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2015年5月 の投稿

パンダ

カテゴリー:生物

                                 (霧山昴)
著者  倉持 浩 、 出版  岩波科学ライブラリー
 ネコをかぶった珍獣とされています。パンダのことです。
 上野動物園で10年以上もパンダの飼育係をしている人によるパンダ紹介本ですので、パンダの素顔、その正体を知ることができます。
 飼育員にとって、パンダは敬遠されがちだ。なぜなら、とても気をつかう動物だから。
 パンダは、基本的にただのクマだ。だから、パンダのいる部屋に一緒に入ったことはない。飼育係をしていると、かわいいと思うよりも、むしろ怖い思いをすることの方が多い。
 パンダは、昼も夜も寝ている。夜の方が寝ている時間が長いので、夜行性というのでもない。
 飼育されているパンダの寿命は25歳。野生では20歳ほど。
 パンダの赤ちゃんは100~200グラムで生まれ、大人になると100キロにまで成長する。
 一頭のメスが生涯に育てられる子どもはせいぜい6頭。
エサはタケ。毎日5~6種類を与える。副食としては、ニンジンやリンゴ、パンダだんご(トウモロコシや大豆の粉などでつくるエサ用の蒸しまんじゅう)。
 パンダの視力は、良くて0.3ほど。それでも、パンダは自分の飼育係は目で追っている。
 パンダは、おいしいか、おいしくないか、匂いで選び分けているようだ。
 金属音や震動音は嫌がる傾向が強い。
 パンダの足腰の関節は、とても柔らかい。
 パンダは高いところに登るのが大好き。幼いパンダほど、よく木に登る。もっとも、降りるのは苦手。驚いたり不安になったりしたとき、パンダは高いところに上がる傾向がある。
 パンダの主食のタケは、ほとんど消化吸収されないので、そのままの色で排泄される。だから、パンダのフンも多くはタケ色だ。フンは笹団子のような匂いがする。匂いも悪くはない。
パンダの食事の90%以上はタケなのに、盲腸はもっていない。
 パンダは、クマの一種であり、肉食を忘れてはいない。
パンダも鳴いている。お腹がすいた時、不満や要求がある時には、メーメーとヒツジのように鳴く。怒ったときには、「ワン」と、犬のように鳴く。
 発情期のオスとメスは、メーメーというヒツジ鳴きと、「キュッキュッ」というような鳥泣きでコミュニケーションをとっている。メスが雄を選ぶ時には、体格やルックスだけでなく、声にも好みがある。
 パンダにとっては、ひとりボッチのほうが性にあっている。パンダは単独生活で、孤独を愛する派なのだ。しかし、パンダは、3歳位までは共通の施設で育てている。
 パンダも病気になる。野生のパンダの多くは寄生虫に感染している。
 パンダの受精のチャンスは1年に1度しかない。
可愛らしいパンダの現実を知ることのできる新書です。
(2014年9月刊。1500円+税)

遺品整理士という仕事

カテゴリー:社会

                                (霧山昴)
著者  木村 榮治 、 出版  平凡社新書
 遺品整理士という仕事があることを初めて知りました。まだ国家資格ではありません。でも、今の日本には必要な仕事だと私も思います。だって、一人暮らしの年寄りがたくさんいて、孤独死で発見される人が次々にいるんですから・・・。
遺品整理とは、故人のもちものを受け継ぐものと、受け継がないものとに分け、リサイクルに出すか、ゴミとして処分する。遺品整理は、分別、清掃、査定、搬出、処分である。
 遺族の指示のもと、この一連の作業を、心をこめて請け負うのが遺品整理士の仕事である。遺品整理士の仕事は大まかに言うと、分別と運搬に分けられる。そして、作業する前に、召集・消毒・脱臭の専門業者に来てもらうことがある。
 遺品整理の関連業者は、今や日本全国に5000~6000業者もいる。
 そして、高額請求によるトラブルが目立つ。
 「ゼロ円回収」と無料をうたう業者は、「ゼロ円」という値段をつけて引きとったのだから、受けとった品物はリサイクル価格のあるもので、廃棄物ではない。だから、廃棄物処理法は適用されない。つまり、許可がなくても回収できると主張する。
 日本は、ひとり暮らしのおばあさんの多い国。女性における単独世帯の割合のピークは、80~84歳。独居していた女性の部屋の9割から、現金が出てくる。男性の場合には、お金よりもいかがわしいものが出てくる。
仏壇は、海外へ日本の高給民芸品として輸出されることがある。
 セルフネグレクト。怠慢、無関心が自分自身に向けられること。ゴミ屋敷で生活している人です。風呂に入らない。規則正しい生活をしない。きちんとした食事をとらない。ゴミを捨てず、家の中を悪臭の漂うままにする。自分を社会的な存在として保とうとしないので、周囲とも交流しない、引き込もってしまう人が大半。孤立死の8割は、生前、セルフネグレクトだった。
 著者は、遺品整理士鑑定協会をたちあげ、通信制で認定している。受講期間は2ヶ月間。合格率70%。現代日本に必要な職業だと思いました。
(2015年3月刊。760円+税)

中尉

カテゴリー:日本史(戦後)

                                 (霧山昴)
著者  古処 誠二 、 出版  角川書店
 戦後生まれ、いま40代半ばの著者がビルマ戦線の日本兵を描いています。
 白骨街道とも呼ばれるほど無惨に敗退した日本軍の敗残兵の様子を、その生き残りの一人が体験談を書いたと思える迫真の描写に、思わず引き込まれてしまいます。
 戦争の愚かさを、しみじみと実感させてくれる本です。
いま、日本では好戦的な安倍首相の下で、「挙国一致」体制をつくって、戦前のように「戦争する国・ニッポン」へ逆戻りさせようという動きが強まっています。とんでもないことです。
戦前のような美しい国・ニッポンを取り戻せという人がいます。しかし、現実には、美しいどころではなく、戦前には汚らしい、腐敗した日本があったのです。軍部独裁。暴虐の限りを尽くした知恵のない軍部によって、東南アジアへ侵略していき、大勢の罪なき人々を殺傷し、あげく日本列島は焦土と化しました。そんな状況に逆戻りさせられてはたまりません。
日本の若者が意味もなく殺され、路端やジャングルの中で白骨化していくなんて、それが「美しい」なんて絶対に言ってほしくありません。
 戦争は最大の人権侵害です。弁護士会はいま、全国で、安倍内閣が戦争する国に変えようとするのに反対し、安倍内閣のもとでの道徳教育の押しつけなど、戦争推進体制づくりに抗して立ちあがっています。
 それにしても、作家の想像力のスゴさには脱帽です。モノカキ志向の私にとって、もうひとまわり精進しなくてはいけないと思わせる戦争小説でした。
(2014年11月刊。1800円+税)

税金を払わない巨大企業

カテゴリー:社会

                                (霧山昴)
著者  富岡 幸雄 、 出版  文春新書
 大企業がもうかっているというのは間違いありません。その従業員の賃金も上がっているようです。問題は、それが社会全般にきちんと還元されているか、ということです。
 誰だって、大企業は、もうかっているだけ税金もちゃんと国に治めていると思いますよね。ところが、この本によると、それが全然ちがうというのです。驚きました。呆れてしまいます。
日本を代表する世界的な大企業は日本国へ税金を納めていない。
 ソフトバンク。あの孫さんの超大企業は、800億円近い純利益を上げているのに、納税額はわずかに500万円。うひゃあ・・・。ケタがいくつも違いますよね。
 では、柳井さんのユニクロは?
 純利益が750億円で納税額は50億円。少しはましです。でも、本当に、そんなことでいいのでしょうか・・・。読めば読むほど、腹の立つ本です。血圧が高い人は読まないほうがいいかもしれません。この本を読んで。プチッと脳血管がキレてしまっても、決して私の責任ではありません・・・。
 三井住友フィナンシャルグループは、1500億円近い利益を上げているのに、税金は、わずか300万円しか納めていない。300万円といったら、小さな小さな零細企業レベルの納税額でしかありません。
 みずほフィナンシャルグループも2400億円の純益に対して2億円ほどの納税額。同じく三菱UFJフィナンシャルグループも900億円近い純益に対して51億円ほどの納税額でしかありません。
 あまりにも低すぎます。「政商」をかかえているということで有名なオリックスも、1700億円という純利益に対して、納税額は、わずか210億円。やめられませんよね。超大企業にとって、日本は天国そのものです。
 日本の法人税は高い、いや高すぎるから下げろと経団連や一部のエコノミストが声高く主張しています。
 実のところ、日本の法人税率は35%で、ドイツの30%、フランスの33%、アメリカの40%に比べて、そんなに高いわけではない。
 日本の法人税の現状はまるでタックス・ヘイブン(租税回避地)と言うしかない。
 日本の法人税は高い、高すぎると言っている超大企業のすべが、実は、驚くほど軽い税金しか納めていない。信じられませんね。超大企業というのは、世の中に貧しく、苦しんでいる人がいることなんて忘れ、切り捨ててしまっているのです。
 企業グループ内の各企業が、株式を保有しあえば、各企業の利益による配当金を、グループなの企業で、ほとんど支払わずに内部留保することも可能になる。
 日本の富裕層の税金は世界一安い。
 5000万ドル(49億円)以上の純資産をもつ超大金持ちが、日本に2885人もいる。すごーい、ですよね・・・。安倍内閣は、消費税を10%に必ずすると断言しています。これでは、私たち庶民の経済状況を直撃し、苦しめます。
 日本のヒドイ経済格差を強めている安倍政権は、本当に血も涙もない、あこぎな政治をすすめています。怒り、そして、それを支える事実と論理を身につけてくれる本でもあります。
(2015年2月刊。700円+税)
 ゴールデンウィークは、どこにも出かけず、庭の手入れにいそしみました。今は、キョーブ、ハナショーブが花盛りです。ところどころにジャーマンアイリスも咲いています。ライトブルーだけでなく、黄・茶色そして純白の花もあり、心が惹きつけられます。5月の庭は、色とりどりで心も楽しく軽やかになります。
 2月に植えたジャガイモの苗が大きくなってきました。6月が楽しみです。
 庭のアスパラガスをとって口にすると、香りもよく、春を実感します。ウグイスの声が元気に響きわたります。カササギの巣は完成しましたが、産卵にはまだ至らないようです。二羽で、ときどき巡回しています。

ベルリンに一人死す

カテゴリー:ヨーロッパ

                                (霧山昴)
著者  ハンス・ファラダ 、 出版  みすず書房
 ナチスドイツに抵抗したドイツの大学生たちは、白バラ・グループと呼ばれました。大学の内外でナチスへの抵抗を呼びかけたビラをまいたのです。ところが、そのビラを読んで決起した学生・市民はほとんどいませんでした。そして、大学生の兄妹は死刑となってギロチン台で処刑されてしまいました。
 戦後になって、その行為は高く評価されたわけですが、残念ながら、同時代のドイツ人を立ち上がらせることは出来ませんでした。
 この本の主人公は、一人息子をドイツ兵として戦死させてしまった中年の夫婦です。夫は、まだ現役の労働者でした。ヒトラーを批判し、反戦を呼びかけるハガキをベルリンの町のあちこちに置いていったのです。
 ところが、そのハガキを手にした人は、恐怖のあまりほとんどが警察へすぐに届け出てしまいます。その限りでは、反戦ハガキは何の効果もありませんでした。しかし、本当に効果がなかったのかどうかは、本書のような存在が証明していることになります。
 この小説のモデルとなった実在の人物は1940年から2年にわたって、公共の建物にナチスへの抵抗を呼びかける文章をハガキに書いてベルリンの町のあちこちに置いていった。
 ベルリン中からハガキが発見されたため、ゲシュタポ(ナチスの秘密警察)は、大がかりな地下組織の存在を疑っていた。実際には、夫婦二人だけの「犯行」だった。1942年に逮捕され、形だけの裁判で死刑判決を受け、1943年にギロチンで処刑された。
 あらゆる意味で平凡な一般市民の中に、こんな絶望的とも言える勇気をもった人々がいたことに驚かされる。
 でも、よく考えてみれば、ベルリン市内には戦後までユダヤ人を隠して守り抜いた人々が少なからずいたのです。守った人々も、普通の一般市民だったのです。
 ハガキを書いて町のあちこちに置いていたオットーは、政治的信条のためではなく、「まっとうな人間」でいるためにハガキを書いたのだ。本書に登場する人物のうち、ナチスへの抵抗を試みるのは、ほとんど全員が確固たる政治的信条をもたない平凡な人物ばかり。彼らは、ただ単に「まっとうな人間」でありたいという願いから、ナチスに抵抗し、迫害を受ける。その抵抗が何の役に立ったのかと問われたとき、オットーは次のように答えた。
 「自分のためになります。死の瞬間まで、自分はまっとうな人間として行動したのだと感じることができますからね。そして、ドイツ国民の役にも立ちます。聖書に書かれているとおり、正しき者ゆえに救われるだろうからです」
 この本は、1946年に出版されています。まさに終戦直後に書かれたのです。平凡なドイツ市民、はじめはヒトラー・ナチスを賛美していた夫婦がヒトラー批判のハガキを書いて町じゅうにばらまくようになるのです。その心理的変遷を行き詰まるタッチで描き出しています。
 600頁もの分厚い本です。そのうえ上下2段組です。戦時下のドイツ、首都ベルリンの行き詰まる市民生活が丹念に再現されていて、読ませます。
(2014年10月刊。780円+税)
 次のような詩があるそうです。
 批判ばかりされた子どもは、非難することを覚える
 殴られて大きくなった子どもは、力に頼ることを覚える
 笑いものにされた子どもは、もの言わずにいることを覚える
 皮肉にさらされた子どもは、醜い良心の持ち主となる
 しかし、激励を受けた子どもは、自信を覚える
 寛容に出会った子どもは、忍耐を覚える
 賞賛を受けた子どもは、評価することを覚える
 フェアプレーを経験した子どもは、公正を覚える
 友情を知る子どもは、親切を覚える
 安心を経験した子どもは、信頼を覚える
 かわいがられ抱きしめられた子どもは、世界中の愛情を感じることを覚える
 これはスウェーデンの中学校の教科書に載っているそうです。ドロシーロー・ノルトの「子ども」という詩です。長瀬文雄氏が紹介していました。弁護士生活40年以上となった私の実感にもぴったりあいます。やはり、人間同士も国同士も信頼しあうことが大切です。安倍政権のようなあちこちに「敵」をつくり、武力によって「敵」を抑えこもうというのではいけません。

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