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2010年8月 の投稿

激変の時代のコンビニ・フランチャイズ

カテゴリー:社会

 著者 植田 忠義、 花伝社 出版 
 
 コンビニそしてフランチャイズについて、いま「日本でフランチャイズの実情に一番詳しい人」が書いた、とても分かりやすい本です。190頁ほどのハンディーな本ですし、1500円という手頃な価格の本ですので、関心のある人は、ぜひとも買って読んでみてください。
 フランチャイズというとコンビニと思われるが、実態はそうではない。1000社をこえる本部のうち、コンビニは40社ほど。加盟店は20万をこえるが、コンビニは、そのうち5万ほどでしかない。あらゆる業種にある。フランチャイズ産業全体の売上高の37%をコンビニが占めている。フランチャイズ本部の圧倒的多数は中小企業である。資本金10億円以上、様式公開という本部は、ほんのわずか。フランチャイズ関連で働く労働者は200万人をこえる。
コンビニ利用者は毎日2500万人をこえ、フランチャイズ店は、深夜の客数はきわめて少なく、割高の人件費、売れ残り、水道光熱費など、経営面で採算があっていない。一日の来客者数が600人以上、都心の店には一日に3000~5000人の客が入っているところがある。
 深夜も店に入るオーナーの平均的な一日の生活は、午後4時に起床。一人で軽く麺類を食べ、店に行く準備をする。午後8時には店に入り、翌日の午後10時まで店で仕事をする。それから自宅に帰り、寝るのは昼ころ。まともな食事も睡眠も取れない。家族との対話もない。いやあ、これって本当に大変ですよね。これが何年も続いたら、健康をこわしてしまうんじゃないでしょうか・・・・。
 昨日までの労働者が、いきなりフランチャイズ、コンビニをやるのは問題がある。経営者になる、事業を経営するというのがどういうことなのか知識がない。事業経営は、働いて資本投下しても赤字になりうることを理解していない。
それでも、この本は、コンビニ業界には将来性があるという立場で貫かれています。決して必要悪という消極的な立場ではありません。もっとも、24時間営業には消極的です。私も、その点は大賛成です。
 自立心の強い事業経営者志向の強い人には、コンビニは向いていない、ということも、はっきり書かれています。コンビニオーナーは、まさしく現代の奴隷という見方もあるのです。
 コンビニ店によっては「24時間営業」ではなく、「午前0時閉店」を本部に認めさせたところ、独自の仕入れを本部に黙認させた店もあるということです。
 そして、過大な廃業違約金を是正させた裁判例も紹介されてます。
 また、コンビニ契約の更新を本部に承諾させた店もあるとのことです。
 日本にはコンビニの数があまりにも多過ぎる気がします。フランスに行ったとき、小さなスーパーが日曜日に昼までの営業となっていて、午後2時過ぎに行ったときには閉まっていて、牛乳を買えなかったことを思い出しました。それでも、そんな不便は我慢できるものです。それにしても、今の24時間営業はムダだと私は思いますが、いかがでしょうか・・・・?
 いい本です。ぜひ、読んでみて下さい。
(2010年7月刊。1500円+税)
 泊まったホテルはリヨンの旧市街のなかにありました。旧市街には6階建てくらいの石造りの建物が並んでいて、通りは狭い石畳となっています。
 カフェーとレストランがあちこちにありますが、少し広い通りは、両側のレストランが歩道にまでテーブルを並べています。観光客が多いせいか、ここは夕方6時過ぎからテーブルがどんどん埋まっていきます。7時ころには、相当の客が座って食事しています、ざっと見渡すと300人以上はいるのではないでしょうか。夜8時といっても、まだ昼間の明るさです。
 広い通路が完全に埋まってしまいました。虫も蚊もハエもいなくて、暑くもなく、快適に食事ができます。

鳥脳力

カテゴリー:生物

著者:渡辺 茂、出版社:化学同人
 鳥は恐竜から進化した動物ではなく、生き残った恐竜なのである。恐竜には、鳥型恐竜と非鳥型恐竜があるのだ。恐竜が6500万年前に絶滅するより前に非鳥型恐竜と鳥(鳥型恐竜)は共存していた。そして、鳥型恐竜は現代鳥として生き残ったのだ。
 なんと、鳥と恐竜の関係は、こんなに深いものだったんですね・・・。
 小鳥は、脳の片半球ずつ眠ることができる。これは、捕食者に対する警戒を絶やさないため。そうなんですか・・・。
 カケスは、ものを隠して、その場所を覚えているという記憶力に優れているばかりでなく、他者のものを盗むという悪知恵ももっている。いやはや、なんとういうことでしょう。
 鳥類は道具をつかう例は、哺乳類より多い。ニューカレドニアカラスは、加工した道具を携帯して場所を移動する。
 伝書鳩の原種はカワラバト。カワラバトを帰巣成績による選択交配を重ねた品種が現在の伝書鳩である。カワラバトは、崖にある巣と採餌場所のあいだ20~30キロメートルを移動する。ドバトは、伝書鳩が二次的に野性化したもの。
 ハトにGPSをつけて飛行ルートを実験してみると、一度ルートを決めたら、同じルートを繰り返す。最適ルートに近づけることはしない。ハトは最短距離を飛ぶより、熟知している、いつものルートで帰巣する習性がある。ハトが帰巣するときに間違うのは、巣の近くに駅や鉄塔など、似たようなものがあったとき。
 訓練したハトは、ゴッホとシャガールの絵を区別することができる。
 ハトは、色とか形の特定のものではなく、全体を見て判断している。
 ハトは細部にこだわる。鳥に弁別訓練を行うと、日本画と西洋画の区別ができるようになる。ハトは、訓練すると特定の音楽が弁別できるだけでなく、ある程度の音楽カテゴリーの弁別も出来るようになる。
 夜に空を渡る鳥たちは、星座コンパスをつかう。夜間飛行する鳥たちは、そのための特別な脳内機構をもっている。
 小鳥の歌には相当複雑なものもあるが、伝える情報は少ない。つまりは求愛か、なわばり宣言である。主たる機能は情報伝達であって、聴衆を楽しませるものではない。
 オウムは音楽にあわせて踊ることができる。
 カラスは鏡にうつった自分を、他のカラスだと見ている。
 カラスが毎週のようにゴミあさりにやってきます。袋をつついて破り、なかのものを散乱させてしまいますので困っています。悪知恵が働くので、今のところはゴミにネットをかぶせていますが、イタチごっこになるでしょう。
(2010年4月刊。1700円+税)
 リヨンの旧市街をを見おろす丘の上にフルヴィエール寺院があります。歩いてのぼるのは大変なので、メトロに乗ります。駅の出口から見ると、目の前に大きな寺院がそびえています。
 裏側にまわると、リヨン市街地の全体を眺めることができ、爽快です。涼しい風が吹いてくるなか、高台にあるカフェーでコーヒーを飲みました。時差の関係でしょう、夕方五時になると、いつも眠たくなります。
 寺院から少し下ると、ローマ時代の野外劇場の遺跡があります。オータンにも広大な劇場がありましたが、リヨンもなかなかのものです。観客席の傾斜はすごく急になっていて、控えの建物まで残っています。ローマ帝国の偉大さを実感します。

これからの「正義」の話をしよう

カテゴリー:アメリカ

著者:マイケル・サンデル、出版社:早川書房
 アメリカという国は、実にふところの奥深い国だと思わせる本です。天下のハーバード大学で史上最多の学生を集めている講義が再現された内容の本です。私はみていませんが、NHK教育テレビで連続放映され、日本でも話題になっているそうです。
 ことは、きわめて重大な「正義」を扱っています。とっつき易いのですが、その答えとなると、とても難しく、つい、うーんと腕を組んで、うなってしまいました。
 たとえば、こうです。アメリカの大企業のCEOは、平均的な労働者の344倍の報酬を手にした。1980年には、その差は42倍だった。この格差は許されるのか?
 アメリカの経営者は、ヨーロッパの同業者の2倍、日本の9倍の価値があるのだろうか?
 いま、日本の経営者(日本経団連)は、その格差を小さくしようとしています。アメリカ並みに労働者と格差を何十倍ではなく、何百倍にしようと考えています。その具体的なあらわれが、消費税10%引き上げであり、法人税率の引き下げ(40%を20%へ、半減)です。ますます格差をひどくしようなんて、とんでもありませんよね。
 アメリカの金持ち上位1%が国中の富の3分の1以上を保有し、その額は下位90%の世帯の資産を合計した額より多い。アメリカの上位10%の世帯が全所得の42%を手にし、全資産の71%を保有している。アメリカの経済的不平等は、ほかの民主主義国よりも、かなり大きい。アメリカン・ドリームなんて、夢のまた夢、幻想でしかありません。
 アメリカは、現在、徴兵制ではなく、志願制である。イラクのような戦地に勤務する新兵の出身は、低所得から中所得者層の多い地域がほとんどである。貧乏人は兵隊になって戦地へ行き、死んでこいというわけです。
 アメリカ社会でもっとも恵まれている層の若者は兵役に就くことを選ばない。
 プリンストン大学の卒業生は、1956年には750人のうち過半数の450人が兵役に就いた。しかし、2006年には卒業生1108人のうち、軍に入ったのは、わずか9人だった。ほかのエリート大学も同じ。連邦議会の議員のうち、息子や娘が軍隊にいるのは、わずか2%のみ。
 2004年、ニューヨーク州の志願兵の70%が黒人かヒスパニックで、低所得者層の多い地域の出身だった。最高4万ドルという入隊一時金や教育を受けられるときの特典は、きわめて魅力が大きい。
 いくつもある考えるべき課題を明らかにしてくれる、実に哲学的な本です。
(2010年6月刊。2300円+税)

母(オモニ)

カテゴリー:日本史(戦後)

著者:姜 尚中、出版社:集英社
 戦後日本の実情が描かれています。著者は団塊世代の私より2つ年下ですので、そこで紹介されている在日朝鮮人の生活は私にとっても、身近な存在でした。
 舞台は熊本市内ですが、私も福岡県南部で生まれ育ったので、よく分かるのです。
 熊本と朝鮮人労務者との関係は、韓国併合よりも早い、1908年(明治41年)にまでさかのぼる。人吉─吉松間の鉄道ループ工事に数百人の朝鮮人労務者が使役された。三井系の三池炭鉱や阿蘇鉱山、三井三池染料、三菱熊本航空機製作所などで強制労働に従事していた。
 そして、朝鮮人の集落があり、そこではドブロクの密造もされていた。
 私の住む町にも、近くに朝鮮人の集落があり、豚が飼われ、ドブロクがつくられていました。たまに、警官隊が踏み込んで密造酒づくりを摘発したという話を、私も幼い子どものころに聞いていました。
 オモニは文字の読み書きが出来ない。ところが、不思議なことに、その口調にはナマリがなかった。朝鮮人を思わせるイントネーションはまったくなかった。
 総連と民団という言葉も、今となってはなつかしい言葉です。もちろん、今もこの二つの団体は存在しているのですが、30年前には、お互いに張り合っていました。どちらかというと、今と違って総連のほうが活動家に勢いがありました。同胞の面倒みの良さも上回っていたと思います。
 戦前の日本で憲兵となった著者の叔父は単身、韓国に帰った。そして、苦労して弁護士になり、大出世します。反発していた著者も韓国に渡って、祖国を見直すのでした。ただ、成功した叔父も、晩年は人に騙されて哀れだったとのことです。栄枯盛衰は世の常ですね。
 この本は母(オモニ)を主人公とした小説の体裁をとっていますから、すっと感情移入して読みすすめることができ、大変読みやすい本になっています。そのなかで在日朝鮮人の家族の歴史を理解できる本です。ますますのご活躍を祈念します。
 ちなみに、私も母の生きざまを描いてみました。やや中途半端で終わっていますので、この本のように、もう少し小説仕立てにしたほうが読みやすいのかなと思ったことでした。
 一読をおすすめします。
(2010年6月刊。1200円+税)

属国

カテゴリー:社会

 著者 ガバン・マコーマック、 凱風社 出版 
 
 米国の抱擁とアジアでの孤立。こんなサブタイトルのついた本です。オーストラリアの大学教授の書いた日本論です。
 日本はアメリカの属国なのか? のっけから、挑戦的な問いかけがなされています。とんでもない。そうキッパリと答えたいところです。しかしながら、そう答えたいのはやまやまなれど、たくさんの事実がそれを憚らせます。
 日本経済は確実に下降し続けている。一人あたりのGDPは2006年には、OECD中の18位という、ぱっとしない地位にいる。持てる者と持たざる者、勝者と敗者の格差は拡大した。先進国の中で日本より深刻な貧困問題を抱えているのはアメリカだけである。
 生活保護の受給家庭は100万世帯にのぼるが、生活保護を受ける資格があるのに行政から拒否されているケースは、さらに多い。安定した仕事は激減し、労働者の3人に1人は、ディケンズやマルクスが描写したような資本主義初期の暗黒時代に労働者が終験した貧困や搾取とあまり変わらない状態にある。
 国民健康保険の保険料が支払えずに実質的に無保険状態になっているひとが1000万人もいる。社会の高齢化が加速し、少子化と相まって国力は衰退化しつつある。東アジアでも、世界でも日本の存在感は薄くなった。
 小泉、安倍両政権の特徴は対米依存と責任回避である。日米関係の核心にあるのは、冷戦期を通してアメリカが日本を教化した結果としての対米従属構造だが、小泉と安倍という二人の首相の「改革」は、これまで長年継続してきた対米依存の半独立国家・日本の従属をさらに深め強化した結果、日本は質的に「属国」といってもいい状態にまで変容した。日本独自の「価値観・伝統・行動様式」を追求するどころか、そうした日本的価値を投げ捨ててアメリカの指示に従い、積極的にアメリカの戦争とネオリベラリズム型市場開放に奔走した。
 世界中でアメリカの覇権とネオリベラリズムの信用度が急落しているなか、小泉、安倍両政権は献身的にブッシュのグローバル体制を支えた。後藤田正晴元官房長官は亡くなる前年(2003年)、日本はアメリカの属国になってしまったと発言した。
 日本占領期のマッカーサー元帥は憲法や行政機構にまで細かい指示を出した。それから60年にたっても、ブッシュ政権の高官は、今もって小泉や安倍を配下のように見ている。それにしても、日本が、憲法を改定しろとか、日本の基本法を改めろというような、内政干渉もはなはだしいアメリカ高官を「親日家」としてありがたがり、ちやほやするのは、一体どういうわけなのか。
 そのような自立心の放擲こそ、属国的思考の何ものでもない。
日本に公務員が多すぎるとはいえない。人口1000人あたりの公務員数は、イギリス73人、アメリカ80人、フランス96人であるのに対して、日本はわずか35人にすぎない。
 福祉予算のほうも、OECDのなかで、もっとも少ない国に入っている。郵政民営化、なかでも簡保の民営化ほど、アメリカが日本に執拗かつ熱心に迫った施策はない。日本政府が運営する120兆ドルの保険ビジネスは、アメリカの保険ビジネスに次いで、世界第二位の規模であり、カナダのGDPに匹敵する。そこで、アメリカの保険業界は日本市場への参入を要望し、アメリカ政府の日本政府への要求となった。
北朝鮮は110万人の軍隊を擁している。この数字だけからみると、超大国レベルである。しかし、多くの部隊が生きるために狩猟や農業に時間を費やし、装備の多くは1950年代のものだ。燃料不足は深刻で、パイロットは毎年、数時間しか飛行訓練ができない。
 小泉元首相は、北朝鮮への恐怖をあおることで利益をあおった張本人である。
 日本の原子力発電への依存度は発電量でも消費電力量でも、フランスと肩を並べて世界で一位、二位を争う。そして、日本は既に45トンに及ぶプルトニウムを貯蔵する世界有数のプルトニウム超大国だ。これは世界の民間貯蔵量230トンの5分の1であり、長崎型核弾頭に換算すると5000発に相当する。日本は「兵器転用可能なプルトニウムの世界最大の保有国なのである。
 イランや北朝鮮が同じことをしたら、絶対に阻止しなければならない、ということになるだろう。これって、おかしくないか・・・・?
 日本の国とは、どんな国であるかを改めて考えさせられる大切な本です。慣らされてしまうと、大事なことが見えなくなるものなんですよね・・・・。
(2008年8月刊。2500円+税)

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