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2012年1月 の投稿

鷹匠は女子高生!

カテゴリー:生物

著者   佐和 みずえ 、 出版  汐文社
鷹匠は、たかじょうと読みます。カを飼いならして、仮に使う人のことです。
その鷹匠に、なんと17歳の女子高校生がなっているというのです。しかも、佐賀県は武雄市の女子高生なんです。私は、てっきり東北地方の話と思っていました。
 飼っているタカは、正しくはモモアカノスリ。名前はモモタロー、6歳です。
 ブリーダーから、生後2週間のヒナ鳥を買って、小さいときから親がわりで育てたのでした。
問題はエサですよね。何だと思いますか?肉食の鳥ですからバナナなんかじゃありません。肉ダンゴでもありません。なんとなんと、ヒヨコなんですよ。ええーっ・・・?もちろん、生きているヒヨコです。ヒヨコって、高タンパク質で、低カロリー食だそうです。そうなんですか・・・。
 タカに狩りをさせるときには、一週間も前からエサを調整して、おなかをすかせておく必要がある。そうやって狩りの本能をかきたてておくのだ。なるほど、そうなんでしょうね。
 写真がありますので、タカがすっかり安心しきって鷹匠である女子高生の腕にとまっている可愛らしい姿を見ることができます。
 それにしても、タカを毎日世話するって大変でしょうね。がんばってくださいな。
(2011年11月刊。1400円+税)

原発崩壊

カテゴリー:社会

著者   明石 昇二郎 、 出版   金曜日
 この本を読んで、既に10年前にフクシマと同じような事態がハマオカで起きたと想定して、どのような事態になるか週刊誌がシミュレーションしていたことを初めて知りました。
 2001年3月の「サンデー毎日」です。4週にわたって、「シミュレーション・ノンフィクション、『原発震災』」という連載記事です。東海大地震が起きて、中部電力浜岡原発で大事故が発生したら、日本がどうなるかをシミュレーションしました。ハマオカをフクシマに置き換えると、今回の3.11震災事故の実況中継になってしまいます。
 浜岡原発の事故は、殺人レベルの放射線を放ちながら移動する「放射能雲」を生み出した。折から吹いていた南西の風に乗り、時速14キロという自転車くらいの速度で、ゆっくり首都・東京を目ざす。放射能雲が上空を通過したからといって、バタバタ死んでいくわけではない。やみくもに動き回るほうが、かえって危険だ。
 通過予想地域とされた地区の住民は、危険が刻々と迫り来るなか、今すぐ逃げるべきかどうか、それともここにとどまるべきかの判断に迷う。せめて子どもにだけでも甲状腺被害を防ぐためのヨウ素剤を服用させるべきだが、とても足りない。
 昼夜動きを止めないはずの1200万都市・東京から人影が突如として消え、沈黙の時が流れる。その結果、交通機関をはじめとする都市機能や企業などの経済活動が完全に麻痺してしまった。原発事故発生から半日以上が経過し、「雲」は消失して放射性ガス群へと変わっていた。しかし、肉眼で見ることができないだけで、そこには確実に大量の放射能が漂っていた。
 見えない「雲」が太平洋上に去ったとき、静寂に包まれていた東京は一転して、大パニックに陥った。これ以上の被曝を恐れた人々が、東京からの脱出を一斉に開始したのだ。
 東京の汚染レベルは、7日後に都民全員が避難したとしても、210万人全員がガンで死亡するほどのものであり、東京に住むすべての人が避難対象となった。その場にとどまり続ければその分だけ、発ガンのリスクは増していく。
東名高速で西に逃げる人は一人としていない。事故を起こした浜岡原発に自ら近づいていくことになるからだ。
 政府の原子力災害被害本部は原発震災発生の翌日、東京から大阪に移された。
 震災発生後、1週間たって、東京は完全なゴーストタウンと化し、人の住めない東京の不動産物価はゼロとなった。原発震災による損害額は1週間で天文学的な数字に達し、世界恐慌すら懸念され始めた。
 浜岡原発の放射能を封じこめるため、決死隊が募られた。人海戦術しかない。第一陣の決死隊は5000人。最終的には数万人規模と予測される。ソ連のチェルノブイリ原発事故のときには86万人が作業に従事し、5万5000人が死亡したと伝えられている。
 今回の3.11フクシマ原発事故による放射能雲が東京に飛来したことは間違いありません。東京に人が住めなくなったら日本経済の中枢が破壊されたことになります。こんな狭い日本に50あまりも危険な原発をつくるなんて狂っていますよね。電力不足なんて問題じゃありません。すぐにも脱原発に切り換えましょう。
(2011年5月刊。1500円+税)

検証・チリ鉱山の69日、33人の生還

カテゴリー:アメリカ

著者  名波 正晴 、 出版   平凡社
 2010年8月5日、チリ鉱山の落盤事故によって坑底に閉じ込められた33人の鉱夫が
17日後、その全員の生還が確認され、69日後の10月13日に全員が地中から救出された。
 この感動的な出来事は忘れることができません。この事故の関係で読んだ本の3冊目になります。
 世界一の生産量を誇る銅鉱山分野で、政府とコデルコは一糸乱れぬタッグを組んだ。劇場さながらの舞台で涙の再開を実現し、これを全世界に生中継するという巨額を投じた演出が仕組まれた。
 鉱山では何が起きるか分からない。ヤマは生き物だ。
 33人で飛び込んだ地下700メートルの避難所の周辺は不衛生なサウナのようだった。しかし、空気は循環し、坑道には空気が流れていた。避難所周辺では2,6キロほど自由に身動きがとれた。ただし、ケータイ電話の電波は圏外だった。
意思決定は33人の総意で決める。33人は誰もが対等な発言力をもった。絶対的なリーダーはいなかった。
幸いにも33人の多くが太っていた。体脂肪を分解させることで、3週間程度の生存は可能とみられていた。
誰も独りにさせてはいけない。坑道に独りで向かう者がいたら、数人が同行した。自ら命を絶つことがないように。自殺者を出すことは、「生き抜く」という共通の目的をもった共同体の帰属意識を揺るがし、組織が互解する。共同体が崩壊し、後に続く者も出るだろう。一人だけの死ですむはずがない。
 このころ、チリのビニエラ大統領は政治的な行き詰まりを打開する策を手探りしていた。ビニエラ大統領は、政治的な得点を上げられないなかで、サンホセ鉱山の落盤事故への対応を迫られた。ビニエラ大統領は勝負に出た。鉱山の所有企業から管理権を剥奪し、政府の支配下に置いて国が矢面に立つことを選択した。なによりビニエラ大統領をサンホセ鉱山に向かわせたのは、大統領の有権者との連帯感の薄さ、自身の政治資産の乏しさだった。33人の生存が確認された8月22日以降は、チリ政府が表舞台に立ち、鉱山国家の威信をかけた救出作戦の準備と助走が始まった。
 要点は、救出計画の立案と技術的な調整、それに33人の心身の健康管理だ。失敗は許されない。昼夜の区別をつけるよう、発光ダイオード(LED)の照明装置が地下に送り届けられた。間違った希望を与えるな。救出時期についての楽観的な見通しは禁句となった。救出時期は一度たりとも先延ばしされることなく、常に前倒しされていった。
33人を3つのグループに分けて、8時間ごとの労働を割りふった。ビニエラ大統領は、異なった技術を用いて、複数の救出戦略を立案するよう注文した。常にバックアップを用意せよということ、最終的に3つの縦穴を掘ることが決まった。完成まで3~4ヶ月かかる。
 政府は当初から相当なサバを読んでいた。水増しして日程に余裕を持たせていた。これは救出日程が遅れた場合に備えた保険だった。
救出用カプセルは引き上げる過程で左右に揺れて10回以上は回転する。めまいや血圧上昇を防ぐため、救出の6時間前から食事は流動食に切り替え、ビタミン剤が投与された。33人は連日20分以上のエアロビクスで体調を整えるよう指示された。
 カプセルで救出された作業員がテレビの前で体調不良を訴え吐しゃ物にまみれてしまうのではないかと当局は本気で心配していた。それでは生中継のショーが台なしになるからなのです。
 結局、救出費用は総額16億円(2000万ドル)作業員一人あたり60万ドルかかった。
 政府、とりわけビニエラ大統領の大きな政治宣伝につかわれたというわけです。それでも、33人が無事に救出されて本当に良かったと思います。地上に出てから、今も大変な思いをしている人が少なくないようですね。元気に過ごしてほしいものです。
(2011年8月刊。1900円+税)

書くことが思いつかない人のための文章教室

カテゴリー:社会

著者   近藤 勝重 、 出版   幻冬舎新書
 書くことが大好きで、いつもモノカキと名乗っていますので、少しでも文章表現の幅を増やしたいと思っています。文章絵本も、そんなわけで、ときどき読みます。この本にも、参考になるところがたくさんありました。この本で示された例題については、あまり出来が良くなかったのが残念です。
書くって、しんどいと言えばしんどい作業だ。でも、書いたことで意外な発見があったり、人生の進路や生き方の再発見があったり、得られるものは貴重だ。それに、文句一つ言わずに自分を受け入れてくれるのは、文章のほかにそれほどたくさんはない。書いて、もやもやした気持ちを晴らす。
 これは、そのとおりだというのが私の実感でもあります。気力と、それを支える体力がなければ、この書評を書くことなんて出来ません。その意味で、この10年間よくぞ続いているものだと、我ながら感心します。
 全体から部分へ、そして細部へと三点注視で目を移すのが肝要だ。とりわけ細部である。全体の感じは、誰が見てもそんなに変わるものではない。でも、部分からさらに細部を気をつけて見ているかどうかの差は歴然と出る。細部には、そこに本質や表面から分からない実態が潜んでいることがある。そのことに気がつく、気がつかないという差は大きい。
 細部にこそ、物事の神は宿る、よくこのように言われますよね。
文章力をつけるには、思う、考える、感じる、を多用しないこと。それを他の表現に変えてみる。それで、文章が客観的になり、かつすっきりする効果がある。
 私も努力しているところです。なかなか難しいのですが・・・。
(2011年6月刊。760円+税)

すごい実験

カテゴリー:宇宙

著者   多田 将 、 出版   イースト・プレス
 茶髪(金髪かな?)の先生が高校生を相手にニュートリノ実験について解説する本です。とても分かりやすくて、私も理解できました。いえ、もちろん全部というわけではありません。でも、科学の実験の壮大な展望は見えてきましたね、たしかに・・・。
茨城県東海村にある研究所からニュートリノをビーム状に発射して、295キロ先の岐阜県神岡村にあるスーパーカミオカンデでキャッチ検出する。
 ニュートリノを発射させる前に研究所のトラック(1周1.6キロ)を30万回まわらせる。たったの2秒で・・・。
 このような素粒子実験に耐えうる大規模な加速器をつくれるのは、世界で、日本とアメリカとヨーロッパの3ヶ所だけ。中国はあと30年たっても無理だ。日本には、世界最強・最高の加速器がある。
日本でノーベル賞をもらった18人のうち、物理学賞が化学賞と同じで7人。そのうち6人が素粒子物理学者。日本は素粒子物理学で世界最先端を行っている。
 粒子(陽子や電子)を砕くと、まず出てくるのがπ(パイ)中間子。これは寿命がとても短くて、数十メートル飛んだだけで勝手に壊れる。そして、つぶれて現れるのがニュートリノ。
 つくばの加速器はフルパワーで動かすと、1秒間に1000兆個のニュートリノを作ることができる。
 日本は加速器技術でも世界一。研究所は、夏7,8,9月の3ヵ月は止まっている。電気代が高いから。電気代は1年間で50億円もかかる。電子は急カーブを曲がるとき、放射光を出す。ここが電子と陽子の違いだ。
 電子は原子核のまわりを1秒間に6600兆回もまわる。あまりにも速いから、「どこにいる」という瞬間が見つけられない。
 原子は陽子と中核子の組み合わせから出来ている。だから、この組み合わせを変えたら、まったく異なる元素をつくることができる。すなわち、錬金術って、実は可能なのだ。しかし、とてつもない時間とお金がかかるので、錬金術は意味がない(採算がとれない)。
 宇宙みたいに大きな世界だと、1億年なんて短い時間である。素粒子の世界では、何分かというと、めちゃくちゃ長い時間なのである。
太陽は光とともにニュートリノも大量に出す。光は地球上に1平方メートルあたり1.37キロワット。これに対して電子ニュートリノは1平方米あたり600兆個来ている。人間の身体は1秒あたり600兆個のニュートリノを浴びている。この世の中に、ニュートリノは光に次いで多い。
カミオカンデは、1980年代に作られているので、もう30年ほどたっている。
 光の伝わる媒質は何らかの物質ではなかった。それは電磁場そのものだった。
 ニュートリノを研究して、それが今後の日本にどう役に立つのか。分からないとしか言いようがない。そうなんですね、いつ、どこで、どのように役立つのか分からないものって、世の中にはかなり多いですよね。
 高校生に分かるのなら、私だって・・・と思いましたが、現実はそんなに甘い話ではありませんでした。それでも、最後まで面白く、読み通しました。
(2011年10月刊。1600円+税)

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