弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2024年2月20日

昭和史からの警鐘

社会


(霧山昴)
著者 吉田 敏浩 、 出版 毎日新聞出版

 昭和史の暗部をえぐり続けた松本清張。「昭和史発掘」は、読んでいて心底まで寒気がしてきました...。そして、戦争体験を教訓として語り続けた半藤一利。この2人は、かつて、作家と編集長として共闘し、軍事(軍部)の復活に警鐘を鳴らすコンビだった。
 岸田首相は能登の大震災にはケチケチとお金を出し惜しみするくせに、アメリカの要求には、すぐにホイホイと応じています。信じられないほどの節度のなさです。
 まずは「トマホーク」を400発もアメリカの言いなりに購入しました。先制攻撃ミサイルそのものです。そして、欠陥機であることが誰の目にも明らかなオスプレイを購入し、それを受け入れる基地を佐賀空港そばに突貫工事でつくっています。いやはや、なんという税金のムダづかいでしょう。
 軍拡を進めて、最悪の場合には中国との戦争も覚悟しているというのなら、まずは原発(原子力発電所)を全廃すべき。原発をミサイルで破壊されたら、放射能汚染を喰い止める手段はなく、日本は壊滅してしまう。
 原発が日本全国、しかも海に面して50基以上ある。こんな国を「武力で」守ることはできない。原発に1発でも攻撃されたら、日本はもうおしまい。武力による国防なんて、無理なことは明らか。
戦前の日本は、日銀引き受けの国債によって軍事費を増大させて軍拡し、戦争を遂行していった。臨時軍事費特別会計として、軍事予算を特別扱いした。今まさに、岸田政権は、同じことを5年間で43兆円という巨額の軍事予算を特別扱いして実行しようとしています。絶対に許せません。
 軍隊は市民を守らない。これは歴史が証明していること。軍隊にとって、市民は邪魔者でしかない。「市民を守るため」というのは、単なる口実であって、いざとなれば、市民は安全地帯から追い出し、自分たちの楯として「活用」するだけの存在。それを証明したのが、戦前の沖縄戦の実際。
 日本人の多くは、自衛隊とアメリカ軍が私たちの平和を守ってくれるという幻想に浸りきっています。願望にすがって生きているのです。しっかり目を覚ますべきだと私は思います。
 「サンデー毎日」の連載記事が本にまとまっていますが、読ませます。そして、怒りがこみ上げてきました。
(2023年10月刊。2200円)

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