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2014年1月 の投稿

ミツバチの会議

カテゴリー:生物

著者  トーマス・シーリー 、 出版  築地書館
タイトルがいいですね。あれ、何のことだろうと好奇心をかきたてられます。
 ミツバチは蜂蜜をつくって人類に貢献してくれるだけでなく、もう一つ、民主的な意思決定の力を存分に利用できる集団の作り方を教えてくれる。
 ミツバチのコロニーの女王は、王として決定を下す存在ではない。王として産卵する存在なのだ。唯一知られている女王の統治行為は、新たな女王の育成を抑えること。女王は、決して働きバチの上司ではない。
 晩春から初夏にかけて、ミツバチの群れは分蜂し、新しい家探しをはじめる。
 分蜂群は、数百匹の家探しバチを派遣して、周囲70平方キロメートルから巣の候補地を探す。十数カ所以上の使えそうな場所を特定すると、それぞれいくつもの基準で評価し、新居としてもっともふさわしいものを民主的に選ぶ。十分な広さがあり、しっかりと保護された空間が基準である。ミツバチの尻振りダンスは有名です。これは、一連のダンス周回からなり、1回のダンス周回には、尻振り走行と戻り走行が含まれる。
 女王バチは驚くほど多くの卵を産む。1分に1個以上、1日に1500個をこえる。一つのコロニーの女王は夏中かけて、15万個ほど、2年から3年生きるとすると、50万個の卵を産むことになる。
 女王バチは、生涯の最初の1週間に、女王はコロニーの巣から飛び立ち、同じ地域の別の巣から生まれた10匹から20匹の雄バチと交尾して、一生涯分のおよそ500万の精子を受けとる。雄バチは、コロニーで、もっとも怠慢なハチである。
 働きバチが蜂児を育てる時期は、周囲の気温がマイナス30度からプラス50度に変動しても、コロニーの内部温度は常に34度~36度である。これはヒトの深部体温よりわずかに低い。
 分蜂群には、およそ1万匹の働きバチがいる。そのうち、2~300匹が巣作り場所の探索バチとしての役割をもつ。分蜂群の探索バチは、尻振りダンスで宣伝する価値のある巣作り場所を2~30カ所探し出す。
 招集バチは、候補地を宣伝するダンスに追従し、飛んでいった宣伝されている場所を突きとめ独自に評価する。候補地を詳しく調査して満足すると、分蜂群に戻って、自分もその場所を支持するダンスを行う。
 よりよい候補地を報告するハチが、より強いダンスをする。ハチは、ある場所を、すでに訪ねたことのある他の場所と比較して、相対的な質を評価しているわけではない。分蜂バチは、さまざまな情報源からの情報をまとめ、他のハチに何をするか命令するリーダーがいないなかで新しい巣を選ぶ。もっとも大切な女王バチですから、この選出にあたっては傍観者にすぎない。
 リーダーなしに機能することで、探索バチは、よい集団意思決定を脅かすもっとも大きな要因の一つである。独裁的な指導者をうまく避けている。
ミツバチの新しい巣の探し方、その決め方がリーダーなしで民主的にやられていることを知って、感嘆しました。人類は、ミツバチにも学ぶべきなのですね。
(2013年10月刊。2800円+税)
 11月に受験したフランス語検定試験(準1級)の結果が判明しました。3点たりなくて不合格でした。残念でした。自己採点では68点でした(これでも不合格と思っていました)が、実際には64点でした。合格点はいつもより低くて67点(120点満点)ですので、3点足りなかったというわけです。
 今回は書きとりを見直して、かえって間違ってしまったということもありますが、要するに実力不足です。このところ、ずっと準1級は合格してきましたので、本当にガッカリです。でも、めげずくじけず、毎朝、NHKのラジオ講座を聞いています。頭のリフレッシュには最高です。

マダガスカルへ写真を撮りに行く

カテゴリー:アフリカ

著者  堀内 孝 、 出版  港の人
もう若くないカメラマンが、若いころの撮影の苦労話をふくめて語っています。
 アフリカ大陸の近くにあるマダガスカルは大きな島というべきでしょうね。バオバブの木で有名です。そのバオバブも減っているようなので、心配です。
 マダガスカルでの撮影の苦労話は、まことに悲惨なものです。秘境ツィンギーに至る旅程は、読むだけで背筋が凍ってしまいます。
村までの30キロは歩くか牛車で行くしかない。牛車に乗ると、車輪が金属製なので、石や段差があると衝撃が背筋を直撃し、とても座ってなんかいられない。
 仕方なく歩くと、今度は、汗がとめどなく流れ出て目に入って、開けていられない。
 足の露出した部分にアブがたかって血を吸うのにも参った。初めは気がつかないが、数分もすると、気が変になるほど痒くなる。日本から持参したキンカンを塗っても、全く効かない。
 歩く途中で、ミネラルウォーターを飲み尽くし、道沿いにある溜まり水を飲んで歩いた。下痢が心配だったが、脱水症状を起こすよりはましだ。一か八かだ。
 うひゃあ、これは、なんともすさまじいですよね。次は、さらに怖い話です。
 道に迷い川岸に着いたころには、どっぷりと夜が更けていた。月明かりのなか、ブーツと短パンを脱いで頭に乗せ、パンツ一枚で川に入る。「ワニがいるから気をつけろ」と言われたが、もう運を天に任せるしかない。ときどき、川の中で何かが足に触れるとヒヤッとしたが、なんとか無事に渡りきった。
 ええーっ、ワニのいる川をパンツ一枚で夜中に渡るなんて・・・。小心者の私には、とてもできないことです。
ヒルだらけの湿地を抜け、夜も歩いて家の軒下を借りてゴザを敷き、野宿をする。無数の蚊の攻撃を受けたが、運良くマラリアにかかることはなかった。若さとは恐ろしい。いま考えたら、かなり無謀だ。
ええーっ、かなりどころではありませんよ。私なんか、絶対に、ゼッタイ、できないことです。
 マダガスカル人は、20もの民族集団に別れている。中央高地にいるアジア系の人々は、インドネシア系の祖先をもつ。西海岸地方に暮らすのは、イスラム教が多い。
 この本を読むと、若いときには、多少の無茶は付きものだし、必要不可欠なものだとつくづく思います。40、50、60歳になると、とても、そんな無謀なことはできなくなるのです。
(2013年3月刊。1200円+税)

魚影の群れ

カテゴリー:生物

著者  吉村 昭 、 出版  ちくま文庫
 ノンフィクションのようなすばらしいフィクション(小説)を作り上げる著者の短篇小説集です。
マグロとりの漁師の世界では40歳以上の漁師は老齢者に入る。大きなマグロとの戦いは、体力を消耗させ、それが長時間に及ぶだけに若い強靱な肉体が要求されるのだ。
それに、マグロ漁は、睡眠不足との戦いであった。マグロの餌である烏賊(イカ)は夜のあいだに沖へ船を出してとらねばならない。烏賊は中型のものが最適で、少なくとも30尾ほどは船の生簀におさめる必要があった。餌をとって帰るのは夜明けに近く、短時間仮眠するだけで、朝食を済ますと、再びマグロをとりに沖へ出て行く。そうした生活を半年間つづけるため、マグロとりの漁師は眼に見えてやつれてゆく。自然に、マグロ漁の漁師は20代から30代までの男に占められていた。
 マグロは、漁の群れを追っている。その中に餌を投げ入れても、食う可能性はほとんどない。釣り上げることができるのは、小魚の群れが逃げ散って、マグロの群れが小魚を追うことをあきらめ一定の方向に秩序正しく泳ぎはじめた折りにかぎられる。そうした状況をつくり出すには、船をその海面に突きこませて、小魚を円散させる以外に方法はなかった。
このように、下北半島の大間のマグロとりの状況が活写されています。
短編小説が4つあり、いずれも味わい深いストーリーです。というか、ネズミやカタツムリの話は正直いって、薄気味悪さを覚えました。それくらい、情景描写が真に迫っているということです。
(2011年9月刊。680円+税)

アメリカ連邦最高裁の素顔

カテゴリー:アメリカ

著者  ジェフリー・トゥービン 、 出版  河出書房新社
アメリカという国は、実に遅れた国だと思います。
 妊娠した女性に中絶する権利を認めるかどうかがアメリカという国では今なお重大な政治的争点だというのです。信じられません。宗教的観点があまりにも強すぎます。
妊娠中絶を支持するかしないかという問題は、民主党と共和党の分水嶺となってきた。
 祈禱と聖書朗読は、アメリカの公教育における柱として代々行われてきた。ところが、アメリカ連邦最高裁は公立学校での聖書朗読を義務づけることを禁止した。
 当然のことですよね。キリスト教を公立学校で教えるなんて、とんでもありません。
 スーター判事という変わった判事がいます。昼食は毎日おなじ、りんご丸ごと1個(芯と種まで)にヨーグルト1カップ。ものを書くときは万年筆をつかう。自宅にテレビはない。
 最高裁のロークラークは、ほとんど20代後半で、著名なロースクールを主席で卒業したあと、下位裁判所の判事の下で1年クラークとして働いていた。クラークを定期的に最高裁に送り込む判事をクラーク供給係と呼ぶ。クラークは、裁量上訴の申立を精密に調べ、8000件ほどの事件を選りすぐって審理の価値のある80件前後にしぼる手伝いをする。判事と事件を議論し、口頭弁論の準備をする。そして、判決理由となる意見書の最初の草案を書く。
 アファーマティブ・アクションの恩恵者としてアメリカで一番有名なトーマス(黒人判事)は、その措置を公然と批判する激しい意見を書いた。
 このように世の中は矛盾に満ちています。アメリカの連邦最高裁の矛盾した激しい対立が描かれています。同じように日本の最高裁の内情も誰か紹介してほしいものです。
(2013年6月刊。3200円+税)

HHhH

カテゴリー:ヨーロッパ

著者  ローラン・ビネ 、 出版  東京創元社
チェコのプラハでナチスの最高級指導者の一人が暗殺された事件を扱った小説です。
 暗殺されたハイドリヒの生い立ちが語られています。
 ハイドリヒは、ナチスのエリート部隊である親衛隊(SS)の指導者になります。
 ハイドリヒは、陸軍中将に相当する親衛隊の集団的指導者に任命されたとき、まだ30歳だった。ハイドリヒが創設した組織のうち、もっとも悪魔的な「特別行動隊」は、特攻隊やゲシュタポのメンバーからなる親衛隊の特別部隊で、「敵性分子」を始末する任務をになう。共産主義者は言うに及ばず、あらゆる改草の有力者、反体制分子・・・。そして、すべてのユダヤ人。
 そして、このハイドリヒを暗殺するため、ロンドンから二人のパラシュート部隊員が送り込まれた。そして、それを支援する人々。さらに、仲間を裏切る人間もいた。
 この暗殺作戦に賛同しないレジスタンス指導者もいた。成功しても、その報酬が恐ろしいことになるからだ。
ハイドリヒの乗る車が市内にやって来た。暗殺犯が銃を撃つ。しかし、不発だ。別の男が爆弾を車に投げつけ、爆発する。しかし、ハイドリヒはケガをしただけ。
 やがて病院に運び込まれ、見かけ以上に傷は深刻だということが判明する。そして、容態が急激に悪化して、死に至った。
 その報復としてヒトラーは、リディツェ村を地国から消し去ることを命令し、大虐殺が始まった。
 しかし、このリディツェの虐殺によって、ヒトラーはもっとも得意とする分野で、惨憺たる敗北を喫した。国際レベルの宣伝戦争において、とり返しのつかない失敗を犯した。1942年6月のこと。
 緊張感あふれる小説です。少し、変わった構成で話は進行していきます。
(2013年8月刊。2600円+税)

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