著者 桜井進・大橋製作所 、 出版 中公新書ラクレ
数学の大好きな知人からすすめられて読んだ本です。
数式を形にあらわしてみたらどうなるのか・・・。こんなに美しい物体になるとは驚きです。
数学は芸術である。数学は美しい。数学とは物語である。数学とは言葉である。数学とは道具である。世界は数学でできている。数学ほど役に立つ者はない。数学は人類がつくり出した最高の芸術作品である。
これまでは、黒板や教科書、液晶モニターを通して、離れたところから眺めて想像するしかなかった数学。それが、数楽アートを手に取とり、その重さを感じながら、見事な技術でカッティングされた直線や曲線を指で触ることができる。
数楽アートという製品は、もともと存在しなかった。数学で用いられる「2変数関数」を、金属加工技術を使って立体グラフ化した。世界で初めてのステンレス製アート・オブジェ。
数楽アートの一番のポイントは、光。表面に光沢を有するステンレス鋼材を格子状に組み上げているため、幾何学構造が織りなす「光のハーモニー」を楽しむことができる。それによって、立体の構造を把握することができる。数楽アートは、3次元の立体を表現している。
数楽アートは、光沢を有するステンレス鋼材を用いているため、光をよく反射する。
数楽アートは、その軌跡をNCデータというレーザー加工機を動かすためのプログラムに変換することで再現している。
光沢のある鋼材の表面に、傷をいっさい付けることなく切断する。そのために開発された専門技術。
五感を研ぎすまし、ときに呼吸を止めながら、全神経を「数式」の一片一片に集中させる。
数楽アートの実際がいくつか紹介されていますが、いずれも、思わず息を吞む形と美しさです。数学は美しいという言葉を素直に受け入れることができます。
放物線、円錐、半球、それぞれが、きらきら輝くステンレス板からなる物体として目に見え、手でさわることができるのです。
従業員100人、売上高30億円という規模の中小企業が果たした偉大な成果です。池井戸潤の小説『下町ロケット』の本を、つい思い出してしまいました。
(2014年9月刊。1000円+税)
美しすぎる数学
社会

