(霧山昴)
著者 倉持 浩 、 出版 岩波科学ライブラリー
ネコをかぶった珍獣とされています。パンダのことです。
上野動物園で10年以上もパンダの飼育係をしている人によるパンダ紹介本ですので、パンダの素顔、その正体を知ることができます。
飼育員にとって、パンダは敬遠されがちだ。なぜなら、とても気をつかう動物だから。
パンダは、基本的にただのクマだ。だから、パンダのいる部屋に一緒に入ったことはない。飼育係をしていると、かわいいと思うよりも、むしろ怖い思いをすることの方が多い。
パンダは、昼も夜も寝ている。夜の方が寝ている時間が長いので、夜行性というのでもない。
飼育されているパンダの寿命は25歳。野生では20歳ほど。
パンダの赤ちゃんは100~200グラムで生まれ、大人になると100キロにまで成長する。
一頭のメスが生涯に育てられる子どもはせいぜい6頭。
エサはタケ。毎日5~6種類を与える。副食としては、ニンジンやリンゴ、パンダだんご(トウモロコシや大豆の粉などでつくるエサ用の蒸しまんじゅう)。
パンダの視力は、良くて0.3ほど。それでも、パンダは自分の飼育係は目で追っている。
パンダは、おいしいか、おいしくないか、匂いで選び分けているようだ。
金属音や震動音は嫌がる傾向が強い。
パンダの足腰の関節は、とても柔らかい。
パンダは高いところに登るのが大好き。幼いパンダほど、よく木に登る。もっとも、降りるのは苦手。驚いたり不安になったりしたとき、パンダは高いところに上がる傾向がある。
パンダの主食のタケは、ほとんど消化吸収されないので、そのままの色で排泄される。だから、パンダのフンも多くはタケ色だ。フンは笹団子のような匂いがする。匂いも悪くはない。
パンダの食事の90%以上はタケなのに、盲腸はもっていない。
パンダは、クマの一種であり、肉食を忘れてはいない。
パンダも鳴いている。お腹がすいた時、不満や要求がある時には、メーメーとヒツジのように鳴く。怒ったときには、「ワン」と、犬のように鳴く。
発情期のオスとメスは、メーメーというヒツジ鳴きと、「キュッキュッ」というような鳥泣きでコミュニケーションをとっている。メスが雄を選ぶ時には、体格やルックスだけでなく、声にも好みがある。
パンダにとっては、ひとりボッチのほうが性にあっている。パンダは単独生活で、孤独を愛する派なのだ。しかし、パンダは、3歳位までは共通の施設で育てている。
パンダも病気になる。野生のパンダの多くは寄生虫に感染している。
パンダの受精のチャンスは1年に1度しかない。
可愛らしいパンダの現実を知ることのできる新書です。
(2014年9月刊。1500円+税)
パンダ
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