弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2024年2月 5日

カブトムシの謎をとく

生物


(霧山昴)
著者 小島 渉 、 出版 ちくまプリマー新書

 カブトムシは、私たち日本人には、とても身近な存在です。街の中の公園にフツーに生息していますが、これは世界的には珍しいことだそうです。
カブトムシはペットだが、害虫でも益虫でもない。カブトムシを研究した学術論文は多くない。
 カブトムシは、コガネムシ科。カブトムシ亜科は世界に1500種類。似ているクワガタムシはコガネムシ科ではない。カブトムシのオスの武器である角(つの)は頭部(および胸部)の表皮が変形したもので、クワガタムシのオスの武器は大顎(あご)が発達したもの。
カブトムシは青森県を北限とし、南は沖縄県まで分布している。国外では、台湾、韓国、中国など東アジアに広く分布している。
メスは生涯に100~200個の卵を産む。1年で、ちょうど1世代が回る。成虫は短命で、1~2週間ほどで死ぬ。カブトムシはオスのほうがメスよりも大きな体をもつが、これは昆虫界では例外的。メスは、生涯に1度しか交尾しない。ただし、これは日本のカブトムシだけの例外的なもの。これって、珍しいことですよね、きっと。
カブトムシの天敵はハシブトガラスとタヌキ。それからノネコとハクビシン。
カブトムシは体重の2~4割を脂肪が占めている。そして、動きが鈍いため、捕まえるのに苦労しない。
カブトムシがクヌギの樹皮の樹液をなめているところへオオスズメバチがやって来ると、カブトムシを力ずくで追い出してしまう。著者は、その理由について、クヌギの樹皮を削って樹液を出させているのは、実はオオスズメバチで、せっかく苦労してつくりあげたエサ場(樹液場)をカブトムシが占領しているのを見つけたとき、怒りに燃えて排除しているのではないか、そう考えています。なーるほど、です。  
どこでも同じように見えるカブトムシが、実は、それぞれの他の歴史を背負った固有の存在だということを著者は一つ一つ実証していきました。
それにしても、小学生(柴田亮さん)が、自宅の庭のシマトネリコの木にやって来るカブトムシをじっくり観察して、夜間に行動するはずのカブトムシが昼間もそのまま残っていることを実証したというのです。ものすごく根気のいる作業だったと思います。
その観察をもとに著者は、樹液が少ないからではないかと考えました。このように、推測かもしれないのを科学的に実証していくというのは大変な作業だったと思います。
カブトムシの知らなかった一生を学ぶことが出来る面白い新書です。
(2023年8月刊。880円+税)

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