著者 森まゆみ 、 出版 岩波新書
弁護士として40年すごしてきた私の実感は、日本の女性は実にしぶとく、たくましいというものです。もちろん、か弱い女性もたくさん見てきました。しかし、おしなべて、日本の女性は地に根をはって、たおやかに生きていると思います。
たとえば、男性の不貞行為が問題となったとき、その相手は例外なく女性です。女性側の不倫とセットになっているのです。そして、女性のほうが、なかなか不倫を認めたがらないことが多いように思います。
「女のきっぷ」というとき、「きっぷ」とは気風と書き、「きっぷがいい」とは、思い切りよく、さっぱりした気性のことをさす。江戸前の女の気風だった。その反対語は、ケチ。
この本では明治の女性である樋口一葉にはじまり、反骨ブルースの女王と呼ばれた淡谷のり子までを紹介しています(最後に国際女優である谷洋子が紹介されていますが、私の知らないひとです)。
樋口一葉の家を訪れた作家が何人もいたのですね。幸田露伴、泉鏡花、島崎藤村などです。すごいお友だちメンバーです。
与謝野晶子は関西の生まれだったんですね。堺は菓子屋の娘でした。13人もの子を産んだというのにも驚きます。大逆事件では、反逆人の側を思ってうたをよんでいます。
宇野千代は、とんでる女性の代表のような気がします。
宇野千代は作家という前に恋愛家といった方がいい。一生のうちに何人の男に恋をして、何人の男と理無い(わりない)仲になったか知れない・・・。
相当の発展家だったようです。ですが、その自分の体験を売れる小説にしたのです。すごいです。若いころは、「貞操観念のない女」だったのです。それでも男に喰われなかったのですから、たいしたものです。
74歳の農婦(吉野せい)の小説が世間から高く評価された。
うひゃあ、そんなことって、あるのですね・・・。
林芙美子は、天性の嘘つきだった。うむむ、そう言い切っていいものなのでしょうか・・・。
北九州から初恋の男を追って上京したが、家柄がつりあわないということで捨てられた。
カフェの女給、銭湯の番台、新聞社の帯封書き、セルロイド工場の女工、株屋の店員など、数々の職を転々としながら詩人を目ざした。
『放浪記』は初版本と有名な作家になってからの改訂版とでは、大きく表現が異なっている。優等生的に変わってしまっているのです。なるほど、だったら初版本を何とかして手に入れて読まなくてはいけませんね。
NHKラジオ講座の話がもとになっているので、大変読みやすい本です。
(2014年5月刊。1900円+税)
女のきっぷ
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