法律相談センター検索 弁護士検索
2017年7月 の投稿

チェンジ

カテゴリー:アフリカ

(霧山昴)
著者 山田 優花 、 出版  海竜社
ウガンダで子どもたち支援活動を5年あまりも続けている日本人の若い女性がいます。すごいですね。ついつい応援したくなります。しかも、彼女は熊本の出身なのです。
著者は「あしながウガンダ」の代表をつとめています。
「あしながウガンダ」が支援する遺児家庭の多くは、母子家庭。
ウガンダでは、男性に比べて女性の立場が弱い。とはいうものの、実は、日本よりもウガンダのほうが女性が活躍している。日本の男女格差指数は世界で101位に対して、ウガンダは58位である。
赤道直下にあるウガンダ共和国は、「アフリカの真珠」と呼ばれるほど緑あふれる美しい国である。標高が高く、国土の大部分が丘陵地帯なので、年間の平均気温は21~23度と温暖で、1年中過ごしやすい。「アフリカの軽井沢」と日本人は呼んでいる。綿花、コーヒー、バナナが主要な輸出品目。
独立後20年間は政情不安定で、内乱が続いたが、ムセベニ大統領のもとで、この30年間は安定して発展してきた。
仏統的な家屋には、室内に風呂やトイレがない。家の外に小さな水浴び場兼トイレ用の小屋が設けられている。キッチンと呼べるものもなく、調理は室内の隅か外のかまどでする。
ウガンダ人は、50以上の民族と相当な数の言語から成っている。ウガンダ人は、ことあるごとに、「何とかなる」と言う。
「時間を守らなければいけない」という意識が乏しい。ただし、ウガンダ人は、ホスピタリティにあつい。そして、純粋な優しさがある。
著者は、女性の一人暮らしをしているので、防犯には気をつかう。鍵と南京錠を幾重にもかけ、枕元に金属バットを置いている。愛猫をなでて、気をやすめる。
あしなが育英会の奨学金を受けて外国語大学に学び、英語と中国語を身につけ、アフリカへ単身とびこんだ勇気ある女性の話は、読んでいて元気が出てきます。
(2017年4月刊。1300円+税)

先生、犬にサンショウウオの捜査を頼むのですか!

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 小林 朋道 、 出版 築地書
先生シリーズも11冊目のようです。すごいですね。ただ、先生も活躍しすぎたのか、少々お疲れのご様子。本書では、何ヶ所か体調不良になって走れなくなったという類のエピソードが紹介されています。先生、どうぞ無理するのもほどほどにして、息長くご活躍、そして学生の指導にあたってくださいね。
今回の生物のトップバッターは、なんとゲジゲジです。わが家にもたまに見かけます。不気味ですから、ゴキブリと違って殺さず、家の外へ放り出してやります。殺す勇気はないのです。
次にヤドカリの生態調査。ヤドカリと殻の大小の関係を実験で明らかにするとは、たいしたものです。残念なことにピンボケ写真のオンパレードです。先生がスマホで手ぶれしながら撮っているからでしょうか・・・。
そして、洞窟に棲むコウモリです。コウモリの赤ちゃんを拾って育て、洞窟に戻してやったのです。数時間おきにスポイトを使って、ミルクを飲ませて育てたというのです。信じられない苦労です。そして、4日目には飛んで去っていくのでした。
この鳥取環境大学には構内にアナグマが生息しているようです。わたしの家の近くにはタヌキの子連れ姿を見ることがあります。こんな先生のもとで、野外研究・観察ができる学生は幸せですよ。
モモンガが学生のかけた巣箱に入って育っているという話もうれしい限りです。
(2017年5月刊。1000円+税)

子どもたちの階級闘争

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 ブレィディみかこ 、 出版 みすず書房
3歳児、4歳児でも、ちゃんと自己主張するし、できることも良く分かる本です。
イギリスの保育園で働く日本人女性がイギリスの保育事情を紹介しています。イギリスって、まさしく昔も今も階級社会なのですね。日本だと、それが見えにくいわけですが、イギリスでは、あからさまのようです。なにしろ、住んでいる地域が異なるし、コトバだってはっきり所属階級の違いが分かるというのです。そして相互に深く交流することはないのです。日本人として不思議な気がします。ええっ、英語って、ひとつじゃないの・・・。まあ、「マイフェアレディ」を思い出せばよいのでしょう・・・。
私立校で教育を受けたミドルクラスやアッパークラスの人々は、BBCのアナウンサーのような明瞭な英語を話す。対して、労働者階級の人々は、地域色豊かなアクセントになり、下層に行けば行くほど、単語の最後の音をいい加減に発音する。だから、イギリスは、口を開けば属している階級が分かってしまう。
イギリスの保育園に2歳児をフルタイムで預けると、1ヶ月で14万円もかかる。それで、イギリスの保育園はミドルクラス家庭の御用達施設と呼ばれている。
保育園は、下層幼児たちの受け入れを拒否している。幼児教育現場での階級分離が進んでいる。貧困エリアにおける肥満している子どもの割合は、少年の場合は豊かな地域の3倍、少女の場合には2倍になる。
イギリスの裕福な家庭は子どもパブリックスクールと呼ばれる私立校に通わせる。年間学費が300~400万円かかる。
貧しい人々は、家賃の安い地域、つまり地域の学校が荒れているので、親たちが敬遠する地域に住むことになり、富める人々と貧しい人々の居住地域の分離が進んでいる。
貧民街の子どもたちは、保育施設から小学校、中学校と一貫して貧しい地域の、自分と同じような階級の子どもたちに囲まれて学ぶことになり、上の階級の子どもたちと知り合う機会はもちろん、すれ違うことすらない。
人間は、希望をまったく与えられずに欲だけ与えられて飼われると、酒やドラッグに溺れたり、四六時中、顔をつきあわせなければならない家族に暴力をふるったり、外国人とか自分より弱い立場の人々に八つ当たりをしに行ったりして、画一的に生きてしまう存在だ。それは、セルフ・リスペクト(自己尊重)を失うからだ。
イギリスでも、フランスのル・ペンのように反移民・EU離脱を唱える右翼が伸長している。それは、イギリスにEU圏からの移民が急増しているから。
2011年の国勢調査では、イギリスで生まれる子どものうち、少なくとも両親の一人が外国人である子どもの割合は全体の31%で、2001年より10%も増加している。両親とも外国人だという子どもも18%いる。
アフリカや中東そしてアジアから来た移民の親たちは、決まって、イギリスのアンダークラス民、「ホワイト・トラッシュ」と呼ばれる人々が大嫌いだ。子どもを厳しくしつけず、やりたい放題にさせているから、この国、イギリスはダメになったと高言する。移民の多くは、勤勉で上昇志向の強い人々だ。イギリスの食べ物はおいしくなったが、それは、これらの人々のおかげだ。 
イギリスは、もともとワーキングクラスという階級が誇りをもって生きてきた国である。終戦直後に、労働党政権は、無料の国家医療制度を実現し、公営住宅の大規模建設、大学授業の無料化など、底上げの政策を徹底的にすすめた。その効果が一斉に花開いたのが、1960年代だった。
ところが、このエキサイティングな階級の流動性は、もう遠い過去の話になった。今では、間違っても、下層階級の人間がそこから飛び出す可能性は支えられていない。
現代のイギリスは階級が固定化しすぎている。格差の拡大はよくないが、どんなにがんばっても、自分たちが再びクールになる時代は来ないという閉塞感が下層にいる人々を絶望させる。
そんななかで保育園を運営し、一人ひとりの子どもたちを保育していくのですから、日々まさしく困難の連続です。移民をどんどん日本に受け入れたときには、保育園だけでなく、社会の隅々まで、貧困と身の安全を守るために考え、行動しなければならないことがたくさんあることを実感させてくれる本でもありました。
(2017年6月刊。2400円+税)

オリーブの丘へ続くシリアの小道で

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 小松 由佳 、 出版 河出書房新社
内戦まっただなかの2012年春、シリアの首都ダマスカスに3ヶ月いて、シリアの人々を写真に撮った日本人女性カメラマンによる写真集です。
いったい、なぜこんなひどい内戦が、こんなに長く続いているのか、日本にいて本をいろいろ読んでも、よく分かりません。一刻も早く内戦が終息し、人々が平和に生きられるようになることを願います。
暴力に対して暴力ではいけない。平和的手段でなければダメ。そう叫んでいた若者が、やはり暴力には暴力しかないと言って戦闘員に加わったという話も出てきます。たしかに、悲しい現実があるのですよね、でも、・・・。
2011年に内戦が始まって、すでに5年たち、シリアの難民・死者は相変わらず増え続けている。2200万人の人口のうち、25万人が死亡、470万人が国外で難民で暮らしている(2016年2月)。
そして、シリア国内にも760万人もの人々が避難生活を送っている。国民の半数以上が家を失った(2015年7月)。
シリア難民の子どもたちの通う学校の授業光景を撮った写真もあります。
シリアは日本と同じく、六・三・六制で、小学校の6年間が義務教育。男女共学は小学校だけで、中学校からはイスラム教の道徳によって男女別となる。
小学校の教室で、若い女の先生が男の子3人と女の子5人に歌を教えている様子がうつっています。この学校では、子供たちがシリアの文化を失わないよう、トルコ語のほか、アラビア語やシリアの歴史・文化を教えている。ということは、この学校はトルコにあるのですね。
この学校では、不発弾の取り扱い方法を子どもたちに教えている。近づいたり触ってはいけない。誰かを叫びなさい、と。
「教師として、希望をもちなさい、希望があるから私たちは生きていける、と子どもたちに話さなければいけない。しかし、現実には、自分でさえこの生活に希望をもてずにいる。子にとっても教師にとっても、希望をもつとか本当に難しい」
いやあ、本当に内戦が続くというのは大変なことですよね。難民の子どもたちは、いつかシリアの故郷に帰ることを夢見ている。
可愛らしく聡明そうなシリアの子どもたちの願いを一刻も早く実現させてやりたいと思わせる貴重な写真集です。
(2016年3月刊。1900円+税)

「ヒトラーの裁判官、フライスラー」

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 ヘルムート・オルトナー 、 出版 白水社
第二次対戦下のドイツでヒトラーに反対して声をあげた「白バラ」グループに死刑を言い渡したナチスの裁判官として有名なフライスラーの人生をたどった本です。
「白バラ」グループとして捕まった学生たちは死刑判決を受けた、その日のうちにギロチンにかけられました。むごいものです。
フライスラーは51歳で敗色濃いベルリンで空襲にあって死亡しますが、その妻は裁判官の配偶者として戦後も長く年金を受給しました。つまり、フライスラーは死後も資格を剥奪されることなく「裁判官」だったわけです。同じように、ナチス時代の裁判官たちは、戦後の東西ドイツで司法界にとどまっていたのです。まあ、この点は、日本と共通していますね・・・。
ドイツ弁護士会は、ナチスが政権をとると、まもなく、「民族および帝国の健常化に貢献するために」全力を傾注することをナチス政府に確約した。
1933年10月初め、ライプツィヒで開催されたドイツ法曹大会には、全国から2万人以上の法律家が参集したが、次のようにナチスに誓った。「我々はドイツ民族の魂に誓わん。我々がドイツ法曹人として、我らが、総統閣下に付き従い、我々の日が尽き果てるまで、ともに歩み続けるであろうことを」
日本も、大日本弁護士報国会をつくって戦前の弁護士たちは戦争に協力していきました。
1933年に、ドイツの弁護士1万9500任のうち、4394人、22%がユダヤ系だった。大都市では、もっと比率が高かったし、弁護士会の役員にもユダヤ人弁護士が幹部を占めていた。ドイツにはたくさんの優秀なユダヤ人弁護士がいたのに、全員、資格が奪われてしまったのです。
大都市では裁判官の10%をユダヤ人が占めていた。
フライスラーにとって、政治犯は最悪の裏切り者であり、国家の敵であった。24時間以内に起訴がなされ、24時間以内に判決が下され、犯罪者は直ちに処罰されなければならない。情状酌量を認めた時代は、もう終わらせなくてはならない。
人民法廷は、第一審かつ最終審であり、判決についての法的救済手段は一切認められなかった。被告人には起訴状が渡されず、弁護人は裁判の直前に起訴の内容を知るだけで、あらかじめ準備することは出来なかった。審理が終わると、弁護人は、起訴状を返還しなければならなかった。
したがって、ナチスの権力者にとって、いかなる形であれ、反対者を徹底的に排除し、せん滅させる場として、人民法廷に全幅の信頼を置くことが出来た。
1943年1月から1944年1月まで、「防衛力破壊」を理由として124件の死刑が宣告され、即時執行された。
1943年2月のスターリングラードでの敗戦以降、たいて死刑が言い渡された。「公正な判決」など、論外だった。
フライスラーが単独で裁判長をつとめた1943年上半期、1730件の有罪判決が出され、そのうち804件で死刑判決、無罪判決はわずか95件のみ。
死刑があまりにも多すぎて、刑務所のなかには死刑が追いつかないほどだった。親族には決して通知されず、死刑囚の遺書は捨てられた。
人民法廷の長官として、フライスラーは、数千人も人々を死へ送り込んだ。まさしく法服をまとった殺人鬼だった。人民法廷が1942年に言い渡した1200件の死刑判決のうち、半分以上の650件がフライスラーの第一部が下したものだった。1943年の1662件の死刑判決のうち、約半数の779件がフライスラーの第一部によるもの。1944年の2100件の死刑宣告のうち第一部が下したのは866件だった。
では、何が死刑判決の根拠になったのか。本書にはその死刑判決の理由がいくつか紹介されています。気心の知れた仲間内でヒトラーに対して漠たる疑念を冗談めかして語っただけの人がいます。それが密告によって、人民法廷にひきずり出され、見せしめ的に「国家反逆罪」「防御力破壊罪」といったものものしい罪名のもとで死刑が言い渡されたのです。
つい先日、日本で成立してしまった共謀罪の恐ろしさを実感させられます。
ほかにも、他愛のないジョークでしかないもの、今からみたら的を射た洞察が、その正しさゆえに、国家の存続を脅かす危険思想の発露とみなされて、死刑を言い渡され、即日、ギロチンで処刑されていったのです。まさしく、嘘でしょ、こんな冗談で死刑になるなんて・・・、と叫びたくなります。密告者だって、まさか死刑にまでなるとは思っていなかったことでしょう…。
ナチス・ドイツの反省にアベ政権下の日本人として、大いに学ぶところがあるように思いました。日本の裁判官って本当に大丈夫なんでしょうか・・・。ゾクゾクしてきました。
(2017年4月刊。3400円+税)
 フランス語検定試験(一級)の結果通知が届きました。もちろん不合格なのですが、得点は64点で、自己採点を11点も上まわっていました。仏作文が少し評価されたのでしょう。150点満点ですから、4割をこえたところでした。合格点は87点ですから、やはり6割をとる必要があります。
 めげず、くじけず、引き続き毎日フランス語の書きとりを続けます。そして車中はフランス語の聴きとりです。

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.