著者 斎藤 慶輔 、 出版 北海道新聞社
ワシ、タカ、フクロウなどの野生の猛禽類を治療している北海道の獣医師の話です。
野生動物専門の獣医師として働き始めて、20年。
猛禽類とは、他の動物を捕食して生活する、ワシやタカ、フクロウ類などの鳥類のこと。
たくさんの写真で、その迫力ある姿を確認できます。なにより、鋭い目付に圧倒されます。
著者は、釧路市にある「釧路湿原野生生物保護センター」を拠点として活動しています。
傷ついた猛禽類を治療し、再び野生に帰すのが仕事です。
猛禽の成鳥はきわめて気性が荒い。それに対して、ひな鳥はとても大人しい。世間知らずの澄んだ瞳と、なされるがままの穏やかな性格は、親鳥とは雲泥の差だ。ところが、年を重ねるにしたがって、威風堂々、気性も荒くなっていく。
センターでは、入院治療している鳥には名前を付けない。人慣れさせず、スパルタ式で野生復帰の訓練を積ませたほうが、野生にかえったとき、不用意に人間に近づかないだろうという配慮からだ。
だから、鳥に呼びかけるときは、みな「ピーコ」としか呼ばない。区別はしないのだ。
野生動物の救護活動は、原則として、「自然界のルール」に逆らって行うべきではない。
猛禽類は、痛さや辛さを隠そうとする傾向がある。人前ではなかなか弱みを見せないことが多い。重傷のために腹ばいになっているオジロワシは、人間が近づくと、すっと立ち上がり、何ごともなかったように平然と振る舞う。このような見せかけの「健康」に惑わされているようでは、必要な治療はとても出来ない。
オオワシやオジロワシの鉛中毒死が相次いだ。これは、狩猟で射止められたシカの多くがその場で、解体され、食用に適さない部分が残される。それをワシなどが食べるのだが、鉛弾の破片がたくさん入っていて、鉛中毒に陥るのだ。ワシ類やクマタカの鉛中毒のほとんどは、鉛ライフル弾による。
ここでも、人間の狩猟が野生の猛禽類を死に至らしめることを知り、暗い気持ちになりました。でも、著者のような獣医師が、その状況下でも大いにがんばっているのを知ると、ほっと救われます。
(2014年6月刊。1667円+税)
野生の猛禽を診る
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