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時を刻む湖

(霧山昴)
著者  中川毅 、 出版  岩波書店
「レイク・スイゲツ」というのが世界に有名なのだそうです。福井県にある水月湖のことです。いった何のことでしょうか・・・。
  「世界一精密な年代目盛り。福井・水月湖。堆積物5万年分。誤差は170年。考古学の標準時に」
  水月湖は、日本海の若狭海岸に位置している。水月湖には直接流入する河川がなく、水深も30メートル以上と深い。水月湖の年縞は、氷河期の寒い時代には1枚が0.6ミリ、その後の暖かい時代には1,2ミリ。これが厚さにして45メートル、時間にして7万年分たまっている。
縞模様は、1枚が1ミリにも満たない薄い地層。この薄い地層は1年に1枚ずつ、きわめて規則正しく堆積したもの。年縞と呼ばれる。
水月湖の底にたまる物質は、春は、珪藻が大繁殖したあと死滅して湖底にたまったもの。夏は、植物プランクトンが死んで湖底に沈んだもの。これは、比較的厚い有機物の層となる。秋から冬にかけては、鉄の炭酸塩が析出して湖底にたまる。このように水月湖の湖底には、季節ごとに違う物質が堆積している。
  水月湖は、周囲を高い山に囲まれているため、日本海の強風が直接吹き付けることがない。多少の風が吹いても、水深34メートルと深いため、湖底の水までかき混ぜることはない。だから、波や風によって湖底に酸素を供給することはない。
  水月湖の湖底には、セ氏4度の水があり、湖底から浮かび上がれないので、湖底は大気から切り離されて酸欠状態になる。そのため、年縞が生物によってかき乱されることもなかった。
水月湖にある活断層は水月湖を深くする方向に作用している。このスピードは、水月湖に堆積物がたまるスピードよりわずかに速い。この絶妙なバランスのおかげで、水月湖は埋積によって浅くなることもなく、7万年もの長いあいだ年縞を形成し続けることができた。
  学者たちは、土の縞模様をひたすら数え、葉っぱの年代をひたすら測り、それらを組み合わせていった。単純だが、それだけに根気のいる作業を何年にもわたって続けたのです。偉いですよね。木の年輪と同じものを垂直の土の縞で明らかにしたというのです。しかも7万年分も・・・。その多大なご苦労に対して心からなる拍手を贈ります。
(2015年9月刊。1200円+税)

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