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2014年10月 の投稿

おつかれ!毎日パンダ

カテゴリー:生物

著者  高氏 貴博 、 出版  飛鳥新社
 上野動物園で「働いている」パンダの行状記です。
よくぞ、毎日毎日、パンダの百面相を写真として残したものです。いかにもヒマ人、よほどの物好きとしか言いようがありません。ところが、どうやら著者は会社勤めのようなんです。
ええーっ・・・今どき、こんな趣味のために労働時間を自由にやりくりすることが出来るなんて、まるで夢の世界です。
 パンダは面白い寝相をします。思わず拍手をしたくなります。中に入っている、ぬいぐるみ師に、早く出てきて挨拶しろよ、白状してしまえ、などと呼びたくなります。
 リーリーはオスのパンダ。メスのシンシンがとても気になります。メスのシンシンは、顔も体も耳もまんまるで、パンダのお手本のような美人パンダだ。
 シンシンは高いところが大好き。大きな音を聞いたり、怖いことがあると、木に登る。ところが、降りるのは苦手だ。
 リーリーは、木登りが苦手。リーリーは、シンシンが気になって仕方ない・・・。
 リーリーとシンシンの百面相ポーズが紹介されています。思わず吹き出してしまいます。
仰向けにひっくりかえって、バンザーイしたり、さかだちの格好をしたり、変な格好で寝てみたり・・・。ともかく、その様子のすべてが可愛いのです。
 なんて不思議なパンダでしょう。パンダの楽しい写真を満喫できる本です。
(2013年6月刊。1048円+税)

スターリン

カテゴリー:ヨーロッパ

著者  横手 慎二 、 出版  中公新書
 ヒトラーと並ぶ昭和時代の怪物であるスターリンを見事に的確にとらえていると思いました。
 現在のロシアでは、スターリンの人格や役割についての評価が真っ二つに分かれており、ロシア史におけるスターリンの役割について、肯定的に評価する声と、否定的に評価する声が拮抗している。
 ええっ、信じられません。スターリンを肯定的に評価する人が半分ほどもいるなんて・・・。
 スターリンは、母親のおかげで、稼ぎの悪い呑んだくれの靴職人の子どもにしては、不釣りあいな教育を受けた。スターリンは、教会学校を成績優等で卒業した。
 スターリンは、その前は「コーバ」を通称とした。コーバとは、グルシア人の義賊の名前。帝国の支配に粘り強く抵抗する山岳民のため、身の危険もかえりみずに奔走するグルジア版ロビン・フッドである。幼いスターリンは、コーバに夢中になった。
 スターリンは、人並みほどの母親思いの人間だった。
 スターリンは、一度目はグルジア人の娘と結婚し、2度目は、アゼルバイジャン(バクー)に生まれたロシア人の娘と結婚した。
 スターリンは、詩を書いていた。だから、これまで想像されてきた以上に、豊かで多面的な才能を有していた。
 スターリンは、15歳になるまで、革命活動には、まったく関与していなかった。スターリンが聖職者になるために入学した神学校は、反抗心旺盛な若者を輩出する教育機関になっていた。この神学校で、スターリンは、何度も懲戒された。そして、結局、退職処分を受けた。
 20世紀の初め、スターリンは民衆が心の底から支配層を憎み、体制の打倒を願っているので、誰かが率先して挑戦すれば、社会の遅れた臆病部分がこれに続くと考えていた。情勢認識が甘かった。
 銀行強盗事件については、レーニンが具体的に指示していたとも言われている。
スターリンの文体は非常にシンプルである。また、小さな疑問と結論を繰り返す論証スタイルは、この神学校で身につけたのだろう。
 レーニンとスターリンは、少数民族の取り扱いでは、かなり機会主義的に対応した。スターリンは、レーニンとともに少数民族の権利を尊重する側に位置していた。
 スターリンは、少数民族に心情的に味方したのではなく、政治的現実として少数民族を味方にすることの意味をよく理解していた。
 レーニンは、1923年に政治的活動が出来なくなり、1924年1月に死去した。
 スターリンは、1922年4月、レーニンの同意の下に共産党中央委員会書記長に就任した。書記長とは、当初は、純粋に技術的性格の職務でしかなかった。
 共産党が権力を掌握したあと、党員数は1919年3月の31万人から1921年3月の73万人に急増した。政治局、組織局、書記局が設置された。スターリンは、この三つに席を占めた。
 国家機関が変質し、共産党の組織に依存する形で再編された。ソヴィエトは、県レベルから全国レベルへと、上層に行けば行くほど共産党一党に支配され、自立した国家機関としての意味を失った。国家機関の自立性を奪ったのは、共産党による人事権の掌握である。
 スターリンは、高等教育を受けていないが、独学で、役立つと思われる知識を貪欲に吸収していた。つまり、高度な書物を読むだけの知的能力を発揮していた。ただし、抽象的な論理に終結する理論的訓練は受けていなかった。
 1932年から翌年にかけて、党内にはスターリン離れの働きが起こっていた。この時期に党から除名されたものは40万人にのぼった。
スターリンとは何者か、なぜ独裁者になったのか、独裁者として何をして、どうやって生きのびたのかについて、簡潔にまとめた画期的な本だと思います。いま、別に600頁もの大作を読んでいます。ヒトラーと同じく、スターリンも、私にとって目が離せない人物です。
(2014年8月刊。900円+税)

限界にっぽん

カテゴリー:社会

著者  朝日新聞経済部 、 出版  岩波書店
 ほんの少し前まで、「ジャパン・アズナンバーワン」とされ、安定雇用のもと、経営と働き手が一体になった日本型経営は、日本の強い競争力の根源だと言われていた。終身雇用と手厚い福利厚生で企業が従業員を支え、分厚い中流層が社会の安定の基盤だった。
 いま、社内に首切り旋風が吹き荒れている。残った社員にも不安と不信が強まり、職場では誰もが孤立し、会社は乾いた荒漠としたものになった。
 雇用の危機を放置したままで、経済は成長できるのか・・・。
マクドナルドの店内は、午前0時になると、店内の風景が一変する。サラリーマンや学生たちと入れ替わりに、しびれた手提げ袋を抱えた男性たちが入ってくる。「マクド難民」と呼ばれてくる人たちだ。
お金がないから、ネットカフェには泊まらない。ネットカフェは1000円かかる。マックなら100円のコーヒー1杯で午前2時までいられる。
マック閉店のあとは、「ブックオフ」に向かう。マックの店員は大半が非正規社員。17万人がアルバイトで働く。
 大阪では、働く人の45%が非正規社員だ。
 非正規社員が広がったのは、1990年代後半の「派遣の原則自由化」による。これは、本当に罪深いと思います。大企業本位の自民党政治の最大の誤りの一つだと思います。大企業は栄えても、日本の若者からは将来展望を奪ってしまいました。
 生活保護のバッシングがひどい。しかし、不正受給は全体の2%。保護を受ける資格が十分にあるのに、わずかな収入でガマンしている人が圧倒的に多い。ところが、残念なことに、そのような人が身近な生活保護受給者の足を引っ張るような行動もするのです・・・。
 安倍内閣は生活保護費の給付水準を引き下げるのに狂奔しています。強いものには税金を安くしてやって、弱者には「自己責任」を押しつけるのですから、政治家失格です。
 現実の日本社会には、ばりばり仕事をするサラリーマン男性だけがいるわけではない。高齢者も障害者も社会に適応できない若者など、さまざまな人がいる。みんなが、それぞれにがんばれる多様性を組み込まないと、経済も社会も活性化しない。
日本の超有名大企業が社員に自主退職を促し、株主や銀行に約束した「人減らし」計画を達成するために「追い出し部屋」をつくっている。
 パナソニック、NEC、ソニー、朝日生命などなど・・・。
 ノエビア化粧品は、「苛酷なノルマ」を押しつけて、社員を追い出す。その手口が明らかになった。会社側は「辞めろ」とは決して言わない。社員が自ら「辞める」と言い出すまで、じりじりと追い込む。
 2012年8月、東京地裁立川支部は、ベネッセコーポレーションの「追い出し部屋」を違法と断じる画期的な判決を出した。
 人減らしをすすめるとき、人事担当は、「解雇・クビ・やめろ・やめてくれ」とは絶対に言ってはならない。会社に残るのを、いかにあきらめさせるか、だ・・・。
 ユニクロは、ブラック企業としても有名です。新入社員が入社して3年内に退職した割合(離職率)は、2006年組で22%、2007年組は37%、2008~2010年組は46~53%と高まっていった。同期の入社組の半数は会社を去っていく。そして、休職している人の42%はうつ病などの精神疾患にかかっている。これは正社員の3%にあたる。
もっと働く人を大切にすること、とりわけ若者が安定して長く働ける職場を確保すること、これをなくして日本社会の平和と安定的成長はのぞめないと思います。
 いま安倍首相のやっていることは、それに真っ向から逆行しています。働く中高年を大切にせず、若者を使い捨てにして、超大企業のみを優遇しています。そして、軍需産業だけは栄えるというのです。本当に、戦後最悪の政治が進行中だと思います。
(2014年月刊。760円+税)

アメリカ自動車産業

カテゴリー:アメリカ

著者  篠原 健一 、 出版  中公新書
 日本とアメリカでは労働現場の文化がかなり異なっていることを改めて認識させる本でした。
 アメリカでは長年続いたビッグ3の経営不振によって、2009年にGMとクライスラーが経営破綻した。ところが、アメリカ政府による500億ドルという巨額の公的資金の投入などによって、アメリカの自動車産業が再び復活しようとしている。
 自動車販売台数では、GMは世界トップに返り咲いた。2009年には748万台に落ち込んだが、2011年にトヨタが前年比5.6%減の795万台に落としたのに対して、GMは前年比7.6%増の902万台に達した。
 2013年は、トヨタが998万台、GMが971万台となった。フォルクスワーゲンは973万台。
 GMには、能力に応じて従業員が昇進を重ねていくという発想がそもそも存在しない。人的資源管理、人材開発・能力開発という考え方は、GMでは非常に希薄である。
 2009年、アメリカの就業者数1億1451万人のうち、6.8%の780万人が自動車関連産業による雇用者である。このように依然として、アメリカの雇用面における重要産業になっている。
 日本も同じで、日本の就業者6244万人のうちの8.8%、548万人が自動車産業関連に就業している。
 GMは、1990年代に入って子会社の販売金融会社GMACを通じて、ローン審査を甘くすることで、低所得者層が高額の自動車を購入できるようにした。しかし、それは信用リスクを高めた。錬金術のような仕組みによって、GMACは、2004年には28億ドルもの利益をあげた。ところが、金融バブルの崩壊によって、GMACは20億ドルもの損失を計上し、2009年のGM経営破綻につながった。
 アメリカのビッグ3では、長いあいだ、いかに職場労働から競争を排除するかについて、労使間で交渉されてきた。マニュアルどおりの働きが、必要かつ十分なのである。
同一労働、同一賃金を原則とするから20歳でも50歳でも、同じ職務にある限り、同じ賃金は支払われる。
アメリカの企業では外部採用が重視され、内部昇進は少ない。平等主義、非競争主義で秩序づけられた特徴をもつのが、アメリカのビッグ3工場での仕事だ。
 同じ職務に就いているのに、働きぶりによって賃金に格差が出ることについて、現場労働者は公平感に反すると感じる。
 アメリカでは能力主義は、もともとあまり用いられていない。労働組合員になると、なおさら能力主義は普及していない。
 アメリカには先任権というものがある。レイオフの必要が生じたときには、勤務年数の短いものから順番にクビを切っていく。景気が好転したときには、勤続年数の長いものから再雇用していく。ここには能力基準が介在する余地は一切ない。これがポイントだ。
 アメリカの工場の職長は非労働組合員であり、かつ労働者からの内部昇進はきわめて少ない。多くは外部から採用されている。ただし、職長といっても、収入面では必ずしも恵まれた職位とは言えない。
 このような日米の労働慣行の相違点をきちんと認識したうえで、日本企業は外国への進出などを決めるべきだと思ったことでした。
(2014年7月刊。780円+税)

暴露

カテゴリー:アメリカ

著者  グレーン・グリーンウォルド 、 出版  新潮社
 アメリカは世界の憲兵を気取っていますが、誰も頼んでいるわけではありません。自分勝手に他人のプライバシーを暴きたてて、軍事力でおさえつけているにすぎません。
でも、軍事力で押さえつけようとしても、テロリストを根絶できるものではありません。とりわけ、9.11のような自爆攻撃の前には、いかに強大な軍事力をもっていても無力だということが立証されています。やはり、軍事力に頼らないで、まわりくどいようだけど、たとえば貧困や病気をなくす努力といったものが求められていると思います。
 この本は、アメリカが勝手気ままに全世界をスパイ(監視)していることを、CIA工作員だった人が内部告発したものです。
 アメリカのブッシュ大統領が指揮した違法な通信傍受は明らかに犯罪行為であり、傍受された人々に対して、ブッシュ大統領は説明責任がある。
 1970年代の半ば、アメリカのFBIは、50万人ものアメリカ国民について、「潜在的な反乱分子」とみなして、政治的信条だけを理由としてスパイ行為をしていた。このときの対象者には、マルティン・ルーサー・キング・ジュニア、ジョン・レノン、ジョン・バーチ・ソサエティ(反共主義者の団体)などが含まれていた。
市民の通信を傍受できる能力は、傍受する側に計り知れない力を与える。そして、その力は悪用される。
 エドワード・スノーデンから最初の連絡があったのは、2012年12月1日のこと。
 初めて会うとき、携帯電話をもっていることを知ると、スノーデンは、バッテリーを抜くか、ホテルの部屋に置いてくるように求めた。アメリカ政府は、携帯電話やノートパソコンを遠隔地から起動させて、盗聴器として使うことができる。だから、決して盗聴されないためには、携帯電話については、バッテリーを抜くか、冷蔵庫の中に入れておくこと。ええっ、そんなことも出来るのですか・・・。怖いですね。
スノーデンは、高校を中退したものの、テクノロジーに関しては天与の才能があった。2005年には、CIAの保安要員からテクニカル・エキスパートに格上げされた。大学を出た歳上の同僚より、スノーデンは知識も技能も明らかに優れていた。
 2006年、スノーデンは、CIAの請負の立場から、フルタイムのスタッフになった。
 スノーデンは、CIAを離れてNSAに戻り、NSAの請負企業である「デル」社の従業員として働き、2009年には日本に派遣された。
 スノーデンは、CIAでもNSAの請負企業でも上級サイバー工作員となるための訓練を受けた。他国の軍隊や民間のシステムに侵入し、情報を盗んだり、攻撃準備を整えたりするための工作員だ。日本で集中的に訓練を受けたスノーデンは、他の諜報機関から電子データを守るエキスパートになり、正式に上級サイバー工作員となる。そして、国防情報局(DIA)の合同防諜訓練アカデミーの中国防諜コースでサイバー防諜の講師をつとめた。
 2011年、スノーデンは日本での勤務を終えてアメリカに戻り、メリーランド州にあるCIAの施設内で仕事をした。年収は20万ドル。2000万円ということです。すごい高給とりですね。
やがて、NSAの極秘スパイ活動を明るみに出すと同時に、既存のジャーナリズムの腐敗した空気に光をあてたいと考えた。
 世界じゅうの大陸に住む10億人以上の人々がフェイスブック、Gメール、スカイプ、ヤフーを利用している。それらの企業がNSAの請負企業と秘密協定を結び、ユーザーの通信データへのアクセスを提供していたのだ。
 NSAは、アメリカ国防総省(ペンタゴン)の軍部直轄組織であり、世界最大の諜報機関の一つである。NSAの職員は3万人。ほかに6万人と業務契約を結んでいる。
NSAは2種類の情報を収集している。コンテンツとメタデータだ。コンテンツとは、文字どおり人々の電話通話を聞くこと。
 2010年、アメリカの監視対象国には、フランス、ブラジル、日本、メキシコが含まれている。
 日本政府は、それを知っても、アメリカ政府に何の抗議もしていません。まさに、アメリカの属国です。これで、安倍は独立国の首相と言えるのでしょうか・・・。
 NSAは、メタデータの収集だけでなく、Eメール、閲覧履歴、検索履歴、チャットの収集にまで手を伸ばしている。
 しかしながら、現在のアプローチでは、諜報機関は、大量のデータの海に溺れるだけで、データを効率的に分類することさえ、ままならなくなっている。
 NSAの監視プログラムは、過剰な量の情報を提供しているだけでなく、国家をかえって脆弱(ぜいじゃく)にもしている。大量監視は、テロの予見や阻止をかえって困難にしている。
 9.11のあと、実はいろいろ予兆があったことが報道されています。通信傍受や盗聴は、それなりの知的レベルの分析官がいないと、宝のもち腐れにしかならないのですね。
 それにしても、ネット社会はまったく個人のプライバシーを奪ってしまうのです。恐ろしい世の中です。
(2014年5月刊。1700円+税)

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