著者 菊屋 奈良義 、 出版 白水社
害獣と、みられがちなイノシシの生態をよくよく観察し、面白おかしくつづった生態観察報告です。野生のイノシシたちが見せてくれる生態写真とともにユーモアたっぷりに活写されています。
イノシシの平均寿命は6年のようです。1歳になるかどうかのころに、早くも母になって出産します。知りませんでした。
それにしても、ウリ防、ウリンコたちの可愛らしいことったら、ありゃしません。ウリンコたちは、それぞれの乳首を誰が吸うのか決まっている。
母ちゃんがウリンコのおしりをひょいと鼻でつつくと、そのウリンコはコロリと横になります。母ちゃんはウリンコの全身をなめつくすのです。それも、ウリンコ全員を平等になめてやります。
そして、ウリンコたちがウリンコの模様の消えたころ、今度は母ちゃんを全員でなめまわします。それは、お別れの儀式でもあるのです。次の日、母ちゃんは子どもたちを激しく追い出し行動を始めるのでした。
イノシシは前向きだけでなく、上手にあと下がりする。猪突猛進は後退もできるのです。
イノシシはやさしい野生動物であり、人を怖がっていて、賢い子育てをする母である。
イノシシは草や根っこを食べる。個体によっていろいろ好みが異なる。
8ヵ月ほどの養育期間で母親から1人前と決めつけられると、母親のもとから追い出される。
イノシシはピーマンは食べず、大根もあまり食べない。イノシシの声は聞き分けられる。
ブフォン・・・じゃまだ
ブフフォン・・・来るな
ブフンフォン・・・警戒しろよ
ブブブフォンンン・・・帰るぞ
ウフォン・・・そろそろ出てこい
ギャフフン・・・わかった
ギャアッ・・・痛ぇ
ブブ・・・おいで、おいで。こっちじゃよ
グァフフン・・・逃げろ
イノシシの母ちゃん軍団には、父ちゃんイノシシがいない。オスは子育てにはまったく関与しないのです。
イノシシは「攻撃するぞ!」という勢いを見せる。猪突猛進。さも怖い動物であるかのように見せて、実は自分が怖くて逃げ出す機会をつくっている。相手が一瞬ひるんだすきに、パッと身を翻して走り去る。
身近なイノシシの生態を長いあいだじっくり観察していると、いろんな発見があるものなんですね
(2012年10月刊。1800円+税)
イノシシ母ちゃんにドキドキ
