどない。分担した書面の内容を担当者まかせにせず、皆でしっかり勉強して、そのうえで起案するという手順を守る。全員がホワイトボードを見ながら発言を積み重ねていくから、議論は外れないし、深まっていく。

 証拠物を収集したときには封緘(ふうかん)するだけでなく、回収してから封緘するまでを動画撮影しておく。これによって検察官から関連性を争われないようにする。

神山弁護士には「証拠を創る」という発想がある。新証拠を準備するため、次回の会議まで一つずつアイデアを持ち寄ることにする。

鑑定結果は、誰が鑑定人になるかによって大きな影響がある。

 刑事手続のあらゆる場面において、弁護人から先に「いつまでに何をするので、こうしてくれ」言うべき。

ムダをムダと考えずに、やってみる。思いつく、すぐに、自由に、大胆に。検察官に会って交渉することは大事なこと。その結果として、起訴前に神山弁護士は検察官から証拠を見せてもらえたことがあるとのこと。すごいことです。

 神山弁護士は、被告人の供述調書にあるような窓をくぐり抜けることは無理だという再現実現を試みた。それをやっているときの写真の神山弁護士の笑顔は楽しそうです。ところが、検察官側の証人として登場した警察官は2人とも、軽々と窓をくぐり抜けた。それで裁判は負けた(有罪になった)。実は、警察官たちは必死の練習を積んでいたことがあとで判明した。いやあ、さすが警察です。裁判所を騙したわけですよね。

神山弁護士は法廷傍聴もしています。裁判員裁判が始まったので、刑事裁判は少しは良くなったかと期待していたのに、完全に裏切られたと言います。そして、弁護人が罪情認否のとき、「被告人と同じです」というのは明らかに手抜きだと、厳しく批判します。

 「公訴事実に争いはありません。被告人には刑の執行を猶予するのが相当です」

こう言うべきだとしています。私にとって、耳の痛いコトバでした。

 神山弁護士の肉声が聞こえてくるような本です。弁護士生活50年をこえた私にもとても勉強になりました。

(2025年3月刊。2970円)

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