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2016年10月 の投稿

移民大国アメリカ

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 西山 隆行 、 出版  ちくま新書
アメリカには毎年100万人の合法移民が入国している。不法滞在者は1000万人をこえる。移民大国であるアメリカは、このところ中南米系とアジア系の移民が急増しており、2050年までには、中南米系を除く白人は人口の50%を下回ると予測されている。
日本と違って住民票の存在しないアメリカでは、10年ごとに人口統計調査が行われる。
アメリカの黒人は、1960年に人口の11%だった。2011年には12%で、2050年には13%と、横ばいで推移するとみられている。
中南米出身者は人口の17%であり、黒人をすでに上回っている。
アジア系は2011年に人口の5%で、2050年には9%にまで増大するとみられている。
共和党は、非白人票をあまり獲得できていない。中南米系は一貫して共和党より民主党を支持している。
白人ブルーカラー労働者は、1980年代以降、支持政党を民主党から共和党に変える傾向がある。主として黒人の福祉受給者に対する反発からである。
近年のアメリカでは、中南米系、アジア系、黒人のすべてにおいて、民主党に政党帰属意識をもつ人は、共和党に政党帰属意識をもつ人よりも多い。その結果、共和党は白人の政党、民主党はマイノリティの政党という傾向が顕著になりつつある。
オバマ大統領は、奴隷を祖先にもたない。アメリカの全黒人の10%が奴隷と関わりのない人々になっている。
日本では、人口10万人あたりの収監者数は58人。アメリカは730人。収容者には黒人男性と中南米系男性の比率が非常に高い。
アメリカは移民を受け入れることによって発展してきた国。アメリカは先進国のなかでも、生産年齢人口が増大し続けている稀有な国だが、それは比較的若年の移民を受け入れ続けているから。
なぜアメリカでトランプのような大統領候補が生まれ、一定の強固な支持を得ているのか、その理由を探る本でもあります。
(2016年6月刊。820円+税)

ルポ・ニッポン絶望工場

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 出井 康博 、 出版  講談社α新書
 日本に暮らす外国人は223万人。昨年より11万人が増えた。この外国人の半分以上が実習生と留学生。実習生は19万3千人(15%増)、留学生は24万7千人(15%増)。
日本語学校は、日本語のできない留学生も大歓迎。初年度の学費が70万円。半年分の寮費18万円(月3万円)も前払い。月3万円の寮は、風呂もトイレ、台所もない6畳間に3人が詰め込まれる。
ベトナム人留学生は、2010年に5000人だったのが、2015年には5万人。
 2015年にベトナム人の検挙件数は3315件で、前年比3割増。在日外国人の7%でしかないベトナム人が4分の1の犯罪を占め、中国人より多い。窃盗は34%、万引きは57%がベトナム人の犯行。
ベトナムでは、日本留学ブームの真只中にある。日本への留学は、欧米にない特徴がある。それは留学生でも、簡単にアルバイトが見つかること。
3.11福島第一原発事故のあと、中国と韓国からの留学生は減少したまま。いま増えているのは、ベトナムとネパール出身者。ベトナム人5万人、ネパール人2万人。
ベトナムからの出稼ぎを受け入れているのは、台湾、韓国そして日本くらい。ベトナムから日本にやってくるとき150万円ほどの費用がかかり、それを借金してやってくる。借金を返さないと、担保に入れた畑や家を没収されるから、日本で奴隷労働を続けるしかない。
ベトナム人留学生の多いのは九州に本部をもつN大学(日本経済大学のことでしょうか・・・)。このN大学は、出稼ぎ目的の偽装留学生で成り立つ大学なのだ。
フィリピン人の介護士、看護師の受け入れはうまくすすんでいない。日本語の国家試験を受けて合格しなければいけないのだが、その合格率が低い。
これまで来日した介護士は2000人をこえるが、国家試験に合格した介護士は400人ほどでしかない。2009年、インドネシア人看護師82人が受験したが、合格者はゼロ。2010年に、やっと3人が合格した。日本語のハードルは高い。
ブラジルからの日系人は、32万人いたが、今では17万人ほど。フィリピン人のほうが23万人で、上回っている。その多くは、「日系ビザ」で来日する日系フィリピン人。
著者は、「留学生30万人計画」は即刻中止すべきだと主張しています。出稼ぎ目的の留学生が歓迎される国は世界のなかで日本だけ。
日本人がやりたがらない仕事(きつい、やすい仕事)を留学生にさせるなんておかしいですよね、たしかに。いろいろ考えさせられる本でした。
(2016年7月刊。840円+税)

僕の日本みつばち飼育記

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 安江 三岐彦 、 出版  合同フォレスト
日本みつばちを飼うって、やさしいようで、やはり大変なんだと思いました。
日本みつばちは、在来固有種の野生の蜂だ。小ぶりで、おとなしい。
いま、日本みつばちは、洋蜂が闊歩する蜜源花のすき間を細々と、それでも粘り強く生きのびている。日本みつばちの飼育は、簡単だという人もいれば、むずかしいという人もいる。どちらも正しい。
野生蜂は、分蜂させて群を増やすに限る。分蜂は、春の4月だ。分蜂とは、新女王が生まれる前に、女王蜂が半分の蜂を連れて巣を出ること。そして、新たな場所で営巣を始める。その群を飼育箱に捕り込むことで飼育箱が増やせる。
日本みつばちは、気分を害すると、次の営巣場所へ逃去する。これは洋蜂にはない特異な性質。同じ場所で我慢するよりも、新しい場所でやり直すほうを選択する。日本みつばちは逃去性をもつ蜂なので、永住する気はない。
分蜂は突如として始まるというものではなく、その兆候がある。
分蜂は、5000匹とか1万匹といわれる蜂の子分かれの引っこし乱舞である。
分蜂から蜂球に固まるまで、30分間もかからない。
日本みつばちは、毒性も弱く、おとなしいが、群が攻撃モードのスイッチを入れると危ない。
巣箱のなかにセイヨウミツバチは3~5万匹いる。それに対して日本みつばちは、その半分が、多くても2万匹。そして、日本みつばちの蜜の生産力はセイヨウミツバチの1割ほどでしかない。だからこそ、日本みつばちの蜂蜜は3倍強の値段がついている。
日本みつばちの女王の寿命は、自然界では2年か3年。3年生だったら、夏に寿命を迎える。
セイヨウミツバチは、4キロも飛行するが、日本みつばちはその半分ほどしか飛べない。セイヨウミツバチは、12キロ平方キロを訪花する。日本ミツバチは、その4分の1、3キロ平方メートルしか訪花できない。
セイヨウミツバチの集蜜能力は日本みつばちの能力に比べて桁違いに高い。群勢で花畑にやってきて、日本みつばちを追いやる。
日本みつばちの天敵は、ツバメやスズメ、そしてクマ。ところが本当に怖いのはセイヨウミツバチだ。
日本みつあちをきちんと保存したいものです。ともかくハチがいなくなったら、人類の生存だって危ないのです。たかがハチなんて、軽蔑してはいけません。楽しい日本みつばち飼育の本です。
(2016年8月刊。1600円+税)

ルポ・保健室

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 秋山 千佳 、 出版  朝日新書
いまほど学校に保健室が必要なときはない。この本を読んで痛感させられました。
子どもたちが、もっと家庭で、学校で大切にしてもらっていれば、保健室の必要性はそれほどでもないのでしょう。でも、働く若者が使い捨てされる社会の仕組みが強固なものになっていて、生存競争を勝ち抜いた強者のみがのさばる世の中ですから、弱者の代表たる子どもたちにひずみがいくのは必至でしょう・・・。
生徒に学校で好きな場所アンケートをとると、保健室とトイレの人気が突出している。それだけ、子どもにとって自分の教室は緊張を強いられる場所なのだ。保健室は、子どもにとって大人から成績で評価されない、否定されることのない貴重な場所になっている。
子どもたちは苦しいことがあると、安らぎを求めて保健室へ吸い寄せられる。とはいえ、はじめから自分の悩みを差し出すわけではなく、お腹が痛い、熱っぽいとか体調不良を訴え、あるいはただ雑談する。
養護教諭は、そんな子どもたちの発するSOSの小さなサインに目を光らせる。そして他愛もない話から、子どもたちの抱え込んでいる悩みを探り、引き出していく。
一年中、マスクを手放せない「マスク依存」の子が少なからずいる。それは、自信のなさの表れ。顔をさらすのを怖がっている。貧しくなくても、いろんな理由からマスクで顔を覆う子がいる。
保健室に来るのは、先生たちからあまり良く思われていない生徒が多い。
LINEでのいじめ、スマホの使い方は、保護者より子どものほうが詳しく、ルール決めが不十分な家庭が多い。その対応に自信がなくても心配無用。相談を受けるときの根幹は、その教師が信用できるかというアナログなものだから・・・。
私は、今もガラケーひとつですし、いつもカバンの底に入れています。スマホなんて使う気もありません。それでも今のところは十分生きていけます。
保健室は社会の鏡。というより、実際には、子どもが社会の鏡で、その子どもの様子がよく見えるのが保健室だということ。
子どもたちを取り巻く社会と学校の深刻な状況の一端がよく分かる本でした。
(2016年8月刊。780円+税)

アフリカに進出する日本の新宗教

カテゴリー:アフリカ

(霧山昴)
著者 上野 康平 、 出版  花伝社
 このところ、創価学会に並んで幸福の科学の政治面での派手な活動が目立ちます。あちこちで候補者を立てています。よほど資金が潤沢なのでしょうね。
その幸福の科学など、日本の新宗教がアフリカに次々に進出しているというのです。驚きます。いったい言葉の壁、生活習慣の違いをどうやって乗りこえるのでしょうか。そして、その活動資金はいったいどうするのでしょうか。アフリカから日本まで来ると30万円はかかりますよね。アフリカの庶民にとっては高値の花ではないでしょうか・・・。
この本では、創価学会と幸福の科学のほか、崇教真光(まひかり)や統一協会、真如苑などが取りあげられています。
日本国内の新宗教の信者は3000万人。これは人口の23%にあたる。そして、宗教家が70万人いる。これは、全国の小中学校の教員数が67万人なので、それよりも多い。
幸福の科学は、東アフリカの小国ウガンダで流行している。ウガンダ国営テレビが大川隆法の講演と映画を放映した。そして、2012年には、国立スタジアムで大川隆法が1万人規模の講演会を開いた。
天理教は、コンゴ共和国で活動している。
真如苑は、日本では創価学会、立正校正会に次いで多い100万人の信者を有する。真如苑は、ブルキナファソで活動している。
崇教真光は、ヨーロッパ・アフリカ方面指導部をルクセンブルグの古城に置いている。1987年に1億6千万円で古城を購入した。西アフリカから日本へ、年に数回、岐阜県の総本山での祭礼に参加しようと、ビザを申請するアフリカ人が大勢いる。
コートジボワールでは、1990年に創価学会の支部が設立されていて、当初200人の会員が、今では3万人になっている(らしい)。
アフリカの地に日本の新宗教が本当に根づくことが出来るでしょうか・・・。疑問が深まりました。
(2016年7月刊。1500円+税)

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