船戸 与一 著 、徳間書店 出版
江戸時代最後、幕末の日本の状況を実感させてくれる貴重な小説だと思いました。
明治維新というのは、幾多の多大なる犠牲なしには実現しなかったのです。
明治維新に反抗したのが、たとえ後世になって「反動」と呼ばれようとも、薩摩や長州勢の言いなりにはならないという日本人も多かったのではないでしょうか。そして、新政府をかたちづくった薩長土肥その他の内部にも、また皇族や公じ家の中にも大いなる矛盾と激しい抗争が存在しました。
この本は、その点を多面的な角度から描こうとした意欲的な小説です。私も、こんな本を1968年の「大学紛争」について小説として書いてみたいと思ったことでした。
上巻1冊で500項もある大作です。かなり強引な飛ばし読みをしましたが、それでも丸2日間、3時間はたっぷりかかってしまいました。それだけ読みごたえのある本なのです。
よく調べて書かれていますので、幕末から明治維新にかけての日本各地の雰囲気を知りたい人には絶好の本だと思いました。
(2010年3月刊。1900円+税)
新・雨月
