(霧山昴)
著者 佐藤 智恵 、 出版 中公新書ラクレ
タイトルからすると、中味の薄いキワモノ本だと思いがちですが、意外にしっかりした中味のある本(新書)でした。
ハーバード大学経営大学院(ビジネススクール)は2年間に、500本のケースを学ぶ。ケースメソッドで、授業ではひたすら議論する。クラスでの発言点が成績の半分を占めるため、学生は必死で発言する。こうなると、議論をリードする教授は大変でしょうね。そのうえ、学生の発言を評価する必要があるというのですからね・・・。
あの、ズシリと重たい虎屋の羊かんをもらったら、そりゃあ、うれしいです。小城(おぎ)羊かんも美味しいとは思いますが、虎屋になると数段優りますよね・・・。
この虎屋は、なんと室町時代(16世紀初頭)に創業したという超老舗(しにせ)の和菓子屋。この本を読んで初めて知ったのですが、虎屋には、「社内には親族は一世代につき一人だけ」というルールがあるそうです。当主に何人か子どもがいても、その中から後継者になる1人を選ばなくてはいけないのです。いやあ、これはとても難しい選択(決断)ですよね。そして、自分が選んだ後継者が自分とは異なる決断をして、会社を変えていくのを見ても、決して口を出さないというのです。これは大変ですね。
創業家出身の経営者が潔(いさぎよ)く引退するのは、とても難しいこと。前任者が介入して、大いにもめた会社はいくらでもある。あのトヨタでも、まだ創業者一族がいるというのですから、世の中は不思議です。
日本には100年以上存続している企業が3万社以上ある。創業から200年以上も存在している世界中の企業のリストを見ても、その多くが日本にある。
創業から500年も続いている虎屋は、いつの時代にも、失敗を恐れず、イノベーションを創出し続けてきた。これが重要な長寿要因の一つになっている。
虎屋が500年も存続できたのは、あくまでも結果であって、存続そのものを目的にしていたわけではない。長寿の企業が存続しているのは、革新的だから。イノベーションを起こし続けてきたからこそ、何百年も存続できている。
ハーバード・ビジネススクールの授業料は、なんと3ヶ月間で1400万円と超高額。いやあ、これは高いですね・・・。ところが、日本企業は続々と、役員や役員候補者を送り込んでいるそうです。グローバル環境で臆せず、堂々とものを言える人材が求められているから。
それでも、日本人学生は慣れないことに苦労している。しかし、堂々と、ゆっくりした英語で、「日本」の話をすると、周囲に目が変わると、著者はすすめています。
おかげで日本の長寿企業の存続のヒミツを学び、大変勉強になりました。
(2025年5月刊。1100円)



