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2012年10月 の投稿

障害のある人と向き合う弁護

カテゴリー:司法

著者   西村 武彦 、 出版   Sプランニング 
 大変勉強になりました。知的障害のある人、とりわけアスペルガー症候群の人に向きあうときに役に立つ本です。
障害は病気ではないし、克服すべき対象でもない。障害は、その人の個性、特性の一つだ。
弁護士は親が付き添っていても、知的障害者自身から話を聞き出すべきだ。
 「どうして、私に質問してくれないのですか?私の言うことは信用できないからですか?私のことなのに、私では決められないのですか?」と、本人は心の中で叫んでいる・・・。
 本人と話をすれば、知的障害者がどういう人なのか、どういう問題があるのか、その回答のなかで理解できる。こういう質問だと質問の趣旨を理解できないのか、こういう言葉は理解できないのかこういう文字は読めないのか、こういう計算は無理なのか、そういうことを弁護士は理解できる。だから、同席している親や福祉関係の職員の説明を先に聞くのは絶対に避けるべきだ。
 知的障害のある人は、「自分は字が読めません」なんてことは、恥ずかしいから言わない。知的障害のある人は、「いいえ」「分かりません」とは、なかなか言わない。
 IQの数値は、その人の人格を測定したものではない。IQという概念は、子どもに最適の教育・療育を施すために、その子どもの抱えている問題を教育関係者が理解するための共通の目盛りである。
なぜ知的障害のある人が借金するかと言えば、そのほとんどのケースは、本人以外の誰かのせいである。
弁護士の言葉のつかい方になじめるような知的障害のある人はいない。客観的な情報で対応が可能なのであれば、知的障害のある人に難しいことを訊く必要はない。そして、楽しかったこと、うれしかったことは何ですかと訊くようにしている。
 知的障害のある人については、フレンドリーな関係を形成しないと、大事な話は聞き出せない。そして、もっと大切なことは、馬鹿にしたそぶりを見せないこと。「えっ、分からないの?」というのは、完璧に馬鹿扱いした言葉。「えっ、なんて言ったの?もう一回言って」というのも、注意したほうがいい。
 次に、難しい言葉は一切つかわないこと。アスペルガー症候群の人を、この本ではアスピィと呼んでいます。
 エジソン、アインシュタインがアスピィを代表するエリート。アスピィのなかには、場の雰囲気が読めないという特徴をもつ人がいる。臨機応変が苦手。相手の気持ちを考えるのが苦手な人がいる。
 アスピィは、相手の意志や気持ちを理解するのが得意でないだけではなく、自分の苦悩、怒り、悩みについても、自分自身が的確に把握できていない。
弁護士にとって大いに考えさせられ、実務的にも大変役に立つ貴重な本です。
(2008年3月刊。1000円+税)

オスプレイとは何か?

カテゴリー:社会

著者   石川厳、大久保康裕 ほか 、 出版   かもがわ出版 
 オスプレイとは、ミサゴという島の名前。ミサゴは魚をとって食べる島。獲物を見つけると、空中に静止し(ホバリング飛行)、その後、急降下して両足で獲物をとらえる。
オスプレイはアメリカ軍(主に海兵隊)が導入した新しい軍用機。
 海兵隊の作戦では、垂直に離着陸する軍事的な必要性が高い。戦争の初期の段階で、強襲揚陸艦に乗って適地に近づき、兵員と物質を上陸させて、アメリカ軍の作戦を遂行する拠点を築きあげる。
オスプレイは、GH-46というヘリコプターの代替機だが、行動半径は4倍、積載量は3倍、速度も2倍である。オスプレイは、イラクとアフガニスタンに派遣されている。オスプレイは、開発段階で事故が多発し乗員30人が命を失っている。「未亡人製造機」というあだ名までつけられている。
オスプレイは、輸送機なので対人兵器は着陸時の自衛用のライフル1丁、機関銃2丁しかもたない。重量がある割に、揚力があまりないので、兵器で機体の重さを増やせない。だから、作戦時は戦闘機の護衛が必要になる。
 海兵隊のオスプレイが海外に配備されるのは、日本のみ。海兵隊がまとまった戦闘部隊を配置しているのは、海外では日本だけだから。
 オスプレイの回転翼(ローター)は一般ヘリより小さい。これは強襲揚陸艦に積む場合の限度があるから。
 オスプレイは臨機応変の戦闘機動性に欠ける。これはコンピューター操縦のため。
CH-46ヘリの機体には、その平衡感覚を保つバランサーに劣化ウランが使用されている。
オスプレイが日本で事故を起こしたら、公務中だと考えられるので日本で裁判はできない。
オスプレイの低空飛行訓練は、地上の武装勢力の仕掛け爆弾設置とか、特攻自爆車が突っ込んでくるのを監視する。だから、低い上空を30分も40分もぐるぐる旋回する訓練をする。
日本地位協定にも、アメリカ軍は日本の法律を尊重する義務がありことを定めている。ドイツでは、ドイツ側の同意があって、低空飛行訓練のルートが設置されている。日本でも同じように交渉できないはずがない。
アメリカの言いなりで、何もものの言えない日本政府、民主党政権のだらしなさには呆れてしまいます。民主党政権とまったくかわりません。こんなことで日本人の生命・財産を守る政府と言えるはずもありません。腹立たしい限りです。
(2012年9月刊。1000円+税)

脳には妙なクセがある

カテゴリー:人間

著者   池谷 裕二 、 出版   扶桑社 
 生後2日から5日という新生児の脳を調べると、すでに母国語と外国語を聞いたときで、左脳の反応が違っている。これは、胎児のとき、母親の腹のなかで、ずっと母国語を聞いていたからと考えるのが自然だ。
 笑顔は楽しいものを見出す能力を高めてくれる。
 人口の4%は音痴だ。音痴の人は、空間処理能力が低い。もともと音階は空間として表現されるもの。一般に男性のほうが女性よりも空間把握にすぐれている。ある実験で音痴であると判定された人の半数以上は女性だった。
20歳以前まで高かった幸福感は、20代で一気に落ち込み、40代から50代前半ころまでが最低迷期となる。そして、これを過ぎると回復を始め、調査された範囲では、最高齢である85歳に向けて上昇していく。つまり、歳をとると、より幸せを感じるようになる。
 働き盛りのビジネス人は、とかく時間に追われて心を失いがち。しかし、しかるべき時期を耐え抜けば、幸せなときが待っているということなのだろう。
 食欲のコントロールはもちろん、覚醒状態や記憶力に至るまで胃腸の支配を受けている。内臓をふくめた全身がバランスよく機能して、初めて脳の健康を保つことができる。
直感もひらめきも、「ふと思いつく」という状況は似ている。しかし、思いついたあとの様子がまるで違う。「ひらめき」は、思いついたあと、その答えの理由を言語化できる。ところが、直感は、本人にも理由の分からない確信をいう。そして、重要なことは、直感は意外と正しい。
単なる「ヤマ勘」や「でたらめ」とは決定的に異なる。ひらめきは「知的な推論」、直感は「動物的な勘」。ひらめきは陳述的、直感は非陳述的なもの。ヒトは、自分自身に対して他人なのである。
 自動判定装置が正しい反射をしてくれるか否かは、本人が過去にどれほどよい経験をしてきているかに依存している。よく生きることは、よい経験をすることである。人の成長は、反射力を鍛えるという一点に集約される。反射を的確なものにするためには、よい経験をすることしかない。
 いつも脳についての刺激的な指摘があり、大変参考になります。
(2012年9月刊。1600円+税)

倭人伝を読みなおす

カテゴリー:日本史(古代史)

著者   森 浩一 、 出版   ちくま新書  
 邪馬台国が九州に会ったというのは、ごく自然なことです。なにしろ、当時の文化文明は朝鮮半島の先、中国大陸にあったのですから。奈良の大和朝廷というのは、そのあとのことですよね。吉野ヶ里遺跡、そして西都原古墳群を現地で見たら、ここに古代日本の中心があったことを、きっとあなたも確信するはずです。
倭人は中国周辺の異民族のなかでは特異な集団として扱われていた。
 『魏志』倭人伝は、3世紀の倭人社会を知るうえでは最重要の史料である。しかし、この史料は日本列島の全域ではなく、九州島の北部、とくに北西の玄界灘にのぞんだ土地を詳しく書いている。
 倭人伝研究は書斎にこもって出来るものではない。日本列島にだけ関心のある人は、ときとして倭人伝しか読まない。それでは東夷伝の高句麗や韓の条で、すでに説明されていることを知りようがない。そして、倭人伝は近隣の国のなかでもっとも多い2013字を費やして説明されている。また、登場人物も10人と最多である。
 西暦紀元頃から、倭人は漢字に親しみ、その漢字を日本文化に取り入れていった。
景初2年(238年)までは、倭は公孫氏勢力の設置した帯方郡に属し、景初3年からは魏が任命した太守のいた帯方郡を介して魏に属するようになった。
 狗邪韓国には、貿易や航海の便宜のための拠点となる土地に倭人が住んでいたとはいえ、狗邪韓国全域を倭人が掌握していたのではない。
対馬は、昔は津島と読んでいた。津は、古代の港のこと、津島とは、津の多い島のこと。浦とは漁村のこと。浦のなかでも、交易のできるような港を津と言った。津々浦々というのは海国日本の側面をとらえた言葉だ。
常に伊都国にいた「一大率(いちだいそつ)」は、一人の大率の意味であり、公孫氏勢力の帯方郡が派遣していた。伊都国には、代々、王がいた。女王国より北の6ヶ国で『倭人伝』において王がいたというのは伊都国のみ。伊都は、ヤマト政権や、その後の律令政府にとっても、重要な地であった。
 全国の弥生土器のなかで、もっとも端正で品のよい土器は、人吉盆地を中心にして出土する免田式土器と東海のパレス式土器(宮廷土器)であろう。
卑弥呼の死について「以死」とあるのは、老齢の卑弥呼が権力闘争に敗れて従容として死を選んだということ。それは、倭国を分裂された責任をとらされての自死であった。卑弥呼が死んだのは、正始8年(247年)や、その翌年だろう。
心強い九州説の本でした。
(2012年3月刊。2800円+税)

エリア51

カテゴリー:アメリカ

著者   アニー・ジェイコブセン 、 出版    太田出版 
 アメリカの宇宙飛行士が実は月面に降りていなかったというという本があります。それを読んで前に紹介したことがありました。とんでもないデッチ上げの本でしたから、すぐに注意があり、訂正しました。
 その本は、月世界ではなくこの秘密基地で写真を撮ったというものでした。実際、この秘密基地(エリア51)月世界と似ているので、宇宙飛行士の訓練場ではあったようです。
ネヴァダ核実験場は核爆発によるクレーターがつきのクレーターにそっくりだった。だから、宇宙飛行士は月面歩行の感覚を体感するため実際にこの核クレーターを歩いていた。また、この秘密基地・エリア51から飛び立ったU-2偵察機はUFOとしばしば間違えられた。
 民間機が3000~6000メートル高度で飛行しているとき、U-2は2万1000メートルの高さを飛行した。翼の長さが胴体の2倍近くもあり、そのためU-2は空飛ぶ炎の十字架のように見え、よくUFOに見間違えられたのだ。
 1957年の夏、原爆実験によって閉鎖され、それ以来、休業状態にあったエリア51は1960年1月に再開し、活気を取り戻した。
 1960年5月、パワーズ飛行士の乗るU-2はソ連上空に出てスパイ偵察飛行中に撃墜された。ソ連上空での飛行はU-2によるものだけで24回、カーチス・ルメイ将軍による爆撃機での飛行はさらに数百回もあった。
 カーチス・ルメイ空軍参謀総長は1962年8月のキューバ危機のとき、キューバへの先制攻撃を仕掛けるように求めていた。こんな危険な戦争屋(ルメイ将軍)に日本政府は最高の勲章を授与しているのです。日本人として情けない限りです。
 アメリカの危険な秘密基地の実相が暴かれている本です。
(2012年7月刊。2400円+税)

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