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2015年3月 の投稿

国際リユースと発展途上国

カテゴリー:社会

著者  小島 道一 、 出版  IDE・JETRO、アジア経済研究所
 私にとってアフガニスタンというと中村哲医師を思い出しますし、パシュトン人とかハザラ人が次に来ます。でも、遠い国というイメージです。
 ところが、そのパシュトン人とかハザラ人が日本で中古自動車の輸出入に関わっているというのです。驚きました。
 日本製中古車貿易においては、パキスタン人移民企業家が市場を牽引してきた。
 2004年6月時点で、日本の中古車輸出業者は全国に800業者いて、そのうちパキスタン業者が350業者、バングラデシュ人が100業者、スリランカ人が100業者だった。2006年12月時点では、パキスタン人業者は500~600業者へ増加した。
 パキスタン人というのはパシュトン人のことであり、千葉県ではアフガニスタン人のほとんどはハザラ人である。ハザラ人は、アフガニスタン内戦が激しくなった1994年ころ日本に来て、中古部品業に従事した。
 2000年以降、アフガニスタン内戦が一時収束すると、多くのパシュトン人が中古部品業界に参入してきた。
日本の中古車のうち登録抹消された自動車の28%が輸出されている。ロシア、ニュージーランド、アラブ首長国連邦が主たる輸出先である。アラブ首長国連邦のドバイは、アフリカ、中東向けの中古自動車貿易の中枢地になっている。
日本の中古テレビの主要な輸出先はフィリピンである。2008年から2012年にかけて、合計258万台に達している。
 ロシアへの日本車の輸出は、経済成長と日本車への根強い需要を背景として、長期的な増加傾向を示し、2008年には年間50万台もの輸出があった。そして、高額な関税を免れるため、自動車部品として輸入するようになった。
 ロシアへは軽自動車が増えている。セカンドカーとしての需要である。道路の路面状況が悪いため、車高の高いジムニー(スズキ)、パジェロミニ(三菱)、テリオスキッド(ダイハツ)が好まれている。
 在日韓国・朝鮮人は金属リサイクル業、在日ベトナム人は中古家電の貿易、在日パキスタン人は中古車貿易業と、すみ分けている。
日本の中古製品が海外へどのように輸出されているのかを実証的に研究した本として、知らなかったことだらけで、大いに勉強になりました。
(2014年12月刊。3600円+税)

プーチンはアジアをめざす

カテゴリー:日本史(戦前・戦中)

著者  下斗米 伸夫 、 出版  NHK出版新書
 ロシアのプーチン大統領も目が離せない人物ですね。そのプーチンの祖父がレーニンコックだったというのは、初めて知りました。
プーチンの祖父、レニムグラードのマストリア・ホテルでコックをつとめたあと、晩年のレーニン家のコックに選ばれた。プーチンの祖父は、古儀式派だった。これは、ロシア正教会以前の古い信仰を保つ正教一派(異端的潮流)である。
 ロシア正教会では、三位一体論にもとづき、三本指で十字を切る。これに対して、古儀式派は二本指(人と神をあらわす)で十字を切る。同じ古儀式派出身の政治家として、エリツィン大統領の祖父、グロレイコ外相の一族、モロトフ外相の一族などがいる。ちなみに、日本にも100年前に北海道・函館に古儀式派が集団で移住してきたが、今はいない。
 ウクライナは、ソ連の崩壊後に誕生した人口4500万人の国。ロシアに次ぐ、スラブの大国。
 ウクライナとは、本来、「隅」とか「辺境」を指す普通名詞である。ただし、これはモスクワからみた「隅」ではなく、ポーランドの「辺境」を意味してきた。
国連は1945年に設立されたとき、ウクライナは51の原加盟国の一つで、憲章に署名した国でもある。さらに、ウクライナは2度にわたって国連安保理の非常任理事国だった。つまり、ウクライナは、ソ連の構成国でありながら、同時に国連では独立国でもあるという、「半主権国家」とでもいうべき立場だった。
 アメリカがロシアに対して強気に出られるのは、アメリカにとってロシアとの関係がそれほど重要ではなくなったから。とりわけシェールガス革命のあと、アメリカの天然ガス開発がすすみ、エネルギー大国のロシアを気にする必要はさらに薄まった。
プーチンが「強いロシアの復活」と言うとき、それは、ロシアがもはや超大国ではなく、むしろ崩壊の可能性すら秘めている国だという認識もある。安全保障上も、対外脅威というより、チェチェン問題や、人口減少といった国内問題に重点を置いている。
 プーチン政治のポイントの一つは、富裕なオリガルフを政治の世界から排除したこと。プーチンはオリガルフを国外へ追放した。
 現在、ロシアの国富の71%は、トップの1%が所有する。ちなみに、アメリカは37%、中国は32%。
 1億ドル以上所有する資産家は、アメリカ4754人、中国983人、ロシア536人。
プーチン大統領は、ロシアの生き残り戦略としてアジアを重視しているというのです。なるほど、と思いました。
(2014年12月刊。740円+税)
 日曜日は、春うららかな陽気の下でジャガイモを植えました。実は、1月に植えた種ジャガイモから芽が出てこないので、失敗したと思って植え替えようとしたのです。1月は早過ぎると、いろんな人から言われ、あきらめたのでした。それでクワを入れてみると、なんと、これから芽が出ようとしているのです。あわてて、元通りにしました。そこで、新しく別の畝をつくって、ジャガイモを植え込みました。キタアカリとダンシャクです。
 今日はジョウビタキがやって来ないな、もう北国へ帰っていったのかなと思っていると、ジョウビタキがやって来てくれました。近くでよく聞いてみると、小さなさえずり音をたしかに発しています。本当に可愛いらしい小鳥です。
 庭のあちこちに黄水仙が咲いています。チューリップの花のつぼみも2本だけ見つけました。もう少しでチューリップ祭りが全開となります。

進化とは何か

カテゴリー:生物

著者  リチャード・ドーキンス 、 出版  早川書房
 ドーキンス博士は、日本でも講演したようです。ぜひ参加したかったと思わせる内容が誌上で再現された本です。生命の神秘が進化とは何かを通じて語られていきます。思わずぞくぞくするほど、エキサイティングな内容です。
人間の脳の神経細胞をすべてつなげると、地球を25周するほどの長さになる。そして、このつなげた神経細胞の端から端まで情報を送るとすると、なんと6年もかかってしまう。
神経系の括目すべき点は、細胞の数ではなく、むしろそのつながり方にあり、その複雑さは驚くべきもの。脳内の突起にあるコネクションを数えると200兆にもなる。
 血液の中で、酸素を運搬する分子であるヘモグロビンは、6×10の21乗もあり、それぞれがすべて非常に複雑な構造になっており、みなまったく同じ形をしていて、血液中で常に古くなったものは壊され、新しいものが毎秒400兆個の割合でつくられている。
 ツツハナバチは、メスのハチが小さな石を集めてきて、それらをまるでセメントで固めるように固めて、素晴らしい瓶をつくる。一つの瓶のように見えて、実は、下にまだ瓶が4つも隠れている。
 オーストラリアのコンパスシロアリがつくる塚は南北にそってつくられている。冷しい朝夕は太陽の光で温まり、日中の暑いときには光が頂点を照らすだけなので、それほど暑くならずにすむ。
 トックリバチやカマドドリが瓶や巣を効率よく作るのは、先を読んでのことではなく、むしろ過去の失敗から「自然選択」によって直接選択されてきた結果に過ぎない。
眼の進化に25万世代がかかった。といっても、地質学上の時間のスケールからすると、25万世代というのは、ほぼなきに等しいくらい小さい。25万世代というのは、100万年の4分の1ほどにしかならない。
 眼はたやすく進化する。なぜか・・・・。
 半分の眼でも、眼がないより有利。半分の眼は49%の眼よりも有利で、1%の眼でも眼がないよりは有利になる。
トビヘビは、木の上を這っているときには、普通のヘビ。しかし、いったん木を飛び出すと、体が横にひらべったくなって風に乗り、下のほうに飛んでいって、けがすることなく別の木に着陸する。これは、翼へ進化する第一歩だと考えていい。
ハチによる花粉媒介サービスは本当に大規模である。ドイツ国内だけでも、ひと夏にハチたちは、10兆もの花に花粉を媒介している。人間の食糧の30%は、ハチによる花粉媒介に頼っている。
脳は、人体が搭載するコンピューターである。目が脳に提供するのは、二次元情報である。逆さまの画像を、脳はなんとかして、三次元の情報に置きかえようとしている。
 そこに見える現実だと思っているものは、実は脳の中に構築されたモデルであり、脳内のシュミレーションにすぎない。脳内につぎ込まれた情報は、生のままで見られるというのではなく、脳内モデルを更新していくために使われる。つまり、われわれが現実として把握しているものは、実はコンピューターゲームの世界のように、人間の頭のなかでつくられた仮想現実(ヴァーチカル・リアリティ)なのである。
 とても面白い生物の教科書です。一読をおすすめします。
(2014年12月刊。1700円+税)

小説・青い日々

カテゴリー:日本史(戦前・戦中)

著者  堤 康弘 、 出版  日本民主主義文学会福岡支部
 92歳になる著者が青春の日々を思い出し、小説にした本です。
 戦前の軍国主義的風潮が強まるなかで、天皇とはいったい何者なのか、軍部の横暴はくい止められるのか、自問自答していた、若き日の葛藤が再現されています。90歳を超えて、10代の日々をこれほど情景こまやかに描き出しているのに、驚嘆するばかりでした。
 著者は八女中学校から、熊本の五高に進み、九州帝大法科に入ります。九大に在学中に兵役にとられ、2年間休学します。戦後は、平和活動などに挺身してきました。
 八女中学の1年生のとき、2.26事件(1936年)が起きて、首相らが軍人に殺害された(岡田首相は人違いによって殺されなかった)。満州事変も起きていて、日本全体が戦争へまっしぐらに進んでいるかと思うと、それに不安を覚えていた国民も実は少なくなかった。
 中国で日本軍が残虐な行為をしていることを知り、それに批判的な人も少ないながらいたが、声を上げることは出来なかった。あくまで、ひそかに身近な人に言うだけだった。そして、権力に歯向かう人は「主義者」(共産主義者)として、問答無用式に官憲が逮捕し、連行していった。
 やがて日本は国際連盟から脱退した。そして、貧しい日本人が大挙して満州へ開拓民として渡っていった。
 「満州は日本の生命線」
 「行け満蒙の新天地」
 「600万の民族大移動」
 「満州に行けば、一人、10町歩もらえる」
 それでも、暗い話ばかりではなく、主人公は4泊5日の阿蘇キャンプ旅行を敢行するのでした。男ばかりの4人組です。久住から阿蘇山をまわって、無事に帰り着くのですが、途中で図工の教師がスケッチ旅行しているのに出会います。
 そして、弁論部に所属します。軍事教練にも参加させられます。銃の分解組立も強制されるのでした。
 中学4年生のときには、実弾射撃訓練があり、また夜間遭遇演習に参加させられます。
 主人公は熊本にある五高に入学して寮に入った。同室者には朝鮮出身の朴がいた。英語とドイツ語の授業はネイティブの教師から受けた。
 陸軍大将の荒木貞夫が五高に来て講演しようとするときには、五高生は椅子に座ったまま一斉に脚を踏みならして、激しい反軍闘争を展開した。荒木貞夫は怒って、「貴様らに聞かせる話はない」と言って帰っていった。
 そして、ついに日本は開戦し、太平洋戦争に突入した。寮のラジオを聞いて主人公たちはそれを知った。主人公は五高在学中に召集令状が来て、軍隊に入った。
 戦争というものは、じわじわと忍び寄って来ること、世論をかきたてあおり、一気に戦争へ国民を巻き込んでいくことを改めて思い知らされる本でもありました。安倍首相のすすめている「この道」は、戦前のような無謀かつ無意味な「戦争への道」です。
 今の日本が戦争への道にじわじわと具体化していっていることは、シリアの日本人二人がついに殺害されてしまったことからも裏付けられます。戦争だけは絶対に繰り返してほしくないという著者の叫びが小説として結実していると思いました。
(2014年7月刊。1620円+税)

成長国家から成熟社会へ

カテゴリー:社会

著者  碓井 敏正・大西 広 、 出版  花伝社
 政党の固定的支配層は減少し、政治的課題によって離合する傾向が強まっている。各政党の党員は半減している。政党と選挙民の関係は一枚岩ではなく、屈折し、重層化している。
アベノミクスのインフレ政策、円安政策は即刻やめさせなければならない。同時に、ムダな公共投資の復活や大企業減税の停止もなされなければならない。
大企業は、円高による国民利益を通じた消費、つまり内需拡大こそ利益とする体質に自らを転換しなければならない。
 日本は、今や、アメリカに次ぐ貧困大国になりつつある。格差問題で特に重視されるべきは、教育格差である。なぜなら、教育格差は、各種格差の始点となっているから、また世代にわたって継承されるから。
 今の日本は、世界に例をみない高学費によって、高等教育への進学率は、先進国のなかでも中位以下にまで後退している。
 小中学生の全国学力テストでは、秋田や福井、石川のような社会的絆(社会関係資本の強い)日本海側の地域が上位を占めている。
 日本は、安心して離婚を選べる社会とはほど遠い。家族ケアの受けられない一人暮らしの高齢者が増加している。
日本の公務員は大幅に減少している。19494年に比べて国家公務員は3分の1へ激減した。地方公務員のほうは53万人も減った。
 国家公務員の労働組合は連合と全労連で勢力を二分している。労働組合については、組合員数の減少だけでなく、労働組合の単位組織自体が減っている。この30年間に2万の組織が消滅してしまった。
 ゼロ成長経済下で求められるのは、国家に依存しない「社会」内部の諸力の成熟だという主張でつらぬかれた本です。私にとって、やや難しすぎる論調ではありました。
(2014年10月刊。1700円+税)

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