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2014年8月 の投稿

「毎日パンダ」

カテゴリー:生物

著者  高氏 貴博 、 出版  平凡社
 いま、私のブログでも和歌山・白浜のパンダを連続して紹介しています。
 パンダって、本当に不思議な生き物ですよね。熊なのに、竹を主食とするなんて・・・。そして、黒と白のツートンカラーで、白い顔に黒いフチ取りの大きな目。とても愛らしくて、ついなでなでしたくなります。でも、子どもパンダはともかくとして、大人パンダだと、飼育員も同室にいるのは危険なので禁じられているそうです。
 白浜では、1時間ほどじっくりパンダを観察させてもらいました。
 小さな池に半身つかって眠りこけているパンダ。岩にもたれかかって爆睡中のパンダ。そして、やおら動きまわったかと思うと、青竹をバリバリとかみくだいて食べるパンダ。
青竹なんて、美味しいとも思えないのに、ひたすら食べるパンダの姿を見て、とてもクマの仲間だとは思えませんでした。
 初めてパンダを見た都会人は、なかに人間が入っているとばかり思ったとのこと。さもありなんですね・・・。
 この本は、なんと、上野動物園に毎日通っているという、物好きなおじさんのとったパンダの写真集です。
 パンダって、眠りながらもいろんなポーズをするのですね。それがまた、面白いのです。
通いはじめのうちは、二等のパンダの見分けがつかなかったのが、次第に即座にオスのリーリートメスのシンシンを見分けることができるようになったのでした。といっても、両者を並べてくれないと、ちょっと見分けるなんて、できませんね。
 動物園生活のパンダをいじめに来るのがカラスだというのを知り、なるほど、と思いました。パンダの背中の毛を抜いて巣材にしたりするのです。
 パンダの肩にとまったり、カラスは遊びたい放題。それでもパンダは相手にしません。別に殺し合いに発展するわけではありませんから、いいか・・・。
 パンダは、大胆のように見えて、実はとてもデリケートな動物だ。といっても、人がたくさんいても、あまり気にすることはない。
「毎日パンダ」はブログでも見られるとのことで、私も眺めてみました。
 著者は、よほどヒマな年寄りかと思うと、仕事で忙しいとのこと。青年というより壮年のようです。それでも、3時間の行列に並んでまでパンダの写真を毎日とるなんて、見上げた根性をしていますね。この著者は・・・。
(2013年6月刊。1100円+税)

睡眠のはなし

カテゴリー:人間

著者  内山 真 、 出版  中公新書
 眠れない夜のために。
私は幸いなことに寝つきは良いほうです。たまに、すぐに眠れないことがあるのですが、それは間違って夜7時以降にお茶かコーヒーを飲んでしまったときのことです。原因は、はっきりしています。
 ただ、夜中に一度、目を覚ますことがあります。そのときは、トイレに入って用を足し、顔を洗って、もう一度、すっきりして横になります。すると、再びすぐに寝入ることができるのです。
 睡眠をしっかりとるのが、何よりの元気の素です。徹夜なんて、弁護士になってから、したことがありません。
不眠を訴える人は、5人に1人。30人に1人は、睡眠薬を服用している。
 朝型か夜型かは、遺伝子による。つまり、生まれつきの体質である。
 中高年層が若年層より早く出勤するのは、やる気があるからではなく、脳にある睡眠調節機構の老化によるもの。
 睡眠は、他の生物と共通の仕組みで制御されている。眠っているときには、私たちは人間というより、霊長目に属する、ただの哺乳類になる。
 身体が休む時間帯に、大脳をうまく沈静化して休息・回復させ、必要なときに高い機能状態の覚醒を保証する機能のために、睡眠がある。
 高等な哺乳類にとって、睡眠とは、身体が休むときに、脳の活動をしっかり低下させ、休養させるシステムなのだ。体内の温度を積極的に下げ、まるで変温動物のようになって、脳と身体をしっかり休息させる。
 体内の温度が下がると、生命を支えている体内の化学反応が不活発化する。つまり、代謝が下がり、休息状態になる。
赤ちゃんの手が温かくなるのは、眠たいサインだといわれるのは正しい。熱を逃して、脳の温度を下げ、眠気を誘って脳を休ませている。
 一晩の80%がノンレム睡眠だ。すやすやと深い寝息をたて、ゆったりと眠っている。ノンレム睡眠のときには、日中に疲れた大脳皮質は眠っているが、脳の一部では耳から入る情報をモニターしている。
レム睡眠は、一晩の睡眠の20%を占める。呼吸が浅く、やや不規則で、目が開き加減でまぶたがピクピク動く。レム睡眠は、夢をみている睡眠だ。目の動きが活発であるのと対照的に、全身の筋肉の緊張が著しく低下している。
 ノンレム睡眠中は、レム睡眠にみられるような鮮明な夢をみることはない。大脳がほぼ完全に休んでいるからだ。ノンレム睡眠の意義は、主として脳を休ませることにある。
 もともと身体を休ませるためのレム睡眠があり、これは脳を積極的に休ませる機能はなかった。高等動物になり、大脳が発達してくるにしたがって、脳を積極的に休ませる仕組みが必要となり、ノンレム睡眠が発達した。
 身体が休むレム睡眠のときには脳は目覚めていて、脳が休むノンレム睡眠のときには、筋肉は完全に休まない。このようなシステムには、眠っているときの無防備な時間を最小限にするという利点がある。
 睡眠時間は、短すぎるのも長すぎるのも健康には良くない。6時間台、7時間台という、ほどほどがもっとも健康的。
睡眠不足は、食欲増強ホルモンであるグレリンを増やして食物に対する欲求を高め、さらに満腹ホルモンであるレプチンの分泌低下により満腹感の得られない状態をもたらす。
 うつ病の人の体温は健康な人よりも高い。体温を下げて心身を休息状態にもっていく仕組みが不調になっているためだろう。
 レム睡眠では、眼球を動かす筋と呼吸のために必要な胸部の筋以外の筋はほぼ完全に弛緩している。夢は、レム睡眠という、ごく浅い眠りの状態に随伴する内的体験だ。
 レム睡眠のときには、外部からの感覚入力と筋肉への運動出力が遮断されて、脳が外界から孤立して働いている状態である。
人間の身体の休息と脳の休息とが微妙に連動していることを知りました。
(2014年5月刊。760円+税)

オオカミ

カテゴリー:生物

著者  ギャリー・マーヴィン 、 出版  白水社
 日本は西欧諸国に比較すると、オオカミへの親和性の高い国だということです。
 なるほど、そうかもしれません。日本のオオカミはとっくに絶滅してしまっていますし・・・。
 オオカミは、1日あたり、3.3キロの肉を必要とする。獲物があるとき、食べられるだけ食べておく。獲物が大きいときは、大量に食べる。オオカミの成獣の胃の容量は7~9キロで、大きな獲物を食べるときには、体重の25%も詰め込む。
 オオカミの群れは、平均して3~11頭のあいだ。みな、夫婦と兄弟姉妹だ。
 仔オオカミは、1年から3年のあいだ、何をするにも両親と一緒に過ごす。
典型的な巣穴は、体高よりも広い入り口と、長さ4メートルにも及ぶトンネル。入り口は水が侵入しないように上向きのことが多い。
 繁殖するのは両親だけで、最初の年に育てた仔が、新たに生まれた仔オオカミをさまざまな方法で世話する。
仔オオカミは成獣のオオカミに遊んでもらい、その鼻面をなめて餌をせがむ。
 オオカミの遠吠えは、オオカミ自身にとって大事なことを伝えあうためのもの。たとえば、競合関係にある群れ同志が互いに遭遇してしまうのを避けるための仕組みになっている。
 群れのメンバーは、個体それぞれの感情の状態や物理的な存在を他の個体に伝える複雑なシグナルを通じて、また他の個体からの合図に対する自身の応答を通じて、その社会生活を営んでいる。
 ヒトラーは、個体的にも軍事的にも、オオカミを思わせる用語で、自らを包んでいた。自分の名前が古ドイツ語で「高貴なオオカミ」を表すコトバに語源があることを誇りに思っていた。
 ヒトラーは、お気に入りのジャーマンシェパード犬のブロンティの仔犬の一匹をヴォルフと名付けた。それは、彼が触れることを許した唯一の生き物だった。
 1930年代から、狼などの補食動物を殺戮することに疑問を感じる人々があらわれた。
 自然のバランスという視点で物事をとらえる発想が生まれた。オオカミは貴重であるだけでなく、捕食を通じて野生の草食獣の群れが健全に生存していく能力を維持するのに欠かせない役割すら演じる存在だと理解されるようになった。
 アメリカでもオオカミをよみがえらせる取り組みがすすんでいる。
日本では、もう無理なのでしょうか・・・。オオカミを見直すことも必要だと思ったことでした。
(2014年5月刊。2500円+税)

官房長官、側近の政治学

カテゴリー:社会

著者 星 浩、出版 朝日新聞出版
内閣総理大臣(首相)が「主任」であるのが内閣官房であり、その内閣官房の「事務を統轄する」のが官房長官である。
 官房長官は、首相の「補佐役」「女房役」といわれる。
 首相という強大な権力を支え、時には利用していくのが、官房長官の役割であり、力の源だ。
 では、なぜ首相は強いのか?
 第一に解散権をもっている。衆議院を解散する権限を有している。
 第二に、多くの人事権をもっている。大臣、最高裁長官、日銀総裁、東電会長、NHK会長も首相が決定する。
 第三に、予算編成権をもつ。
 官房長官は、明治憲法下では「内閣書記官長」と呼ばれていた。
 現憲法下では、はじめは天皇の認証の対象ではなかった。1963年の池田内閣から認証官となった。それまでは大臣よりも格下のポストだったが、大臣待遇となった。
 官房長官の仕事は、三つある。
 第一に、記者会見。実質的に権力の中枢にいて、実際の政策決定にも関与している政府首脳が、定例で記者会見しているところが、諸外国とは異なる。
 第二に、霞が関全体の調整役という役割を果たしている。そして、いわゆる危機管理の中心になる。
 第三に、政権与党との調整をしている。
 子分型の官房長官は、大先輩である首相から宰相学を学び、その経験をステップにして幹事長などの実力者を目指す。
 毎日、首相を近くから見ていて、「俺もいつかは首相に」「このくらいの首相なら、俺にだってつとまる」と考えるようになる。
 しかし、首相と官房長官との間には目に見える距離からは考えもつかない「大きな距離」がある。
 官房機密費というものがある。領収書なしで内閣が支出できる14億円もの予算だ。正式には、「内閣官房報償費」という。この官房機密費の支出は、官房長官の専権事項だ。
 かつては、外務省分の20億円とあわせて、総額30億円もの官房機密費があった。毎月1億円が野党などへの国会対策費につかわれている。要するに、野党を買収・接待する費用だ。もちろん、税金である。
 もう一つ政権中枢に対する批判的コメントが欲しいところだと思いました。
(2014年7月刊。1200円+税)

台頭するドイツ左翼

カテゴリー:ヨーロッパ

著者  星乃 治彦 、 出版  かもがわ出版
 日本の左翼は、少なくとも国会の議席数をみる限り、元気がありません。それでも、国会外の動きでは、それなりに復調傾向にあると思われます。国会の外の世論の動向が国会の議席数に反映するためには、今の小選挙区制を撤廃するしかありません。完全比例代表制にしたらいいと私は思います…。
 ドイツでは左翼が、このところ健闘しているようです。この本はその実情と克服すべき問題点を分かりやすく伝えています。2009年の選挙で、ドイツの左翼は515万票、76議席を獲得した。2013年の連邦議会では、若干の後退をしたが、連邦議会内の第三党になった。いくつかの州では、連立政権の一翼を担っている。ドイツ左翼党は、旧東ドイツ地域で25%の得票率を占め、全体としても12%の票を集めた。
 ドイツ左翼党は、ドイツにおける五党体制を定着化させている。
 ひところは消滅するとまで思われていた東ドイツの政権党が、なぜ生き残ったのか、そして今、躍進しているのか・・・?
 1990年~1991年の湾岸戦争のとき、ドイツ左翼党の前身であるPDS(民主的社会主義党)は、緑の党さえ戦争支持に転じるなかで、平和主義の立場から発言する唯一の野党としての顔をもった。
 PDSは、1994年の選挙で、政策的に一致できる人を選挙リストに組み入れていくという、オープン・リストで対応し、「左翼ブロック」を模索した。
 ドイツ左翼党の党員は7万人前後で推移してきた。東西の比率は、かつて7対3だったが、今では2対1にまで是正された。左翼党は、今や、ドイツ全体における社会的弱者の党へ変貌している。
ドイツ左翼党では、中央集権的構造力がなく、下部組織の自律性が非常に強い。「上」からの指導がないだけに市民の意見をとり入れやすい。
 そして、左翼党の指導部は確固として統一性をもっていない。左翼党内には、さまざまな左翼的潮流をかかえこんでいる。現在の左翼党は、自分たちの活動の源泉をレーニンに求めていない。レーニン的前衛党論はとっていないのだ。
 近くて遠い、ドイツの政治をのぞいてみた気がしました。
(2014年1月刊。2600円+税)

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