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2017年3月 の投稿

無葬社会

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 鵜飼 秀徳  、 出版  日経BP社
日本社会の現実の一端を認識させられた思いのする本でした。車中で一心に読みふけってしまいました。
2015年の死亡数は130万人。これが2030年には160万人を突破する。鹿児島県の人口170万人と同じだけの人が毎年亡くなっていく。
2030年には、孤独死予備軍は2700万人になる。核家族化の行き着く先が孤独死だ。
都内の戸山団地は高層アパートが16棟あり、人口3200人。ところが世帯数は2300。つまり、7割以上が独居状態。
都会の火葬場では炉が一杯のため、1週間から10日も待機させられる。
都会には、数千基を納骨できる巨大納骨堂が次々に出現して人気を博している。都内に10棟あり、そこではコンピュータ制御で遺骨が自動的に遺族の前に搬送されてくる。
火葬率は99.99%。日本は世界一の火葬大国。
全国の火葬場の大半は公営。ところが都区内では9つの火葬場のうち、6つは民営(東京博善)。火葬の原価は、1体あたり6~7万円。公営のように一律料金だと、赤字になる。
都会の高層マンションでは、管理組合の規約によって遺体を部屋に運び込めないところが多い。
電車の網棚に骨壺を乗せたまま、置き忘れたフリをして遺骨を遺棄するケースが増えている。
孤独死現場の清掃依頼は二つ。遺品整理と特殊清掃。遺体の発見が遅れたときの凄惨な現場には、誰も入りたがらない。
都会に出てきた団塊世代は、長男次男を問わず、「高額な土地付の墓はいらない」「死後の世界に興味はない」。遺骨は海や山野に撒いてほしい」などと考えている。
岩手県一関市には樹木葬を扱うお寺がある。ここでは人工物を一切つかわない。里山に散骨し、自然と同化していく。
隠岐にも、同じように散骨できる無人島がある。自然に還るというのはいいですね。昔のような石塔のお墓は、私も不要と思います。これも明治以降に石材店が広めたものなんですよね・・・。
海洋散骨は、あまり需要がない。遺族が手をあわせる場所がないし、風評被害を漁業者が恐れるから。
なるほど、ですね。人骨を集めて仏像をつくるというお寺もあるそうです。
日本の家庭に仏壇がどれだけあるか。戦後まもなくは80%。1981年に61%。2009年には52%。年々、低下している。わが家にも仏壇はありません。
団塊世代が次々に亡くなっていく日本では、お葬式のあり方、お墓のあり方もどんどん変わっていっています。
結婚式で仲人を立てなくなり、結納金も動かず、婚礼家具セットの購入もありません。そもそも結婚式をしないカップル、その前に結婚しない、同棲もしない男女が増えてきています。
ですから、人生の終末だって、当然変わるはずです。
お葬式を無宗教でやるというのも珍しくはなくなりました。そして、戒名をつけなくてもいいという意識も普通です。墓地を購入したり、墓石を建てるという意識も弱くなりました。はじめから納骨堂でいいと考えるのです。今でもたまに、親の遺骨の奪いあいみたいなケースに遭遇しますが、それはもうめったにあることではありません。
社会の移り変わりを大いに実感させてくれるレポートでした。一読に価する本です。
(2016年10月刊。1700円+税)
ついにチューリップの花が咲きはじめました。
16日の朝、雨戸を開けて庭を見ると、ピンクのチューリップの花を見つけました。庭に出てみると、白い花も咲いています。いずれも背の低い小さなチューリップです。
アスパラガスも出てきて、春の香りを味わうことができました。いよいよ、春が本番です。

シリア難民

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 パトリック・キングズレー 、 出版  ダイヤモンド社
地中海を今、史上最大の難民がオンボロ船に乗って、ヨーロッパへ渡っている。
2014年から2015年にかけて地中海をこえた人は120万人。シリア、アフガニスタン、イラクからヨーロッパをめざす人々は、2016年から2018年にかけて300万人をこえた。
2014年にイタリアに到着した難民は17万人。前年の3倍だった。
イタリアに代わって、ギリシャがヨーロッパ最大の「難民の玄関口」になった。
2015年、85万人もの人々がトルコ沿岸を出発し、その大部分がバルカン半島を北上して、北ヨーロッパの国々を目ざした。
レバノンは人口450万人という小国なのに、2015年には120万人ものシリア難民を受け入れている。レバノンに住む人の5人に1人はシリア難民となっている。
密航業者は、難民にヨーロッパ移住をすすめる極悪人とみられているが、その実態は、ヨーロッパに行きたいという人々の強い希望につけこんでボロもうけをする悪徳業者にすぎない。難民のほとんどは、自分の意思で船に乗っている。
ゾディアックというゴムボート1隻に150人ほどがすし詰めされる。定員30人ほどのボートだ。ゾディアックも木造船も大差はなく、どちらも「浮かぶ棺桶」だ。
料金を1人1000ドルとして、1隻のゾディアックに100人を乗せたら、1回の旅で10万ドルの売上となる。いろいろの経費を差し引いても、密航業者は4万ドルを手にできる。
シリア内戦が長引いて、多くの人が友人から借金し、また給料をためて資金を確保している。トルコからエーゲ海をこえてギリシャに渡る費用は1000ドル。リビアから渡る費用の半分以下だ。
シリアの人々が、なぜヨーロッパを目ざし、中東にとどまらないのか。それは、現実的ではないから。中東諸国に避難したシリア人は既に400万人。そのうち200万人はトルコ、120万人がレバノンにいる。ヨルダンに60万人。エジプトに14万人。帰る国がない人間には、失うものなんて何もない。そうなんですね・・・。
難民と移民とに区別はあるのか・・・。
難民には保護を受ける権利があるが、移民にはない。難民には故郷を逃げなければならない十分な理由があるが、移民にはない。しかし、この分類は正しくない。そして、難民と移民を見分けるのなんて簡単だというのは誤解だ。実際には、どんどん難しくなっている。両者には多くの共通点があり、人々の多くは両方にあてはまる。
イスラム教徒であろうと、キリスト教徒であろうと、ユダヤ人であろうと、そんなのは重要ではない。みんな人間なんだから・・・。
難民を門前払いすることはできない。この現実を認めることが、危機を管理するカギだ。道理にかなった長期的な対策は、莫大な数の難民を安全にヨーロッパに到達できる法的メカニズムを整備することだ。
ヨーロッパは100万人の難民を受け入れなければならない。人口450万人の小国レバノンが難民を受け入れているのに、世界でもっとも豊かな大陸(人口5億人)に出来ないはずはない。
シリア難民をつくり出したシリア内戦は、アメリカとロシア、そしてイギリスやフランスなどの軍事大国の政策的な誤りが、そのあと押しをしているのだと思います。日本だって、その一人でしょう。そうすると、欧米諸国そして日本は、そのツケを自分たちも払うしかないと私も思います。
日本は米英などの軍事行動を金銭的に支えているのですから、難民を受け入れるしかない。それがいやなら、軍事行動をやめさせるよう全力を尽くすべきだと思います。
(2016年11月刊。2000円+税)

フランスの地方都市にはなぜシャッター通りがないのか

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 ヴァンソン藤井由美、宇部宮浄人 、 出版  学芸出版社
日本全国、どこに行っても中心街のさびれ方はすさまじいものがあります。どこもかしこもシャッター通り商店街になっています。残念です。ところが、フランスでは地方都市の中心部には人が集まっていて、シャッター通りにはなっていません。その理由を探った本です。写真もたくさんあって、納得できる理由が示されています。まずは、日本の現状です。
日本の商店数は半減し、年間販売額も3分の2以下となった。人口10万人未満の小都市だと、商店数で3分の1、年間販売額は半分以下。人口10万人から100万人未満の都市や100万人以上の大都市も、商店数は半減し、年間販売額は7割以下ないし6割まで低下している。
フランスの地方都市の中心市街地は、「歩いて楽しいまちづくり」が出来ているので、土曜日など、身動きできないほど混雑する。
フランス人は、日本人が定年してから故郷へUターンを考えるというのではなく、大学と最初の就職を終えて、30代半ばから地方都市での生活を考える。これは日本と違いますね・・・。
フランスの小都市でも、郊外には大型店舗がある。フランスでも、クルマは生活必需品だ。しかし、中心市街地にはクルマを乗り入れないように計画されている。市内電車だ。低床でカラフルな市内電車が市街地を走り、そこにはクルマの乗り入れを禁止している。
歩行者優先のまちづくりをすすめている。
自転車が大いに奨励されている。電動自動車の普及率も37%。自転車レンタルシステムもあるが、1年間、自転車を無料貸し出しする都市もある。
久留米市でも自転車のレンタルシステムが出来ていますが、実際の利用率はどうなのでしょうか・・・。
フランスでシャッター通りにさせない工夫の一つとして、「空き店舗税」があります。1年以上も空き家にしておくと、所有者には「空き家税」が課税されるのです。これによって、所有者の貸し渋りがなくなります。
にぎわう中心市街地に店をかまえている人々に、古くから住人でいるオーナー店主は少なくて、ほとんどがテナント店主。
そういうことなんですね。人々が集まることが先決なので、古くから、そこにいる人々のために何かがされているのではないようです。発想の転換が必要です。
フランス人は、食料品買い出しの72%を大型スーパーでし、残りをまちのパン屋、肉屋、惣菜屋で購入する。そして衣料品は、スーパーより個人店舗で購入している。DVDや本はインターネット購入する。
日本人も、こんな買い分け方をして、個人商店の利用をもっと考えたら、中心地の商店も生きていけるのですね・・・。
わずか200頁のブックレットですが、今後の日本の中小都市にとって役に立つ本だと思いました。
(2016年12月刊。2300円+税)

新たな魚類大系統

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 宮 正樹 、 出版  慶應義塾大学出版会
著者は小学生のころからヘラブナ釣りに凝っていて、高校のときには学校を休んでまでも釣りに出かけていたほど、魚が好きだったそうです。
私は小学生の低学年のころは、一人ででも遠くのレンコン堀へザリガニ釣りに出かけていました。高学年になると、大川の叔父の家の周囲のクリークでヘラブナ釣りをしていました。静かな水面を見つめていて、浮きがピクピクと沈む様子は、夜、布団に入ってからも脳裏から離れないものです。弁護士になってからも、しばらくはマイカーのトランクに釣り道具を入れておいて、柳川のクリークで釣りをしていたことがありました。それほど当時はヒマだったのです。
子どもたちが小学生のころには、自宅のすぐ近くの小川で釣りの手ほどきをしたのですが、教える師匠より教えられる子どものほうが何匹も釣り上げてしまい、面目を喪ったこともありました。まあ、子どもに自信をつけさせて良かったとは思いますが・・・。
この本には、魚のDNAを比較解析することによって、系統関係を解き明かす「分子系統学」の成果が紹介されています。
魚は3万種を優に超す。5億年もの太古の昔に存在した唯一の祖先種から、種分化と絶滅を繰り返して現在の3万種に進化したのだ。
たった一つの祖先種が5億年かけて今の3万種の魚になったとは、そしてそれが判明したとは、すごいことですよね。
一般に魚類(さかな)と呼ばれている生きものは、脊椎動物の初期進化で水中生活から脱することのなかった、由来が異なる4つのグループの寄り合い所帯にすぎない。
①顎をもたない無顎類(ヤツメウナギやヌタウナギの仲間)
②中軸骨格が軟骨からできている「軟骨魚類」(サメやエイ、ギンザメの仲間)
③各鰭の鰭条がよく発達した「条鰭類」(ほとんどすべての魚)
④肉鰭類(シーラカンス、ハイギョ)
これら4つのグループの進化的な由来は大きく異なっている。
ウナギの祖先は深海魚である。日本列島に分布するメダカにはキタノメダカとミナミメダカと二種いる。
おサカナくんではありませんが、魚好きの人には魚とは何かを考えさせてくれる、欠かせない本です。
(2016年10月刊。2400円+税)

カフェインの真実

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 マリー・カーペンター 、 出版  白揚社
コカ・コーラの成分は今も怪しいと私は疑っています。中毒性の原料が混じっているからこそ、そんなに美味しくもないのに、タバコのように、いつまでも止められずに飲み続ける人々がいるのです。
コカ・コーラの名前は、初期の製法に入っていた2種類の興奮剤に由来する。南米産のコカの葉と、カフェインをふくむアフリカ原産のコカ・ナッツだ。
20世紀初めのコカ・コーラ1杯(250ml)には81ミリグラムのカフェインが入っていた。これは現代のコカ・コーラ350ミリリットル缶に含まれているカフェイン量の倍以上だ。裁判のあと、コカ・コーラ社は、カフェイン量を減らした。
そして、粉末カフェインをつかっている。合成カフェインは、植物がつくり出したカフェインを横取りしたものではなく、カフェインの成分を池の物質から流用して組み上げたカフェインだ。
モンサント化学工業は合成カフェインを大々的に生産している。
あの悪名高きモンサントがここにも登場するのに驚きます。
カフェインは運動能力を高める薬物だ。しかし、たいていの競技で使用が認められている。カフェインの作用は、運動能力や認知力の向上、そして不眠や不安障害に至るまで、多岐にわたる。
カフェインには、うつ病を予防する効用があるかもしれない。コーヒーを飲む人のほうがうつ病になる人が少ない。そして、もっともコーヒーを飲む人は、もっともうつ病になりにくい。
カフェインの禁断症状は、実に不快なもので、頭痛や筋肉痛、疲労感、無気力、うつ状態をともなうことが多い。カフェインの摂取を急にやめると、多くのアメリカ人はひどい不快感に見舞われる危険性が高い。
カフェインは、神経細胞に対する作用の仕方がコカインやヘロインのような依存性薬物とは異なっている。とくに、脳内のドーパ濃度に及ぼす影響は少ないようだ。
私はコンビニにはあまり入りたくないのですが、街角にあるコーヒーショップでは、よくカフェラテを飲みます。さすがに、二杯目は抹茶ラテにすることも多いのですが・・・。
(2016年12刊。2500円+税)

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